人は1人では生きていけない 作:生足が魅惑のマーメイドです
あんまり設定もりもりにしたらダメだとは思うんだけどさ。あの超人に多少なりとも劣等感抱かせるためにはやりすぎが丁度良いのかもしれない
ヤチヨのライブを見た次の日、俺は買い出しのために外へ出ていた
すると、見覚えのある人物と友達らしき2人が目の前を歩いてくる
「よ、彩葉。学校帰りか」
「うん。そういう和久は、見ての通り買い物帰りね」
「そーそー、今日はルーが安かったからいっぱい買ってきた。お前もいる?」
「私はいらな…いや大量に買いすぎでしょ、どんだけ食うのよ」
「まだまだ食べ盛りなもんで」
昨日は早く会話を切り上げたから少し駄弁っていたが、彩葉の友達2人を放置するわけにもいかずそちらに話題を変える
「ところで、そこの2人はお友達?」
「あ、紹介してなかったわね。2人は私の友達の芦花と真実。そんで2人とも、この男は双子で…いや知ってるだろうしもういっか」
「俺の紹介省略されちゃった…」
俺の対応雑やぞーと思っていると、なにやら2人が近づいてきた
「彩葉の双子ってことはもしかして…」
「あっ、あの!私、彼氏と一緒に去年の──」
「しー。…流石に知られてたかぁ」
「むしろ知らない人の方が少ないでしょうが」
うーむ、自分で言うのもあれだが確かにそうだ
「…よし!時間があるならで良いけど、一緒にカフェにでも行くかい?」
2人はそれに了承し、4人は話をするため個室のあるカフェに向かうことになった
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「ふぅ…ここならゆっくり話せそうだ」
そう言って、和久はサングラスとマスクをはずす
…なんてことのない所作のはずなのに、すごい様になってるなこの男
「彩葉と一緒で顔が良いな…」
「すっご本物だ…!」
「ちょっと真実落ち着きなよ。そんなに和久のファンだったっけ?」
「いやいや!この人に関してはもはや国民全員がファンでしょ!」
真実が急に身を乗り出して熱弁し始めた。なんなら、いつも帝について話す時と同じくらいの熱量だ
和久も嬉しそうにニヤニヤしてんじゃないわよ…
「たった16歳でワールドカップに出場してさ!それだけでも凄いのに点取って日本が優勝してるんだよ!
付けられた異名は世界の頂点!日本の宝でしょ!」
「改めて聞いてもとんでもないね」
真実の熱弁に芦花も頷く
「でも、なんで急にやめちゃったんですか?」
「そうそう!ワールドカップ直後だったからビックリしましたよ!」
「あ~…いやね。…内緒だけど、実際は自分からやめたというより追放っていう形なんだけどね」
「うぇっ!?」
「え?そうなんですか?」
「待ってそれ私も聞いてないんだけど」
「そりゃあ誰にも言ってないからね」
かなり重そうな話題だけれど、和久はなんてことのないように軽い返事をする
「その…失礼ですけど、もしかして…」
「ああ、ドーピングの噂のこと?」
「えっと…はい…」
「芦花!和久さんがそんなことするわけないでしょ!」
「私もそう思ってるよ。…ドーピングしてないけど、噂のせいで追放になっちゃったのかなって…」
「はは、ありがとね信じてくれて」
「…それで、結局なんで追放ってなったのよ」
ずっと頑張ってきたサッカーでそんな仕打ちを受けても、いつものように平気の様子だったのでつい食い気味に聞く
「ん~…その噂は直接関係してないんだけどさ。自慢になるけど、そんな噂が立つくらい強かったんだ」
「日本は和久一強って言われるくらいですもんね」
「しかもワンサイドゲームとか出来レースって言われるようになってね。どうせ俺がいる方が勝つと言って、客足が減って商売面にも影響が出てね」
和久は笑い話のようにそう話していた
「それが続いて、ついに連盟から"君がいるとサッカーが廃れていってしまう。我々も心苦しいが、サッカー界から手を引いてほしい"って言われちゃった」
でも私は和久の顔が一瞬だけ曇ったように見えた
「そんなのって…」
「いや仕方がないよ。連盟の方針は強い選手を作ることではなくて、サッカーを発展させることだから」
和久はそう言った後神妙な顔になる
そのまま暗い雰囲気が続いていたが、それを変えるかのように真実が勢いよく立ち上がった
「でもでも!それってつまり和久さんが強すぎるからってことですよね!」
「えっ?…まあ、そうだね」
「ならそのっ!…えっと、追放も悪い意味じゃなくて…逆にその、良い意味でっていうか…」
「…もしかして慰めてくれてる?」
言いたいことがまとまらないのか、真実はあたふたしているが、それで察したのか和久が微笑みながら真実に聞いた
「一応、自分なりに励まそうと思ったんですけど……ごめんなさい、私なんかがおこがましいですよね…」
「いやいや、そんなことないよ。むしろありがとうね」
「そっ、それなら良かったです!」
暗い雰囲気も真実のおかげでのほほんとしてきた。素直にすごいなとおもっていると、恐る恐ると和久に話しかける
「今言うのもあれなんですけど……和久さん!サインください!」
……ほんとに今言うことじゃないわね
「クッ…アハハッ!ほんとに今言うことじゃないな!真実ちゃんだったね、中々面白い子だ。
さて、どこにサイン書けばいいかな。あと芦花ちゃんもいる?」
「やったぁ!ついでに彼氏の分もお願いします!」
「折角なので私もお願いします」
和久が笑いながら2人にサインを書き始めた
……おー、随分と手慣れてるな
「…って、結構時間経ってるじゃん。ごめん、かぐやも待ってるからそろそろ行かないと」
「ほんとだ、すまんな時間くっちまって。お詫びにカレーいるか?」
「だからいらんよ」
そのまま帰る準備をしていると、珍しく嬉しそうにはしゃぐ芦花がふと思い出したように和久に問いかける
「そういえば、かぐやちゃんも和久さんのいとこなんですよね?一緒にサッカーとかしてました?」
あっ!?やばい!2人にはかぐやをいとこだって言ってたんだった!和久には何も言ってないし!
「───ああ、そうだね。かぐやは昔から活発な子だったよ」
「へ〜そうなんですね!」
……あれ?なんとかなった?
このまま全員から問い詰められるんだろうなと思っていたら、和久が察したのか話を合わせてくれた
「よし彩葉、折角だし一緒に帰るか。お金は置いておくよ」
「あっ、うん。またね2人とも」
2人に手を振りかえして、そのままカフェを出る。そうしてある程度歩いた後、やはり和久から質問される
「で?かぐやちゃんが俺たちのいとこってのは、どういうことだ?」
「……色々言えない事情があって、いとこってことで誤魔化したの」
「その事情ってのは俺にも言えないことか?」
「あんたにも…迷惑はかけられないから」
「そうか。……なら俺はこれ以上何も聞かない」
もっと追求されるかと思ったけれど、すぐに引き下がってくれた。今はありがたいが……それより私の方が聞きたいことがある
「…なんであんな話、2人に聞かせたのよ。多分、お兄ちゃんとお母さんにも言ってないんでしょ?」
聞きたいのは先ほどのサッカーの話。私も初耳なのに何故2人に打ち明けたのか気になった
「まあな。心配かけるわけにもいかねえし」
「なら、なおさら何で私たちに言ったのよ」
「あー…あの2人、有名なインフルエンサーだろ?」
「あ、知ってたんだ」
芦花と真実はツクヨミでも有名なインフルエンサー。だからといって今は関係ないと思うけれども
「つまり発言の影響力が強いってこと。もしも俺が炎上した時の手札になるかも…なんてね」
「うっわ打算的…2人を巻き込まないでよ」
「ま、それは流石に冗談だよ。ぶっちゃけると、後から知られるより自分のタイミングで話した方が対応しやすいからな
2人がいる時に話したのは、友達がいる時は遠慮して詰め寄ったりしないだろ?それだけさ」
「今まさに詰め寄るつもりだけど?」
「だが時間が経ったおかげで冷静に考えられるだろ?ならさっきの話も理解できるだろ」
「まあ…そうだけど、納得はしたくないわね」
じりじりと詰め寄ろうとしたが、上手く言いくるめられてしまった
「心配させないように言っておくけど、俺はさっきみたいに自分を守るための手札は用意してある。だから俺のことは気にするだけ無駄だよ」
「流石世渡り上手…。どうせ和久なら大丈夫と思ってたわよ」
「そりゃどうも。俺はむしろお前の私生活が心配だけどねー」
「うっさい余計なお世話よ」
話しているうちにいつのまにか家に到着しており、今日はそのまま解散することになった
……あの話をしていた時、和久は思い詰めるような顔をしていた気がするが、あの様子なら気のせいかな
───後になって気づく、私は和久のことを見てすらいなかったのだと