人は1人では生きていけない 作:生足が魅惑のマーメイドです
終業式が終わり、多くの学生は夏休みに入る。かくいう俺もその1人だ
休みの日は大抵やることが多かった俺だが、去年からそれもなくなったためほぼ暇になる
ということで、暇つぶしも兼ねて彩葉の家に行き2人の様子を見に行くことにした
「おーい、また仕送り持ってきたぞー」
チャイムを鳴らし声をかけると、かぐやの元気な返事が聞こえてすぐにドアが開く
「あっ、お兄ちゃんだ!かぐやっほー!」
「……かぐやほー?」
「やっほーだよ!かぐやとやっほー合わせてかぐやっほー!」
「へー、随分と面白い挨拶だな」
2人の様子、というか主に彩葉の私生活が心配になり結構頻繁に遊びに行ったことで、かぐやに懐かれたのかお兄ちゃんと呼ばれるようになった
妹ってこんな感じなんかね〜
そんなことを思っていると、かぐやの視線が俺の持つダンボールに向く
「今日は何持ってきたの?」
「色んなのいっぱい持ってきたよ。安かったから麺類が多いかな」
「わーい!いつもありがとー!」
家に入り、喜ぶかぐやにダンボールを手渡す
「そういや、何で急にかぐやっほーって?」
「あれはねー配信の挨拶なんだ!」
「あー、そういえばライバーになったと言ってたね。いつもどんな配信してるんだ?」
「んーっとね、今ちょうど配信してるから見せてあげる!」
「ありがと─────んん??」
ちょっと待てこの子今配信してるって言ったか?
…配信ってあれだよな。世界中に動画を公開してるやつ…
俺は急いでテーブルに置かれてあるパソコンに向かう
「は、配信中…!」
・あっ気づいた
・声すっごいイケボなんやが
・声で分かる。さてはこの人イケメンだな
・かぐやのお兄ちゃんさん?
・なんで男出てきた?
・誰?この人?
・そりゃ仕送り持ってきた人よ
パソコンには配信中の画面と、視聴者たちのコメントが流れていた
幸いなことに顔は見られていないが、コメントの雲行きが怪しくなってきた
それもそうだろう
このチャンネルはかぐいろとも呼ばれ、ほぼ百合のチャンネル。視聴者はここに男が混ざるなんて望んでいないだろう
……この状況をなんとかしないといけない
「コホン。…初めまして視聴者の皆さん、私はカズと申します。突然の登場で申し訳ありません
…ふむ、私のことを知りたいコメントが多いですが、そうですね……
私の立ち位置は、かぐやの彼女であるいろPの双子の兄といった感じです」
・草
・いろPの方の兄やったか
・はえ〜いろP双子だったんだ
・すんごい行儀正しい人やん
・お兄ちゃんか…かぐやの保護者増えたぞ
・てかいろPが彼女扱いなん草
・お兄ちゃんかぐやちゃんといろPどっちもください
・どちらかというといろPは彼氏の方じゃね?
よし…これで知らない男が混ざってるのではなく、2人の身内として認識されてるな
ここでもうちょいネタに走るか
「いろPが彼氏?ハハハ、百合なんだからどちらとも彼女に決まっているでしょう。
……それより百合の間に挟まろうとする人がいるようですね、見つけ次第殺します」
・ヒエッ…
・皆んな逃げろぉ!お兄ちゃんが来るぞーっ!
・声がガチトーンすぎて怖いんだが
・兄が1番過激派とか草なんよ
・速報:まさかのかぐいろカップル家族公認だった
・お兄ちゃんも顔出しNGなんかな
・これで保護者が一名増えたね
・かぐやちゃん止められると思う?
・いやぁ…止まらんでしょ
おお、視聴者たちが中々良い反応してくれてんね。これなら炎上することはないかな
「もうっ!かぐや抜きで何盛り上がってんの!」
「ごめんごめん、ちょっと自己紹介してただけだよ」
ダンボールの中身を片付けていたかぐやが、頬を膨らませて突っ込んでくる
嫉妬か?可愛いやつめうりうり〜
・今すごい音しなかった??
・かぐやちゃんが頭から突っ込んでった…
・ガッツリ腹に直撃してたぞ
・いやでもびくともしてなかった…化け物かな?
・体幹どうなってんだこいつ
・撫でられて喜んでるかぐやちゃん可愛い
・アッ…尊い
・羨ましい…お兄ちゃんそこ変わって
・じゃあ俺がかぐやちゃんと変わる
・男2人のむさ苦しい絵が完成したぞオイ
「むふふ〜」
「よし、それじゃあ俺は帰るとするよ。配信の邪魔をする訳にはいかないからね」
「え〜!!もう帰るの!?もうちょっと遊ぼうよ!折角だし配信も一緒にしようよ!」
「ごめんね、さっきのは事故みたいなものだったからさ。配信出るにはせめていろPの許可が必要だよ」
「む〜!…分かった!頑張っていろP説得する!」
「ハハ、頑張れよ。じゃ、また来るねバイバイ」
「バイバ〜イ!」
大きく手を振るかぐやに見送られ家を出る
今まで兄さんの配信にも出ないようにしてたのに…まさかこんな形になるとは…
彩葉を説得するとか言ってたが、逆に彩葉に言いくるめられるでしょ
と、楽観的に考えていたけれど、翌日に何故か彩葉から連絡が来た
どうやら、昨日のことで話があるそうでまた家に行くことになった
彩葉の家の前に着き、チャイムを鳴らす。するとすぐにドアが開かれた
「お兄ちゃんやっと来た!」
「あい来たよー。そんで話ってなんだ?」
「ごめんね、わざわざ来てくれて。…話の前にかぐや!まずはごめんなさいでしょ!」
「うっ…お兄ちゃんごめんなさい…」
「昨日のことなら大丈夫だよ。顔映ってなかったし、炎上することもなかったからさ」
彩葉に叱られて頭を下げるかぐやに、自分は平気だと声をかける
確かに昨日は危なかったなと思っていたが、かぐやは反省しているようだから次は気をつけてくれれば大丈夫だろう
「…ちょっと甘くない?」
「でも反省してるみたいだし…」
「まったく、ちょろいんだから」
ちょろくないやい
彩葉と喋っていたら、かぐやが怒られないと分かったのか顔を上げて話を切り出す
「それよりさ!彩葉の許可出たからお兄ちゃんも出ていいってことだよね!」
「えっ?お前許可出したん?」
「……私はあくまで和久が良いならってことで許可出しただけだから」
「えぇ…お前も十分ちょろいじゃん…」
かぐやの言葉を聞いて彩葉の方を向くが顔を逸らされる
こいつも人のこと言えねえじゃねえか…
「それじゃあ何からやる?やっぱりゲーム配信?それとも初っ端から歌っちゃう?」
「…あー、それがだな…」
かぐやが楽しそうに聞いてくるが、俺は最初から配信に出ないつもりでいた
「…はっきり言うけど、俺は配信には出ない」
「えっ何で!?出るって言ったじゃん!?」
「まあ、彩葉の許可が必要とは言ったが……別にだからと言って俺が出るとは言ってないからセーフで」
「何それっ!?嘘つき〜!!」
うっ…心が痛い…
でも仕方がないんだよ。お前らのチャンネルに男の俺が出たら炎上しちまうかもしれないし…
「どうせ一回出たんだから何回出ても変わんないじゃん!」
「残念だけど、もう何を言われようが変わらないよ」
可哀想だけど、ここは心を鬼にしてでも───
「───お兄ちゃん…おねがい」
「しょうがないなちょっとだけだぞ」
かぐやに上目遣いでおねだりされた瞬間、何故か口が勝手に動いていた
「よっしゃ〜!!言質取ったぜい!」
「ちょろすぎでしょ…私でももう少し抵抗するわよ」
「……俺は、今…なんて言ったんだ…?」
「うっそでしょ無自覚だったの…!?」
何が起きたんだ…俺はアレを見た瞬間、いつの間にか許可を出していた
自分でも思うがちょろすぎないか…?
「どうしよう…」
「もう諦めて配信出ればいいじゃない。私みたいに顔を隠すでもしときなさいよ」
「でもぉ…!」
「…はぁ、男に二言はないって聞くけどアンタは違うみたいね。思ってたより女々しいやつじゃないの」
「なっ!?───やっ、やってやらぁ!!」
と、いうことで俺もライバーデビュー…
かぐやのおねがいと彩葉の煽りに負けましたねはい