主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ!   作:匿名退場予定

14 / 14
主人公くん、退場予定ヒロインちゃんとお出掛けする

 エレーナが最近おかしい。

 

 ……まあ、前からわりとおかしいかな、と思うところはあったけど。

 

 僕とステラさんを話させようとしたりだとか。上級生のミーツェさんと変に関わったりとかもしてるみたいだし。

 

 ……何か、変なこと考えてないといいけど。エレーナはやっぱり、心配になるから。

 

 少し離れてるだけで、たまに泣いてる時とか、胸がきゅっとする。雨だからバレないと思ってた、とか平気で言うし。……あの家のことは、やっぱりエレーナに深い傷を負わせてるんだろうけど、触れられないから考えるのはやめとこう。

 

 っていうか、僕に何かを内緒にしてる気がする。……あと、何かいじってくることも増えた。

 

 さすがに、急に好きだとか言われて動揺してしまうのも許してほしい。

 

 そもそも、エレーナはかわいい女の子で。普段から近くにいるけど、まっすぐ好きって言われたらどうしていいかわからなくなる。

 

 ……友達としてってことはわかってるけどね。

 

「何を考えてるんですか?」

 

 ボーッと考え込んでいると、不意に青い瞳が僕を覗き込んでくる。

 

 ステラ・メーア、このクラスにいる不思議な少女。

 

 彼女が一言話すたびに、クラスの視線が少しだけ集まる。

 

 快活で、かわいらしい見た目と――その秘めた彼女の力のせいだけど。

 

 星の魔力、全属性を操るその力は自然と注目を受ける。

 

「あっ、わかりました。エレーナさんのことですよね?」

「……何か用?」

「あはは、私に冷たいの如月くんぐらいだからちょっと新鮮かもですね」

 

 楽しそうに、けらけらと笑う。……そりゃあ、君に辛辣な人もなかなかいないだろうけどね。性格も見た目も、なんなら才能すらあるんだから。

 

「私も、エレーナさんのことを知りたくってですね」

「……なんで?」

「――ひとりぼっちになりたさそうな子を見ると、邪魔したくなるんです」

「それはどういう……」

「なんでもないですよ」

 

 僕の言葉を遮って、いつも通りのにこにことしたステラさんに戻った。さっき一瞬だけ、声色が変わったのはなんだったんだろう。

 

「エレーナさんの手を、離さないであげてくださいね」

 

 とだけ言って、ステラさんは去っていくし。

 

 そういえば、最近あんまりエレーナと話してない気がする。

 久しぶりに、エレーナと遊ぼうかな。まあなんかその…………癒されるし。

 

◇◇◇

 

「れーくん、どうした、の?」

 

 小首を傾げて、エレーナがこちらを見た。……変なこと考えてたせいか、少し意識してしまいそうになって。儚げに揺れる瞳に吸い込まれそうになる。

 

「なんでもないよ」

 

 今日は休日で、やることもないからエレーナと一緒にいるんだけど。最近は少しずつ、エレーナが他の人といることもあるから、なんだか久しぶりな気がしてきた。

 

 別に、そんなこともないのに。

 

 ……嫉妬って言われたけど、少し寂しいから違うとも言いにくい。

 

 まあ、一緒にいるって言っても、他に遊ぶ相手も思い付かないから、なんとなく一緒に出掛けてるだけだけど。

 

 にしても、ステラさんもミーツェ先輩も、やたらとエレーナを気にしてる。気持ちはわかるんだけどね。

 

 エレーナは見てて、放っておけなくなるだろうし。……それに、未だに家のこととかで、うなされてるのとか見るから。

 

「れーくん、ボーッとしてる」

 

 考え込んでいると、ムッと少しだけ頬を膨らませたエレーナが、こつんと肩をぶつけてきた。

 

「ごめんってば」

「いいけど……」

 

 本人に言ったら怒るだろうけど、懐いてない時の猫みたい。

 

「にしても、久々だね。エレーナと出掛けるの」

「そう、かな?そうかも、ね。他の人と、遊んだりしない、の?」

 

 他の人と、か。確かにクラスメイトとは、そこそこ話せるぐらいには仲良くなっている気がするけど。遊びに行くほどではないかな。

 

 ああ、でも。最近はステラさんがやけに話しかけてきて、勢いでそのまま一緒に出掛けそうになったんだけどね。

 あの人、押しがすごい。

 

「その雰囲気は、ある感じ?」

「あんまりないよ」

「ふーん……ステラとかも?」

 

 ……なんか、エレーナは僕とステラさんをどうにかしたいのかな?

 

 興味津々に、きらきらと瞳を輝かせてるし。まあでも、コイバナに興味あるみたいでかわいいかもしれない。

 

 いや、エレーナはいつでもかわいいけどね。……何考えてるんだ、僕は。

 

「ステラさんとも、何もないけど」

「間があったけど?」

 

 ……こういうところだけは、やけに鋭い。でも、ステラさんは僕に興味があるんじゃなくて。エレーナのことがどうにも気になるみたいだけどね。

 

「そういうのじゃないよ。ステラさんは、クラスのみんなと仲がいいから」

「ふーん」

 

 もう興味を失ったのか、それ以上追求してくることもなかった。

 

「そろそろ着く、よ」

「そうだね」

 

 今日向かってるのは公園。でも、ただの公園ってわけじゃなくて、少しだけ特殊な場所。

 

 魔法を少しだけ使ってもいいっていうだけだけどね。

 

 本来、魔法は許可を取って使用することが多くて。いろんな場所で、勝手に使うことが禁止されてる。

 

 危ないしね。

 

 だから、こうやってちょっとだけ使ってもいいですよーって場所がある。

 

 学生は割りと、暇なときにこういうところで魔法を使うこともあるんだとか。

 

 エレーナがちょっと興味あるって言ってたから、ついでに誘ってみたんだけど。思いの外食いついてた。

 

 少しだけ公園に入った時に、ふとエレーナの方を見る。遠くの方をぼんやりと眺めていた。

 

「どうしたの、エレーナ」

「いや……昔、弟がこんなところで、遊んでたなって」

「弟?」

 

 エレーナから家族の話を聞くのも珍しい。大体は、あまりいい話じゃないから。

 

 ――リーデルの人形姫、いつもエレーナがこそこそと言われている話。

 

 魔法名と異なる魔力、人形みたいに綺麗だけど表情も変わらない存在。そんな感じの、陰口を何回も聞かされてきた。

 

 ……エレーナだって、好きでそうなったはずないのに。

 

 でも、不思議と弟のことを話すエレーナは、あまり暗い顔をしていない。エレーナの味方だったのかな。

 

「姉さんと同じ血が入ってると、不快になるとか、言われたんだけどね」

「……っ」

 

 やっぱり、そうじゃない。そんな環境で育ってるんだ。エレーナの弟だって、そうなるか。

 

「でも、あれを言ってるときの、弟はかわいくて」

「かわいい要素あった???」

「だって、親の言ってることを真に受けて、変なこと言ってるだけだから。ちょっとかわいい」

 

 ふふっ、と少しだけエレーナの頬が緩む。……かわいいなあ、それ。ちょっと嫌だけど。

 

 なんか、その弟くんは好きになれなさそうだ。

 

 ――不意に、エレーナの顔が迫ってきた。頭に、何かが触れる。

 

「よーし、よし、よし」

 

 なんで撫でられるんだろう、僕。たまに、エレーナはこういうことしてくる。びっくりするからやめてほしい。

 

 少しだけ楽しそうだから、まあちょっとぐらいならいいかな。

 

「れーくん、心配しないで、ね」

「……何が?」

「――私は、大丈夫だから」

 

 まるで消えてしまいそうな声で、急にそんなことを言うものだから。

 

 抱き締めてしまいそうになって、我慢した。……今日は庇護欲に負けないようにしよう。

 

 エレーナには、楽しんでほしいし。急に僕がそんなことをしたら、びっくりしてしまうだろうから。

 

「れーくん」

「どうしたの?」

「……疲れたからおんぶして」

 

 ……急に甘えてくるから、やっぱりきついかもしれない。




話が進むごとに小動物化してるような気がしないでもない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい!(作者:魔法少女マジデ☆ドコダ)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

百日紅凛は転生者。魔法少女がいる世界にTS転生してしまう。▼女の子になったのなら、魔法少女をやってみたい。▼そう思っていたのに、凛に与えられたのは変身ヒーローの力だった。▼でもさ、魔法少女やりたいよね!!▼そんなノリで魔法少女ごっこをしながら、変身ヒーローの後輩の少年とか新人魔法少女とかを振り回していく、記憶喪失系TS転生変身ヒーローちゃんの話。▼ついでに、…


総合評価:861/評価:8.64/連載:17話/更新日時:2026年10月08日(木) 07:05 小説情報

【無自覚TS】ダンジョンで記憶喪失になった女の子だけど、周りの反応がなんかおかしい(作者:じっくりコトコト弱火メス堕ち)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ボクはどうやら、ダンジョンで重症を負い記憶喪失になったらしい。▼それなら仕方ない。ゆっくり思い出していけばいいでしょ!▼……ところで、なんでボクの下着はトランクスばかりなんだろう。▼9/30 今週特に忙しいので次の更新遅くて土日になるかもです


総合評価:705/評価:8.83/連載:7話/更新日時:2026年10月09日(金) 07:02 小説情報

『世界くらい救ってこい!』と送り出した子分、十年経ったら様子がおかしい(作者:べべべたろう)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

転生したら村娘だった。▼そんな俺の特筆すべき点は、勇者の幼馴染であること。▼「俺の子分なら、世界くらいパパッと救ってこい!」▼そう言って送り出して十年。▼帰ってきた勇者の様子が、なんかおかしい。▼*TS転生、精神的BLものです。


総合評価:747/評価:8.71/完結:10話/更新日時:2026年08月23日(日) 21:00 小説情報

洗脳闇堕ち妹を差し置いて、クソデカ感情を別な奴に向ける姉(作者:片桐きな粉)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

「くくく...ついに完成したぞ!絶対服従の強化個体だ!!」▼↑洗脳出来てません。でも逆らったらヤバそうなので従います。▼「なんで...あなたがそっち側にいるの!?」▼「私の妹を攫った、そっち側に.......っ」▼「ふざけないで!...友達だと、思ってたのに」▼主人公そっちのけで始まる重い感情のぶつかり合い。すれ違い。etc...▼これも全部敵が悪いんだ!!…


総合評価:577/評価:8.17/連載:8話/更新日時:2026年08月21日(金) 21:34 小説情報

推しの魔法少女を助けたいTS転生魔法少女(作者:きし川)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

生前、途中で視聴をやめてしまった魔法少女作品の世界に女の子として転生した男は視聴をやめる原因となった推しを助けるべく魔法少女となって戦う。


総合評価:795/評価:7.71/連載:7話/更新日時:2026年08月12日(水) 07:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>