主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ! 作:匿名退場予定
れーくんと久々にお出掛けをしてるんだけどね。なんか、誘われてせっかくだし行くか!と思って、ちょっとテンション高めだったりする。
いやー、最近はれーくんと話すことが減っててさ。なんか、たまには話したくなってしまう。
……おかしいな、元々は離れるつもりだったんだけど。れーくん依存症になってしまってる?
まあそれはともかく、こうしてれーくんとここに来たわけなんだけどね。
魔法を使えるみたいな公園かー、興味あるなーってちょっとだけ前から思いながら、れーくんと話してたら、少しだけ弟のことを思い出した。
エレーナには弟がいる。もちろん、あの家で生まれてるんだから、価値観は言わずともわかると思うけど。
昔、弟と公園に来て遊んだこともあって。その時に泥まみれになって帰ってきてしまったときに、親からすごい目で見られたりしたんだよね。
懐かしいなあ、あの底冷えするような視線の中で。弟だけはあまり状況を理解していなくて。
そんな弟も年月が経つにつれて、俺に対して結構なことを言ってくるようになっていたっけ。
でもね、弟は両親とは違ってこう……うまくできていないというか。頑張ってそういうキャラを演じてるみたいに見えて、ちょっとかわいいんだよね。
まあそれに、弟も原作ではエレーナがいなくなった後は態度を改めて頑張ってくれるみたいなキャラだし。あんまり俺としては嫌ってもない。
よしよしをしてあげてもいいぐらい。さすがにそこまでか。
「エレーナ、どうしたの?」
不意に、心配するようにれーくんがこちらを見た。
やばい、れーくんにおんぶしてとか言ってだる絡みした後だったから。疲れてると思われて心配されちゃったかな。
「ううん、なんでもない、よ?」
「……疲れたなら、おんぶしようか?」
「れーくん、あんまり女の子に触ろうとしたら、ダメだよ?」
「……」
黙り込んでしまった。いや、こっちから言い出したことではあるけども。ついつい、れーくんには意地悪したくなってしまう。
にしても、君は早くステラと仲良くなってほしいんだけど。こっちはミーツェに秘密を明かしたし、そろそろ君も原作ストーリーみたいに、そっちで関係を作ってほしいんだけどね。
……そうじゃないと、俺が消えた後のれーくんがさ、ちょっと心配というか。他の人ともちゃんと関係性がないとさ。
まあ、先にこれだけ仲良くなってしまった俺が言うことじゃないけど。
「にしても、れーくん。なんで、ここに?」
「エレーナが、前に興味があるって言ってたし。誘ったとき、すごくそわそわしてたでしょ」
いや、興味あったけどね!
だってさ、魔法ってあんまり頻繁に使えないし。ちょっとは使ってみたいじゃん。
それにさ、れーくんの魔法を使ってる姿とかもたくさん見てみたい。原作シーンっぽい感じとかさ、気になるよね。
「れーくんの、魔法使ってる姿とか、気になって」
だから、思ってることがそのまま、ぽろっと出てしまった。
れーくんの目が少しだけ見開かれた。
「エレーナってさ」
「ん?」
「……まあ、いいや」
「なにそれ」
もう、気になる反応しないでほしい。
「僕の魔法使ってるのが見たいんだっけ?」
「うん」
「そうなんだ?」
少しだけ、れーくんの口元が緩む。なんで、変に嬉しそうなの?
まあいいけど。原作主人公の魔法使ってるのとか、ちょっとみたいでしょ普通に。
エレーナとかステラは、星の魔力を持っているけど。れーくんは普通に、水の魔力でしかない。
それでも、活躍してしまうんだから、主人公って感じだよね。
れーくんが、手のひらを見せた。すると、小さい水の玉が浮かび上がる。それが徐々に大きくなっていって。気づけば、野球ボールぐらいの水の玉が浮かび上がっていた。
別に、大したこともしていない。ただ、水の玉を浮かべただけで。
原作だったら、火の柱が大きく上がったりだとか。竜巻が舞うだとか。大きな土の壁ができたりだとか。
そういう派手なものが色々あるはずなのに。
主人公のれーくんが、ただ魔法を使ってるだけの姿が。なんだが、とても格好よく見えた。
……俺、実はあの作品めっちゃ好きなのかもしれない。
と、感動しているうちに。水の玉がぐるんぐるん、とれーくんの周囲を動き始めた。
おお、すごい。かと思えば、水の玉が複数に分裂して、シャボン玉みたいにぷかぷかと浮かんでいく。
そして、頭上で弾けて、割れていった。
「おおー」
ぱちぱち、と拍手をすると照れ臭そうにれーくんが笑う。
学校だと、そんな繊細な魔力の使い方とかやった記憶がないんだけどね。れーくんは、割と器用だからこういうことができてしまうのかも?
「エレーナも、何かやる?」
「私?うーん」
魔法が使える公園だし、せっかくだからなんかやっておいた方がいいかな。
顔を上げて、集中しようとして――公園の全体がふと視界の全体に入る。
何か、見覚えがある気がする。
原作で、これらしきものを見たような気がする。
「エレーナ?」
れーくんの顔が覗き込んできた。
そうだ、れーくんの何かのシーンでこれを見た気がする。
確か、誰かと一緒に出掛けていたような?
そういうときに、主人公が一緒に出掛けるような相手って、だいたいはヒロインだ。もしかして、ステラと一緒に出掛けた?
……ああ、思い出した。初めて、れーくんがステラと出掛ける時のイベントじゃん!?
あれ、俺がヒロインとのイベント奪ってしまった!?
「エレーナ?」
「ごめん、れーくん。私で」
「何が??」
「初めて、とっちゃったね」
「本当にどうしたの??」
違うじゃん、俺はあくまで側から見てるぐらいがやりたいのであって。まるで、俺がヒロインみたいな立ち位置をやりたいわけじゃない。
――そんなことをしてしまえば、いずれ消えていく俺が酷い爪痕を残してしまうし。
ああ、どうしよっかな。もうこうなったら、ステラと出掛けてもらうしかない。
……それにしても、ステラと出掛けてる時の話ってことは、それなりのイベントがあるはず。
そうなると、それをこなさないといけない?
……あー、なんか思い出してきたぞ。ステラと一緒に、れーくんがバトルするようなイベントがあったはず。
「エレーナ、疲れたなら休む?」
「……うん」
なんか、考えすぎて疲れてきた。とりあえず、近くの椅子に座り込む。
うーん、どうしよ。ステラの出番をなくてしまうのでは?
いやいや、待て。別にこのタイミングとは限らない。別のタイミングでステラと一緒に出掛けて、そのままそこでイベントが起こるようなこともあるかも。
よし、そのはず!
だから今日は、れーくんと普通に遊ぶぞ!
……そろそろ、れーくん離れをしないといけないしさ。ここら辺で区切りをつけるために、最後に楽しもうかなってね。
れーくんと一緒にいるのは楽しいし、ちょっと好きだ。
でも、こんなことを続けてしまうと。俺はきっと、その先の道――生きることを望んでしまいかねないだろうから。
「あんまり無理しないでね、エレーナ」
自分から傷つくとわかっていても、魔力を偽って。家族から迫害らしきことをされて。
前世を思い出して気持ち悪くなって。
そんな傷ついてしまった俺のところに、たまたま来てしまったこいつのためにも、ちゃんとそこら辺の区切りをつけておきたいしね。
「れーくんこそ、無茶しちゃダメ、だよ?」
「それ、エレーナには言われたくないかも」
「なんで??」
「この前、倒れたりしてたしさ」
「うっ」
「……僕だけは、ずっとエレーナの味方だからね」
……この過保護から離れていかないといけないのも、骨が折れそうだけどね。