主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ!   作:匿名退場予定

16 / 16
主人公くん、様子のおかしい退場予定ヒロインちゃんに戸惑う

 元々、エレーナはこの公園に興味がありそうだと思ってたんだけど。

 

「……みてみて、れーくん」

 

 公園にあるアスレチックを、すごい勢いで移動していく。少しだけ、頬が緩んでいるから、たぶん楽しいんだと思う。

 

 ……エレーナって、普段はあんまり表情が変わらないから。それを含めて考えると、相当楽しそうに見える。

 

 楽しんでくれてるならよかった。

 

 にしても、軽々とアスレチックを移動していくこの感じ。エレーナが土の魔力だとは聞いてたけど、こんなにも動けるものなんだ。

 

 土の魔力の性質は、普通に土を操ったりする以外にも、身体強化することが出来るっていうのは知ってたけど。

 実際に確認してみると、強化の幅はでかいんだな。

 

 でも、同じクラスの土の魔力の子の力をみたけど。あくまで、少しだけ鍛えた人ぐらいのものだった。

 

 エレーナは――

 

「れーくん、どう?」

「すごいね。別人みたい」

「……私が運動できないって、言われてる?」

「そうじゃないよ。オリンピックの選手みたいに動いてるから」

「そっか」

 

 そう、本当にスポーツとかを極めた人みたいに、普通の人間ではできないような動きをしてる。エレーナは、小柄な女の子でしかないはずなのに。

 

 普段、小さな子みたいな小動物を思わせるようなイメージのエレーナからすると、ちょっとだけ違和感というか。ギャップがすごい。無表情でガンガン進んでいくし。

 

 にしても、この公園はやけに大きなアスレチックがあるな。たぶん、こういう土の魔力の人向けだとは思うけどね。

 

「……れーくんは、何もしない、の?」

 

 すたっ、と僕の横に着地する。……3メートルぐらいの高さはありそうなところから飛び降りてるけど、普通に無事なんだ。

 

「こういうことはできるけど」

 

 周囲にぶくぶく、と水の泡が浮いていく。それらがするする、と僕の周囲を回っては消えていく。

 

「他のこと、とかは?」

「そうだね……じゃあ」

 

 僕の足元から、水が涌き出てくる。僕を持ち上げて、そのまま波のように移動させていく。とはいっても、短距離だけだけど。

 

「こういうのとかはどう?」

「……すごい、ね」

 

 エレーナの様子を見ると、じっと僕の足元の水を見ていた。……なんか、少しだけ目を輝かせているような。

 

「エレーナって魔法が好きなの?」

 

 だからつい、思ってることを聞いてみた。だって、学校に入ることとか楽しみにしてるみたいだったし。僕が魔法を使う度に、何か反応してたから。

 

「……うーんと、好きだけど。れーくんが魔法使ってるのが、見てて、かっこいいなって」

 

 思わず、言葉が詰まる。……なんて言った?かっこいい……?

 

 うまく、咀嚼できない。それって、僕が使ってるから、なのかな?

 それとも、こういう風に使ってる魔法がいい、みたいな。いやいや、それだと後者に決まってる。なんで、僕が使ってたらかっこいいになるんだ。

 

 おかしいな、僕が落ち着いてないみたいだ。少し落ち着こう。

 

 そう思って、深く呼吸をしようとしたときに。

 

「大丈夫?れーくん」

 

 エレーナが覗き込んできた。エレーナの瞳、揺れる髪。ドアップになった顔面が視界に飛び込んできて、体がぴたり、と止まる。

 

「……エレーナ、近いよ」

「ふーん」

 

 エレーナの目が、スッと細められたような気がした。

 

「……れーくんってもしかして」

「何?」

「こういう、顔が好き?」

「――」

 

 何、その聞き方は。人を面食いみたいな……いやまあ、エレーナの顔は綺麗というかかわいいとは思うけど。……何に言い訳してるんだろ。

 

「エレーナって、最近よくそういう感じのこと言うよね」

「そういう感じ?」

「からかってくるでしょ」

「れーくんをからかうの、楽しいから」

 

 この子はいつの間に、悪戯が好きな人になってしまったんだろう。……まあ、いいか。

 

 エレーナはいつだって、何か物憂げな様子の時が多くて。ずっと何かを考えていそうだったから。

 

 きっと、家のこととか。あまり楽しくないことを思い出してるんだろうなと思ってた。

 でも、今は楽しそうにしてるし。……表情ではわかりにくいけどね。

 

 だから、エレーナが楽しそうなら、それでいいや。いつも、放っておくとどこかに行ってしまいそうな儚さを纏ってるから。

 

「ねえ、れーくん」

 

 そうやって考え込んでいると、エレーナの瞳が僕の方をまっすぐ見た。

 

 なんだろうか、と思って聞こうとしたとき――遠くの方から悲鳴が聞こえてきた。

 

「エレーナ、聞こえた?」

「……うん」

 

 エレーナの表情が曇る。……何か嫌なことでも思い出したのかな。

 

「待っててエレーナ、見てくるから」

「いやまあ、その……うん。私も、行く」

 

 エレーナが心配そうだから、確認だけしようと思ったけど。妙に歯切れが悪い返事だ。

 

 心配してる、だけじゃない?

 

 と、考え込んでいると。ぐいっと手を引っ張られた。

 

「エレーナ?」

 

 無言のまま、エレーナに引っ張られていく。……そんなに気になるのかな?

 

 確かに、何か起こってるのはわかるけど。だって、少し近づくだけで、肌が妙にひりつくから。

 

 これはたぶん、濃い魔力に反応してるだけだとは思うけど。

 

 だから、向こうの方から見えてくるものにも、少しだけ想像がついた。

 

 まず最初に目についたのは炎。まるで、火が意思を持ったみたいに動いている。

 

 こうしたものに、心当たりがある。

 

 この世界にやってきた異存在たち、その手下のような存在――眷属たち。魔力によって構成された生き物のようなもの。

 

 これは、火の悪魔の眷属だと思うけど。……滅多にこんなものは出ないはずなのに、どうして。

 

 眷属は、いるだけでも強い魔力を感じる存在だ。あまり近づきたくはない。

 

 それに、他の眷属に比べて、火の悪魔の眷属は気性が荒い。

 

 火の粉を撒き散らして、ぐるぐると渦巻いた炎が周囲に振り撒かれていく。……近くの木が燃えそうで危ないな。

 

 近くにいる人たちは逃げてるけど。あれをなんとかしないと、ここら辺は危ないし。

 

 そもそも、普通は起こらないことだから、どうしたらいい、とかもよくわからない。……連絡とかした方がいいのか?

 

 いや、でも。このまま放っておけない。例えばそう、水の魔力を持つものなら、あれを消火とかできるかもしれないし。

 

「うわ……やらかした」

 

 ぽつり、とエレーナの呟く。

 

「どうしたの、エレーナ」

「……ごめんね、れーくん」

 

 そしてそのまま、項垂れた。何かを本気で後悔してるみたいに。

 

「エレーナ?」

「れーくんの初デートの機会を奪っちゃったかも」

「……何を言ってるの?」

 

 ……あれ、意外とエレーナ余裕がある?

 

 ごうごう、と燃えている火の悪魔の眷属が、向こうの方に佇んでいて。

 

 それがそのまま、こっちに向かってきそうなのに。

 

 エレーナは、よくわからないことで頭を抱えている。

 

 ……このまま置いていくわけにもいかないし、僕があれを止めよう。

 

「れーくん」

「うん」

「今回をノーカンにして、初デートにして、ね」

 

 やっぱり、エレーナはおかしい。そもそも、それはどういう意味?

 そういう言い方だと、今回はデートにしてほしくはないみたいな。……エレーナはやっぱりよくわからない。

 

 それは、僕に他の人とデートほしいのか。それとも、別の機会にエレーナを誘えばいいってこと?

 

 ……そんなことを考えてる場合でもないな。とりあえず、今のこの状況に集中しよう。




れーくん「エレーナ変だな」
エレーナ「原作イベじゃん、やばいやばい」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【無自覚TS】ダンジョンで記憶喪失になった女の子だけど、周りの反応がなんかおかしい(作者:じっくりコトコト弱火メス堕ち)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ボクはどうやら、ダンジョンで重症を負い記憶喪失になったらしい。▼それなら仕方ない。ゆっくり思い出していけばいいでしょ!▼……ところで、なんでボクの下着はトランクスばかりなんだろう。▼10/9 更新しました


総合評価:990/評価:8.71/連載:7話/更新日時:2026年10月09日(金) 07:02 小説情報

TS転生したら変身ヒーローだったけど、魔法少女がやりたい!(作者:魔法少女マジデ☆ドコダ)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

百日紅凛は転生者。魔法少女がいる世界にTS転生してしまう。▼女の子になったのなら、魔法少女をやってみたい。▼そう思っていたのに、凛に与えられたのは変身ヒーローの力だった。▼でもさ、魔法少女やりたいよね!!▼そんなノリで魔法少女ごっこをしながら、変身ヒーローの後輩の少年とか新人魔法少女とかを振り回していく、記憶喪失系TS転生変身ヒーローちゃんの話。▼ついでに、…


総合評価:981/評価:8.66/連載:19話/更新日時:2026年10月14日(水) 07:03 小説情報

『世界くらい救ってこい!』と送り出した子分、十年経ったら様子がおかしい(作者:べべべたろう)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

転生したら村娘だった。▼そんな俺の特筆すべき点は、勇者の幼馴染であること。▼「俺の子分なら、世界くらいパパッと救ってこい!」▼そう言って送り出して十年。▼帰ってきた勇者の様子が、なんかおかしい。▼*TS転生、精神的BLものです。


総合評価:757/評価:8.71/完結:10話/更新日時:2026年08月23日(日) 21:00 小説情報

TS娘と情緒をぐちゃぐちゃにされる相棒(作者:べべべたろう)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

▼なお、TS娘本人の情緒もぐちゃぐちゃな模様。▼【ちゃんとしたあらすじ】▼その日、冒険者ニコは女になった。物理的に。▼冒険者としての相棒兼幼馴染で親友のカイは無類の女好きである。ニコは当然、貞操の危機を覚えずにいられなかった。▼が、予想に反してカイはニコに手を出さなかった。なぜなら、奴はTSしたニコによって情緒をぐちゃぐちゃにされていたからである。▼*後天T…


総合評価:1214/評価:8.92/完結:15話/更新日時:2026年09月07日(月) 21:00 小説情報

洗脳闇堕ち妹を差し置いて、クソデカ感情を別な奴に向ける姉(作者:片桐きな粉)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

「くくく...ついに完成したぞ!絶対服従の強化個体だ!!」▼↑洗脳出来てません。でも逆らったらヤバそうなので従います。▼「なんで...あなたがそっち側にいるの!?」▼「私の妹を攫った、そっち側に.......っ」▼「ふざけないで!...友達だと、思ってたのに」▼主人公そっちのけで始まる重い感情のぶつかり合い。すれ違い。etc...▼これも全部敵が悪いんだ!!…


総合評価:619/評価:8.29/連載:8話/更新日時:2026年08月21日(金) 21:34 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>