主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ! 作:匿名退場予定
よし、ウルフレートと友達になったよ。れーくん以外はあんまりいないから、普通に嬉しい。
……ステラもなんか、友達になってきてた気がするけど。あれはノーカンってことで。君はれーくんの方を気にしてね!
「よろしく、ね」
「……ああ」
軽く挨拶すると、仕方ないといった風に息を吐いて、そう呟くように返した。
ともかく、友達になってくれたので、動向を探る必要もない。つまり、ミーツェにそういうことをやってもらう必要もなくなる。
これで、ウルフレートがうざがってるのも解決ってこと。
「ウルフレート」
「なんだ?」
「任せて、ね?」
「……なんの話だ?」
「こっちの話」
まあ、詳細は言わないけども。ほら、ミーツェに悪印象とかあると困るしね。
っていうか、ウルフレートとミーツェって相性いいのかな。貴族っぽい家同士だから交流とかもあるかもしれないけど。
この世界って現代なのにそういうのが混じっててよくわかんないんだよね。
まあ、それはいいとして。
ともかく、火の悪魔の件をちゃんと進めないとね。とりあえず、ウルフレートがそれに近づかないようにして、火の悪魔が暴れるのを防ぐとして。
それだけで終わらないんだよね。
火の悪魔は眷属を出してくる。それがたまにぽこぽこ出てきて暴れるんだよ。迷惑。
だから、それを倒すのも並行したいんだけど。そっちは、れーくんがやってくれるかな。うん、そっちは支援程度にしたいかな。
「おい、何を考え込んでいる?」
思い耽っていたら、ウルフレートに睨まれてしまった。
「ごめん、ちょっと考え込んでて」
「お前と一緒にいた男の話か?」
「……?なんで、れーくんの話?」
「いつも一緒にいるからだろう」
「もういいってば」
その話は後にしてほしいんだけど。れーくんの話、そんなに聞きたいのかな?
いいよ、パパだからたくさん話してあげてもいいからね。れーくんのいいところを聞いて、そのまま仲間になってあげてね。
「……それで、友人になったから聞いて起きたんだがな」
「ん、何?」
「貴様は、家のこととかは大丈夫なのか?」
ああ、急に聞いてきたのに何かなと思ったんだけど。こっちの家庭環境とかの話なんだ。
そんなに気になるのかな。そりゃ、迫害されてますけど。
「最近は弟とも、仲良くなった、よ?」
「ああ、アルトだったか?優秀とは聞いたが、姉とはあまり仲良くはないとの話もよく聞いたはずだが」
「最近、仲直りした」
「そうか、それならいいが」
もう気が済んだのか、そのまま目を伏せる。
ウルフレートは悪いやつじゃないんだけども、普通に優しいやつだね。よしよししたくなってしまうけど、やめとこ。
というか逆に。
「ウルフレートは、どうなの?」
「何がだ?」
「家族と仲良しなのかな、って」
「……さあな」
あ、仲良くなさそう。家が厳しい感じなのは覚えてたんだけど、詳細は情報が出てなかったはずだからあんまり知らなかったんだけども。
とは言っても、リーデルほどは酷くはないだろうし。それに、不一致じゃないもんねウルフレートはさ。
「ファイト」
「……何の激励だ?」
「なんとなく?」
「貴様はたまに、変なことを言い出すな」
「ありがと」
「褒めてない」
その返答が何かおかしくて、少しだけ頬が緩んだ。
それを見たウルフレートの目が少しだけ見開いた。
「何?」
「なんでもないが」
そんなに、人が笑ってるのがおかしいかな。みんな、そんな反応するよね。
確かに、エレーナはあんま表情が動かないけども。
と、やっているうちにいつの間にか暗くなってきた。そろそろ、帰った方がいいかな。
――がらがら
扉が開く音がした。
「――エレーナ」
ああ、この声は。見つかってしまった、か。
どうしよ、こうなると抜け出しにくい。
「れーくん」
「ミーツェさんのところに行ったんじゃなかったんだね」
「う、それはその……」
ゆっくりと、れーくんが近づいてきた。少しだけウルフレートの方へと視線を向けると、我関せずとばかりに視線を逸らされた。こいつ。
「えーっと、そこの……ウルフレートさんと何か用があった、とか」
「俺はないぞ。そいつが暇だからここにたまたま来たんじゃないか?」
めっちゃ突き返してくるじゃん。友達になったのに、おかしくない?
……いや、れーくんのことずっと気にしてたし。仲良くしてこいよってこと?
いらん気遣いなんですが。だって、今は仲良くしたらダメなのに。
だから、れーくんの脇を抜けるみたいにして歩きだして。
「またね」
と言った瞬間に、俺の手をれーくんが掴んだ。
無理に振り払えば、抜け出せるだろうけど。れーくんの向ける視線がやけに真剣で、それをためらってしまう。
「エレーナ」
「……何?」
「逃げないでほしいんだけど」
「いやその……」
そのまま、掴まれた手を引っ張られて。れーくんの顔が近づいて、じっとこちらを見てるのがわかる。
「あの、れーくん?」
「エレーナ、僕はさ。エレーナが離れていくと不安になるんだ」
「え、うん」
なになに、何が始まってるのこれ。
れーくんのこっちを見る目が、なんだか違うというか。目の奥に何か、どろりとしたものが混じってるような感じっていうか。……れーくん、なんかおかしくなってない?
「エレーナのことが心配になる……とかじゃなくてさ。ずっと一緒にいたいと思う。その、友達だしさ」
「うん?」
「……だからさ、その。避けられると、辛い」
「うっ」
やばい、やばいやばい。その雰囲気でやられると、避けにくいし。罪悪感とか色々やばいってば。
うぐ、これをされるとパパ的にもきついといいますか。
っていうか、ウルフレート見てるから、微妙に恥ずかしいしさ。
「ねえ、エレーナ」
「……うん」
「エレーナのことは、唯一無二の友達だから」
「う、うん」
「だからね」
さらに、ぐいっと引っ張られた。
視界が覆われて、よく見えない。え、これどういう状態?
ああ、でも。なんか暖かくて、何かに覆われてるみたいな。いや、これは腕が回されてる?
「僕と一緒にいてよ、エレーナ」
「あぅ……」
耳元に聞こえてくる甘い声に、びくりと体が跳ねて、うまく答えられない。嫌な気持ちじゃないし、ちょっとこう……心地はいいけども。急なことに頭が付いてこない。
あの、主人公くんに抱き締められてるんですけど。これ、どうやって挽回すればいいですか?
「なんでもいいが、ここでやらないでもらえるか?」
ごめん、ウルフレート。俺もどうしていいかわからない。
「エレーナ?」
「はひっ」
気の抜けた声に、くすりと笑ってれーくんから解放された。
「今度からは逃がさないからね」
最後に掛けられた声に、俺はこくりと頷くしかなかった。
ちょっとぐらい急接近してもええやろ……