主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ! 作:匿名退場予定
「最近さ、眷属出たらしいじゃん。やばくない?」
「わかる。魔力使うっていっても、戦うと思わんしさ」
教室が賑わっていますが、相変わらずぼっちのエレーナ・マエルストロム・リーデルです。ぶいっ!
……テンションあげたせいで逆に疲れたかもしれない。ねむねむモードに入ってもいいかな、寝不足だからさ。
なんでそんなことになったかっていうとその、れーくんのせい、なんだけどさ。
れーくんと離れようとしたら、逆にれーくんを刺激してしまったらしくて。
そのまま、手を掴まれたりだとか。
……抱き締められたりした。いやその、抱き締めるって、どうなんですか?
いやね?俺はれーくんのパパをやってもいいぐらいの気持ちではありますけども。
それでも、友達とはいえ異性の子を急に抱き締めるってのはどうなの。びっくりしちゃうでしょ。
……異性の子かあ、そういや俺って女の子だしなあ。そういうこともあるのかな。
あぅとか言っちゃったよつい。何、その反応。女の子でもなかなかやらないって。
みんなが、れーくんと私をカップルみたいな扱いにしてくるけど、そんなこともなくて。
でも、れーくんはなんか。うん、そういうことをしてきたけど。一緒にいないと寂しいだとか、色々言ってたのはわかるんだけどさ。
もしかして。
なんて、変なことを考えて寝れなくなってしまった。
アホなことを考えてる場合でもないのにね。
「そういえば、ステラさんのことなんだけど」
「あー、メーアのとこの?すごいよね、素質を認められて養子になるとかさ」
ふと、耳をすますとステラの話題が出てる。さすがメインヒロイン、みんなから注目されてる。
まあ、生立ちだとか含めて特殊だから気になるってのもわかる。あと、普通にかわいいし。性格的にも、みんな気になるよねって。
「星の魔力ってどんな感じだろうね?」
「全属性でしょ?だったらいろんなことできそうだし」
「それこそ、眷属と戦うのとかは便利そう」
「確かに。メーアって戦い好きじゃん?だったら、ステラさんもいくのかな」
「あー、確かに」
実際、魔力があるっていってもそんな便利なものでもないしなー。普段からバリバリ使うのは禁止されてるからね。危ないしさ。
まあ、ちょろっと使うぐらいのものなら許されるんだけど。俺だって土の魔力で身体強化はちょこちょこしてるし。
そういう意味だと、火の魔力とかは攻撃的すぎて危険だから、普段から使ってて便利なことはなさそうなんだよね。
火をつけるだとか、ちょっと爆破するみたいな使い方だから。でも、大きな音立てたりとか、眩しい光作ったりとかもできるとは思うけどね。
ウルフレートの家とか、どうしてるんだろうね。
「そういえば、ステラさんって如月くんとも仲良いよね」
と、考え込んでいると。つい、れーくんの話題で立ち上がりそうになった。危ない危ない。
「魔法名なしだけど、強い水の魔力持ちなんだっけ?」
「そうそう。家系的にも普通らしいよ」
「マジ?いいなー」
ふふふ、主人公だぞ。それぐらいのスペックがないとね。
「この前も、眷属出たときに倒したの、如月くんなんだって」
あ、前の公園の時の話か。あれはちょっと、イベント潰しちゃって大変だったな。
……っていうか、れーくんから離れられなくなったんだけどさ。じゃあこれから、ステラとこなすはずのイベントとか全部潰しちゃうんじゃない?
ちょっと、まずいかなあ。どうしよ、原作ルートへの修正が難しい。
「あー、でも。あそこって、あの人も一緒にいたんじゃなかった?」
「あの人?」
「あの、人形姫さんだけど」
「しっ、ステラさんに聞かれたら睨まれるって聞いたよ」
「え、ほんと?……今のなしで」
うーん、相変わらず私のことは触れたらダメな話題らしい。まあ、元からそんな感じだったけども。
最初は、あの人形姫だってー。うわ、ほんとに人形みたいじゃん!みたいなノリのが多かったけど。ステラが怒るって!みたいな雰囲気に変わってきた。
いいか悪いかはわかんないけどね。
「あ、エレーナさん!」
なんて、一人でボーッとしてるうちに。話題の人が来てしまった。
「……何か用?」
「大丈夫ですって。如月くんと違って急に抱き締めたりしないので」
「な、なん、で」
「いやー、なんか如月くんが悩んでたので強引に聞き出しました」
てへ、と舌を出してくる。くそ、かわいい。こっちも舌出してやろうかな。
「べー」
「あはは、無表情でやられると面白いですねそれ」
「ステラきらい」
「私はエレーナさんのこと好きですよ」
え、なんで好感度上がってるの?
ステラ、なんか知らないけど俺のこと気にしてくるときあるしな。
っていうか、れーくんはそんな話を人にしないで。何、俺が抱き締められた話ってそんな広まってたりするの?しないよね?
「もー、無視しないでください」
「みゅっ」
急に頬をつつかれて変な声が出てしまった。
「実際、エレーナさんって如月くんのことどれぐらい好きなんですか?」
「なんで好きな、前提なの?」
「でも、嫌いじゃないですよね?」
「そう、だけど」
「じゃあ、いいじゃないですか」
なにその質問。どのぐらい好きか、か。改めて考えてみると難しい。
れーくんは、俺にとっては。大事な友達で……それから。なんだろう、わからない。
でもたぶんきっと、いなくなるととても寂しい。エレーナとして生きてきてから、一番大事なやつは誰かっていうとそれはきっと、れーくんになってしまうから。
「れーくんのことは、親友みたいなものだから。友達として、好きって、ことで」
でも、それをうまく言葉に表すのは難しいから。逃げるように、友達という枠組みに押し込んだ。
「へー、そうですか。これは、如月くんも大変そうですね」
「……なんで、れーくんが大変、なの?」
「エレーナさんはわからなくていいです」
なにそれ、気になることばっかり言って。
……そういえば、本編始まってちょっと時間が経ってるぐらいの時期なんだけど。れーくんとステラってどれぐらい仲良くなってるんだろ。
ちょっとだけ聞いてみるか。
「じゃあ、ステラはどのくらい好き、なの?」
「へ?」
「れーくんのこと」
「……ああー、そういう感じですか」
俺の言葉を聞いて、何かを理解したみたいに目を伏せた。え、なんか変なこと聞いた?
「まあその、如月くんのことは嫌いじゃないですよ?でも、恋愛的に好きとかじゃないんで安心してください」
「安心できないけど」
だって、それだと原作通りにならなくない?まずいんだけどな。
「え!?疑われてます?」
「なんのこと?」
「いや、その……実は如月くんのこと好きだと思われてるとか」
「好きじゃないの?」
「いや、違いますって」
「れーくんの何が不満なの?」
「あ、あれー?おかしいな、そういう方向ですか??」
れーくんの何が、実際に不満なんだ。いいでしょ、れーくんはいい子だぞ。
一人ぼっちの俺にやたらと構ってくれたし。どん底にいるような俺に、手を差しのべてくれたし。
それに、強い水の魔力を持ってるし。
まあ見た目も、イケメンって言われるとちょっと違う気もするけど。それでも磨けば光る!みたいな見た目してるし。
よし、熱弁してやろうかな。優良物件ですよ、れーくんは。
……友達を物件とか言うのはよくないか。
「なんで、れーくんじゃダメなの?」
「あーもう、なんかこの人めんどくさいですね!?」
「え、ひどい」
「もう、早く自覚してくれないかなあ」
「……自覚?」
よくわからないことを言ってるステラに、れーくんの良さを語り尽くそうとしたけど。なんか拒否されてるし、仕方ない。次の機会にするか。