主人公に全てを託して死ぬタイプのヒロインにTS転生したっぽいし、きっちり役割を果たすぞ! 作:匿名退場予定
背中まで伸びてるような黒い髪が揺れる。口角を上げて、こちらを見ている。
メインヒロインちゃん、ステラ・メーア。この子も当然、魔法名がつけられてるんだよね。
んだけど、魔法名が家名的なやつになってるっていう珍しい例。
名前・属性・家名、みたいな形式が多いからね。この子の場合は、メーアが属性と家名的なやつを兼ねてるから。横着しましたか?
そんなメーアの家系は割と戦闘民族みたいなところで、魔法と武力が最強!みたいなイカれた家である。怖いね。
「エレーナさん、ですよね?」
「え、あ、はい……。その、ぶつかってごめんなさい」
「あはは、気を付けてくださいね」
ふふっ、とステラは軽く頬を緩めた。くそっ、かわいい。
ってか、青い目がさ。すげー綺麗なんだよね。いいなー、そういうのもやってみたかった。今度から転生はキャラクリありでお願いしたい。
……それだとオリキャラになっちゃうか?
まあともかく、ミーツェのところに行ける空気じゃないしさ、仕方ないのでれーくんとの仲を取り持つぞ!
……取り持つって何するんだろ。わっかんね。
れーくんをチラッと横目で見る。なんか落下した俺の体の様子を見ていて、なんか心配されてる。
もう、れーくんはかわいいんだからさ。よしよししようか?
空気的にダメか。
「……エレーナ、気をつけてね」
「ごめん、れーくん。気を付ける、ね」
「れーくん……?」
不思議そうに、首をかしげたと思えば、バッと接近してきて。両手を掴まれて顔を見合わせる形になる。
え、何々?どういう状況でしょうか、これ。
「エレーナさん!」
「は、はひっ」
「如月くんと付き合ってるんですか!?」
……?
急に何を言ってるんだろう。付き合ってる、とかさ。
そもそも、れーくんと付き合うとかあるならそれこそ、ステラの方……じゃないといけないわけじゃないか。
別に、誰と付き合ってもいいし。
でも、その先が俺になることもある……?
――そんなこと、あっていいわけがない。これはどうせ消える命で。それにれーくんが執着するわけなんか、ないんだし。
ほら、こっちはパパやってるしさ。
だから……そんなことがあるわけない。それに、こっちは紛い物だから。エレーナの偽物で、性別も本当は違うから。
……れーくんはどう思ってんだろ。ちらり、と横目で見る。
何か、考えるように固まっている。いや、そこはさ。すぐに否定してよ。
「違う、よ。れーくんとは、昔からの知り合い、だから」
「えー、でも不自然な間がありましたよ?」
「……びっくりしただけ」
「ふーん、そうですかそうですか」
……これ、本当にわかってる?
れーくんは、なんか複雑な表情をしてる。なんなの、君の代わりに否定したんですよ、こっちはさ。
と考え込んでいると、ぐいっと軽く引っ張られてステラが顔を近づけた。
「わかってますよ、如月くんのことが好きだけど今は付き合ってないってことですよね?」
「わかってない。違う、から」
「いえいえ。そんな否定しなくても」
「違うってば。れーくんとは、そういうのじゃ」
「でも、わざわざそんなあだ名で呼びます?」
……言われてみれば、そうなのか?
れーくんってのは、別に勢いでそう呼んでしまったから。そのまま続けてるだけだし。
というか、原作を見てるときに親しみ込めてそう読んでただけではあるけどね。
れーくんってさ、見てると応援したくなっちゃうから。
この作品に出てくるキャラってわりと魔法名ついてるんだけど、れーくんだけついてなくてね。それでもなんか持ってる魔力が自然と強い!みたいな感じなんだけどさ。
そのせいで、なんか色々理不尽な目に合うこともあるから、そういう気持ちが沸いてくる……みたいな感じだよね。
「……やっぱり、好きなんですよね?」
「違うってば。そういうステラさんこそ、れーくんのこと、好きだったりする、の?」
「嫉妬!?」
「うるさい、違う」
あーもう!コイバナ大好き女子モードに入って聞いてくれないんだけど!
だから、ダメなんだって。俺は……れーくんと引っ付いたりしたら、いけないから。
いや、そもそもそういうのじゃないしな。
じわじわ、と。胸に沈殿する気持ち悪い気持ちを誤魔化すように、近くに来たステラを引き離して、れーくんのところに戻る。
もういい、強引にこの二人の関係作ってやる。
「れーくん。めんどいから、相手してて」
「エレーナ、急すぎない?そもそも、なんでこそこそなんの話をしてたの?」
「…………秘密」
なんとなく言いたくなくて、そうやって隠すと。れーくんは少し思案してから。
「さっきのステラさんの話さ」
と嫌な話題を振ってきそうだったので、強引にステラさんの方に向かせた。
「ほら、れーくんはステラさんの、相手してて」
「あらら、エレーナさんに嫌われちゃいました?」
「嫌ってないけど?」
「せっかくなので如月くん、お話ししましょうか」
「……わかったよ」
よし、押し付け成功。変な話はしたくないからね。
◇◇◇
如月くんを前にして、私――ステラ・メーアは考える。
突然ぶつかってしまった女の子、エレーナさん。
私もたまたま、ジャンプしてたせいで同じように跳躍してたエレーナさんとぶつかってしまったらしい。
少しだけ、気になっていた。気付いてないだろうけど、如月くんはそこそこ注目されてるから。その人ずっといるエレーナさんのことも、自然と気になってしまう。
魔法名をつけていないのに、魔力の強い男の子なんて注目の的のはずなのに。どうやら、エレーナさんがべったりしてるせいで、ちょっとだけ話しにくい、みたいな雰囲気らしいから。
だからちょうどよかった。二人のことが気になっていたから、こうして聞ける機会を得て。
……でも、ちょっとぐいぐい聞いてしまったらエレーナさんは相手してくれなくなってしまった。
普通、男の子をあだ名で呼んでるなら、そういうことかどうか確認したくなるものだと思うけど。私は特に好奇心が旺盛だから、つい。
……自覚してないだけで、お互いそこそこ好きそうなのになあ。
そう思ったので、今度は如月くんを問い詰めてみることにする。エレーナさんは、少し離れてこっちを見てるから、あんまり聞こえないだろうし。好き勝手に聞いてしまおう。
「如月くんってエレーナさんとどういう関係なんですか?」
「友達だよ」
「昔からの知り合い、なんですよね?」
「そうでもないよ。二年前ぐらいだから」
二年前ぐらいからの知り合いにしては、やけにべったりしてるような。
……やっぱり、この二人距離感がおかしいよね?
「で、如月くんはエレーナさんが好きなんですか?」
「……すごいこと聞いてくるね」
「普通に気になりますよ」
さて、如月くんはどうなんでしょうか。
目を伏せて、何かを考えるような素振りを見せて。まるで、どこか遠くを見つめてるような雰囲気のまま、話し始める。
「……好きとかはよくわからないけど、エレーナのことは放っておけないから」
「放っておけない、ですか?」
「うん。目を離すと消えてしまいそうだから」
……赤子でも見てる感じなのかな?
いやでも、エレーナさんの如月くんを見る雰囲気も、結構幼子を見てる感じというか。
二人とも、お互いを小さい子として見てるみたいな?
少し、歪な関係なのかも。
「あと、エレーナは女の子が苦手らしいから。近づくなら気をつけてね」
「……なんですか?それ」
「かわいい女の子を見てると緊張して話せないとか、よく言ってるから。男の方が付き合いやすいとか、そんな話もしてるし」
「え、私のことかわいいって言ってます?」
「客観的に見たら、そうなんじゃない?」
うわっ、さらっと言うなあ。
にしても、エレーナさんも変な人ですね。……女子と距離を置いて、男子とグループになるとかあると荒れそうだなあ。
あまり詳しくはないけど、エレーナさんはあんまりいい噂のある人じゃないし。……本人の性格に問題がある、とかそういう噂じゃないけど、このままだとよくないかも。
「よし、エレーナさんと友達になりますか」
「……近づくなら気をつけてねって言ったつもりなんだけど」
「じゃあ、如月くんとも」
「ついでなの??」
「あっ、エレーナさんに勘違いされないように距離感は気を付けますからね!」
「……話を聞かない人だなあ」
面白そうなのもあるし、二人とも友達になることにする。
「エレーナさん!」
「うわっ、急にこっち、来ないで」
「友達になりましょう!」
「……嫌」
「懐かない猫みたいでかわい~!」
「くっつかないで」
一先ず、エレーナさんをむぎゅむぎゅすることで、今日のことは勘弁してあげますか。
あ、本当に顔赤くしてる。男の子みたい。