ワス先輩としゃべるだけ 作:妖精たちと夏を刺激したいです
「もし、そこのお方。マルグリートという方をご存知でないでしょうか?」
「………あの…風邪ひきますよ」
まだ星が出てない薄暗い街を歩いていると噴水で寝そべっている人が見える。その人は自分と同じ学校の生徒らしき女性だった
近くと声をかけられた
これが俺と先輩の初対面だった
「わざわざ家にまでお招きいただき、ありがとうございます」
「あなたが押しかけてきたんですけどね」
休日の土曜日に用事から帰る途中に変人の女性と出会ったわけだが、この通り家に連れてきてしまった
変人に返事をしてしまったことがまずかったのか、とはいえまさか家にまで来るとは思わなかった
そんな中で彼女は、ずっとテンション高めに大袈裟な動きと共に喋っている
「マルグリートをご存知の方に初めて会ったのですから、この気分の高まりも無理もないこと!」
「はあ…そうですか」
確かに知ってるとは言ったが、余計なことだったかもしれない
そんなことを思っていると、家のチャイムが鳴った
「あ、頼んだ物が届きましたね。ちょっと待っててください」
「何を頼んだのですか?」
「何って…あなたが言ったんでしょ。………持ってきましたよ。はいどうぞ」
「えっと…これは?」
「だから…」
俺はテーブルに置いた横長の箱を開ける
「マルゲリータですよ」
「………
「………あれ?」
どうやらお腹が空いていたわけではなかったらしい
何を言えばいいのか迷っている変人と、遅れて間違い気付いた俺で少し沈黙が続いた
「………せっかく頼んだんで食べますか」
「…ではお言葉に甘えて」
そう言って俺たちは、勘違いで注文したマルゲリータを食べ始めるのだった
「お食事までご馳走になりありがとうございます!まさかあんなに美味だとは!」
「喜んでるようで良かったです」
食事を終えると彼女はまた元気に話し始めた
食べている時に反応がいちいち大袈裟だったり、ピザを初めて食べるようなことを言ってたので、もしや深い事情があるのだろうか
しかしこれ以上関わると面倒なことになりそうな気がする。そう思い彼女に声をかける
「俺の勘違いですいませんでした。そろそろ帰っていただいて結構ですよ」
「まあ!ここでお別れだなんて寂しいことをおっしゃらないで!もう少しお話しいたしましょう?」
「えぇ…」
かなり直球に言ったつもりだったが、彼女には全く効いていなかった。すごく肝が据わった人だ
「話って言っても…話すことあります?」
「あら、それならマルグリートの話でもいたしましょうか?」
「……いや、やっぱ長くなりそうなんでパスで」
マルグリートの話をする瞬間目を輝かせてきたため、話をストップさせた。おそらくこの人は信者に近いから一度話を許したら延々と話し続けるだろう
「てかマルグリートですか……一応それも知ってますけど聞きます?」
「本当ですの!?」
「わっ近い…俺が知ってるのとあなたの言うマルグリートでは違うかもしれないですけど一応話しますね」
興奮して顔を近づけてきた彼女を離してソファに座ると彼女も座ってきた
さっきから距離が近いなと思いつつ話を始める
「まず、俺の知ってるマルグリートは中世の時代に修道院に住んでいました。その人は貧しい人たちにパンを配ったり、ある者たちを救ったりと善行をしていたそうです。奇跡を願い奇跡をもたらした。そんな人物ですが…その人は既に故人のようですね」
「他にもマルグリートという人は色々いますが、多分あなたの言っているマルグリートとこれが1番近いと思いますけど」
「……いえ、貴方の言う方とは違う方なのでしょう。何故ならマルグリートは今この世界に、私たちに光をもたらす方なのですから!」
「あっはい」
どうしよう…善意で助けようとしたけど思いのほかやばい人物かもしれない。宗教とかに染まってしまった人なのだろうか
すると、彼女は俺に声をかけてきた
「それにしても、貴方は随分と博識なのですね。もしよろしければマルグリートを探すのを手伝っていただけませんか?」
「……別にいいですよ」
「まあ!無理なお願いと思っていたのですが引き受けてくださるの?」
「……ある人は言った『汝の隣人を愛せよ』と
ならば、今まさに目の前にいるあなたを助けるべきでしょう。でも流石に顔近いので離れてください」
「あら、貴方は信仰者でしたの?」
「いや、宗教とかには興味ないですよ。俺はただ感銘を受けた言葉を実行したいと思ってるだけです」
「良い心がけで素晴らしいですわね。貴方のような博識な方の助力をいただけるのは嬉しいことですわ」
「博識って…俺ただ知ってるだけです」
「ふふっ、そう謙遜なさらずに」
何が面白いのか、彼女はずっと笑っている
この人は随分と不思議な雰囲気を纏っている。何かと奇行や謎のポーズが目立つし物理的に距離が近い
それに隣のクラスの女子と瓜二つの顔立ちだ。性格は全然違うが、異常者という点で見れば同じなので姉妹なのかもしれない
踊っている最中の彼女を見ながら考えにふけていると、外は既に真っ暗になっていた
「もうこんな時間ですか。迷惑でなければ家まで送って行きますよ」
「あら、お優しいのですね」
「こんな夜中に女性1人なんて危ないでしょう。
それじゃあ送るので家の場所教えてもらっても良いですか?……いや、家がバレるのが怖いと言う人もいますね。目印になる場所とかあります?」
「お気遣いはありがたいのですが、私ここに家はないのですよ」
「………ん?」
家が無い…?その歳で家なき子とかありうるのだろうか…
「勘違いなされてるようですが、違う場所にあるだけで私は家が無いわけでは───」
「じゃあ俺の家住みます?流石に見過ごせないんで」
「あら?……なるほどなるほど」
「嫌だったら断ってくれて構わないですけど」
「ふふっ…随分と面白そうな提案ですこと。せっかくの現世をこうして楽しむのもまた一興…その提案お受けいたしましょう!」
「テンション高いですね……てか、さっき何か言いかけてませんでしたか?」
「まあまあそんなことお気になさらず!今はただ楽しもうではありませんか!」
「ちょっ…ワルツ巻き込まないでください」
何故か手を引かれて一緒にワルツを踊り始めた
自分から提案しといてあれだけど、本当にこの人を住ませてしまって大丈夫なのだろうか…
「…そういえば、あなたなんて名前なんですか?」
「それが私にも分からないのです。しかし!マルグリートなら私の名前を知っているはず!」
「名前が分からない?それはまた珍しい…だからその人探してるんですね。あれ、じゃあなんて呼べば……もしかしなくても、あなたも見滝原中ですよね?」
「あら?貴方も同じでしたのね。私は3年生ですわ」
「……先輩だったんですか。あ、じゃあ今度から先輩って呼び名でいいですか?」
「先輩……ふふふ、中々良い響きではありませんか!良いでしょう!そう呼んでもらって構いませんよ!」
結構雑な呼び名だと思ったけれど、案外気に入ったらしい。ありふれた呼び方だろうに…あまり交友関係が広くないのだろうか
そんなことを思ったが今は後にする
「それじゃあ改めて、よろしくお願いします先輩」
「ええ!共にこの素晴らしい日々を謳歌しようではありませんか!」
そんなこんなで先輩という同居人が増え、マルグリートという方を探す日々が始まるのだった
てかこのワルツいつまで続………あっ、俺が支えられる側で終わるのか
あんまり設定を先出ししてもアレですけど、情報不足すぎるとわけワカメなので一応補足
主人公は感情が希薄で、ある程度の情報通