格安で買った奴隷が厄ネタだった。   作:一途一

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戦闘描写、機体の機動動作が書けない…


プロローグ
1-1


宇宙。星々が煌めく漆黒の大地の中、白銀色に輝く巨大な葉巻型の輸送船《シルバーシガー》一隻と、黒と灰のモザイク塗装が施された菱形の小型戦闘機《シューティングスター》が三機、航行していた。

 

その内の一機、先頭に立っているコールサイン《サンバ1》の操縦士、ラッキー・ウダチヴィーは嘆息する。

 

「幾ら報酬が高いからって、たった三機で護衛かあ…」

 

彼女がちらりと視線を向けると、全方位ディスプレイ越し、斜め後ろに同じような菱形の機影が見えた。レーダー機能を妨げないよう各所に配置されたRCS(姿勢制御システム)に、機体上部には全方位空間把握センサーの導入により著しく退化した物理窓、そして機首にはレーザーガンの銃口が四つ見える。

 

「まあ、いつもより武装も多いし、万が一が起きても逃げれるかな…」

 

彼女はいつにも増して美しく輝く宇宙の姿に辟易する。黒い画用紙に点々と、かつ無雑作に穴を空け、太陽の下に翳したかのような光景は、全て情報として処理される。そこに情動は無く、余計に現実感を薄らせた。

 

傭兵として身を立てて数年、この無限の大地に慣れ始めている事に薄々気づく。

 

操縦桿を二度、握り直してどうにか誤魔化すと、超長距離座標跳躍の時間が迫っている事に気づく。彼女はヘッドセットのマイクを取り、同僚に連絡する。

 

『此方、サンバ1。現在時点での異常無し。…これより300秒後にワープホールに入る。依然警戒されたし』

『サンバ2、了解』

『サンバ3、了解』

 

返ってくるのは真面目な返事。これが十数年のベテランであるならば軽い冗談でも返って来たのだが、今回、彼女を除いた二人は護衛歴1年程の新人であった。しかし彼らは軍人上がりであり、能力的には彼女を上回る。ただ、軍人時代の規律を民間企業に天下(あまくだ)っても留めているのみなのだ。その事実が彼女の気分を降下させる…

 

『…サンバ2より。広域レーダーに感あり、総員NE帯を警戒されたし』

 

彼女は意識を切り替える。

 

態々レーダーに引っ掛かるという事は、公式に登録されていない艦船・機体の可能性が高い。破落戸(ゴロツキ)のモノか、商業宙賊のモノかは判らないが、碌でも無いのは確かである。

 

操縦桿の武装管理ボタンをなぞり、いつでも急転換出来るように、息を整える。

 

果たして当初の警戒通り、敵機は、北東より襲来した。

 

『近域レーダー感知、会敵』

 

ずしり、と体に重くのしかかる感覚が襲った。無線を受けている時点で敵機の位置は把握していた。急な機体の操縦で激しくスラスター制御が行われているのを尻目に、その全貌を明らかにする。

 

白を基調とし、少しの黒が使われた特徴的な塗装。全体的に平べったく、大きなフロント部分とそこに内蔵された四丁の機関銃の銃口が牙の様に突き出ている。コックピットには大小様々な窓が放射状に取り付けられており、操縦する際に直接視界を確保しているらしいことも分かる。

 

しかし彼女は感想を抱く間も作らず、《サンバ1》から数千発のレーザー弾を発射する。

 

瞬間、敵機の前面がもろに直撃を受けた。酷く輝く光飛沫を散らしながら着弾地点が白く染まり、本来のレーザー弾では有り得ない程の光量が発生する。

 

「不味ッ⁉︎」

 

通常、レーザー弾は着弾する際にエネルギーの多くを敵機を構成する物質の分解に使用するため、ほぼ光は発生しない。しかし、敵機が強力なシールド、又は迎撃装置を展開している場合には、レーザー弾のエネルギーは行き場を無くし、その大半を熱エネルギーと少量の光エネルギーに変換する。今の光景は正に、レーザー弾が意味を為さなかったことの証左であった。

 

既に敵機は発生した莫大なエネルギーでレーダーを撹乱し、ワープを使用したゲリラ戦に移行しようとしている。彼女は冷静に操縦桿を引いた。

 

《サンバ1》はスラスターを全開にし、横滑りしながら体勢を輸送船の船首側に合わせる。彼女が機体制御をする中、回復したレーダーがワープアウトした敵機を既に捉えてロックしていることを、けたたましいアラーム音が報告する。

 

彼女は弾種を物理弾に切り替え、そしてミサイルの発射ボタンに指を添えた。

 

此処で、他の二機からは全くと言っていい程動きが感じられないことに気づく。いや、実際には微動だにしていなかった。何事かと逡巡したが、彼女は敵機の迎撃に神経を割く。

 

 

不意に、無線から声が聞こえた。

 

それは確かに、《サンバ3》の声であった。

 

『トレボー…』

 

そうして刹那、視界の端にスラスターを吹かせ、急転回して機首を全くの別方向に向けている《サンバ2》が映る。

 

『サンバ2、サンバ3⁉︎…何をしているの___』

 

ミサイルは既に発射され、目標物を捉えて巡航している。しかし、行先を見届けるべき彼女の視界はもう、何も捉えられていない。

 

 

 

視界は、いつの間にか純白に染まっていた。

 

 

 




トレボーのイメージはインターステラーのレインジャー号です。

Tips:ミサイル
現代のミサイルは2000年台の物とは違い、基本的に敵機の足止めに使用される。異常な高速機動の戦闘が行われる現代にミサイルの技術が追いつかなかった結果で、現在は敵機の周辺で大量の化学反応を発生させ、物理的に視界を塞ぐ物となっている。
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