君はウラナミ・アスカ・ラングレーを知っているか?   作:一途一

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今日はそんなに重要な話じゃないので宣伝します。

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『あたしの新しいフルネームは…ウラナミ・アスカです!よろしく!』 

『新しいフルネームは…ウラナミ・アスカです!』

『フルネームは…ウラナミ・アスカ』

 

 

『ウラナミ・アスカ』

 

 

「アスカ」

「どうかしました?下の名前ってやっぱり呼び捨てで呼びたくなりますよね!」

 

目には昨日とは違う黒のスラックスに、フォーマルな襟付きシャツを着ているウラナミちゃんが映る。ベルトが随分高そうな見た目をしているが、もしかして本革?

 

「ちゃん付け忘れちゃっただけだったわ」

「…あたしは呼び捨てにしてくれて良いんですけど」

「アスカちゃんが大人になったらね」

「もう18ですよ!」

「はいはい、ジュウハチジュウハチ」

 

今にも髪を逆立てそうな彼女を何気ない感じ(大バレ)で抜き去り、俺は思考を現実に戻す。

 

俺達は今、上司の元へ向かっていた。何の捻りでも無い、立場的な意味の上司だ。

 

宙賊を行う上で裏の顔並に重要なのは、やはり表の顔である。そしてそれとして俺達は警備会社だとかPMCだとかに勤めるのだが、俺は警備会社に籍を置いていた。その名は《榛名(はるな)警備保障株式会社》と言う。一応、群馬県全域では随一の人気を誇る警備会社だ。

 

そこの部長が俺の直属の上司なのだが、前世間一般的な部長とは掛け離れた人物である。

 

粗悪粗暴、ヤクザ顔、腕にびっしりと入った刺青。

 

タトゥーではなく、刺青。

 

宙賊と言うならさして間違っていないが、名の知れた会社の部長と言うには説得感が無い。しかし、部長であるからして現場指揮能力、本人の戦闘力は抜群であった。

 

人々を威圧する見た目は青龍と言われる程の英傑。御歳46歳陸軍出身、叩き上げである彼の名は斎藤ブルー。名前は少し、ダサい。

 

「凄い高いビルですね!」

 

彼の顔をぼんやりと思い出しているうちに、目的地に着いていた。彼女が顔に翳りが出るほど曲げて見ているのは、高さ大凡500m。恐らく群馬県で1番宙賊が会社を構えている建物、《群馬中央ビル》だ。

 

俺はいつものように、金やら高級な木材やら無駄に凝った回転ドアを通り、ビル内に入った。そうすればすぐ、大理石で占められたエントランスと、それが盛り上がって形作られたかのような受付カウンターが目に入る。

 

「真っ白ですね…」

「俺は良い趣味だと思うがね」

 

俺はそのままカウンターに行き、受付担当の男に声を掛けた。

 

「おはよう。警備部の斎藤部長に繋いでくれます?佐藤が来たと言ったら分かると思うんで」

「承知いたしました、少しお待ち下さい」

 

男は内線を取り、暫く会話を続けている。そして2、3回メモを取り、俺の方に向き直った。

 

「斎藤は40階の会議室А-24におります。お連れの方はいらっしゃいますか?」

「1人、女の子が」

 

男はエントランスを興味津々で物色しているウラナミをチラリと見た。手元の端末を弄って何やら入力しているようだ。

 

「では、子供1人分の入館証を発行致しますね」

「あ。申し訳ないんだけど、大人用にしてくれる?」

「…はあ、承知致しました」

「彼女、18歳らしくて」

 

如何にも不可思議と言った様子で男は承服し、端末に打ち込み直している。まあ、どっからどう見ても14ぐらいだもんな。

 

「お待たせしました、こちらが入館証になります」

 

渡されたのはカード式の、1日限りで使える代物だった。俺は軽く会釈し、その場所を後にする。次いで歩き回っていたウラナミちゃんを拾い、エレベーターホールへ向かった。

 

ホールは円形状で360度、均一な幅になるようにエレベーターが8基置かれている。その内一番入口に近かったモノを選び、上りボタンを押す。

 

「佐藤さんの上司って、一体どんな人なんですか?」

「よく言われるのは、青龍かな?兎に角怖いぞ」

「青龍!凄い強そうですね」

「まあ会ってからのお楽しみさ」

 

そうこう言っている内にエレベーターは到着し、どこか間の抜けたベル音が鳴り響く。どうやら俺達はの他に乗る人は居なかったようで、やけに広い空間内に2人だけ入り込む事になった。彼女はエレベーターガールをしてくれるらしく、操作盤前に陣取っている。

 

「何階ですか?」

「40階」

 

彼女がボタンを押して扉を閉めれば、2秒も経たない間に上がり始める。上昇時の軽い負荷が、どうも心を表してそうで嫌になる。この時間はただひたすら、用事を早く終わらせる事だけを考えた。

 

 

◆◇◆◇

 

会議室に入って最初に目に入るのは、禿頭の強靭そうな中年男である。

 

「おお、よう来たな」

「お久しぶりっす」

 

やけに広い部屋の中、態々一番遠くの椅子に踏ん反り返って座り、股を大開きにしている彼こそが斎藤ブルー当人であった。

 

「お前は前の仕事以来か。で、そこの嬢ちゃんは…」

「最近ウチに来た子っす。さ、自己紹介してくれ」

「初めまして。ウラナミ・アスカと申します!」

「おお、元気が良いな!随分可愛らしいが、何歳だ?」

「18歳です!」

 

斎藤は俺に顔を向ける。俺はそれが見えていたが、素知らぬ顔をした。

 

「佐藤太朗様の多目的奴隷として雇用して頂いています」

「それで、彼女をこれからの任務に組み込もうと思いましてね」

 

俺は何食わぬ顔で話を受け継ぐ。

 

「彼女を護衛任務に組み込みたいんですが、未だ来て日が浅いもんですから、今日は彼女はどれほど出来るか見たいと思いまして、射撃と軽い模擬戦をと思いましてね」

「ええぇ…」

 

斎藤は頭を抱えている。俺もね、出来るなら家政婦とかそんな仕事させたいんだけど、何だかいつの間に、一緒に仕事をする事になってんだよな…

 

「うん、まあ、佐藤。ちと話しようや」

「…うす」

 

俺達はウラナミちゃんを置いて、一旦会議室を出た。それで2人揃って壁に張り付きながらコソコソ話をする姿は、見方によっちゃ滑稽だろう。

 

「あの子、奴隷なんだよな?」

「そうっすね」

「絶対18じゃないだろ」

「俺もそう思います」

「見た目14ぐらいか?…本人の技量がどうだかは知らんが、奴隷としては異常だし、第一、お前が買えるような値段じゃないだろ。前の依頼、確か1億ぐらい貰ってたか?あの子クラスだったら3億は下らんぞ」

「7900万っすね」

「どんな大セール品だよ!実は中身ババアとか?」

「それは思いつかなかったっす!」

「馬鹿、感心してんじゃねえ」

 

適当に頭を叩かれる。ごつい手は割と痛いので、思わず声が出た。

 

「痛っ、やめて下さいよ」

「愚か者料だ。_____うん、取り敢えず軽い力試しぐらいはさせよう。あの子の感じじゃ、相当に自信があるんだろうな。お前はきっと陰キャだから、乗せられたんだろ?俺が適当にあしらって、伸びた鼻折っといてやる」

「そうなのかな…いや、だけど彼女、例のイヤホン使えるんすよ。だから案外イケ___」

「何だって!?」

 

偶にしか出ない斎藤の大声が、廊下中に響いた。

 

「ちょ、静かにして下さいよ」

「いやいやお前、それ最初に言えって。本当ならとんでもない掘り出し物じゃねえか」

 

いくらか眉間を揉んだ斎藤は髪のない頭を数回掻き、大層面倒臭そうにこちらを見る。

 

「しょうがねえ。やっぱりガチでやるぞ。利益が勝っちまった」




Tips:多目的奴隷
基本的に何でも熟す万能タイプの奴隷。戦闘から洗濯、料理から戦闘機の操縦までの幅広い技術を活かし、権力者を保護する。下の世話を仕込む場合は事前に申請と追加料金が必要である。さらにはキリスト系の奴隷育成所では断る場所が多く、ノリリスク聖隷院もその1つとなっている。値段は安くても1億円からであり、普通に生きている限りは購入する事など無いだろう。
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