君はウラナミ・アスカ・ラングレーを知っているか? 作:一途一
斎藤>佐藤>ショウゴ、アイカ>ウラナミ
って感じです
事前に聞いていた“引っ掛けて放る”と言うのは、主語にに『男を』が入るらしい。
俺は御令嬢・純日本血統・お転婆と言う3単語を並べ、早計に結果を出した。
「そのお申し出は大変有り難いのですが、私は貴方に足る者ではありません故、辞退させて頂きたいのですが」
「じゃあ2人とも、解雇ね!」
「ええっ!?」
何と!暴虐ではないか!
これじゃあ猛獣そのものだ。第一、猫被りから本性が出るまで早すぎる。本物の猫を剥いだ方が幾らか手間がかかるだろう。しかし、これで2日も持たせた前任者はさぞ手練れだったに違いない。早く俺たちも何らかの対策を取らなければ、2日どころか3分でお手上げになってしまう。
「どうしたの、そんな梅干しでも食べた様な顔で…貴方、顔に出過ぎよ。ウラナミさんの方が余程大人びているじゃない」
「…」
しまった、顔に出ていた。
…いや、まだ諦めるな。
「お…」
「…?」
彼女を攻略する方法を見つけるんだ。ある筈だろう!嘘告を受け流す最強の文句が!
「あ、お友達からにしませんか」
「バッカじゃないの?」
俺は部屋から追い出された。
◆◇◆◇
俺はまだ任務をしていると言う認識で合っているのだろうか。扉の前でそれらしく立っては居るが、どうにも不安だった。
幸い、ウラナミちゃんが未だに室内に留まっているようなので、解雇という憂き目に遭うことは免れたのだろう。
扉前の人通りは少ない。今の時間帯であれば、ほぼ全員が産業展示館の方に行っている筈だ。このホテルに残ってるのはごく少数の会議関係者か、巡回の警備ぐらいだろう。見た所、この階でここ以外に警備を付けている部屋は見当たらない。彼女は随分可愛がられている(もしくは監視?)のだろうか。
思考も体も沈ませながら立っていれば、近くの階段を上ってくる音が聞こえる。俺は念の為、銃のグリップに手を掛け、姿勢を正しておいた。
果たして出口から出て来たのは、ショウゴであった。彼も小銃を肩に掛けており、巡回員と書かれた腕章を腕に貼り付けていた。彼もこちらを見つけたようで、少し早足でこちらに向かって来た。
「やや、どうも」
「暇してるのか?」
「そりゃもう、今の時間帯なら警備以外誰も居ませんよ、このホテル」
「じゃあここ以外大体出払ってるって感じ?」
「あー…ここ、そう言えば霧島嬢の部屋ですか」
「どうかしたのか?」
「佐藤先輩は宙賊メインだから聞き覚えが無いと思いますけど、彼女有名ですから。『鋼鉄の箱入り娘』って」
「相当俗世と隔離されてるとか?」
「いんや、『鋼鉄』は、大日本重工が兵器製造を主にやってるからじゃないですかね?」
「じゃあただの箱入り娘か…」
ちょっとメカメカしくて格好イイ二つ名だな。
「彼女、行く先々で警護を付けられてるそうで、ウチなんかは今年だけで40回も護衛任務を受注してるらしいですよ」
「平均、1ヶ月に4回もか。凄まじいな」
「まあ大凡、監視目的でしょうね…相当執着されてるようですよ。しかも両親だけじゃなく、一家総出で」
「恐ろしいね。一体どんな魅力があってそうなるかは知らんが…」
「中にはウラナミさんが?」
「そうだな。今の所は特に問題も無さそうだけど」
「_____強行突破して、扉を蹴破った事もあるとか」
俺たちは2人して、木製の重厚な扉をじい、と見つめた。どうにも中に鋼鉄でも仕込まれているように、重苦しい焦茶色の扉である。俺はそっと、立ち位置を壁側にずらした。
「まあ、お互い気張ってやっていきましょう」
「そうだなあ」
彼はそう言って去っていった。再び静寂が支配したこの空間で、俺は鋼鉄の箱入り娘に思いを巡らせる。彼女の突飛な行動の如何は、ささやかな反抗なのだろうか?
なら、付き合うのもやぶさらでもないかも知れん。そんな、何やらたまに会う親戚のオヂサンのような軽いマインドで、適当に姿勢を崩した。
◆◇◆◇
それから3時間ほど経っただろうか。腕時計を覗いてみれば、時間は11:40を指している。巡回なんかは代わる代わる来たが、切りがないので途中から数えるのを止めた。俺は余りに何ともない状況で気を張る事も難しくなって来た所で、少し欠伸をして眠気を噛み切った。
もうそろそろ12時か、と扉の方に向き直った所、ノブの回る音が聞こえてくる。俺は気を張り直し、横目でチラリ、と扉の隙間を見る。姿を見せているのは蒼い瞳。ウラナミちゃんである。
「アスカちゃん、そろそろ移動?」
「はい。12時には、今から移動すれば十分間に合う筈です」
「良し、行くか」
そんな話をする彼女の後ろからは、明るい茶髪が一端を覗かせている。
「アスカ、私出来るなら行きたいくないわ」
「駄々捏ねないって言ったじゃないですか。さ、行きますよ」
マナ嬢は随分と親しく接している。同世代の女子と言うのはここまでの短時間で友情を構築するものなのだろうか?軽く掴まれているウラナミちゃんの服の裾を見ても一目瞭然である。___これじゃあ姉に付き従う妹だ。
「手、繋がない?」
「遠慮させて頂きます。裾は掴んだままで構わないので…」
ウラナミちゃんは呆れ半分、優しさ半分と言った具合の声だ。今し方友情だなんて考えていたが、これではまんま、懐柔では?俺は思わず目を瞬かせてしまった。
「佐藤さんも、私に付いているのでしょう?」
「ええ、まあ」
マナ嬢は如何にも毒を含ませていないような話し口で、俺の意識を引っ張った。さらには、心なしか余裕さえも感じさせる笑みである。
「お友達から、始めるのよね。アスカとお揃いよ?会食はきっとつまらないでしょうけど、一緒に楽しみましょう」
「…勿論、喜んで」
箱入り令嬢の事情より、ウラナミちゃんがどう言う手法を使ったのかが気になるお昼時であった。
Tips:純日本血統
混血化が進んだ現代の第二地球において、地球に存在した日本人の姿を忠実に受け継いでいる人物を指す。彼ら彼女らが誕生するには通常の自然生殖でなく、“地球を再現する”ゲノム編集が行われた受精卵に依って行われる。その過程で基礎能力の向上も試されており、人類の更なる進化先としてのモデルケースも兼ねることとなった。他の同種として、純ロシア血統が存在する。