君はウラナミ・アスカ・ラングレーを知っているか?   作:一途一

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マナ嬢が仮面ライダーみたいになってしまう…


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モザイク色の声々が通り過ぎて行く。彼ら彼女等は俺に怪訝な目線を向けて来るが、それは多分、俺が武装しているからだろう。引鉄にこそ指は掛かっていないが、グリップには掌がしっかりと引っ付いている。

 

ここは産業展示館からそう離れていない場所に位置する歓楽街だ。未だ昼間だと言うのに、居酒屋にはひっきりなしに人が出入りをしている。道路はあるものの、人の往来が激しいせいでアスファルトの大半は人の足で埋められてしまっていた。マナ嬢が強奪していった車はこの歓楽街のもう少し奥まった場所あるらしい。GPSはこの大通りのまっただなかを指している。

 

「おい、兄ちゃん」

「どうしました?」

「いやさ、鉄砲なんて持ってるから向こうの車を追いかけて来たのかと思ってさ。兄ちゃん、警察?」

 

簡素なビール樽の椅子に座ったまま俺に話しかけた男は、軽く赤らんだ顔でじい、と俺の全身を見た。そうしてやっと『警備』の腕章を目にしたのか、合点がいったように目を開く。

 

「ああ、警備か!店に呼ばれたのか?」

「…いやあ、違いますね」

「店のじゃねえのか?じゃあ、何で警備なんかが来るんだ?普通警察じゃねえか?」

「それはその車に乗ってる奴の警備担当だからっすね」

「はあ?」

「じ、じゃあ失礼しますね」

「おいおい、どう言う事…」

 

マナ嬢は相当なことをしたようだ。もしかして事故ったか?

 

確かに、奥に進むほど、人混みは酷くなって行っている。

 

「何かあの焼肉屋、やらかしたの?」

「Ты занял слишком много денег?(借金しすぎたとか?)」

「さあ…だけどヤクザとかじゃ無かったでしょ?」

「なんか2人居たけど、美少女だったぜ」

「Я чувствую себя лучше‼︎(気分上がるやん!)」

 

耳に入って来る話は部分的にしか理解できんが、焼肉屋にいるのはマナ嬢とウラナミちゃんで間違い無いだろう。ウラナミちゃんはなんで連れ戻さないんだ!?

 

そうして遂に割って進まなければならない程までに密度が高まる中、ようやっと車のボンネットが見えて来る。ロゴも何も付いていないが、確かにウチの社用車だ。

 

ようやっと人混みを突破して前まで出て来ると、その全貌が見えた。

 

車はドリフトして斜めに駐車されており、派手に道を塞いでいる。何故か知らんが運転席の窓は派手に割れているし、縁石にぶつけまくったのか、フロントはガリガリに削れている。

 

「ちょっとすんません」

 

車が停まっているのはやはり、焼肉屋の目の前である。俺は嘆息した。焼肉が食いたいなら幾らでも頼めば出て来るのに…もしや、自分で焼いて食いたかったとか?しかしそれでも、こんんな騒ぎにする様なことでも無いはずだ。

 

俺はモヤモヤっとした気分のまま、焼肉屋の扉を開ける。勿論客は居らず、店員が手持ち無沙汰に佇んでいるだけであった。

 

「どうも。榛名警備保障の佐藤です。こちらに武装した少女二人組が来たとか、有りませんでした?」

「え、あ、はい。今、向こうで焼肉をしてて…」

「あー、やっぱりですか…申し訳ありません。補填の事などは後日本社の方からお伺いする事になると思うんですがね。取り敢えず、向こうに行っても?」

「は、はい。どうぞ」

 

随分店員も萎縮しているようだ。あとで諸々の事情を聞いておく必要があるが、兎に角、2人を回収しよう。

 

肉を焼く音がしているのは一番奥の個室だった。この店は間接照明が多く随分店内が暗いので、肉の匂いが少し強調されて、腹を鳴かせて来てしまう。さっさと回収して飯を食おう。

 

俺は個室の扉を開けた。

 

「…やってる?」

「佐藤さん、冗談キツイですよ」

「やってるわ。佐藤も食べる?」

 

目に入ったのは昔ながらの円形グリルに、その上に置かれた4枚の肉。席は向かい合うタイプで両側に1人ずつ座っていたのだが、何故だかマナ嬢の座る側には“捩じ切られた”無線機が置かれている。

 

「今、私たちの分しか焼いてないから。少し待っててくれる?」

「何言ってるんですか、霧島様。戻りましょうよ」

「貴方、さっきまで美味しそうに食べてたよね?」

「不可抗力です」

 

そう言いながら、ウラナミちゃんの肉取り箸は焼き肉を掠め取って行く。

 

「霧島様に無線機も銃のマガジンも破壊されてしまいましたからね。しょうがないんです」

「マジ?」

「大マジですよ」

 

少しウラナミちゃんの肩に掛けられた銃を覗いてみれば、確かにマガジンが消失していた。俺は二重に戦慄したが、当の実行者はそんな事はお構いなしと言った感じである。その上、まるで親に物をねだる子供の強情な感じで、マナ嬢は焼肉を取り皿に放り込み、俺の目の前に置いて来た。

 

「佐藤も、少し食べて行きましょう?」

 

俺の視線は無線機とマナ嬢の間を行き来する。

 

「別に、今までずっと私の我儘で暴れ回ってるだけだし、佐藤は打撃まで喰らってるのだから、立場的に不利な事にはならない筈よ?」

「よし、頂きます」

 

宙賊たる者、やっぱりどっしりとした心構えで居ないとな。別に勤務中に焼肉食うぐらい、どうにでも隠してやるわい!

 

「美味ー!」

 

焼肉屋から通報されて警察の鎮圧部隊がやって来たのは、その10分後の話である。




Tips:警察
ゾンビ物で一番に死にそうな職業その①。本作品では無能だったり、宙賊連中に権力で支配されている訳でも無く、純然たる独立機関となっている。2000年台の日本とは違い、第二地球では治安維持用の多脚戦車(らしきもの)を独自に導入し、より効率的な安全保証を謳っている。
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