格安で買った奴隷が厄ネタだった。   作:一途一

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500UAありがとナス!


今回は説明回です。


1-7

時刻は昼の12時を回った頃。

 

 

俺は歩いている。しかし昨夜のように一人きりではなく、隣にでえれぇ美少女を連れて居る。

 

向かうは風俗街を抜けて10km先に位置する大都市、《群馬県》である。京都でさえ町になってるのに、何だお前!?第二惑星の土地区分として1番大きいのは県か都、または府であるのだが(北海道は何故かロシア語に翻訳した言葉で呼ばれていた)、東京都は何故か、規模が群馬県より少し小さい。何なら群馬県に肩を並べる都市は3つしかなく、《佐賀県》《Су́здаль(スーズダリ)》《Воронеж(ヴォロネジ)》となっている。

 

閑話休題。

 

《群馬県》の人口は、2000万人以上を誇っている。先ほど述べたように、第二地球有数の大都市だ。ビル群の大海原の中、所々に東京タワーほどのビルが聳え立っているのは壮観であり、地球の東京都よりも遥かに発展している。そして、その地は地球の群馬県とは違い海に面しており、そこでは数多くの宇宙船が発着する港が設けられている。今から俺たちが向かうのは民間向けの停泊場であり、俺の愛機が駐機してある場所でもある。宙賊なのに民間の場所を使ってイイのか、と言う質問は、やめようね!

 

かの場所へ向かうのに、地下鉄が通っている。しかし第二惑星の主な公共交通機関はバスである為地下鉄は停車駅が少なく、京町やモスクワにはそもそも駅がない上、風俗街にも1駅しか無い。だが、運賃が安い。最近莫大な収入が入った筈なのに風俗と奴隷に金を使い果たし掛けてしまったような人間にはちょうどイイだろう。それに散歩にもなる。

 

彼女は流れて行く景色を興味深そうに見ている。見回していると言う訳では無いが、視線がころころと移り変わるのは、傍目にも理解できた。彼女はここの辺りを見たことが無いのだろうか。

 

無言のまま、俺たちは進んで行く。話す内容が尽きたのもそうだが、彼女が静かにしたがっている。そんな気がしたのだ。

 

「あ、聞き忘れてた。あなたの名前をまだ聞いていませんでしたね」

「そう言えば言ってなかったなあ。俺の名前はただの佐藤太朗だよ、佐藤太朗。あ、ロウは月の方の朗ね」

「サトウタロウですか」

 

彼女は、何とも平坦にそう言う。まあ、俺も自分の名前に何かしら意味があるとは思っていない。育ての親が適当に付けた苗字だし、名前の微かな遊びも意味が有るとは思えない。ごく普通がすぎる名前も、実は扱い難いのだ。

 

「名前といえば、ウラナミちゃんは下の名前、あるの?」

 

彼女はちゃん付けに僅かながら眉を上げたものの、素っ気なく返した。

 

「…いえ、無いですね。あたし、結構出自が曖昧だから戸籍とか、そこら辺の権利関係がごちゃごちゃなんです」

 

彼女の困ったような顔を見ると、割と本気の悩みらしい事が感じられる。

 

「そりゃあ、災難だったなあ」

 

おっと、もう地下鉄か。彼女は階段を先に駆けて行ったので、無理くり話が切り上げられてしまった。彼女の生まれはそこまでイイモノじゃ無いそうだが(奴隷とされている時点で身分は下のものであると分かる)、それにしては、随分知的な雰囲気がする。ア◯カ効果かな?

 

彼女の足音が奏でるスタッカートを傍目に、天井を見上げながらそう考える。

 

数歩分遅れて、俺も漸く地下のホームに到着した。彼女は券売機が無いのを不思議に思っているらしい。その証拠に、時刻表以外めぼしい物の無い改札前をぼうっと見上げているではないか。

 

俺にが追いついた事に気づいた彼女は、此方に近づき、俺の思った通りの疑問を呈す。

 

「切符ってどこで買えるんですか?」

「そりゃ、地方駅だけだな。切符を買って電車に乗りたいなら…ここから800kmは離れないといけん」

「進んでるんですね」

「そうなのかな…俺に取っちゃ、随分趣が無い事だと思うけどね。感受性が高いのかな?」

「あたし、否定はできませんよ?」

 

そりゃそうだ。ウラナミちゃんは奴隷である。俺が人とどのように接するかは置いておいて、彼女と俺には、購入者と被購入者と言う明確な違いがある。その境界線をしっかりと見極めなければ、良い関係を築くのは困難を極めるだろう。

 

「だろうね」

 

素っ気なく返事を返して、改札まで歩く。改札の形状は2000年代とそう変わらないが、通り抜ける瞬間、本来カードリーダーがあるべき場所から眼球に細い光線が放たれ、微かに瞳孔をなぞった。

 

『大人2名を確認しました』

 

そんな電子音声が後ろから話しかけて来る。奴隷も同じようにカウントされるとは初めて知った。これはまた、新しい常識を知ったのではなかろうか。数々の電子広告が立ち並ぶ道を歩み抜けながら、そう刹那に考える。

 

「何番線なんです?」

「2番線だね。まあ、そんな身構えるような物じゃあないよ。きっとウラナミちゃんの知ってる物と変わらんさ」

 

これはイイ。人を先導すると言うのは先輩風を吹かせているようで、実に優越感がある。俺は顔をしわくちゃにしてにやけているのを隠すため、少し前を歩いた。

 

彼女は少し前に行った俺に合わせ、微かに足を早める。

 

それもまた、俺のこの、にくき心を満たすのだった。




Tips:群馬県
第二惑星開拓の際、行政や生産拠点の本拠地となった都市の1つ。第二惑星では数多くのの大都市が栄えているが、その中でも群を抜いている。現在は日本-ロシア連邦国の首都が置かれており、1日に数十万人規模の人間が動く。そして繁栄した表社会と同時に、強固な裏社会が共存している都市でもある。宙賊の上部組織が数多くの拠点を築いており、港湾地域の無法化、賄賂による政治家の懐柔などが問題視されている。この土地は、特に貿易会社からは蛇蝎の如く嫌われており、このことも有り大半の貿易会社は他の大都市である佐賀県に籍を置いている。
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