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「いいなー、ユニークいいなー!」
「まだ言ってんのかよ」
サンラクからヴォーパルバニー……エムルちゃんの事を聞いてから、カッツォくんはずっとこの調子だ。ユニークシナリオが随分と羨ましいと見える。
しかしやはりヴォーパルバニー関連のユニークシナリオはまだあった訳か……ウェザエモン倒したら試してみるのも一興かもしれんな。
でも俺ヴォーパルバニーの武器持ってないんだよなぁ……そんな訳で防衛戦にも参加してない。なんでヴォーパルバニーのユニークシナリオとはマジで関連性が欠片も無いんだよね俺。
「いいなー俺もウサギもふりたいなー」
「今からそのユニーク進めるの忘れてないか?」
「自発と助太刀は違うんだよ」
「まぁユニークシナリオはかなり運が絡むからな、そう簡単には見付けられんよ。俺みたいに隠し職業で発生するタイプは稀だろ多分」
「というか、そもそも『剣鬼』自体がハジメ氏くらいしか取得してない職業っぽいからな。掲示板でも噂になってるぞ」
マジかよ。そんなに剣鬼少ねぇの?って、そりゃそうか。だって取得条件が100人のプレイヤーをキルする事だもんな、そら居らんわ。
PKillerの中でも剣客をメインジョブに据えてる奴なんて見掛けた事ないもんなー。物理職はだいたい『戦王』だし。サバイバアルとかがまさしくそれだ。
あの京ちゃんですら剣豪だもんな。まぁ字面的にもそっちの方がカッコイイもんな、分かる分かる。俺もそこはだいぶ迷った。
剣客にするか剣聖にするかで悩みまくったけど、俺の戦闘スタイル的に剣聖は合わないって事で剣客にした。そのまま阿修羅会と着せ替え隊とか辻斬りしてたら『剣鬼』と『抜刀斎』取得してたのが現状だ。
……アレだな、改めて見ても『剣鬼』の取得経緯が終わってんな??? 他のプレイヤー無理じゃんこんなの。ヒイラギですら100は殺してねぇぞ。ほぼ俺専用やん。
「俺掲示板とか見ねぇからなー。ちなみにどんな風に言われてんの?」
「『シャンフロの辻斬り』『何処でも出てくる対人狂』『コイツ専用ジョブ』『殺人鬼より殺人鬼やってるカルマ値0』etc」
「名誉しかねぇじゃんありがとうございます。あとこれといった他意は無いんだけどその掲示板で喋ってる奴等のPN教えてもらっていい?」
「殺る気に満ちてるですわ…!」
そういえば、なんかやたらとエムルちゃん俺見てくるな。なになに? お兄さんの覇気に充てられちゃった? でもごめんね、お兄さんにはもう素敵なお嫁さんが……あ、違う?
大丈夫大丈夫、俺ケモナーではないから。でもケモ耳は良いと思ってるよ? 主に狐ね。千ちゃんには似合うと思うんだ。あわよくば耳と尻尾をもふりたい。
「ヴォーパル魂はすっごいのに、不思議ですわ? ハジメサンはなんでラビッツに来てないんですわ?」
「そのヴォーパル魂とかってのはよく分からんけど、君達の武器使ってないからじゃないかなー」
「
「そうそう。……あれ? 千ちゃん知ってるの?」
「ハジメさんが居ない間に、何度か戦いました。確かそういった名前だったかと」
「あれ結構レアドロな気が……さっすが千ちゃん!」
リーチが短過ぎてねぇ……
使えん事はないけど、じゃあ使う気ありますか?ってなると話は別なんだよなー……ああいう短いやつは最終的にぶん投げる役目に回るからな。
ナイフを幾つかぶん投げて回避方向を限定して、見事誘い込まれた獲物をぶった斬る。スヴァブラとか鯖癌でもよくやったテクニックだ。
つーか、ヴォーパル魂ってなんぞや? そんなステータス見た事ないぞ。もしかして『武士道』みたいな隠しパラメータか?
ヴォーパル…致命ねぇ。流石に人殺しはカウントされないだろ、ゲーム的に。パラメータとしても些か物騒だ。
だとしたら、強敵と戦ったか否か? わりとレアエネミーと遭遇してるし、強敵云々だとすればそれか? ソロ討伐ばっかしてたからなー。
(うーん……このままではハジメ氏が
「おうどうしたハシビロコウ、覆面越しに悩んでいるのが丸分かりだぞ? スパッと逝くか?」
「なんでナチュラルに首斬りが選択肢に入ってんの? 普通におかしくね???」
「悩む必要は無くなるだろ?」
「野蛮極まり過ぎてもはや凶悪だろ。千さん、旦那さんちょっと止めた方が良いんじゃない?」
「普段は見られない一面というのも、新鮮なものですよ」
「ダメだ唯一のセーフティが思ったより機能してない」
理解してくれる嫁が居るのって最高だとは思わんかね? 俺は思うね、バリバリ思う。我が人生における至高の存在、それこそが斎賀仙ちゃんなのだ。崇め奉れよ貴様ら。不敬は打首切腹のハッピーセットだ。
いや自重はするけどね? そりゃだって……流石に千ちゃんの前でPKやるのは…ねぇ? 嫁の前でそんな野蛮な事は出来んでしょうよ。
やるならこっそりとやるから。大丈夫、ことその点において俺を上回るやつは居ない。スクショ撮って掲示板に貼るより前にキル出来ます自分。
着せ替え隊の巻き添え食らって戦闘する羽目になった全身マントの賞金狩人に一撃食らわせる事に比べれば、他プレイヤーの即キルの方が超絶簡単だわ。
「ヤバいよサンラク、目的地に辿り着く前にPKされちゃうよ俺ら」
「冗談じゃないから困るんだよなぁ……お、着いたんじゃないか?」
歩いて暫くして、これまでのファンタジー要素満載な文明とは全く異なる「扉」が現れた。
おー、こりゃまた近未来。やっぱ神代は過去にとっての未来って事で確定かな? 少なくとも現代よりは何世紀も技術レベルが進歩していた事は間違いなさそうだ。
まぁ、マップ名が【神代の鐡遺跡】だから神代の名残があるのは当然っちゃ当然なんだけども。
「だいぶ世界観変わるな……これが神代ってやつか」
「ファンタジーとはかけ離れた外観だね。SF要素も混じってるのか」
「寧ろこっちが本来の姿なんだろ、シャンフロの」
「どゆこと?」
「神代は過去にとっての未来って事。ユートピアの現地人が築いたものじゃなく、多分ユートピアの外……おそらくあるであろう地球から来た人達が築いた文明が神代」
その方がウェザエモンとセっちゃんの存在に説明がつく。大剣者のテキスト見る限り、ウェザエモンもセっちゃんも、そして大剣者も神代の人物なんだろう。或いは、ユニークモンスター全員が神代に関連する存在という可能性もある。
シャンフロのストーリーにおいて、神代はきっと根深く絡んでる。今後のアップデートとそれが追加されるかもしれないが……今の段階でも、俺はシャンフロのメインストーリーに深く関わる事になるだろう。
俺とセっちゃんが初めて出会った時、彼女は俺を一目見てこう呟いた。
『……そう、彼は逝ったのね。惜しむらくは、彼女の…私達の想いが、何も伝わらなかったことだけど……』
大剣者……何処までも謎が深い野郎だ。いったいお前はどれだけの人間と関わりを持ってたんだ、考察が追い付かんぞ。
キョージュに質問攻めされそうだなぁ……まぁ俺も考察するのは好きだから良いんだけどさ。
「じゃあ行くか。目指せレベル50!」
「おー」
「頑張るですわー!」
「いいぞーその意気だ。危なくなったらしっかり
「ハジメさん」
「はいすいません」
千ちゃんは俺の心が読める…? つまり以心伝心で相思相愛で比翼連理ってこと!?
「無敵かよ……」
◆
中には予想通り、SFじみた空間が広がっていた。外よりも断然明るい部屋は、俺たちが歩いてきた世界とは全く異なる近未来で、それまでのファンタジーを忘れさせるかの様だ。
鋼鉄に囲われた空間は、無重力或いは磁力と思われる力で浮遊する謎の黒い板に溢れている。移動用か、はたまた擬態したエネミーか。
SFはSFでも、どちらかと言えばサイバーチックなポストアポカリプスだな。所々に植物が侵食しに来ている。下手したらそこらのモンスターなんぞよりも厄介だからな、植物っていうのは。
「これが、えすえふ……」
「英語慣れしてない嫁が平仮名で発音するのは可愛いとは思わんかね?」
「ハジメさんっ…! 人前では抑えてください!」
「そんな殺生な!? 千ちゃんに可愛いと言っちゃダメなら俺は誰に可愛いと言えば良いんだっ!?」
「ねぇサンラク、もしかして俺らペンシルゴン帰ってくるまでずっとこの惚気味合わないといけない感じ?」
「ピザ修行の旅に出られるよりは精神的苦痛は無いな」
「クソゲーの所為で寛容過ぎるのも問題だよねぇ……」
「ひゃぁぁぁ……ラブラブですわぁ…!!!!」
ふっ、こんなのまだまだ序の口だぜエムルちゃんよ。俺と千ちゃんの愛はこんなもんじゃないんだ……あ、ごめんごめん。謝るから手刀の構え取らないで。ゲームとは言え流石に怖いから。
うちの嫁さんは手刀でリンゴを一刀両断できる人なんだ……俺の首取られちゃうよ。いやでも千ちゃんに打首されるならご褒美か? ずっと飾ってね☆(狂気)
「しっかし、なーんか見覚えがあるステージだなぁ……個人的には結構好き」
「ああいうオブジェクトってバグると面白い挙動するよな」
「一回眼球ごと洗浄してそのクソゲーフィルター取っ払ったら?」
「サンラクサン、何か飛んできましたわ!」
エムルちゃんが指差す方角に目線を向けると、自動迎撃用ロボットみたいなエネミーが向かってきていた。三角錐UFOとでも言うべき形だ。
見た感じ、あまり強そうではないな。俺と千ちゃんが手を出すまでもないだろ。サンラクとカッツォくんなら余裕で相手取れる程度だ。
「カッツォくん頑張れー」
「いざとなれば援護しますので」
「ご親切にどーも。まぁ、この中じゃ1番レベル低いの俺だしね。いっちょやってみようか!」
カッツォくんが戦闘態勢を取ると、三角UFOはぐるぐると勢いよく回転しながらカッツォくん目掛けて突撃していった。
「素直な動きだ。カウンター練習用のエネミーかな?」
そう呟いた直後、UFOはまるで透明な壁にでも激突したかの様に吹き飛んでいった。
「敵が吹き飛んだ?」
「【レペルカウンター】だよ。プレイヤーが使うのを見るのは初めてだっけ?」
「えぇ…ハジメさんはいつも刀で弾いていますが、アレは違うのですか?」
「俺のはちょっとテクニックと混じってるからね。パリィと【セツナノミキリ】を組み合わせてるんだ」
【セツナノミキリ】は発動直後に放った攻撃が、相手の攻撃よりも先にヒットして瞬間的な硬直状態を作り出すというスキルだ。
俺はそこにパリィを組み合わせてる。正確には、パリィを決めると全く同時———つまりは、システム的に『相手が自分に攻撃してきた』という判定が残っている僅かな時間に発動させる事で、弾きとカウンターを両立出来る様にしている訳だ。
パリィの弾きとセツナノミキリのカウンターを組み合わせる、結構難しいテクニックである。
「ナチュラルに
「お前もやろうと思えば出来るだろ?」
「いやー、ハジメ氏くらいの精度は無理だな。精々6割再現が限度」
「じゃあ幕末でどっちが先に蹴鞠天誅出来るか対決しようぜ」
「無理ゲーじゃねぇか。レイドボスさんですら確実に成功出来ないやつだろアレ?」
「俺一回アレで天誅されたぞ」
「マジかよ流石はレイドボスさん」
アレは痛かった……首がまるっと吹き飛んだ様な感覚がした。一瞬だけ鯖癌思い出したよね。
運悪く転んだ所をまたまた運悪く走ってきた貧牛に頭踏み抜かれたんだよなぁ……思い出すだけで頭痛がするわ。二度とアレは味わいたかぁないね、俺は。
まぁ、サンラクは0GINGに人間凶器にされたから俺より酷い目にあってたんだけどさ。
アイツは幼女アバター相手でも遠慮なく玩具にするから怖いんだよな……ちなみにアトバード、シャンフロではヤシロバードを名乗ってる発砲狂もその被害者です。0GINGならシャンフロでも同じ事しそうだ……うん、そう考えるとあんま来て欲しくねぇなアイツな?
「…気になったのですが、サンラクさんはハジメさんとは長い付き合いなのですか?」
「へ? あー……まぁ、それなりに?」
「初邂逅が
「PvPあるゲームなら絶対居るからなハジメ氏」
そらお前、俺の事誰だと思ってんの? あらゆるゲームで『対人狂』の異名で通ってるハジメさんだぞ? PvPある所に俺ありだよそら。
一応スペクリもやってたんだぞ俺。誰だっけ……あー、ナッツクラッカーだっけ? 俺とやりまくってたのが懐かしい。PvPの腕はイマイチだったけど、中々に面白いプレイヤーだったなアイツ。
俺の動きとか模倣してたのは素直にスゲェなと思ったよ。なんだっけ、
まぁ、途中から動きぐちゃぐちゃになってたけど。要は
めっちゃ困惑してたのクソおもろかったわ。最後になんか言ってたけどすぐに杖で斬殺しちゃったから覚えてないんだよね。すまんなナッツクラッカー。
「なるほど……」
「……え、な、何? なんですか? 俺別にそういうのじゃないんですけど」
「おいやめろ気持ち悪い事言うな。そういうのはカッツォくんで十分だから」
「おい勝手にそういうの扱いするなっ!? 魔境の奴等だけだからなそれ!!!!」
千ちゃんはサンラクが気になっているらしい。まぁ、妹の想い人だもんね。そりゃ気になるか。
その本人は全く気付いてないっぽいけどな。つか多分、いや確実に怜ちゃんはリアルの方でも関わり無いだろうしな……困るなーこれ。
「いえ、なんでもありません。ハジメさんの御友人であれば、私も信頼出来ますので」
「ど、ども……」
【レアエネミー】
サンラク:ハジメ氏これどういう意図!? 俺なんか釘刺されてるのか!?
ハジメ:まぁ、ある意味そうとも言える
サンラク:なぜぇ!?
ハジメ:家庭の事情…ですかねぇ……まぁ、なんだ。千ちゃんの前ではあんま外道しない方が良いぞ、とだけ言っておく。最悪リンゴを両断する緩やかな手刀が飛んでくるぞ
サンラク:なにそれこわい
冗談とかじゃなくてマジだからな、これ。と、そんな事を言っていると既にカッツォくんの戦闘が終わっているではないか。
レベル差あっても戦えるのがシャンフロの良い所だよな。つーかなんだその拳に纏ってる赤いオーラは! かっこいいじゃねぇか後でPvPしようぜ!!!!
「腕を切り飛ばされる気しかしないから却下」
「でもカッコイイのは事実だな。ジョブは?」
「
「結構クセの強いジョブじゃん。ビルドは?」
「軽戦士ビルド……からAGIに振る分をHPとVITに振ってる。カスダメ前提だから、体力増やしてみたよ」
流石はプロの格ゲーマー。実に格ゲーマーらしい思考をプレイスタイルに反映させてやがる。
格ゲーの基本はまさしく『やられる前にやれ』だ。相手の体力削ってなんばのゲームだからな。多少のダメージを前提として、ガンガン攻めて削りまくっていく。
カスダメ前提だから気付けば死にかけているというリスクもあるが、それよりも回避や防御に使うスキルコストを攻撃に転用出来るのは大きいメリットだろう。シャンフロはスキルゲーだからな。
「サンラクは言わなくても分かるよ、どうせ紙装甲のSTR・AGI特化でしょ。ハジメさんは物理のSTR・TEC特化とか?」
「ざんねーん! AGI・LUX特化の幸運戦士でーす!!!!」
「DEX・TEC特化の技量戦士でーす。ちなみに俺も紙装甲」
「ヴォーパル魂全開ですわ!」
「そのヴォーパルなんとかは分からんけど、マジかよ紙装甲二人…? てかハジメさんは防具してるのに紙装甲? そんなに防御力低いの、その死装束?」
「これVIT補正0なんよね」
「「マジ???」」
大マジ。
【大剣者の死装束】……VIT補正が0の代わりに、STR・DEX・AGIに+200の補正が働く完全攻撃特化の防具だ。
それに加えてアクセサリーの血染めの鉄鉢巻きと首巻は最大HPを低下させる代わりに、スタミナ消費減少と攻撃力上昇のバフが常に付与される。
レベルに反して俺だいぶ紙装甲なんだよね。それら全部をプレイヤースキルでカバーしてる。ほぼスヴァブラと変わらんな!!!!
俺の心はいつでもスヴァブラにあるという事が再確認出来たという訳だ。あー、新作出ねぇかなー。或いはDLCとか。PvPも楽しいけど本編ストーリーも好きだからな続きやりてー!!!!!
「STR・TEC特化なのは千ちゃんの方な」
「メインに【武士】、サブに【弓使い】を据えています」
「マジの女武者じゃん……おたくの嫁さん源氏武者か何かですか?」
「千ちゃんは巴御前だった……?」
「ふふ、お褒めに頂き光栄です」
あかん俺の嫁が可愛すぎるっっっっ!!!!!!!
「ごめんサンラク、惚気のフラグ踏んだわ」
「お前後でギャルゲーの刑な」
「勘弁してよ……」
ハジメさんは沢山PvPをやり過ぎて戦闘になるとオートマでテクニックが出てきます。別に意識とかせず、身体が勝手にその戦闘に適切な技術を叩き込む、そういう身体になっちゃってるんです。
シャンフロでよく出るのは掲示板で『置き刃』と呼ばれているテクニック。要は某天パがやってる置き弾の刀バージョンで、ハジメさんは着せ替え隊とルティアの戦闘に巻き込まれた際、これで『
尚、それで仇討人に勧誘されたものの『え、嫌だ☆』とド直球で断られてルティアがしょんぼりしたのでハジメさんは着せ替え隊に追い掛け回される羽目になり、ニッコニコで皆殺しにした。