斎賀家の義兄はお強いらしい   作:全智一皆

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遠き日の彼岸より、此岸へと剣閃を 其の七

 

■  ■

「という訳でモブ1とモブ2です」

「誰がモブじゃ。あー、はい、ご紹介に預かりましたサンラクです。本日はお日柄もよく……」

「お見合いか何かなの? あ、オイカッツォです」

 

 顔合わせという意味では間違いではないな。だがセッちゃんは人妻だ、お見合いなんざ出来る訳ねぇだろ。つかさせねぇよ? しっかり成仏させてやらねばいかんのだ。

 

「……なんというか、凄いのを連れてきたわね、アーサー」

「まぁ、今は頼りないんだけどさ。しっかり間に合わせるから」

「そうじゃないわ。ク(・)ロ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)の気配を二つも付けた人、初めて見たわ。それに、灰(・)被(・)り(・)ちゃんの子供まで……何より、そんな人が彼(・)と一緒に居るなんて。ふふ、なんだか嬉しいわ」

 

 クロちゃん? 灰被りちゃん? 俺もペンちゃんも聞いた事がない単語が出てきたぞ?

 気配が二つ……呪い(マーキング)? もしかしてリュカオーンの事か? え、なに? セッちゃんってユニークモンスターをあだ名で呼べるくらい強いの?

 もしくは……アレか、もしかして知り合いなのか? じゃあ灰被りちゃんis誰? 灰被りちゃんの子供って言うと、エムルちゃんだよな。

 エムルちゃんの親の事を言ってるのか? 灰被りって確かシンデレラの事を指すんじゃなかったっけ……てことはお母さん?

 で、この場合はサンラクと俺が一緒に居るのが嬉しい……つまり大剣者関連? またかよ大剣者。お前マジどんだけの人と関わり持ってんの?

 

「彼女と彼は、結局一緒にはならなかったけれど……永い時を経て、こんな形で見られるなんて」

「あー、えっと……セツナ、その彼って言うのは、大剣者の事なのか?」

「大剣者……そうね、今はその名前で知られてるんだったわね。そうよ、彼は私達の仲間の一人だったの。私達の中では、最も彼女と仲が良かった人。ペットだけが家族だった彼女が、唯一心を開いたのが彼だった」

 

 ナイス質問だぜサンラク! こういう時に頼りになるなお前は!

 大剣者には仲の良い女性が居たのか……なんというか、意外と言えば意外だな。俺が戦った大剣者は、もはや正気なんて保ってなかったし。

 意識があるかないかも曖昧な状態で、けれど鋭い殺気と技を繰り出してくる剣鬼。アレがユニークモンスターじゃないなんて、信じられないくらいの強さだった。

 ウェザエモンと何度もやり合ったからこそ、大剣者の強さがより鮮明になっていったもんだ。動きも何処か似通ってたが、根本からして戦い方が異なってた。大剣者はまさに殺意の塊みたいな剣筋だった。

 そんな奴に、仲のいい女が居たとはなぁ……

 

「でも、彼ってすごく鈍い人だったのよ。冬に彼女が自分で選んだプレゼントに、『気を遣わせてしまってすまない』って言うくらいだったから」

「ごめんペンちゃん今この場で妖刀くんへし折って良いですか?」

「いやダメだけど??? それウェザエモンにダメージっぽいの与えられてる数少ないメインウェポンなんだよ? あっ、本当に壊そうとするな! ちょ、ダメだって! ほんとに止めろー!?」

「んなムカつく話聞いて怒り抑えろって方が無理な話だろうがよぉ!?」

 

 クリスマスプレゼントもらって最初に出る言葉が『気を遣わせてしまってすまない』だぁ!? 普通ありがとうだろうがよ!? よくもまぁそんな言葉出てくるな!!!!!

 つーか女からクリスマスプレゼント貰ったんなら普通なんかしら気付くか考えるかすんだろ!? それすら無かったのか!? あの剣鬼野郎にはクソボケ属性が付いてたってか属性過多だろうがよッッッ!!!!!!!

 

「あーいかんいかんいかん!!!!! 抑えてくれハジメ氏! その妖刀には俺もちょっと用があるんだ!」

「はぁ? どゆこと???」

「えーと……俺のユニークシナリオの主要NPCが、その大剣者とどうも浅からぬ関係らしく……」

 

 まーたかよ……マジで何なの大剣者。こいつまさかユートピア全体の主要NPCと関わり持ちまくってんじゃねぇだろうな? クソボケ属性があると知った以上、そこらで他の女にも想われてたとしても俺は驚かんぞ。

 ……いや待てよ? アイツを想う時点でそいつだいぶマトモじゃないのでは??? だって剣鬼だぞ? それに恋心抱くのは異常なんじゃねぇの? だいぶブーメランかもしれねぇけど。

 

「ユニークシナリオ全部に関わってんじゃねぇだろうな大剣者……まぁいいや。そこら辺は今度話すとして、セッちゃん。二人にもお話してあげて」

「えぇ。……墓守のウェザエモン、彼は私の夫だったの。けれど、小さなすれ違いで私は死んでしまって、彼はずっとそれを枷にしている」

 

 切っ掛けは小さなすれ違い。だが、その小さなすれ違いによってセッちゃんは命を落とし、ウェザエモンはそれを後悔し、自らの運命を墓守へと定めた。

  例え命尽きたとしても、亡き妻の墓を守り続ける———セッちゃんはそれを分かっていた。あの男は、ずっとそうするのだと。

 それが未練となったのか、セッちゃんはこの場所に現れた。そして、この場所に訪れた開拓者へと、提示する———

 

【ユニークシナリオEX「此岸より彼岸へ愛を込めて」が発生しました】

【受注しますか?】

 

 サンラクとカッツォくんがウィンドウへと指を走らせ、【はい】と了承を形にする。

 よし、これでお前らも改めてメンバーだ。しかと耳にせよ。

 

「生きていた頃の私が死んで、どれだけ経ったかは分からないけれど、私は今こうして此処に居る……けど、私は別に死んだことを未練には思っていないわ」

 

 セッちゃんが見上げるは、この千紫万紅の樹海窟ではあまりにも異質な枯れ木。こうなる前は、きっと見るも美しい桜が実っていたんだろう。

 ウェザエモンが倒れたら、また実るのかな? それともずっとこのままなのか……まぁ、周囲が彼岸花に囲まれているってのもあるから、これはこれでわりと絵になるけど。

 もし桜が実ったら、皆でお花見しに来ようかな?

 

「死とは終わり。終わってしまった過去に過ぎなくて、それは決して今の誰かを……未来に生きる人を縛ってはいけない。だから私は……今も私の墓(過去)に縛られ続けていることが耐えられない」

 

 まったく、自分の妻になんて事を言わせるんだ。同じ夫として恥ずかしい事この上ないぞウェザエモン。まぁ、それを気にする意識も無いんだろうけど……あー、腹立つ。本当に腹立つ。

 さっきの大剣者と言い、セッちゃんの仲間の男共はクソボケしか居ないのか? 他にも妻帯者居るんだろうか? 居たら是非とも其奴の話を聞きたい。場合によっては殴りたくなるかもだけど。

 

「彼は私が構築したプログラ……ええと、魔法を使って結界を構築した。月光の魔力を利用し、座標を次元の裏側へと『反転』させる事で、誰にも干渉されないように」

 

 気になるよねぇ、これ……プログラムとはなんぞや? やっぱシャンフロって単純なファンタジーじゃねぇよな、これな?

 神代は完全に未来を歩んでた。というかプログラムっていう単語が出る時点で、もう完全に地球存在するだろこれ。

 

「でも月が光を失う時……新月の夜だけは、その結界に僅かな綻びが生まれる。それを通じて、反転した空間へと入ることができる」

「そこに殴り込みを掛ける、て事だね」

「どうか、ウェザエモンを……あの人を、眠らせてあげてください」

 

 ……今じゃねぇかもだけどアイツに聞くか。あんまヒントにはならんかもだが。

 

【スヴァブラズッ友同盟】

ハジメ:おい歴史狂(教)師、貴様に問題を出す

ペンドラゴン:なんじゃいこんな時間に……お前は何時から俺の生徒になったんだ? まぁよろしい、なんでも投げてこい

ハジメ:プログラムっていう単語、或いは概念が定着し始めたのっていつ頃?

歴史狂:プログラム誕生の大まかな歴史としては、まず起源として19世紀の1801年にフランスの発明家ジョゼフ・マリー・ジャカールが、ジャカード織機っていうプログラム可能な織機を開発した。列車のレール変更とかにも使われてたパンチカードっての使うやつな

歴史狂:それから40年が経った1842年頃にチャールズ・バベッジの解析機関のためにエイダ・ラブレスが世界初のコンピュータプログラムを記述した

ペンドラゴン:それを元に、1940年になってようやく0と1の二進数を用いた第一世代の機械言語が誕生したんだ

歴史狂:ちなみにエイダ・ラブレスは発明家じゃなくて数学者な。ついでに貴族だった。あと人為的なプログラムミス……つまりバグの存在をその時から予見してた。世界最初のプログラマーって呼ばれてる凄い人だ

ハジメ:なるほど理解

あんりみ:お前ら個人で連絡しろやなんでグループで連絡してんだよバカなんか???

歴史狂:えっ!? つまり個人ならもっと詳しく解説していいって事ですかー!?

あんりみ:やべ墓穴掘った。おい助けろ対人狂

ハジメ:(*^^*)

あんりみ:ざっけんなおい! 逃げんなテメェ!!!!!

 

 はい既読無視。大丈夫、あんりみはこういう扱いしていいから。そういう奴だから。

 まぁ、地球に似た様な星って可能性も無くは無いけど……取り敢えず地球って仮定しとこう。だとしたらどっかにセッちゃん達がこのユートピアに来た方法———つまりは宇宙船的なもんがある筈だ。

 そこを調べればなんか分かるかな? まぁ、今ん所はヒントが全く出てないからアレか…そこら辺は考古学の分野だもんな。

 で……

 

「コイツら何してんの千ちゃん?」

「サンラクさんとカッツォさんがペンシルゴンさんを煽った結果、ペンドラゴンさんが二人を蹴散らしました」

「なるほど理解。お前ら懲りないねぇ。まぁ、俺も最初はペンちゃんがNPCに入れ込むなんて、と驚きはしたけれども」

 

 理由が分かれば単純な話ではあるけどね。

 刹那主義の天音永遠と、永遠を過ごした刹那……シンパシーを感じるなって方が無理な話だろうさ。本気で入れ込むのも大いに賛成だ。

 なに、期待には応えるさ。ウェザエモンをぶっ倒して、さっさとセッちゃんに土下座ぶちかましてこいってぶん殴ってやらねぇとな。

 

 

◆

 

 

 だがしかーし! それはそれとして息抜きは必要だよなっっっっっっ!!!!!!!!!!!

 つーわけで俺がやるのは———そう、『ネフィリム・ホロウ』だ! あんだけ言っといてやらないなんて勿体無い事は出来ねぇ! つかやりてぇ!

 いやいや、息抜きだけが理由ではないのだよ? 俺にだってちゃんとした都合(言い訳)があるんだぞ舐めるなよ。

 相手は騏驎だ。そう、ロボだ。巨大なロボ。ならやっぱりロボットのゲームをプレイしてそういった事への対策とか諸々を付けといた方がプレイスキル向上に繋がると言うかさ。ね?

 え、俺戦わないだろって? いや分からんじゃん。ペンちゃんとカッツォくんがボロ負けしてタゲが来るかもしれないじゃん。最悪サンラクと仙ちゃんでウェザエモン相手する事になるかもしれないじゃないか。

 だから俺がいざって時の為に練習しとく必要があるんですよ。これ必要過程だから。決してPvPしたいだけって訳ではないから。ちゃんとした都合です、信じてください。

 

「ふっふっふ……久しぶりだな、我が愛機———アサシンフライス(虫引虻)よ」

 

 ネフホロでは決して珍しくはない流線的なフォルムは、徹底した軽量化の証。しかしその機体が単なる紙装甲などではない事を示すかの様に、背中と両肩には追加のブースターが備え付けられている。

 その両手には一対のレーザーブレード発振器。近接武器のみを装備し、近付いて斬って即座に距離を取るという一撃離脱戦法をコンセプトとした完全オワタ式ネフィリムである。

 うーん、我ながら素晴らしい出来ではなかろうか? このフォルムと武装構成、なんと美しい事だろう。こんなにも一点特化を極めたネフィリムが他にあるだろうか? いや無い。あの錆ちゃんですらミサイルとかビーム装備してるし、同じスピード特化のサンラクですら銃持ってるのに俺一切装備してないもん。

 少しでも操作をミスすれば文字通り流星に成り果てるオワタ式……そのコンセプトは『一斬去ってまた一斬』。アサシンフライスという名前に恥じない一撃離脱戦法を可能とする最高の機体。芸術性に溢れているとしか言いようがない。これにはゴッホとテオもにっこりしてくれるに違いない。

 俺は好きだぞゴッホとテオ。ペンドラゴン(歴史狂)が熱弁してたからな。

 

「お前を駆るのは今日で暫くお預けだからな。新しい機体に新調する前に、記念の何人かぶった斬ろうぜ我が相棒!」

 

 格納庫を飛び出していざ外の世界へ! さぁ、久々のネフホロだ! 派手に辻斬りかましてやろうぜアサシンフライス!

 そこは荒廃した世界。基本的に目に映るのは瓦礫と瓦礫と瓦礫。たまに野良ネフィリム。ついでにプレイヤー。

 ネフィリム・ホロウはディストピアじみた世界観を舞台とし、プレイヤーが突如として空から降ってきた鉄の巨人———機衣人(ネフィリム)となって戦うというのが大まかなストーリー。

 ここで重要なのは、ネフィリムを使って戦うのではなく、ネフィリムにな(・)っ(・)て(・)戦うという所だ。

 そう、このゲームは従来のロボゲーやフライトシューティングゲームとは全く異なる、自分自身がロボになって戦うゲーム。

 レバーやハンドル、アクセルにブレーキといったマニュアル的機材が存在せず、自分の思考を反映させて身体を動かすという激ムズ仕様。両手両足を動かすだけでも初心者なら数時間は要するというのに、自分の身体には存在しないブースターは勿論、肩やら足やら腕やら背中やらに装着した武装をイメージして発射したりしなきゃならない。

 頭の中でロボの自分が戦うのを常にイメージし続けなければならないという、適正無い奴お断りな高難易度ゲーム———それがネフィリム・ホロウだ。

 これが勿体無いんだよなーネフホロは。この操作難易度が高くさえなければ、間違いなく神ゲーの分類なんだが。ストーリーも完成度高いし、バランス調整も結構良いし。

 幕末と同じくらいプレイヤースキル依存のゲームだから、適応出来ないやつはマジでとことん底で燻って終わるのが残念な所。マジで勿体無い。

 あのクソゲーマーであるサンラクもネフホロは普通に楽しいつってたからな。それだけで十分素晴らしい作品だとご理解頂けるだろう。

 

「さーて、誰と戦うかな……やっぱ錆ちゃんかなー? 結局倒せてないしな。同じ近距離型とは言え、やっぱミサイルとレーザー持ってる奴に高速接近はだいぶ無理があるが、なんとかそこを掻い潜れば……」

 

「待ってたぞこのクソ野郎」

 

 はっ、この声と聞き慣れた罵倒は……!

 

「お前は……!?」

「———よくも昨日は既読無視してくれたなテメェ」

 

 ダークブルーを基調に、主人公チックなカラーリングをした全体的に鋭利なデザインの中量系ネフィリム。背部に翼の様に装備されたパーツは、つい1ヶ月ほど前のアプデで追加されたビット装備に違いない。

 つまりは———

 

「あらー!!!! 墓穴掘って長時間歴史の授業に付き合わされて寝不足な∞りみてっどくんじゃないですかうぇーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 歴史の授業は楽しかったかなー!?」

「絶対殺す必ず殺す今すぐ殺す殺す殺す殺すコロスコロスころすころすころすッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「おっしゃやってやろうじゃねぇかボケカスがッ! ネフホロでもスヴァブラの様にボコボコしてやるよ!!!! PvP(デュエル)の開始を宣言しな!」

「1v1(デュエル)開始ぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」

 

 開始の宣言がなされるや否や、俺とあんりみ———こっちじゃMebius(メビウス)か———は同時に動き出した。

 右へ左へそして前へ! 両肩と背部の追加ブースターを交互に使い分けながら、縦横無尽に廃墟の空を駆け回って肉薄する。

 対してMebiusは大きく後退しながら、右手に持った実弾系のライフルで的確に俺の進路目掛けて弾道を引いてくる。全く、スヴァブラの時からそうだがコイツの嫌がらせは本当に厄介だ。

 Mebius……∞りみてっどというプレイヤーの強みとは何か? と聞かれれば、俺は間違いなく空間認識能力の高さだと答えるだろう。実際、それこそがコイツをコイツたらしめる要素だ。中学の時からの付き合いなんだ、よく知ってる。

 コイツはとにかく空間認識能力が異常なまでに高い。別に大して運動神経が良い訳でもない癖に、ドッジボールもソフトボールも悉く受け止めるし躱してた。

 大して頭が良い訳でもないのに、図形とか地理とか図工とか、そういうのだけは優秀だった。

 それがゲームに転用されると———コイツは、間違いなくプロに通用するレベルにまで強くなる。

 

「でぇあいっ!? 嫌らしい軌道に置き玉仕掛けてんじゃねぇぞ三下ァ!!!!」

「嫌がらせだから置き玉してんだろうがブァカがッッッ!!!! つか苦もなく避けてる癖して文句言ってんじゃねぇぞ格下がァ!!!!!」

「少なくともテメェよりは圧倒的に上だよ上下関係も分からねぇのか!? だったらここで理解(わか)らせてやるよオスガキが!!!!」

「誰がオスガキじゃ!!!! 脳天に弱者の文字を直に刻みこんでやらぁ! とくと味わえGradius(グラディウス)!」

 

 その掛け声と共に、Mebiusの背部の片翼が大きく拡がり、まるで羽が舞い落ちるかの様に小さなそれらが翼から離れ、空を走って飛び掛る。

 グラディウス———つい1ヶ月前のアプデで追加された新たな武装系列『ビット』に含まれるものの一つ。その名前が示す様に剣の形をした5個のソードビットが内包された翼型のパーツという、男心擽る見た目が特徴的だ。

 しかしその性能はめっっっっちゃピーキー! 適正がある奴が使えばオールレンジ攻撃によってあらゆる距離で隙が無い攻防戦を可能とするが、適正無い奴はそもそも起動する事すらままならない!

 ぶっちゃけ産廃の欄に名を連ねても仕方ないくらいの武器だが……この男が使うのなら、話は別なんだよなぁ!!!!!!!

 

「えあいっ! でやぁいっ!? とっひょほぉ!?!?!?」

「猪口才な! さっさと切り刻まれっふぼっ!?」

 

 ちくしょう防がれた! 回避に専念してる様にブラフかまして一気に肉薄したってのに、ビットとシールドで紙一重で防ぎやがったコイツ!

 伊達にスヴァブラで4位取ってねぇな、流石は我が友よ!

 

「だーっ!!!!! ウザったいんだよこのチビ剣共がッッッッッ!!!!!!!! 百ちゃんの従剣激(ソーヴァント)より100倍ウゼェ!!!!!」

「そら俺の方が扱い上手いからな! ことコレに関しては俺に勝るやつはそう居ないだろうさ! まぁレイドボスさんは分からんけど……」

「多分普通に対応するよなユラくんちゃん」

「それな」

 

 多分VR適正の数値だけで言えばシルヴィちゃん超えだろうし……マジでスゲェよあの人。しかもアレで全力じゃないんだぜ? 恐ろしい事この上ないとは思わんかね?

 チーターにブチ切れしてたユラくんちゃんは怖かったなぁ……思い出すだけで背筋が凍る。あの状態のユラくんちゃんとはちょっと戦いたくないな。俺は兎も角、ユラくんちゃんの方が楽しめなさそうだから。

 どうせならお互いに楽しめるPvPがしたいのだ、俺は。まぁ強い奴に限った話だけどね!

 

「チッ! ふんっ、あぶっ、せぇぇい!!!!!」

 

 上下左右前方後方東西南北あーもうガチでウゼェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!

 5個しかない筈のビットがまるで10個あるかの様に俺の周りを囲みながら攻撃してきやがる! こっちが叩き落とそうとしたらコブラ機動だったりクルビットだったりバレルロールだったしして全部避けやがって! コイツら本当にただのビットか!? 実は中に人が入ってたりしません!?

 

「クソっ、だったら———敵前逃亡!」

「逃がすかよ!」

 

 廃墟の隙間を縫うように、最高速を維持しながら剣の檻を掻い潜る。

 確かにビット兵器は強力だが、その分弱点だって存在する———それは、それ自体がエネルギーをクッソ食べるって事。

 自律稼働型の武器なんだ、遠隔操作にはエネルギーが必要不可欠。アイツの機体は中量系、とくれば大出力のジェネレーターなんて搭載出来る筈が無い。

 あの重量で最大限のパフォーマンスを発揮出来る程度の出力を確保したジェネレーターに厳選してる筈。そうなれば、エネルギーを使い果たしたビットはどうなる?

 使い物にならないビットはそれだけで無駄だし邪魔になる。だがそれは向こうも回避したい———なら。

 

「クソッ! もう充電切れかよ…!」

「っしゃ読み通り! やっぱ充電時間が必要だよなァ!」

 

 エネルギードカ食いのビットでフルパフォーマンスを発揮したいなら、何処かで必ず充電しなきゃならない! それこそ隙に他ならねぇぜ!!!!

 

「行くぜアサシンフライス———フルスロットルだ!」

 

 脚部のスラスターも追加ブースターも全部点火して、最高速にさらなる加速を上乗せして肉薄する!

 

「シールド…!」

「間に合わねぇよバカがッ!!!!」

 

 左手から発生したシールドの隙間を縫い、下から払う様に振り上げたレーザーブレードがMebiusの左腕を天へと放り投げる。ネフィリム越しでも、アイツの顔が苦悶に歪んでるのが目に浮かぶぜ。

 本来ならこっから去る所だが、ここは美味しくもう一口頂くとしますかね!

 

「ビットあるならそのライフル要らねぇだろ!」

「おい止めろぉ!? 貴重な威嚇武器がーっ!!!」

 

 よっしゃ! 後は後退して、一撃離脱でやっていけば

 

「———なーんてな?」

 

 無数の閃光が、一瞬でアサシンフライスの追加ブースターを焼き払う。背部パーツのデフォルトブースターで、先程までの速度とは比べ物にならない低速で俺は大きく後退した。

 

「ハッハ! ハッハッハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 綺麗なもんだなぁ、ブースターの花火ってのはァ!!!!」

「おいおい……!? おまっ、」

「確かにジェネレーターはこのネフィリムでフルパフォーマンスを発揮出来る様に厳選してある———そう、ビ(・)ッ(・)ト(・)に(・)よ(・)る(・)フ(・)ル(・)ア(・)タ(・)ッ(・)ク(・)が出来るようにァ!!!!!!!!」

 

 ——————マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?!?!?

 つい先程までのソードビットとは違い、先端に穴が空いた細い三角形の様な形をしたビットが俺の真上に展開されていた。

 俺が逃げるのを読んでたってのか!? ビットの充電切れを狙うのを分かってた!? いや違う、コイツ———俺(ハジメ)狙いでジェネレーター変えた上で挑んできやがった!?

 

「そんなに!? わざわざそこまでしますかマイフレンド!?」

「おうさ! テメェと違ってこちとらネフホロにずっぷりよ…! ソードビットとガンビットの同時操作はちと扱い辛いが、慣れればなんとかなるってなァ!」

「待て! 話せば分かる!」

「いいや分からないねぇ!!! さぁイっちまいな! グラディウス、ダライアス!!!!」

 

 ……ふ、ふふふふ……!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 いいぜコンチクショウが! たかが追加ブースターが無くなっただけだ! せめて一矢報いてやるッ!!!!

 たたで死んでやる程にブレードマスター・ハジメの命は甘かねぇんだよマイフレンドァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 その後、ハジメさんは何とか相打ちまで持っていきました。




・ブレードマスター・ハジメ
ネフホロにおけるハジメのPN。通称ブレマスのハジメ、或いはブレマスさん。
最初は興味本位だったけどやってみたら想像以上に楽しくてバチくそやり込んだ結果、『一斬去ってまた一斬』というコンセプトでブレオン機体を作り出して辻斬りしまくって2位にまで滑り込んだ相変わらずの対人狂。
途中まではルストに善戦していたのだが、ここぞという時に操作をミスった結果として臨界速(ブラディオン)のサンラクみたく星になってリタイアした。現在はランキング圏外。
愛機はアサシンフライス。意味は虫引虻。レーザーブレードのみを装備し、背部と両肩部に追加ブースターを装着した軽量系ネフィリムで、コンセプトは『一斬去ってまた一斬』。元ネタはACfaのブレオン機体。

・Mebius
ネフホロにおける∞りみてっどのPNであり愛機の名前。
ハジメさんに誘われてネフホロを始めた結果、見事に沼ってしまい、かなりやり込んでいる。現在はスーパー玉男を下して2位の座に着いており、打倒ルストを目指して日々挑みまくっては良い所で敗北してはスヴァブラに戻るという毎日。
愛機はPNと同じくMebius。全体的に鋭利なデザインをした中量系のネフィリムであり、ダークブルーを貴重とした主人公チックなカラーリングをしている。デザインとカラーリングの元ネタはダンボール戦機のディ・レギウディアとアキレスD9。
あんりみの常軌を逸した空間認識能力をフルで活用出来る様に背部には翼状のビットが装備されており、右翼がソードビットのグラディウス、左翼がガンビットのダライアス。
右手に持った実弾系ライフルで敵を牽制しながら、左手はシールドで防御を意識し、敵の注意が逸れた所を合計10個のビットがフルアタックを仕掛けるという、あんりみの空間認識能力ありきの特殊戦法が特徴だが、二つもビットを装備している為、持久戦には不向き。今回はわざわざハジメさんをぶち殺す為だけに大型ジェネレーターを無理やり搭載した。
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