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シャンフロのNPCは、はっきり言ってしまえば超高性能なAIが搭載されているのではないかと疑ってしまう程にリアルな受け答えが可能な存在だ。
職業が『剣鬼』で、尚且つPKKばっかやってきた俺が言うのもなんだが、ぶっちゃけ個人的にシャンフロの凄い所はココだと思ってる。
マジでAIがスゲェんだよ、シャンフロはさ。そこらのNPCですら、実際にそこに存在している人間ですか?って疑いたくなるくらいにリアルなんだよ。
リアルタイムで質問に答えてくれるし、なんならこっちの表情とか雰囲気から察しまでしてくる。PvPの為とは言え、色んなゲームをやってきた俺としても、ここまでNPCに感情が込められているゲームは中々無いと断言出来る。
そんな中で、俺は個人的に気になる……と言うか、まぁ……感情移入してしまっているNPCが居る。
「千ちゃんがシャンフロやり始めて、早くも数週間か……レベルも順調に上がってきたし、千ちゃんの方もかなり楽しんでくれてるみたいでありがたい限りだよ」
「えぇ。シャンフロでの身体の動かし方も、かなり慣れてきました。それで……何故、夜にこの……【千紫万紅の樹海窟】へ?」
セカンディルに続く次の街、サードレマ。シャンフロの冒険は、このサードレマでかなり分岐すると言っても良い。
サードレマから分岐するエリアは合計で三つ。
サードレマを真っ直ぐ進んだ場所、つまりは北に位置する栄枯斉衰の死火口湖。
東に位置する【千紫万紅の樹海窟】、西に位置する【神代の鐡遺跡】。わりとここの攻略順は大事だと思ってる。
なんせ玲ちゃん———サイガ-0が現在使用している装備である【
いやー……【
しかもこれユニークだからね。つまりもう手に入らないって訳さね。めちゃくちゃ堅実なプレイをする玲ちゃんでもユニーク発生出来るんだから、シャンフロってマジでそこら辺もリアルというか……凄いよね(小並感)。
まぁ、それはそれとして。
「今日は満月の日でしょ? 実は満月の日にしか会えない人が居るんだけど、千ちゃんにも会ってほしくてさ」
「……狼男ですか?」
「うーんシャンフロのNPCが誰も彼もモンスターじゃないんだよなー! そりゃ満月の日にか会えないとなれば思い浮かべるのも無理ないけどさ!?」
ぶっちゃけ仙ちゃんと会わせるのはどうかなー…と考えもしたけど、まぁ個人的には会わせたいんだよな。
きっと仙ちゃんも、彼女に感情移入しちゃうだろうなぁ……だって俺ですらこうなんだもん。というかあの外道鉛筆……ペンちゃんですら感情移入しちゃってるんだから、相当の人誑しだぜ。
え、浮気じゃないかって? いやその人既婚者だから。仲のいいご近所付き合いとかそっちだから。……俺ってママ友って判定で良いのかねこれ? どっちかと言うとパパなんだけども俺。
「どっちかと言うと幽霊だよ。そんで以て女の人」
「幽霊、ですか……はい? 女???」
「おうふ…仙ちゃん目が怖いよ……」
いや違うって! 浮気じゃないってッッッ!!!! 俺が仙ちゃん以外の女性に振り向く訳ないじゃんっ!? 結婚してこの片、一度だって他の女性に目移りした事ないんですが!?
信じてくれマイハニー! 俺は誓って浮気なんてしてないんです! というかさっきも言ったけどその人既婚者なんだって!!!! めちゃ物騒な墓守が旦那さんなんだって!!!!!!
「この通り! 誓って浮気なんてしてません! というか相手NPC! 流石にそこまでゲームに魂売ってないから!!!! 俺は仙ちゃん一筋バーニングラブだからっっっっ!!!!!!」
「………ふふっ。勿論、分かっています。少し揶揄っただけです」
「ま、まじ? それにしたって目がガチだったんですけど……」
「いつもの仕返し、ですよ」
ぬぅっっ!!!!
くそぅお茶目な所見せてくれやがってありがとうございます! 柔らかに笑って首を傾げる様なモーションはあかん惚れてしまいます! けどさっきの目はマジ止めてね! 心臓止まるかと思ったから!
いやー焦った、ガチで焦った……鯖癌で
ちなみにϞᚦ隊というのは、鯖癌で出会った4人のプレイヤー集団の事だ。
何処のサーバーで出会ったのか、何処のサーバーで仲良くなったのか、何処のサーバーで結成したのか……これといった詳細な経緯は不明ながら、ひたすらに癖が強く、それでいてプレイスキルがバケモノな奴等の集まりだった。
うーん……思い返せばマジで事件しか起こしてねぇなアイツら??? よくもまぁあんな奴等と一緒に鯖癌してたよな俺……いや鯖癌だからか?
鯖癌のオンラインが終了してから、交流無くなったからなぁ……何してんのかなー、アイツら。元気でやって……るか? 鯖癌のギリシャ文字サーバーの奴等ってマジ犯罪者予備軍だからなぁ……なんかしら犯罪しても俺は驚かんぞ。
仙ちゃんに会えた俺は幸運だったという訳か……
まぁ、閑話休題。
「さて———此処だよ」
「…? ただの行き止まりの様に見えますが……」
「実はねー……ここだけ、【千紫万紅の樹海窟】特有の光る苔がいつもみたいに光ってないんだよねー」
「あ……」
「で、ここに手をかざすと、だ」
苔に覆われた場所が崩れ、そこに隠された一本の道が現れる。
まったく……シャンフロの運営は何考えてんだろうな! こんなギミックどう足掻いたって発見出来る訳ねぇだろうがよ!!!!! ペンちゃん……阿修羅会はよくもまぁ、こんなほぼ発見不可能なの見付けたもんだよ……
ちなみに俺は阿修羅会の一人を執拗にPKKしまくって吐かせました。正直楽しかった、悔いはない。謝りもしない。だってPKだもん。悪いのPKだから、PKKする俺は正義だから。これ絶対ね。
「すごい……尋常ではない観察眼が無ければ、こんな道は発見出来ません。やはりハジメさんは凄いですね」
「お褒めに頂き光栄だけど、生憎と聞き伝なんだよねぇ。スヴァブラの頃からなんだけどマップ探索は苦手でさぁ……気が付いたら武器の耐久値ギリギリまで狩りまくっちゃう悪癖は直さないと」
もはやどのゲームやっても戦闘からは逃れられない
うーむ、やはり対人狂か……この呼び名が自分でもしっくり来る辺り、だいぶ手遅れかもしれない。
そんな事を考えて進んでいれば、遂ぞ薄暗い洞窟の先———出口となる場所から、光が差し込んだ。
暗闇に慣れた視界を照らす月光に目が眩み、顔を顰めてしまうのはほんの数秒の事。視界が光に慣れていき、閉じ掛けの瞼を開けば———
「———きれい」
そこには、地面を彩る様に咲き誇った彼岸花。その中心には、花が枯れながらも決して朽ちることなく天を目指す様に立ち続けている木があった。
隠しエリア……【秘匿の花園】。或いは、名も知れぬ誰かの墓標…とでも言えばいいか。
木の根元には、一つの墓。その隣では、透き通った女性が歌を口ずさんでいた。
中世的な建築物、衣服が主なシャンフロにおいては異質…と言うよりも、俺たちプレイヤー、もとい現代人なら見慣れた様な格好をしている彼女こそ、俺が仙ちゃんに合わせたかったNPC。
「———〜♪……あら? 今日はアーサーと一緒じゃないのね、ハジメ」
「こんばんわ、セっちゃん。今日はペンちゃんには内緒で来てるんだ。君とこの人……俺の嫁さんを会わせたくてね」
「まぁ…!」
ユニークNPC———【遠き日のセツナ】。
またの名前を……天津気・刹那。シャンフロを代表すると言っても過言ではない、七つの最強種が一体———【墓守のウェザエモン】の妻だった女性だ。
◆
「それで、私が仕事で忙しい時にはよくダジャレを言ってね……反応に困ってたり、つい冷たい目を向けちゃうと凹んでたりしたのよね」
「ふふっ、とても可愛らしい御人だったのですね。ですが分かります、ハジメさんにもそういう所が……」
「あら、ハジメにも? なんだか意外ね」
めっっさたのしそー……
うん、まぁ……分かってたけどね? こうなる事は。と言うかこうなる事を望んでたまであるかもしれないけど、それにしたってスゲェ楽しそうやん。
やっぱアレか、ママ友ってのは出会うとこうなるもんなの? 俺ぼっちなんですけど。
まぁ……第3ウェーブ辺りで確実に乙るんだけどね。
マジであれどうやって攻略すんだよ……いやね? ウェザエモンを相手しながら騏驎を離す、騏驎を対処しながらウェザエモンを対処するまでは行ける様になったんだよ? 多分あれが第2フェーズくらいだろうし。
けどさぁ……そっから時間経過してから放ってくるあの咆哮がどうにもねぇ。マジでアレどうすりゃ良い訳? 回避も防御も不可能なんですけど???
あれかな、仲間が入れば蘇生で対処可能だったりすんのかなー? でもなぁ……1回だけペンちゃんとタッグ組んだけど、ペンちゃんが居るとぶっちゃけやりにくいんだよなぁ。
俺と同じくらい動ける奴が二人くらい居れば行けるかな? それこそϞᚦ隊の6neLyとか…あとはサバくんちゃん? サバくんちゃんはシャンフロやってるから良いとして、Ϟᚦ隊は連絡手段が無いからなー……詰みです、出直して参れ。
あー、でも……
やっぱ詰みかぁ……
「でも……見てられねぇもんなぁ」
ユニークモンスター……【墓守のウェザエモン】。
セっちゃんの話を聞く限りでは、それはもう堅物だったらしい。殆ど浮かべてる表情が仏頂面なくらいには。
けど……ウェザエモンは確かにセっちゃんを、天津気刹那という人間を愛していた。だからこそ、下手な嘘ですれ違って、最愛の人を死なせてしまって……それを枷みたいに背負って、永劫の墓守になった。
例え自分が朽ちたとて、彼女の墓を守り続ける生ける屍と成り果てたとて……構わない、と。
見てられんし、やり切れんし、ムカつく。
お前がそうしている間にも、その奥さんは亡霊になってまでお前を心配して、この場所で待ち続けているってんだよ。
お前がすべきは、墓守なんかじゃない。
彼女の墓を守る事なんて、些細な事だろ。
お前はさっさと成仏して……何百年も、何千年も、幾星霜という長い時間を費やして、お前を待ってくれている奥さんの元に行って、謝って、仲直りする事じゃないのかよ。
「……詰みとか何とかまだ速ぇっての。必ず攻略法がある。アレを乗り越えて、アイツを終わらせてやれる方法が確実にある筈なんだ。はぁ…やっぱ【神代の鐡遺跡】もっと探索した方が良いのか? あ、そういや【去栄の残骸遺道】って探索し尽くしてねぇよな…もしかして彼処になんかあったりするか…?」
「——め——————ハジメさん?」
「はぁいっ! なんでしょう千ちゃん!」
「何やら考え込んでいる様でしたが……どうかしましたか? 顔色が良くありませんよ」
「あらぁ……マジで?」
仙ちゃんに心配させてしまうとは……俺もまだまだ夫としては未熟よな。いかんいかん。これではお祖父様にドヤされてしまう……あの人は雰囲気がマジで和ゲーのラスボスのそれなんよね、ガチ怖いから勘弁しちくれ。
「んー……まぁ、ちょっとね。男と言うか、何と言うか……
「おや……隠し事ですか? いけませんよ、ハジメさん」
「そうよ、ハジメ。夫婦の間に隠し事なんてしちゃ、千の機嫌を損ねちゃうわよ?」
「それは勘弁願いたいわぁ……というか、セっちゃんがそれ言うのあんまり洒落にならない……」
「ふふ、あの人のが移ったかしら?」
「流石にウェザエモンもブラックジョークじみた駄洒落は言わんかったでしょ……だよね? 流石にそうだよね? そうじゃなかったら俺はマジで1発は殴らんと気がすまんよ???」
仮にそうだとしたら笑えんぞウェザエモン。そら冷たい目の一つや二つくらいされるよバカちんが!!!!
「んー、まぁ、確かに。ここまでセっちゃんと仲良くなって、黙ってますは通らんか。じゃあセっちゃん……千ちゃんにも、託してもらえる?」
「———えぇ。千、これから離す事は他言無用でお願い。とても……大事な話だから」
「勿論。約束は守ります———心して、聞かせて頂きます」
【ユニークシナリオEX:此岸より彼岸へ愛を込めて が発生しました】
・Ϟᚦ隊
何処のサーバーで知り合ったのか、何処のサーバーで仲良くなったのか、何処のサーバーで結成されたのか……それら一切が不明ながら、全てのギリシャ文字サーバーに訪れては何かしらの事件を引き起こした少数精鋭のプレイヤー集団。PNに数字が入っているのが特徴。
大小異なる大口径の二丁拳銃で両手を粉砕して文字通りの人間凶器を振り回す
基本的に内ゲバばかりだったが、γのガンマンやΦの野人をして『あの四人が協力すれば一サーバー全体を相手にしても勝ち抜けるかもしれない』と疑わざるを得ない程の連携力を持っていた。
δサーバーに遊びに来た所でハジメと遭遇し、初の全滅を経験。以降はハジメを狙いながら交友を持つ様になったが、鯖癌内におけるフレンドであった為、鯖癌のオンラインサービスが終了してから交流が途絶えてしまった。