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はい、負けました!!!!!
いや分かってた事だけどもね。流石はユラくんちゃん、幕末に人生捧げてると言っても過言ではないプレイヤーなだけはある。普通にボコボコにされました。
前みたいに片腕持っていけるかなーとか考えてたけど、やっぱ甘い夢だったねぇ……まぁ、あの時は節分イベントの報酬争奪戦の後だったからなー。ユラくんちゃんでも、流石にあのイベント後のタイマンはキツかったんだろう。
逆に言えば弱体化してても片腕持っていくだけが精一杯ってあの人マジで何なの? PvP歴なら俺の方が上の筈なんだけどなぁ……世界は広いね、やっぱ俺より強いやつは何人も居る。だからこそPvPは止められんぜ。
勝ち越せなかった奴に勝ち越した時の快感は忘れられんのさ……まぁ、プレイヤー相手で俺が勝ち越せない奴はマジでそんくらい強い人達なんだけども。
幕末ならユラくんちゃん、ギャラクシアヒーローならシルヴィちゃん、
ネフホロだと
なんせレーザーブレードしか着けてないからね!!! 武装はレーザーブレード二刀流、軽量スピード特化の機体にさらに追加ブースターを装備した完全オワタ式機体よ!
そりゃ勝率安定する訳ねぇわな。俺よく事故死してルスちゃんに怒られるもん。私と戦ってから死ね!だとさ。全くその通りです、はい。
まぁ、閑話休題。
現在はシャンフロ。現実では遂に夏休みが始まり、初心者が増えてきたシャンフロでの事だ。
サードレマの人通りの少ない裏路地にある小さなカフェ———【蛇の林檎】の店内にて、俺はとあるプレイヤーと密会をしていた。
「いやー罪な男だよねぇ、君は。まさかゲームにまでお嫁さんを連れてくるなんてさ」
「よせやい照れるぜ」
「欠片も褒めてないんだなー、これが! あのね、君自分がやった事の重大さ分かってる?」
青筋立てて指を向けてくるこのプレイヤーはペンちゃん———もとい、アーサー・ペンシルゴンという女。
シャンフロでは俺がお世話になってるPKクラン【阿修羅会】のナンバーツーに位置しており、なんかすげぇ大袈裟に『
ペンちゃんとの出会いはユナイト・ラウンズ———『世紀末円卓』の通称で親しまれるクソゲーだ。なんだっけ、鉛筆王朝だっけ? なんかプレイヤーの癖してラスボス的立ち位置に着いてたんだよな。
面白そーと思ってその軍と家臣の6割くらいキルしてたんだけど、気が付いたら城が爆発してた。クソゲーマーとプロゲーマーが手を組んだらこうなんだなーってのがよく分かりましたね、はい。
それはそれとして、ペンちゃんはシャンフロだとセっちゃんに感情移入している、確かな同志であるのだ。そういう訳で、俺とペンちゃんはたまに密会をしてはウェザエモン攻略について色々とお話している訳である。
「そりゃ分かってるよ。やっぱ既婚者同士だから話がすげぇ盛り上がるんだなーこれが。途中なんかウェザエモンの過去話とか俺の話とかもう色々と……」
「人に黙ってセっちゃんに会いに行って早々に自慢話とは相当死にたいらしいね! 分かってる!? セっちゃんもウェザエモンもユニークシナリオなんだよ!?」
「だから分かってるって。そうかっかするんじゃないよペンちゃん。何もセっちゃんの願いを叶えてやりたいと思うのはお前だけじゃないんだ。俺だって考えた上での判断だ」
「じゃあ、その考えとやらの説明。場合によっては君のPKK行為を嫁さんに晒す」
「え? 千ちゃんに晒す前に永遠にお前
「これだから対人狂はさぁ!!!!」
寧ろ何故出来ると思ってんだ? バカなのかい君は?
君が俺をスクショして掲示板に乗せるより先に俺はその首斬り落とすし、スポーン地点まで駆け抜けてリスキルするくらいの事は余裕で出来るんだぜ?
「まぁ、取り敢えず説明として……PvPガチ勢の俺から見ても、千ちゃんは十分に動けるタイプだった。古武術のお陰か、或いは千ちゃんのVR適正が高いのかは分からんけど、ソロで大蛇を相手してほぼノーダメだったからね」
「それだけじゃ安心材料にはならないよ。単にリアルで武術を習ってるからいける、じゃ通らないでしょ」
「案外そうでもない。さっき言ったろ?
「…なるほどね。そういう所も抜け目ないねぇ、お嫁さん利用するみたいな形にしちゃって罪悪感ないの?」
「その誠意はリアルで沢山示したから無問題」
仙ちゃんにもセっちゃんにも酷い事しちゃったからねぇ……ウェザエモンの情報を抜くなら、セっちゃんの方が早いのは事実なんだけども、とは言え申し訳ない。
仙ちゃんにはしっかりリアルの方でお詫びをしました。甘味やらマッサージやら手伝いやら色々と。マジでごめんね仙ちゃん。
罪悪感が半端ではないので、新月の日になったらセっちゃんにも謝りに行きます。霊体だけどご飯食べれるのかな……お供え物で饅頭とか持って行った方が良いかな?
「ウェザエモンの攻撃はぜーんぶ古武術なんだ。
「だから同じ古武術の経験者を、って事?」
「そゆこと。経験者が居るかどうかで、わりと変わるからね。とは言え、千ちゃんはまだレベル50までいってないからなぁ……まぁ、そこら辺は追々解決していくとして。ペンちゃんの方は? なんか収穫あった?」
「結構デカイのが釣れたよ———
「………………マジ?」
「だよねー、私もそれ思った」
サンラク。クソゲーマーにしてツチノコにしてはぐれメタルスライム。或いはμ鯖のサイレント・キル・幼女ともでも言うべきか。
クソゲーを愛し、クソゲーに生きる男と言っても過言ではないくらい、基本的にクソゲーばっか遊んでるヤベー奴だ。まぁ、俺が初めて会ったのは鯖癌だったけど。
マジか、あのクソゲーマーが神ゲーをプレイし始めたか……どういう心変わりだ? 奴は遂に人の心を取り戻して子供らしさを得たとでも言うのか?
「何でもフェアクソをクリアした影響で燃え尽き症候群になりつつあったんだとか」
「フェアクソ!? あれクリアしたん!? マジかよアイツすっげぇなおい!!!!」
フェアリア・クロニクル・オンライン———通称『フェアクソ』。クソゲーオブザイヤー受賞おめでとう待ったなしのクソゲーであり、多分クソゲーの中でもマジのマジでゴミみたいなクソゲー。
悪い所があり過ぎて逆に良い所を探し始めちゃうレベルのゲームで、クリアする事自体がほぼ不可能なんでは? と匙を投げ出したくなるレベル。
しかもそれが主にヒロインの所為で。というかフェアクソがフェアクソと呼ばれる要員はほぼ9割くらいコイツに集約されていると言っても過言じゃない。
詳しいなって? 別にプレイはしてないぞ。だってPvPないもん。∞りみってどがプレイしたらしいんだけど、メールで俺に
『はなしきいて』
って送ってきたんだよね……すごい精神状態だったよアイツ。なんでもサブヒロインを無人島に置き去りにされたのが相当堪えたんだとか。
流石の俺も慰めずにはいられんかったね。あんな絶望しきった∞りみてっどの声はもう聞きたくねぇぜ俺は……
「なるほどなるほど、サンラクがシャンフロをねぇ……そうなると、カッツォくんも来るな。間違いない」
「その根拠は?」
「『サンラクとペンシルゴンが神ゲーで楽しんでるのに俺だけ大会に向けて調整? ……あの二人だけ楽しんでるのなんか腹立つな…』」
「ぶふぉ!? ちょ、やめっ……あはっはははははは!!!!!!! うっま!? カッツォ君のエミュ上手くない!?」
「カッツォくんならこれ言うだろー! 絶対始めるってシャンフロ!」
「やば、もうイメージ出来てきた……あー、でも言われると確かにねぇ。カッツォ君もシャンフロをやるとしたら……うん、かなり現実味を帯びてくるね」
「役割組むとしたら、俺、サンラク、セっちゃんがウェザエモン。ペンちゃんとカッツォくんが騏驎って所かな? まぁ、第3ウェーブが不明な以上、もしもの場合はサンラクかセっちゃんを騏驎側の対処に回す可能性もあるけど」
現状、ソロでウェザエモンに挑んで第2ウェーブまで行っているのは俺だけ。そこにクソゲーという理不尽を経験値としてプレイヤースキルに変換してるサンラク、古武術に詳しい仙ちゃんが加われば、おそらくウェザエモンへの耐久は問題無し。
問題なのは騏驎だ。コイツがマジで厄介。ネフィリム持ってくるか錆ちゃん連れてきたいよマジで。
確かカッツォくんはキャバクラやってたよな? キャバクラ経験者なら騏驎の対処に1割でも優位は取れるだろ。あ、ちなみに店とかの方のキャバクラじゃないよ? キャバリー・クライシスっていう格ゲーがあるんです、そっちの方です。
流石に本人の顔が女顔だからと言ってキャバクラはいかん。現役の格ゲーのプロに殴られちゃうよ俺。
「そうだね、問題なのは第3ウェーブ……あの即死範囲攻撃を何とかしないと。それに関する情報は?」
「収穫無し。セっちゃんからそれらしき言葉は出なかった。情報があるとすれば、おそらく神代に関するエリアかな。施設やら諸々を片っ端から探さないと。他にあるとすれば……そうだな———別のユニークシナリオEXとか、かな?」
「……と言うと?」
「【兎の国ツアー】ってあるだろ? あれさ……多分、あのクエストだけで終わりじゃないんじゃね?」
シャンフロに出現するレアエネミー【
ヴォーパルバニーの国『ラビッツ』に招待され、【兎食の大蛇】というモンスターを討伐する事で魔法【エンチャント・ヴォーパル】が貰えるという内容のユニークシナリオだ。
俺が思うに、多分このユニークシナリオには続きがある。なんせシャンフロ、狂気じみたクオリティと設定が積み込まれた世界観を持ったゲームなんだぜ?
このシャンフロの世界にある『国』がさぁ……1回しか来れない、なんてショボい内容してる訳ねぇじゃん?
「おそらく致命武器は必須。その上で相手も自分よりレベルが高い事が条件。それらを加味した上で他に条件があるとすれば……耐久時間、或いは
だいぶハードな難易度ではあるが、そこはシャンフロ。シナリオフラグが鬼畜なのは今に始まった事じゃない。ウェザエモン戦の為のユニークシナリオの時点でだいぶクソ極めつつあるからな。
「うーん、確かに有り得なくはないけど……今はそっちを優先するメリットは無いかな。それに、私達よりも高レベルのモンスターでしょ?
「そこだよなぁ…はぁ、やっぱ地道にマップ探索していくしかねぇかぁ……いや、その前に俺は千ちゃんのレベリングの手伝いをせにゃならんな」
「宛はあるの?」
「【羅刹天の洞穴】。『剣鬼』のユニークシナリオで訪れた隠しダンジョンがある。落ち武者エネミーばっかで対人戦の練習にも丁度良い。オマケに経験値も豊富」
「え、いいなー。私にも教えてよ」
「ウェザエモン戦が終わったら教えたるよ。さて……そんじゃ俺はここで」
「そだねー。取り敢えずは解散しよっか」
さぁて。
———サンラクをおちょくりに、尚且つペンちゃんと阿修羅会をPKKしに行くか☆
◇
シャンフロを始めて間もなくして、ユニークシナリオEX【
サードレマの門前に着くなり、いきなり「Animalia」というプレイヤーに声を掛けられて止められたかと思えば、いきなり外道鉛筆……もとい、アーサー・ペンシルゴンとその仲間達に攻撃を仕掛けられる始末。
どうやらユニークシナリオの情報を吐いてほしいらしいが……サンラクとしては、自分が独占しているユニークシナリオを吐くなんてバカな事をするつもりは欠片も無い訳で。
というか、この外道鉛筆に敗北を認めるとかそもそもナンセンス! 絶対に返り討ちにするか逃げ切るかして煽ってやるからな!
「———
斬ッッッ!!!! と。
妙に発音の良い英語が発せられると共に、サンラクの目の前に立ちはだかっていた阿修羅会のプレイヤー達が、悉くに斬り伏せられた。
「なっ…!? ちょ、ハジメ君!?」
「ハッハァ!!! 文字通りの助太刀(ついで)に来てやったぞサンラクよう!」
「マジかよハジメ氏ありがてぇ!!!! なんか本音が見え隠れした様な気もするけどざまぁみやがれペンシルゴン!」
「これだから対人狂はさぁ!!!!!!!」
PKある所にハジメあり! PK狩りの狩人とはつまりスリーピー・ハジメその人! 辻斬り横行、負の連鎖! PKKという合法的PvPに則って貴様らの首を寄越せ馬鹿共がァ!!!
「今は千ちゃんが居ないんだ……つまり今ここに居るのはPK専門の辻斬り剣鬼! 首とアイテム諸々置いて行けやァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「スリーピー・ハジメ!? PK狩りの剣鬼まで来たの!?」
「やっほーAnimaliaちゃん! 危ないから下がっときー! 今から辻斬り横行させるからさ!」
「スリーピー・ハジメぇ…!!! 何度オレたちの邪魔をすれば気が済むんだよ!?」
「テメェらがPK辞めれば考えてやるよダボ共がッッッ!!!!!」
思考処理速度を加速させる【
首斬間部、千刃雅正。
破壊属性を持ち、敵の首を断つ事で武器そのものが『強化』される特殊な性能を持ったユニークウェポン———それが首斬間部である。
「オラオラどうしたぁ!? 数人掛りの癖して1ダメージも与えられねぇか!? 俺のVITはレベルに反して高くねぇぞ!!!!」
「そら死装束だからな! なんだっけ、服装は心の表れだっけ?」
「まさに俺にピッタリと言う訳だ! つーか半裸に鳥頭の変態に言われたかねぇんだけどなァ!? 趣味か何かですかー!?」
「んな訳ねぇだろうが!!! どさくさに紛れてキルしてやろうか!」
「幕末でも鯖癌でも一度も俺を暗殺出来なかった奴にキル宣言された所で想い人取られて嘆いてる哀れな負け鳥さんの慟哭にしか聞こえないんだよねー俺!!!!!!」
「誰が負け鳥だゴラァ!!!! 浮かれポンチに言われたかねぇっつーの!!!」
「君ら味方なのか敵なのかどっちなのかなぁ!?」
片手間に阿修羅会のPK共の首を切り飛ばしながら、流れる様に煽り合いへと発展するのがハジメとサンラクという人間がどういう関係なのかを理解させてくれる。
幕末に鯖癌、ネフホロに世紀末円卓など諸々。PvP要素があるゲームであればクソゲーにだって手を出してきたのが斎賀一……もとい廻狂一という男である。
そうなれば必然的にサンラクとも関わりがあるのは当然の事。そのプレイスタイルから、PvPの経験だって腐る程ある程度には仲良しなフレンドである。
「おらさっさと街入れ! そんで後でフレ登録しようぜ!」
「それは良いけどもうちょっとヘイト集めてくれハジメ氏!!! 俺まだレベル高くねぇから!」
「生憎とプレイヤーにヘイト集中スキルは効かないんだなー!!! 野獣なのに効かないって変な理屈だよな! 俺も含めて!」
「自覚のある獣程厄介なもんはないよ全く…!」
「お褒めに預かり恐悦至極……って、ん?」
ふと背後に目をやれば、何やら凄まじい勢いの砂煙が舞っている。
いや、アレは現象の類ではない。どちらかと言えば生物に分類されるものだろうか? じぃっと目を凝らして見れば、何やら白い鎧を纏った巨躯が全力疾走で向かって来ているではないか。
「あれぇ!? なんで
「【
「いやいや知らん知らん知らん!!!!! 俺なんも言ってないって!」
来たれりはサイガ-0。
このシャンフロにおいて、瞬間最大火力を叩き出した者にのみ与えられる称号【
ついでに言えば、ハジメの義妹その2でもあり、恋路を応援している人でもあるのだが、しかしハジメはこの鳥頭がその想い人である事はまだ知らない。ので、普通にびっくりしている訳であった。
「【アポカリプス】!」
「ぐぁ!?」
「【
「だから知らんてぇ!!! ちょ、0ちゃん!? 何故に此処へ!?」
「なんかよく分からんがラッキー! ハジメ氏、あとー、えー……サイガ-0さん! ありがとな!」
「ぅぃゃ!?」
おおよそ人から発せられるものではない声を漏らしながら、それには似合わない馬鹿みたいな火力を容赦なく叩き込む。
俺の出番無くなったやん……と落ち込む対人狂を他所に、サンラクは軽々とした身のこなしで素早くサードレマへと入って行った。
「え、何今の反応……ちょ、マジ? 玲ちゃんマジで言ってんの?????」
「へっ!? い、いや、な、なんのことでしゅかっ!?」
「ウソだろマぁじで言ってんのぉぉぉぉ!?!?!?!?」
あのクソゲーマーが義弟になる可能性あんの!? ウセやろ!?
ちょっと後でリアルの方で問いただす必要がありそうだ……マジで何処に惚れたんだ????
その日、わりとガチめに一は寝られず、仙に心配されたという。
・仏田
日本のプロゲーミングチーム『Eternal Journey』、略して『EJ』のストリーマー部門に所属しているストリーマーであり配信者。
『GEG』や『爺』の通称で呼ばれるFPS「ガンエコーズ・グローリー」でプロゲーマーとして活躍し、デュオルールのバトルロワイヤルのキル数でアジア記録を更新し、4年連続で世界大会に出場。世界大会優勝2連覇を成し遂げた実力者。
名前の元ネタはAVAのあの人、性格とプレイスタイルの元ネタはCRのあの人。
・羅刹天の洞穴
隠し最上位職業『剣鬼』のユニークシナリオ【千刃砕いて修羅至らん】で訪れる事の出来る隠しダンジョン。
基本的に人型のエネミーしか居らず、その殆どが神代の強化装甲で身を被った落ち武者の様なナリをしている。平均レベルは80〜95くらいで、慣れさえすれば攻撃への対処はしやすく、PvPの技の練習やレベリングには打って付け。