旅立つ幼馴染を見送ったTS薄細美少女の俺。十年後、スラム街の娼館にて再会を果たす 作:しゃふ
「——お、おっきくなってる、けど、大丈夫?」
「ち、ちがっ、これは、そのっ!」
リーナの言葉を聞いて、僕は必死に、言い訳を並べようとする。まずいまずいまずい。完全に油断していた。やらかした。
ばか、ぼくのばか。
こ、こうなるくらいなら、来る前に、どうにかしとくべきだった。
「だ、大丈夫っ!
だいじょうぶ、だいじょうぶ、だから」
こ、このくらい、余裕だよ! わたし!」
リーナもなんか、ずっと変な空回りしてる。
口ではこう言ってるけど、さっきから「な、なにこれ、ひゃ」みたいに驚いてばかりだし、その度にお尻がぐりぐり揺れるし、まずい。
「わ、わたしは経験豊富だから。
平気、だし」
強がるリーナ。
彼女の言葉が嘘なのは分かっている。
リーナは覚えてないかもしれないけど、酔っ払った彼女から、僕は確かに聞いているのだ。
彼女に、経験がないことは。
——止めた方が、いいよね。
僕はリーナのお腹に手を伸ばして、とりあえずの身動きを止めようとする。
前みたいに持ち上げてしまえば、一旦の無力化はできるはずだ。
でも。
「——ちょ、リーナっ!?」
僕が動く前にリーナが動いた。
「そこは、だめっ」
リーナの手が、僕の下半身に伸びる。
抵抗をしようと、腕を振るおうとした、けど。
リーナの小さい身体じゃ、下手に力を込めると大変なことになるかもしれない。
というか、焦りと緊張で、身体が全然、言うことを聞いてくれない。
だか、ら。
「——へ」
僕は、リーナにされるがままに、身体を預けることになる。
「こ、こんなに、おっきい、の?」
ぼそぼそと、呟き続けるリーナ。
僕は、何もすることができず、呆然と彼女を見つめる。
「……む、むりぃ、ぜったい、むりでしょ、こんなの」
身体を震わせながらも、リーナは手を止めようとしない。そのままの勢いで、どうにか解決策を見つけようと、彼女は唸りだす。
すると。
「だ、大丈夫、大丈夫っ。
わ、私に任せて……あ、そうだ、これあるじゃん」
リーナは自らのポケットに手を入れる。
そして、そこから、取り出されたものは。
「も、持ってきてて、良かった」
——見覚えがある、魔道具。
そう、ちょうど一週間前に彼女に手渡された、例の魔道具と同じものであった。
「——ちょ、それっ」
僕の言葉が言い終わる前に。
——リーナは無理やり、それを僕の身体へと押し当てた。
瞬間。
「——んぁっ!??」
甘い声が、彼女の口から飛び出た。
「な、なに、これ、前のと、ぜんぜん、ぁ、ちが——」
跳ねる身体。
ビクッと揺れたと思えば、悶えた彼女の腰元が、激しく、上下へと動く。
……魔道具を持つ手も、同じように、上下に。
そして、なにより。
——僕の方も、同じだった。
突然の刺激に、身体が、腰が、上へと、動いてしまう。
こんな状況になっても、リーナは魔道具を手放そうとせず、ガッチリと掴んで離そうとしない。
だから、そのせいで。
「っあ」
一瞬、だけ。
深く、重く、魔道具の中へと、熱いものが侵入する。
糸引く液体が漏れ出る穴の中が、混ざり合って、溶けだす。
そして。
「——ぁ」
次の瞬間、部屋中へリーナの矯声が響き回った。
「……起きた?」
目を覚ます。
それと同時、私の頭の上には優しい顔が姿を現した。
……頭の後ろには暖かい感触、これは、間違いない、膝枕というやつだ。
——いつぞやとは、立場が逆だな。
変に冷えた私の頭はそんなことを考えながら、とりあえず身体を持ち上げようとする。
が。
「……ふえぇぇ、ぜんぜん腰がうごかないよぉ」
思わず心の中の幼女が顔を出してしまうほど、震える下半身。
私は思わず、身体から力を抜いてしまう。
腰がガクガクいってる、だめだ、これ、完全にしんでしまっている。
大方跳ねたときに、ボキっとやったんだろうが……ぜんぜん、立てそうにない。
「あるすぅ、た、たてないから、手、貸してえ」
「う、うん、りょうかい」
そう言うと、アルスは私の脇腹へと手を当てた。
一瞬ビクンと腰が浮く私、そんなことにはお構いなしと太い腕によって私の身体は持ち上げられた。
そしてそのまま、片方の腕が私の背中へとスライドする。
二本の腕によって抱かれた私の身体は、まるでどこぞの姫君のように宙に浮かぶ。
お姫様抱っこ。
そのことに気づいた若干の恥ずかしさに襲われつつも、彼の大きな腕を堪能しようと、しようとし……いた、いたたたっ!
「あっ、腰はだめ、もたないでぇ!
お尻、お尻側もって! 折れる折れるからぁあ!」
「あ、ご、ごめんね」
情けなく叫ぶ私に対して、アルスは冷静に腕の位置を変える。
……ふう、助かった。
いや、お尻もたれるのもちょっとアレだけど、腰が潰れるよりはマシである。わたしの体型的に、お尻とかほぼ骨だし。
そんなことを思いつつ、私はアルスの顔を見る。
……なんか、ぜんぜん照れてないな。
さっきまでは、アタフタしててかわいかったのに……ちょっと複雑な気分だ。
私はどうにか、彼の下半身へ目をやろうとする。
だけど、彼に抱えられたこの状況じゃ、どうやっても見ることは叶いそうにない。
なので仕方なく、素直に質問した。
「その、アッチの方は、平気なの?」
「——えっ!? あ、いや、それは、その」
私の言葉に対して、アルスは慌てながら回答する。
「……り、リーナが寝てる間に、その、一人でどうにかしたから」
「そう、なんだ。
ふ、ふーん、一人で、ね」
何とも言えず、私は口籠る。
……一人で、一人で、かぁ。
いや、その、そういう直接的なことをアルスから聞いたのは初めてだから、ちょっと動揺している。
魔道具の件で、してるってのは分かってたけど……あ、いや、でもまって。
私は、じっと、離れた床に転がっている魔道具を見つめる。
それは、私の腰を破壊した原因でもある、特級呪物。
だがしかし、私は一つの疑問を抱いていた。
—じゃあ、さっきのあれは、なに?
最近、朝とかにときどきあった、ぐりぐりされるやつとは、ぜんぜん違う。
大きさも、太さも、伝わり方も、ぜんぶ。
……今まで感覚共有されてたやつは、あれじゃないの?
いや、思えば今までのは、その、やけに丁寧な動きだとは、思ってたけど。
——もしかして、私、すごい勘違いしてた?
ぶるっと、身体が震える。
もし、先ほどのアレがほんとうの、そういう行為だとすれば。
私は、一体、この先どうなってしまうのだろうか。
「……リーナ? 大丈夫?」
ガタガタと震えながらも、私はアルスに伝える。
「つ、次は頑張るからね。
こ、今回はその、初めてで、びっくりしただけだから。
ほ、ほんとだよ?」
言ってから、私は再度アルスの腕へと身を預ける。
時計は見てないけど、今日はこれ以上、動けそうにない。
アルスには悪いけど、続きはまた、今度だ。でないと、私の腰が持たない。絶対に。
「ごめん。
今日は、その、これで終わりでいい?
ちょっと、横になりたくて」
「あ、うん、それは、大丈夫だけど……」
そう言った私は、先ほどの出来事に想いを馳せながらも、ゆっくりと、瞼を下そうと力を抜く。
でも、そんな私に対して。
——アルスが口を開く。
「でも今日って、これから僕の宿に来るんだよね?」
「あ」
言われたから、気づいた、
……そういえば、そうだった。
色々いっぱいいっぱいで、忘れちゃってたけど、今日はこの後、アルスの宿に行くんだった。
「い、今って、来てから何分くらい経ってる?」
「……えと、70分くらい?」
へ。
「……私、そんなに寝てたの?」
だいたい一時間くらい、倒れていたのか。
……はずかしい。
なんか、時間が経って、どんどん羞恥心が頭に押し寄せてきている。
「うぅ、ごめんね。
色々迷惑かけて。
しばらく、歩けなくなっちゃったし」
「だ、大丈夫。
宿まではちゃんと、僕が運ぶから」
顔を真っ赤にする私に対して、アルスは安心させるように囁く。
……優しさが沁みる。
身体中が暖かくなって、ポカポカとした感覚が脳を襲う。
そう、ポカポカと。
特に、身体の下の方が、ずっと。
「……あ」
そのとき、私は一つ、違和感に気づいた。
……それは、子ども時代にしょっちゅう経験したことがある。なんなら今もときどき朝起きたときに経験している、暖かさ。
「……あの、アルス。
一つ、お願いしていい?」
「え、な、なに?」
「……パンツ、脱がしてぇ、アルス。
ついでにお風呂も」
あまりの醜態に頭をかかえながら、私はそんなお願いをするのだった。
あと6話とエピローグで完結予定です
頑張って投稿頻度あげます