旅立つ幼馴染を見送ったTS薄細美少女の俺。十年後、スラム街の娼館にて再会を果たす 作:とせがり
アルスと別れた後、ハニイさんとご飯を食べた。
パンの上にいっぱいの蜂蜜が乗っている映えーって感じの奴である。
うむ、流石ハニイさんだ。センスがいい。
「ふぅ、お腹いっぱいです。
ほんと、何から何までありがとうございます、ハニイさん」
「ふふっ、こういうお店は若い子じゃないと入りにくいでしょ? 私も助かったわ」
あっという間の完食の後、店を出て、帰路に着く。
帰る場所はもちろん娼館だ。
そう、私たちの夜はここからが本番である。
若干憂鬱になりながらも、私はハニイさんとともに歩いた。スラムに近づくにつれて、徐々に人は少なくなり、街の匂いが薄くなる。
……相変わらず、ここら辺は空気が悪いな。
そんなことを考えながら、一息ついたときである。
……?
なんだ?
一瞬、背中に視線を感じた。
鋭い視線。
今日教会で浴びたものと似てるけど、でも、少し違う。なにか、舐め回すような、気持ち悪さすら感じた。
……嫌な寒気が、私の胸を揺らす。
「リーナちゃん?
どうかしたの?」
「……いえ、何でもないです。
それより急ぎましょう。
早く帰らないと店長にどやされますから」
早く帰ったほうがいいか、これは。
警戒は緩めずに、私たちはそのまま娼館へと走って帰宅した。
そして、あっという間に六日が経った。
……今日は、アルスが店に来る日だ。
「ふっふーん。
ふんっふふっふーん」
店裏の待機室で、私はピョコピョコと足を揺らす。
目の前には鏡。
昔は見るのが嫌だったけど、今日は違う。
「アルス、気に入ってくれるかなぁ」
私は頬を手で触れながら小さく呟く。
ツルツルとした肌は、若々しさだけではなく、少しの色気すら感じられる、そんな気がした。
「お化粧、意外と嫌いじゃないかも」
このお化粧は、ハニイさんがしてくれたものである。
それも、とびっきり可愛いやつをだ。
貴重な休憩時間だと言うのに、彼女は嬉しそうに頬を緩ませながら引き受けてくれた。
ママ、ありがとう。
あと一時間もすれば、アルスが来る。
受付の雑務はまだ残っているというのに、なんかさっきから心がふわふわして全然仕事が手につかない。
……ま、仕事とかいっか。
今はアルスのことが大事である。
私は近くにあるクローゼットへと足を運ぶ。
「……んー、こんな格好じゃなかったらもっと可愛い服もあったのになぁ」
私の体型に合う服はほとんどない。
いや、あるにはあるけど、それはいわゆる幼児服に近いモノであり、女の子が着るものとしては論外である。
一部の変態受けはいいんだけどね。
「そう、例えば店長みたいな鬼畜さんには……」
「おい」
「うわっ!? 目の前に変態がっ!」
突如背中に現れた巨漢男、店長。
今日も相変わらずの悪人顔である。
「……仕事をサボってる奴の言うセリフか、それは」
ド正論でどやされ、さすがの私も縮こまる。
……あ、あはは、軽いジョークじゃないですか。
ごめんなさい。
「まあいい。
それよりも、お前に大切な話がある」
「へ?」
お説教の始まりかと思ったが、なんだ? 急に。
やけに神妙な面持ちだし、辺りには誰もいない。
完全に、私と店長二人きりである。
……ということは。
「ま、まさか告白っ!?
そ、そんな、だめです、店長。
店長の外見じゃ、結果は既に見えちゃってますよっ」
「……お前は相変わらずだな」
私の言葉に対して、何故か店長は半笑いで返してきた。
下手くそな笑顔だ。
これじゃあ完全に中学の頃の卒アルである。
そんなことを考えていたときだ。
店長が一拍置いて、話し出す。
「その首輪、外したいか」
……ん、なんだ、急に
「そりゃ、もちろん外したいですよ。
わんこみたいだし、服着るときに引っかかるし、可愛くないし」
「そうか、それは災難だな」
いやアンタがつけたんでしょうが。
そんなことを突っ込む気もなれず、私は彼の話を黙って聞き続ける。
「お前につけた首輪は、契約の首輪だ。
特殊な魔力が込められたその首輪は、契約が終わるまで外れることはない」
「……はぁ、なんか、前も同じような話は聞きましたけど」
「違う。
俺が話したいのは、その契約の部分だ」
首を横に振りながら、店長が言葉を放つ。
「俺がお前にした契約は一つ。
首輪の魔力がなくなるまで、嬢として客を満足させ続けることだ」
そうなのか。
まぁ、魔道具であることは分かってたし、何となく仕組み自体は理解できる。
「……まぁ、簡単に言えばな。
その首輪はエロいことをすればするほど、内部の魔力が減っていく。
時間経過でも減りはするが、このペースだといくらかかるか分からん」
とはいえ詳しい話は初めて聞いたな。
……てか、そんなエロ漫画的な契約なの?
やっぱドスケベじゃんこの店長。
ジトっとした視線を浴びせながら、私は一つの疑問を声に出した。
「エロいことって、例えば、どういうことです?」
「全部だ。
手だろうが、口だろうが、なんでも良い。
効果は薄いだろうが、単なるハグや握手でも減りはするはずだ」
……エッチだけじゃないのか。
となれば、私の首輪の魔力も少しは減ってるのか?
アルスとは、何回か抱き合ったりしたし。
若干の羞恥心が、私の耳を赤くする。
耐え切れず、私は店長へと話しかけた。
「……で、結局何の話なんです?
もっと客を取れって話ですか? 嫌ですよ、そんなの」
「違う。
俺が言いたいのはそういうことじゃない」
じゃあどういうことなのだ。
私はじっとハナテを浮かべながら、店長の顔へと訴えかける。
そして、その返答は。
「——短期間でここを出たいならな、あのアルスという男と、何度も性行為をし続けろ」
「……は?」
実に生々しく、私にとって、ありえない言葉だった。
え、いま、なんて?
せ、せ、せいこう、い?
そ、それも、アルス、と?
「な、なな、なに言ってんですっ!!
へ、へんたいっ! 店長のばかっ!」
「馬鹿じゃない。
首輪の魔力は、直接的な行為をすればするほど、減少量が多くなる。
今のペースじゃ、お前は当分ここから出れん。
アイツの力を借りる他ないだろう」
「……そ、それはそうでも。
なんで、急にそんなこと言いだしたんです。
店長は、私がここにずっといる方が、都合が良いでしょう」
当然だ。
いくらでも使いつぶすことができる雑用係なんて、簡単に手に入るものじゃない。店長なら、私が出られないと分かっていながら、そのまま酷使するはずである。
私の疑問に店長は答える。
「俺は恋愛というものをしたことがない。
だからこそ、お前の事情はわからん。
ハニイの奴も、教えてくれなかったしな」
「は、はぁ?
急に、なんの話?」
脈絡のない話に、私は素で困惑する。
「俺から言うことは一つだ。
——契約を全うしろ。
……そうすれば、もう何も言わん。
ここの従業員になるのも、それともどこかに消えるのもお前次第だ」
分からない。
店長が何を思って、私にこんなことを言うのかは分からない。
どこまで知っていて、何をしたいのか、分からない。
けど。
「分かったか、リーナ」
「……は、はぁ」
言葉を告げ終わった後の店長の顔は、なんとなく、寂しそうに見えた。
……そんな気がした。
店長が去った後、私は一人、考えていた。
アルスと、性行為。
結びつくはずのない二つの言葉が、私の頭をガンガンと刺激する。
当たり前だ。
私とアルスは、ただの親友で、アイツには好きな人が存在してる。
エッチなんて、ぜったい、駄目だろう。
「……だけ、ど」
行為を避け続ける限り、店を出ることはできない。
このままずっと、雑用係として店に残るだけだ。
仕事が嫌なわけではない、でも、そうなれば。
きっといつか。
——アルスが来なくなる日が、やってくる。
「いや、いやだ。
そんなの、いやだよ」
ぐちゃぐちゃだ。
心の中の、色んな感情が混ざり合って、ぐちゃぐちゃになっている。
店長の奴め、これからアルスと会うというのに、なんてことを教えてくれたのだ。
だ、第一、性行為なんて、できるはずじゃないだろう。
アルスと私とじゃ、その、サイズが違う。
子どものときに見たやつは可愛い感じだったけど、今は違う。きっとあの巨体に似合う怪物が潜んでいることだろう。
断言する。
私が逝く。
色んな意味で。
……でも、でもだ。
例えば、それ以外のことなら、どうだろう。
キスは、子どものときにふざけて一回ほっぺにしたし、裸だって、お風呂で何度も見せたことがある。
そ、それに、手だけ、とか、口だけ、とかなら。
私だって、彼を満足させることは、できるかもしれない。そういう経験は、全くないから、下手くそだけど。
「……あるす」
私たちは、親友である。
困ったときは、互いに助け合うものだ。
アルスだって、きっとそう思ってくれている。
なら。
……あくまで、助けてもらうだけなら、仕方ない、のか?
いやでも、いきなりは全部は無理だ。
な、なら、何回かに分けてやるのはどうだろうか。
「今日はここまで、続きは来週また来てね」って感じで。
うん、それがいい。
やるとしたら、順序を立てて、一つずつ進めていくべきである。
——か、完全に、する方法で話進めちゃってるな、私。
そう思って、全身がぶるっと震え上がったとき。
「——リーナちゃーん!
お客様がもう来るわ! 三号室に行きなさい!」
「あっ、ご、ごめんなさいっ!」
店の方から大きな声が聞こえた。
まずい、もう時間が来ていたようだ。
私は真っ赤になっている顔はそのままに三号室へと駆けた。
……そして。
「——リーナ、大丈夫?
なんか、顔が赤いけど」
「だ、だいじょうぶ、れふ」
「ほんと?
……んー、熱はないかな」
沸騰した頭はそのままに、アルスとの時間が始まった。
朝起きたらすごい低評価入ってて泣き。
頑張って更新するので↓で応援してくれると嬉しいです……
明日も投稿するボタン
既に応援してくれてる方はありがとうございます、ほんとに励みになってます。
ちなみに店長は普通に童貞らしいです。