一番好きな霊はスピリッツオブサンダー。
遊馬静香。
年齢/十六歳。
性別/男。
髪の色/黒に混じる様に白有り
瞳の色/紺
職業/高校生
趣味/パンを作り人に食べさせること。
友達に話されると恥ずか死んでしまう様な厨二な過去/有り。
特技/霊を見ること。
「あれからもう数年か」
人のいなくなった教室で、静香は呟く。
静香は高校生だ。受験をして、制服に袖を通して、毎朝のキンコンカンコンという音に間に合う様に早起きして、友と何てことない話で笑い合う毎日。
数年前の静香ではこの日常の中にいることは無かっただろう。
中学二年くらいの頃だろうか、他の人と違い霊が見えていた静香は何だかんだあって世界を滅ぼそうとしていた。
ぶっちゃけ利用されていたのだが、あの時の静香は本気で世界を滅ぼそうとしていた。
そして友達に殴られ、止められたのだ。
その時から人と向き合うことを頑張った。
すると今まで自分を否定する者だった他人が友となる。
「自分が変われば世界も変わるよ、か。本当にそうだった」
あの時自分を殴ってくれた友達のお陰で、今の静香がある。
「グルルッガ」
「君はそうだろうけどね、俺は今の俺の方が好きだよ」
そんなモラトリアムに浸る静香の側には人魂がいた。
それは人魂と呼称するが、人の魂では無く恐竜の魂。静香の友、スピノサウルスのスペッシだ。
彼は戦うのが好きで中学二年の時も戦えるという理由で静香と繋がった。故に平和に浸るこの時間には不満を覚えている。が、積極的に戦うことが無くなった静香の側に文句を言いつつも今でも居続けることからそれだけの関係では無いことも確かなのだ。
「そろそろ帰ろうか、スペッシ。帰ったら君の好きなにしんのパンがある」
「グッグルッガー」
特に意味も無く放課後の教室に残ってみたが、そろそろ飽きてきた。
「もう少し待ってくれないか、遊馬静香」
帰ろうか、という所で声が掛けられる。
「!」
静香は咄嗟にその場から離れ、戦闘態勢となる。
「誰だ!」
そのにいたのは長髪の男だった。ネイティブアメリカンを連想させる意匠の施されたマントを身に付けている男だ。
─気配を感じ無かった……!
自慢になるが静香は結構強い。
世界を滅ぼそうとしていた位なので真面目に強い。
友達に殴られた時は色々混ざっていたので流石にあの時程の強さを持ってはいないが、並のシャーマンや現代兵器であっても一蹴できる程度には強い。
そんな静香がその気配に気づけなかったということは、目の前の男は少なくとも静香と同レベル。
望んで平和ボケしていた静香だがこの様な状況ともなれば話は別だ。
意識を切り替える。戦う者へと意識を切り替える。
「おじさん。学校って関係者以外入れないのは知らないのかい?」
「知っているとも。そして私はおじさんでは無くシルバだ。まだおじさんと呼ばれる程の歳では無い」
「それはごめん。で、何が目的だよ」
正直な話、命を狙われる心当たりはあり過ぎる。
それは己のしでかしたことのツケであり一生背負わなくてはならないモノだ。
しかし、その刃が友達の首元まで迫るというのなら、静香はその刃を己のところで折り、砕き、破壊しなければならない。
「いや、君が以前やらかしたことは今回関係無い。私は君にシャーマンファイトに挑む資格があるかを試しに来たんだ」
「シャーマンファイト?」
聞いたことの無い単語だ。
シャーマンの意味は分かる。静香もある意味その仲間だろう。
ファイトの意味もわかる。闘争だ。
しかしその二つが繋がった単語を静香はこれまでの人生で聞いたことが無い。
─第六絶滅と関係はあるのか?
第六絶滅とはかつて静香と静香を利用していた者達が世界の破壊の為に用いようとした手段だ。
─いや、聞いたことがあるな
そして思い出した。
静香を利用していた者達の一人で、ラッソの者と名乗っていた女が口にしたことのある言葉だ。
ラッソの者は世界の闇で暗躍する女だった。ならばそいつが知っていたシャーマンファイトも後ろ暗い催しの可能性は高い。
「願書出した覚え無いんだけど」
「学生がそれを言うのかい? 試験とは此方が求めていなくてもやって来るものだろう」
「そのシャーマンファイトって、殺しはあり?」
「高確率で起こるな」
「何の為の戦いなのさ?」
「シャーマンキングを決める為の戦いだ。私達アパッチ族はシャーマンキングの選出の為にシャーマンファイトの運営を行なっている」
─俺に来るってことは優香達の方にも行くんだろうな
─アパッチとか言うのはシャーマンキングとか言うのに生まれて欲しい
─戦って決めるんだからシャーマンキングは強い奴が良い。俺は強いが、俺を倒したあいつらはもっと強い。
─ならばその戦いに巻き込まれる可能性は高い
静香を救ってくれた友達が。静香を殴ってくれた友達が。そんか血みどろの争いに巻き込まれてしまう。
─駄目だろう。それは駄目だ
─あいつらの戦いは何かを守る戦いだ
「良いぜ。その試験とやらを受けてやる。ただし条件がある」
俺がその儀式に参加してやるから友達は巻き込むな。それが静香が持ち出そうとしていた条件。
「お前の友達を巻き込むな、だろう。お前が参加してくれるならそれで良い。俺達は彼女達には接触しない」
─こいつ
それ彼が述べる前に、シルバはその条件を自ら言った。
手の平の上。そう感じずにはいられない。
静香はこの感覚を覚えている。中ニの頃に彼を利用していた大人達と同じ香りだ。気付いたら、もう手の平の上にいる。
「……上等だ」
手の平の上で転がされているのなら、その手の平ごと食い破れば良い。
敵を倒す戦いならば、それは静香領分だ。
「表に出ろよ」
「ああ」
「試験の合格条件を教えよう。私に一撃を与えれば合格だ」
「それだけで良いのかよ」
「できるものならな」
─簡単過ぎないか? いや、これは最低限の篩か
霊能力者と言っても霊力や巫力を使い戦闘ができるレベルとまでいけばそう多くない。
最低限戦闘ができる者を選抜するのがこの試験なのだろう。
そして、霊能力者、シャーマンにとっての戦闘ができるとはつまりOS(オーバーソウル)をできることを指す。
シャーマンが自分の巫力を使って、持霊を刀や銃などの物体に無理やり憑依させ、溢れる巫力によって武器具現化させる技術だ。
当然、静香とスペッシもできる。
「オーバーソウル。ダイナアックス」
具現化したのはスピノサウルスの襟の部分を刃とした大斧。
「おじさん。まどろっこしいのは無しにして、一撃で決めよう」
「そうだな。それが出せる時点でほぼ合格の様なものだが、形式的にな。後私はおじさんじゃない、シルバだ」
静香の読みは正しく、十祭司による選抜はほぼ参加が決まっている者、つまりオーバーソウルをできる者やその可能性のある者のみに向けられる。
試験を受ける側である静香がオーバーソウルを顕現させたのだからダラダラと茶番レベルの戦闘をする理由も無し。
一撃。それでこの時間は終わるだろう。
「オーバーソウル。トーテムポール砲」
シルバーが具現化したのは彼の持霊である精霊達を合体し、トーテムポールの如き形をした霊力砲。
静香が構える。
シルバが構える。
「骸竜咆烈!」
「ファイア!」
静香のダイナアックスから放たれたのは赤の斬撃。小細工など一切無く、唯目前の敵を喰らう業。
シルバのトーテム砲から放たれたのはダイナアックスの赤の斬撃とは正反対の青の咆哮。純粋な巫力の波動はそれ故に強力。
赤と青。二つの力はぶつかり合い、押して引いてと拮抗したのはほんの一瞬。
弾けた。
衝撃と爆風が発生し、巻き上げられた砂が勝敗を意地と悪いことに隠してしまう。
砂埃が晴れ、倒れている者は──いなかった。
静香、シルバ、両者とも、己の二つの足できちんと大地を踏み締めていた。
ならば二つの力のぶつかり合いは対消滅をしてしまい、試験はまだ継続か?
それは違う。
ドロっと一泊遅れてシルバの頬から血が滴った。
静香の骸竜咆烈をシルバのトーテム砲は抑え切れずに最初の威力からは考えられない程に小さなものだったが斬撃は確かにシルバの頬を切り裂いた。
つまり一撃を与えたのだ。
「遊馬静香。合格だ」
「あっそ」
静香にとってそれは特段喜ばしいものでは無かった。別に受けたくて受けたものでの無ければ、既にオーバーソウルを使いこなしていると言っても良い領域にいる静香にとっては受かって当たり前のものだったからだ。
「おめでとう。これで君はシャーファイトの予選に参加する資格を得た。故にこれを送ろう」
そう言って大して消耗した素振りも無さ気なシルバは桃色の端末を寄越してきた。
「それはオラクルベル。アパッチの技術によって作られもので、それにより予選の相手や運営からの連絡が来る」
「そんなことより、守れよ」
「ああ」
シルバとてむやみやたらに少年少女を争いに巻き込みたい訳では無い。脅す様な形になってしまっているのも内心申し訳なく思っている。
それでも強いシャーマンをシャーマンファイトに呼び入れる必要があるのだ。
己の先祖の転生体である、悪魔。朝倉ハオを打ち倒す可能性を上げる為に。
「それにはシャーマンファイトの用語辞典機能も備わっている。予選の相手が通知されるまでに目を通しておいた方が良いだろう」
「では遊馬静香、また会おう」
そう言ってシルバはクールに去る──
「待てよ」
「何だ?」
「グラウンド直すの手伝ってから帰れ」
彼らが戦場にした場所は学校のグラウンド。そこは二つの大技の衝突によって滅茶苦茶になってしまっていた。
シャーマンファイトに犠牲は付きものだが、この惨状は流石に明日の運動部が不憫でならない。
勿論、手伝うよな? と言葉を用いずに視線で言えば颯爽と去ろうとしていたシルバもとぼとぼと戻ってきた。
シャーマンファイト。千年までより一人の男によって因果が回るその戦い。
血が血を呼ぶ死と生の境界線に置いて、それを超越せんとする者達による削り合い。
その渦に静香が絡め取られてしまった瞬間だった。
「やってやるさ」
「ラブアンドピースの為にな」
自分を救ってくれた友の戦う理由を胸に、古の竜と共にある青年、遊馬静香は覚悟を決めた。
シャーマンキングのアイアンメイデンの二次創作増えて欲しい
後感想ください。