猿猴が月に愛を為す【短篇・幕間集】   作:ユズキあむ

1 / 6
第二章:『偉大なる航路突入・太古の島と冬の試練』編
おまけの幕間 胃袋の神秘


 

 

 

 

リトルガーデンでの生活が始まって、数ヶ月後

とある朝のこと。

 

「んむ! やっぱりこの恐竜の肉、弾力があって

一番うめぇなー!」

 

ロダストは狩ってきた超巨大なティラノサウルスを

一匹丸ごと豪快に焼き上げ、一人でペロリと

完食していた。

 

そのお腹は風船のようにパンパンに膨れ上がり、

もはや球体のような姿になっている。

 

「ふぅ〜〜……食った食った! 動けねぇ……」

 

地面に仰向けになり、満足気にお腹を叩いてひっくり返るロダスト。

 

それを見下ろしながら、巨人のブロギーが大きな斧を肩に担ぎ直した。

 

「ガババババ!よしロダスト、朝飯も食ったし勝負といくか!」

 

「ダメだブロギー、みてみろあの身体では動けん

だろう。トカゲ一匹丸ごと一人で食べたんだからな。そうなるのは当たり前だ。体が動ける様になったら

やろう、ゲギャギャギャ!!」

 

ドリーが苦笑しながら制止する。

 

「それにしてもタフな小僧だ。毎日こうして俺たちと空いてる時間に戦っているというのに……」

 

「ガババババ! おまけに他の時間は恐竜やら巨大な

昆虫どもが、弱っていると思って喰らいにくる

からな。この前なんか、五日戦い通しだっただろう」

 

「傷も飯を食って一日経ったら回復している。

凄まじいな……! まぁ、体力だけだがな!」

 

「「ゲギャギャギャ! ガババババ!」」

 

二人が豪快に大爆爆笑していた、その時である。

 

ギラッ……!

 

草むらから血走った目を光らせ、体長十メートルを

超える巨大な剣歯虎(トラ)が躍り出た!

 

狙うは、お腹がパンパンで身動きが取れず横たわっているロダストの首元!

 

「ぬ!? 虎め、動けん獲物を狙うか!」

 

ドリーが手を伸ばそうとした、次の瞬間——。

 

ドカァァンッ!!!

 

「ん? 邪魔すんなよー」

 

爆発音と共に、襲いかかった虎が吹き飛ばされ、

絶命して地に伏した。

 

驚くべきは、そこに立っていたロダストの姿だった。

 

ほんの数秒前まで風船のように膨らんでいたお腹は

綺麗サッパリ引っ込み、起きて動いた瞬間には、

いつもの引き締まった体型に戻っていたのだ。

 

「「起きて動ける時には痩せてる……どうなっとるんだ、あいつの体は……」」

 

呆れ果てて開いた口が塞がらないドリーとブロギー。

 

当のロダストは、さっき返り討ちにした虎を見て「ん? まだ食えるかな」と呑気に首を傾げている。

 

ドーーーーンッ!!!

 

その時、島の中央で火山が激しい音を立てて

噴火した。

 

「あ、火山が噴火したな! 決闘か!」

 

「時間か。そうだな!ドリー!」

 

「ああ、さあやろう、ブロギー!」

 

「「オオッ!!!!」」

 

噴火の音を合図に、再び互いの誇りをかけて武器を

打ち合い始める二人。

 

ロダストは口元に付いた肉の脂を袖で拭うと、

目を輝かせながら二人の激闘へと

駆け出していくのだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。