「へぇー! 水の下に昔の街が沈んでるのか!
ちょっと見てくる!」
ウォーターセブンに滞在中、ロダストの好奇心が
爆発した。
アピーを引き連れて向かったのは、かつて水没し、
今は静かに水底に眠る旧都市のエリアだ。
透明度の高い水面を覗き込むと、かつて人々が
暮らしていた建物や石造りの街並みが、水光を浴びてゆらゆらと青い光の中で幻想的に佇んでいる。
『うわぁ……本当に街が沈んでる。キレイだけど、
なんだか不思議な感じだね』
「ニシシっ! 魚たちが街の中を泳いでるぞ!
アピー! 空島じゃ見られなかった光景だな〜!」
水底のロマンに目を輝かせる二人。
そこへ、ドックの方から響くような大きな足音と
豪快な笑い声が近づいてきた。
「たっはっは…っ!……っ! 水底の街が見たいんなら案内してやる! 魚人の俺たちに任せとけ!」
「はいはい、アタシも久しぶりに一泳ぎしてやろうかねぇ〜!」
現れたのはトムとココロだ。頼もしい二人を
水辺で見上げつつ、ふと視線を上へと向けると、
地上からはハレダスが心配そうに小さな雲の上から
覗き込んでいた。
「おいおい、おいおい、気をつけるんだぞ……わしは水の中は勘弁だから、上から見守っているとしよう」
「ハレダスありがとー! いってきまーす!」
ロダストはもう我慢できなくなったように、着物の
袖をガバッとまくり上げた。
「よし! トムたちと一緒に潜って、あの屋根の上まで行ってみようぜ!」
「えぇ!? 沈むよ? ……あ、でも『幽々霊手(ゆうゆうれいしゅ)』で包めばいける?」
アピーがすっと集中すると、実体化した霊体の
巨大な手が二人をすっぽりと包み込んだ。息苦しさもなく、服が濡れる心配もない特製の「霊体バリア」の完成だ。
ドボンッ!!
トムとココロが水中に飛び込むと、まさに水を
得た魚そのものの素早さで悠々と水底へ向かって
泳ぎ出す。
ロダストとアピーもその後を追いかけるように、
霊手に包まれながら水没都市の深部へと
潜っていった。
水中に広がるのは、上から見るよりも遥かに美しく、広大な「青い世界」だった。
昔誰かが生活していた家屋の窓を色鮮やかな魚たちが潜り抜け、かつての広場にはサンゴが花のように
咲き誇っている。
「うわぁ……見てロダスト! 屋根の上がまるで
お花畑みたい!」
「ニシシ!本当だ! 空島の白海もすごかったけど、
水の中の青い空も探検しがいがあるな!」
魚人のトムが豪快に腕を振って「あっちの時計塔も
綺麗だぞ!」と身振り手振りに指をさし、
ココロが人魚らしいしなやかな尾ひれの動きで二人の周りを優雅に舞ってみせる。
見上げる水面からは、太陽の光が幾重もの光の束と
なって水底へ降り注ぎ、まるで青い空に雲が浮かんでいるかのようだ。
水底に眠る歴史的な街並みと、そこを縦横無尽に泳ぐ美しい魚たち。
ロダストと、空島育ちで霊体のアピーにとって、
頼もしい魚人の二人と潜ったこの水底の街は、まるで特別なテーマパークのようにワクワクに満ちた、
忘れられない思い出となったのだった。