ウォーターセブンでの滞在も数か月が過ぎた頃、
街を揺るがす重大な警戒警報が鳴り響いた。
カンカンカン!と激しく打ち鳴らされる半鐘の音と
ともに、住民たちが青ざめた顔で高台を目指して
走り出す。
「大変だー! 『アクア・ラグナ』が来るぞーーー
っ!!」
「速やかに避難しろー! 街が飲み込まれるぞっ!!」
街中が大混乱に陥る中、呑気に露店の屋根に
腰掛けていたロダストとアピー。
「あくあ・らぐな? なんだそれ? 美味いもんか?」
『美味しくないよロダスト、 街をまるごと
飲み込む大高潮のことだよ!巨大な波が押し寄せて
くるんだって!』
首をかしげるロダストの視線の先、沖合の空が
どんよりと禍々しい暗雲に覆われ始めた。
慌てて高台へと避難した二人だったが、そこには
見知った顔であるトムやココロ、そしてハレダスの姿もあった。
「お、オマエ達も来てたのか〜?」
「馬鹿だね、当たり前さっ。」
「おいおい、おいおい、流石に危ないからのう……
わたしも避難してきたんじゃ」
皆で水平線を見つめた次の瞬間、
地鳴りのような重低音とともに現れたのは、
ウォーターセブンの巨大な外壁をも軽々と越えるほどの超巨大な水の壁だった。
「うわっ!? でっけぇ波だな……!! シキの野郎が作った獅子みてえだ!」
圧倒的な自然の猛威を前に、誰もが絶望に顔を
歪める。だがその時、崖下の路地から小さな泣き声が響いた。
転んで足を押さえている幼い女の子の姿。逃げ遅れた我が子を見つけた母親が、群衆の中で叫び声を上げる。
「おい、見ろ! 下に子供が!!」
「そんな!? もう間に合わねえ!! 死んじまう
ー!」
「おい、お前もう無理だ!!」
「離して!! ワタシの娘がーーっ!!」
巨大な水の塊が、容赦なく幼い少女の頭上へ襲い掛かろうとしていた。
「助ける!」
ドゴンッ キュインッ!
悲痛な叫びを置き去りにし、ロダストの身体から
一瞬で呑気さが消え去った。
風を切り裂いて地面を強く砕け、割れるほど
蹴りつけると、弾丸のような速度で少女の元へと
跳躍し、飛翔する。
迫り来る絶望的な波の陰影がロダストの全身を暗く
包み込むが、その暗闇を切り裂くように、
ロダストの全身から溢れ出た巨大な『気』が黄色の
輝きとなって爆発した。
大気が焦げ付くほどの凄まじい熱量が周囲の空間を
激しく震わせる。
「高潮だか波だか知らねえが、要するにあのデカい
水の塊を吹き飛ばせばいいんだろッ!」
ロダストは片手に気・覇気・雷を集中させ、右拳を
限界まで引き絞った。
黒く漆黒に染まった拳に、三叉の、
気の破壊エネルギー、雷の衝撃、そして灼熱の
エネルギーが螺旋を描きひとつに融け合い、更なる
破壊力となって練り上げられていく。
上空の巨大な高潮の壁に向かって、その拳を
一気に穿ち放つ
「『月魔炬火(ヘカテー・トーチ)』ーーーーーッ!!!!」
ズドバアァァァァンッ!!!!
ロダストの手元から解き放たれたのは、
破壊のエネルギーと黒い覇気の奔流!一本の
真っ黒く燃え上がる巨大なエネルギーの巨柱として、街を飲み込もうとしていた
アクア・ラグナの真っ芯へと一直線に突き刺さる!
ドォォォォォン……ッ!!!!
激しい衝撃音の直後、周囲を支配したのは静寂と、
視界を真っ白に染め上げる爆発的な水蒸気だった。
あまりの超高熱と破壊力に、押し寄せていた
数百万トンもの大波が一瞬にして完膚なきまでに
蒸発し、きれいさっぱり空の彼方へと
消滅してしまったのだ。
「「「うおおあおあおぉ〜〜〜!?!? 高潮が……
アクア・ラグナが消えたーー!!?? 」」」
目の前の光景が信じられず、目を剥いて顎が
外れそうなほど叫ぶ住民たち。
当のロダストは、腰を抜かしていた少女をひょいと
抱き上げると、ニシシと無邪気な笑みを浮かべた。
「ふぅ! …ニシシ! ケガはねぇか? 助かって
よかったな!」
「う、うん……お兄ちゃん、すごいや……!」
少女を優しく撫でて母親の元へ送り届けると、
ロダストは何事もなかったかのようにアピーたちの
元へと歩いて戻ってきた。
「ふぅ、なんとかなったな、アピー!」
『うん。すごかった、ロダスト! でもね、
また街の人たちが目を丸くして固まってるよ?』
「ニシシっ、いつものことだろ!」
「たっはっは!! ドンッとすごいな! ロダスト!」
「ホント驚いたよ……」
トムの豪快な笑い声とハレダスの呆れ顔に見守られ
ながら、ロダストはニシシと笑う。
ココロは心底安堵したように「ふぅ……全く、
冷や冷やさせないでおくれよ」と大きく息をつくと、アピーとお喋りをしながらその三人の中へ
自然と入っていった。
ウォーターセブン滞在中の
4ヶ月間に起こした、街の誰もが忘れられない、
伝説の「アクア・ラグナ消滅事件」であった。
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幕間をお読みいただきありがとうございました!
▼本編の続き(第42話)を読むhttps://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_yoyaku_edit&nid=425184&yid=1435024
※月曜日の更新時間になると開くようになります。
ロダストたちの冒険の続きもどうぞお楽しみに!
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