リトルガーデンの夜は暗く、そして静かだ。
太古のジャングルを照らす巨大な満月の下、パチパチと爆ぜる焚き火を囲み、一同は豪快に焼き上げられた恐竜の肉にかぶりついていた。
骨付き肉を噛みちぎりながら、ブロギーがふと
ロダストに視線を向ける。
「……お前さん、種族は『ミンク族』なのか?
ならば満月を見れば『月獅子(スーロン)』とやらに変身できるのではないか?」
「いや、月獅子(スーロン)は……
悪さするような奴以外がいる場所でなる気はねぇんだ
ニシシッ、ドリー、ブロギー、気にすんな」
ロダストは苦笑いを浮かべ、どこか遠い目をして
肉を口に運んだ。
「昔、俺の家族が巻き込まれて大怪我を
しちまったんだ。だから意地でもなりたくねぇ。
……だが、制御できた方がいいんだろうな。
月獅子になると疲れて動けなくなるし、何より
俺の場合……変身してる間の記憶がまったく
無ぇんだよ。」
「ほう、記憶がない……? だが、変身すれば命に
関わるほどの衰弱と聞くが……」
「いや、俺の身体は疲れるだけで死にはしねぇんだよな。だから余計悪い」
ロダストは手に持った肉を飲み込むと、覚悟を
決めたように立ち上がった。
「よし!…頼む、二人とも。満月を見る。
抑える努力はしてみる……だが、もし意識が飛んで
暴れ出したら遠慮なく止めてくれ!」
「ガババババッ! よかろう、任せるがいい!」
「ゲギャギャギャッ! 巨人の戦士の力、見せてやる!」
ロダストが静かに天を仰ぎ、夜空に輝く満月をその目に映した――。
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ザワザワッ……!!
ジャングル全体の空気が一変した。
大気が不気味に震え、猛烈なプレッシャーが島全体を押し潰す。
手に持っていた肉を地面に落とし、
ドリーとブロギーは開いた口が塞がらなかった。
目の前で起きている変化は、彼らが噂に聞いた
「月の獅子(スーロン)」などという生ぬるいものでは到底なかった。
ミシミシ……ドクン! ドクン!
「…………アオォ…!」
身体が異様な勢いに任せて膨れ上がり、見上げるほどの巨躯へと変貌していく。
周囲に溢れ出た常軌を逸した『気』と荒れ狂う
雷光が、それだけで太古の巨木を一瞬で薙ぎ払って
いく。その姿はまさに暴走した古代の魔猿。
「ゲギャギャッ……まさか、我らがチビ人間側に
回るとはな……! 何という大きさだ……!!」
「ガババババッ!……こいつは笑い事じゃねぇぞ、
ドリー! 死闘になり得るな……!!」
巨人の戦士たる彼らが見上げるほどの体躯に
膨れ上がった魔猿は、理性を完全に失った咆哮を上げ
大地を揺らしながら襲いかかってきた。
「ガアァァァァーーーッ!!!」
あまりの圧迫感に、二人は即座に巨大な武器を構え、最強の合体技を解き放つ!
「『覇国(はこく)』ーーーーっ!!!!」
島をも穿つ巨大な衝撃波が魔猿へ向かって一直線に
突き進む。
しかし、野性の苛烈な危機感知が働いたのか、
魔猿は直感的に『覇国』の危険性を察知。全身から
溢れ出る濃密な『気』を前方に放ち、正面から
受け止めた!
ズドバアァァァァンッ!!
島を揺るがす大爆発。
だが――衝撃波の大部分は、彼が纏う常軌を逸した『気』によって散らされ、威力を大幅に
殺されてしまう。
(バカな……! 覇国をもってしても弱められるだと……!?)
それからも、ドリーとブロギーは果敢に巨斧と巨剣を振るい、猛攻を叩きつけ続けた。
だが、直撃したはずの攻撃も、その異常なまでの
皮膚の硬さの前に擦り傷を負わせるのが限界だった。
しかも、そのわずかな傷すら驚異的な回復力で
一瞬にして修復されていく。
タフ過ぎる。硬すぎる。そして、巨人の膂力を
遥かに凌駕する圧倒的な腕力。
(こんな異常な巨大化と強化……月の獅子で
あるはずがない! 猿の相手をするどころの騒ぎ
ではないぞ……!!)
「ブロギー! 正面から殴り倒すのは無理だ!
海へ叩き落とすぞ!!」
「応よっ!!」
襲い来る巨腕を二人がかりで間一髪受け流し、
位置取りを海沿いへと誘導する。
陸地を背にさせ、満月の光の下で巨人の戦士たちは
全精力を解き放った!
「『覇国』ーーーーっ!!!!」
至近距離から解き放たれた二度目の超巨大な
衝撃波が、魔猿の巨躯を押し潰す!
気で防ぎきれなかった圧倒的な運動エネルギーが、
巨大な魔猿の身体をリトルガーデンの遥か沖合、
荒れ狂う海へと豪快に叩き落とした!
ドゥバアァァァァンッ……!!
水柱が高々と上がり、やがて海流と冷たい海水に
よって全身が浸かり「気」が静まっていく。
激しい息吐きを繰り返しながら、ドリーとブロギーは武器を収め、水平線を見つめて笑い合った。
「ガババババッ!……ふぅ、冷や冷やさせる。
とんでもない『チビ人間』がいたものだな!!」
「ゲギャギャギャッ! 全くだ! 朝になったら
引き上げてやらねばな!」
暴れ狂う怪物との死闘を制し、巨人の戦士たちは
夜空の満月を見上げるのだった。
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幕間をお読みいただきありがとうございました!
▼本編の続き(第13話)を読む
https://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_yoyaku_edit&nid=425184&yid=1426447
※月曜日の更新時間になると開くようになります。
ロダストたちの冒険の続きもどうぞお楽しみに!
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