猿猴が月に愛を為す【短篇・幕間集】   作:ユズキあむ

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第三章:『神の国と魂の灯火』編
おまけの幕間 黄昏の港町と怪物たちの噂


 

 

 

「ガープ、居酒屋はあっちだ! 宴の前に街の酒を

飲み干すなと言っているだろう!」

 

「ガハハハ! 堅いこと言うなセンゴク!

腹が減ってはなんとやらだ、ロダストの奴も腹が

減ったら勝手に追ってくる!」

 

あきれ果てたセンゴクに連れられ、ガープが

豪快な笑い声を響かせながら一足先に居酒屋に

向かって行く。

 

 

そんな二人の賑やかな背中を見送ったあと、ロダストは一人、海沿いの波止場へと足を向けた。

 

「綺麗だなぁ〜!」

 

 

アラバスタの灼熱の太陽が傾き、港町ナノハナ全体が燃えるようなオレンジ色に染まる夕刻。

 

冷え込み始めた潮風が吹き抜ける海沿いの波止場で、ロダストは二本足を投げ出し、波打ち際を

見つめていた。

 

「ほらロダスト、センゴクとガープに見つかる前に

食べしまいな」

 

後ろから歩み寄ってきたおつるが、紙袋から香ばしい醤油の香りが漂う堅焼きせんべいを取り出し、

手渡してくる。

 

「おつるちゃんありがとう! ニシシ、このおせんべい固くて美味ぇな! バリバリッ!」

 

豪快におせんべいを噛み砕くロダストの隣に、

おつるは静かに腰を下ろした。

 

「ガープの奴はあんな調子だけどね、お前さんの

まっすぐな性根と強さが気にいってるのさ。

……シキなんて恐ろしい奴とやり合って生きてる

度胸も含めてね」

 

「シキか! あいつの『気』は嫌な感じだったけど

……凄ぇ強かったのは本当だな。……でも!次

会った時は絶対に俺が勝つ! 今度は負けねぇぞ!」

 

ロダストはおせんべいを喉に流し込むと、不敵に

ニシシと口元を綻ばせた。

 

「ふふ、言うじゃん。あんな化け物に『次は勝つ』と言い切れるのね……お前みたいな規格外の

強さと度胸を持った奴が、どこにも属さず自由に

海を渡るんだ。ガープが手元に置きたがる

気持ちも分からなくはないよ」

 

「ニシシ! 俺は誰の命令も聞かねぇし、自由に旅を

するだけだ! でも、堅気に迷惑かける悪党は嫌いだから即ボコボコにするぞ!」

 

「ふふ、頼もしいねぇ。……さ、そろそろ居酒屋に

移動しよ。あいつらも腹を空かせて待ってるよ」

 

 

居酒屋の暖簾をくぐると、奥の座敷では案の定、酒瓶を片手にしたガープが豪快な声で店を揺らしていた。

運ばれてくる大量の肉料理やお酒を前に、ロダストは目を輝かせて席につく。

 

 

 

宴が佳境に入り、周囲の喧騒から少し離れた

タイミングで、センゴクが酒杯を静かに置き、声を

ひそめた。

 

「……ロダスト。お前、このままグランドラインを

進むなら覚えておけ。この海には、政府が情報を揉み消すほどの本物の『化け物』が潜んでいる」

 

「化け物? シキよりヤバい奴か?」

 

「ああ、シキも上澄みだが……例えば『ロックス』だ。奴は5年前、海軍本部の『大将』を殺害した。

表の新聞には一切出んがね」

 

センゴクの重々しい言葉に、ロダストは「へぇー!

強え奴がいるのか!」と目を丸くする。おつるが

「センゴク、一般人に話す内容じゃないよ」と忠告しながらおせんべいを追加した。

 

「他にも、まだまだヤバイ連中はいる。首領

マーロン・海賊教祖王直・九蛇海賊団船長

シャクヤク……

 

特に『エドワード・ニューゲート』という男は

……まだ若いながら、頭角を現し始めた。

その実力はすでに凄まじい怪物級だ。間違いなく

これから海を揺らす存在になるはずだ」

 

「へへっ、ロックスにシャクヤク、ニューゲートか! 新世界には面白い奴がいっぱい居そうだな!」

 

ロダストが目を輝かせていると、酒をガブ飲みしていたガープが突然ドカンとテーブルを叩いて身を

乗り出してきた!

 

「いいか、俺が最近一番気になってんのは

『ロジャー』って男だ!!」

 

「また、その男か!その話は何度目だ!」

「ん? ロジャー? あいつなら俺、もう会ったぞ!」

「なにぃ!?お前、もうロジャーに会ったのか!?」

 

「ニシシ!麦わら帽子被ったやつじゃねぇか?

拳は出会い頭の一合しか交えてないけど、あいつは、

強いな!!」

 

予想外のロダストの返しに、ガープだけでなく

センゴクもおつるも目を見開く。ロダストは肉を豪快にかじりながら、ニシシと口元を緩ませた。

 

「 面白い奴だったぞ! あいつの『気』もすげぇ

まっすぐでデカかった!」

 

「ガハハハ! そうか、お前も会ったか! 俺も

この前、東の海で出くわしたんだよ! あの目……

あいつは絶対にただの海賊で終わらん……

 

骨のある骨の折れそうな奴が出てきたもんだ!」

 

「どういう言い回しよ…。」

 

ガープは不敵にニシシと笑うロダストの頭を

ガシガシと乱暴に撫で回した。

 

「だからこそロダスト、お前は海兵になれ!

あんな面白い奴らがゴロゴロいる海で、一緒に暴れて追いかける方が絶対に楽しいぞ!」

 

「ニシシ!俺は海兵にはならねえぞ!」

 

「ガープ! お前は人の話を聞け!」

 

センゴクが額を押さえて頭を抱える横で、おつるが

微笑みながらおせんべいを差し出す。

 

 

 

大物海賊たちの影と、すでに交差していた

ロジャーとの縁。ナノハナの夜は、世界の激動の予兆を酒の肴にしながら賑やかに更けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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