猿猴が月に愛を為す【短篇・幕間集】   作:ユズキあむ

5 / 6
おまけの幕間 雲の上の小さな食卓

 

 

 

 

「ニシシ! アピー、見てみろ! 今日はすごいの

捕まえたぞー!」

 

空を飛び、上空から海雲に向かって

『金猴王ノ紫電(キンコウオウのシデン)』の

エネルギー波状の雷を海面に放ち、

獲物を仕留めたロダスト。

 

そのまま颯爽と飛行しながら獲物を

引き揚げて帰ってきたロダストの手には、地上では

お目にかかれないドデカいハサミを威嚇するように

振り上げる、獲りたてのスカイロブスターが

握られていた。

 

だが、海面スレスレまで飛んで捕まえたロダストの

服の裾が白海の水滴でしっとりと濡れているのを見たアピーは、すぐさま両手を大きくバツにして

プンプンと肩を揺らした。

 

(また……! 海の近くに、入ったでしょ! 落ちたら、溺れちゃう。から、ダメ!)

 

激しい手振り身振りと表情で怒るアピーに、

ロダストは苦笑いしながら頭をかく。

 

「ニシシ、ごめんごめん! 落ちてねぇから

平気だって! よし! 今夜は豪華にエビの丸焼きだ! 腹減っただろ、アピー! 俺に任せとけ!」

 

胸を威勢よく叩いたロダストだったが、そもそも

料理の知識など殆どない。

 

焚き火の火力が足りないと見るや、ロダストは

自らの身体から放てる電気を手に纏わせ、強引に

エビを焼きに入った!

 

バリバリバリバリッ!!

 

「うわっ、火力が強すぎた!? ぎゃーっ、

焦げたァ!?」

 

ロダストの電気の凄まじい電熱に包まれた

スカイロブスターは、一瞬で真っ黒焦げになり、

モクモクと黒煙を上げ始めた。

 

(ダメダメダメっ!! ロダスト、ダメー!!)

 

慌てたアピーはパニックになりながら、小さな両手をぶんぶんと振ってロダストを止める!

 

黒焦げのエビをロダストの手から引っぺがすと、

アピーは困り顔で考え込んだ。

 

そして、近くに転がっていた果実「コナッシュ」と、少し深さのある殻を指差す。

 

(コナッシュの……あまい汁と、スープ……!

コナッシュスープにするの!)

 

見聞色を通してアピーの頭に浮かんだイメージを

受け取ったロダストは、手をポンと叩いた。

 

「おおっ! コナッシュの果汁で煮込むのか!

天才だなアピー!」

 

さっそくロダストが力任せにコナッシュの底を

ゴキャッとぶち破り、溢れ出る果汁をスープのベースにする。

 

アピーが一生懸命手伝いながら、焦げていない身を

ほぐして果汁と一緒に温めると、今度は甘く香ばしい良い匂いがフワリと漂い始めた。

 

「うっま!! 甘くて、エビの出汁が効いてて最高だぞこれ!」

 

(美味しい……! 大成功だね、ロダスト!)

 

大満足でスープを飲み干したあと、ふとアピーの

小さな家の前に目をやると、そこには新鮮な空魚や

果物が綺麗に盛られた小さなお手製の籠が

置かれていた。

 

「ん? アピー、あれは?」

 

(誰かが……いつも、置いていってくれる。

とっても、嬉しい……)

 

見聞色を通して伝わってくるアピーの温かく澄んだ

感謝の気持ちに、ロダストは口元を大きく緩ませた。

 

「ニシシッ! 姿は見えねぇけど、優しい奴が

いるんだな! ありがたく頂こうぜ、アピー!」

 

(うん!)

 

言葉はなくとも、心を通わせ合いながら囲む

手探りの食卓。

 

雲の上の小さな家で、二人が少しずつ「家族」に

なっていく愛おしい日常の時間が、静かに流れていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。