「空の主にお乗りに……正気か……!?」
「静かにしろ、刺激するんじゃない……!万が一
お怒りになられたら大変だぞ、相手はあの『空の主』だぞ……!」
アッパーヤードの森の木陰から、シャンディアの
大人たちが青ざめた顔でヒヤヒヤしながら
見守っていた。
彼らの視線の先にいるのは、空島に“空の主”として
君臨する伝説の巨大蛇——ノラ。立ち塞がる者
すべてを呑み込む恐ろしい大蛇として恐れられてきたその巨躯が、今は静かに地表に体を横たえている。
「そうだ、ノラ! お前にもこれやるよ! 村で
貰った大きなカボチャの蒸し焼きだ、すげぇ美味ぇぞ!」
ロダストとアピーは、村人から分けてもらった大きなかぼちゃ料理を二人で抱え上げ、ノラの鼻先へと
差し出した。ノラは大きな鼻先をすり寄せ、
嬉しそうに「ジュ〜♪」と温かい息を鳴らして
美味しそうに頬張った。
言葉はなくとも、美味さと温もりがノラの心へ優しく伝わっていく。
「う〜ん、風が気持ちいいな〜! 高くて眺めも
最高だぞ、アピー!」
「ニシシ!」と無邪気に笑うロダストの隣で、
アピーもフカフカの風を浴びながら嬉しそうに目を
細めている。
(うん! ノラのあたま、すっごくたかい!
ヴァースが遠くまで見渡せる……!)
アピーの見聞色を通して届く無邪気なはしゃぎ声に、ロダストも嬉しそうに頷いた。
大人たちの緊張などどこ吹く風で、当の二人は
ノラの頭の上を「絶好のお昼寝スポット」にして
寛ぎきっている。
二人の温かな気配と愛おしい存在を感じ取り、
ノラはどこか嬉しそうに目を細めると、大きな口から「ジュラ〜……」と優しく温かい息を漏らした。
ボオッ……!
まるで小さな嵐のような温風が吹き抜け、
ロダストの髪とアピーの小さな髪がふわりと大きく
撫で付けられる。
「ニシシ! くすぐったいぞノラ!」
(ふふ、風すごい。)
(ジュラ〜♪)
ノラの心から伝わってくるのは、何百年もの間
抱え続けてきた深い孤立を忘れさせてくれるような、どこまでも穏やかで甘えるような感情だ。
かつてシャンドラの地で、
カルガラやノーランド、そしてその地で住まう人々と紡いだような温かな絆が、
今、声を持たぬアピーの優しさとロダストの
真っ直ぐな心によって、再びノラの胸を
満たしていた。
(ノラ、あったかいね……)
アピーがそっとノラのうろこに小さな手を重ねると、ノラは気持ちよさそうに声をあげ、二人を
落とさないよう静かに頭の位置を低くして日向に
身を横たえた。
「よーし! 飯のあとの絶好の昼寝タイムだ!
アピー、寝ようぜ!」
(おー! ねるー!)
緑豊かなアッパーヤードの木漏れ日の中、大蛇の
頭の上で二人並んでゴロンと横になる。
風が吹き抜ける高い場所でもアピーが滑り落ちない
よう、ロダストは片腕でさりげなくアピーの
小さな体を抱き寄せるように包み込んだ。
その温かい腕の中で、アピーも心から安心して静かに瞼を閉じる。風が木々を揺らす音と、ノラの
規則正しく温かな息遣い。
スースー、ぐかぁー……と、二つの快い寝息が
並んで響き始める。
遠くで見守っていた村人たちも、恐ろしいはずの
大蛇が愛おしそうに二人を乗せて眠るその穏やかな
光景に、固めていた肩の力をそっと抜くのだった。
大自然の風と大蛇の温もりに包まれた、空島での
忘れられない穏やかな昼下がり。
言葉を超えた絆が、雲の上の緑の大地に静かに根を
張っていく——。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
幕間をお読みいただきありがとうございました!
▼本編の続き(第18話)を読むhttps://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_yoyaku_edit&nid=425184&yid=1427137
※月曜日の更新時間になると開くようになります。
ロダストたちの冒険の続きもどうぞお楽しみに!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━