堀北さんは諦めない! 作:BM-13
短いうえに待たせてしまいましたー。
見捨てないでくださいー、なんとか今週もっと投稿しますのでー、
船上試験編、スタートです〜!
キン、という船内放送が聞こえる。内容はXXX回は聞いたことのある、特別試験のアナウンス。
ようやく始まった。準備はそこそこ済んでいるけれど、別件で佐倉さんや同室の人からは報告があった。同件の事実確認は平田くんや軽井沢さんからヒアリング完了。おおむね事実だったのでスピード解決を図りましょう。
で、昨日の夜には秘書兼愛人(言い方は違った気がするけれど)として部屋を訪ねにきた松下さんには、足腰立てないようにしてあげた。裏切った場合のお試し体験を教えてあげるなんて、わたしもため息をつくほど甘いわね。…ふう、まったく。
『ん、…今の、音…は…はぁっ……?』
「きっと特別試験でもあるんじゃないかしら?」
『んっ…んっ…、くっ…!…いっ…!』
「あなたの鳴き声をまだ堪能したいけど、時間切れよ。…またお仕置きね」
『そんな…っ…待ってください、…もう、もう少しで…っあ…!』
「楽しみにしていなさい」
そういって、一人寂しく本島で待つ彼女との通話を切る。…彼女も少しずつ
「もう話して良いわよ?」
「っ…ひっ…!」
わたしの腰の下で怯えた表情を見せるのは、さんざんわたしの予定を狂わせてくれた篠原さん。わたしの言いつけ通りに静かにしてくれていた彼女の頭を撫でれば、体の震えがさらに強くなった。…建てつけが悪いわね、この椅子。
仕方ないから立つ――ふりをして、一気に腰を下ろす。鈍い悲鳴と、べちゃりと落ちた油性ペン。…少しだけ時間を戻す。
ここは篠原さんと佐倉さん達ルームメイトたちの客室だけれど、
ぐずぐずとショックを受けている彼女の説得を頼まれたわたしは、仕方なしに部屋を訪れた。当然、熱烈歓迎をしてくれた彼女を優しく温めてあげようとお風呂に入れて上げた。着ていた服までびしょびしょになってしまったのは彼女が子供みたいにいやいや期に入っていたから自業自得よね?
色気もなにもない下着越しに少し乱暴してあげれば、バスルームに花の女子高生の絶叫が響いた。…うるさいからまたお湯に沈め…入れてあげたわ。
こんなロマンティックな船で初体験を迎えられるなんて、みんなに自慢できるわね。せっかくだからその油性ペンは記念に上げる。茶柱先生用だったけれど、もう触りたくないもの。
ちなみに「あんた…絶対に」と言ったら静かにさせて、「ごめんなさい」と言っても静かにさせて、「許してください」と言ったから静かにさせたら、ようやく3度目で静かになった。
やっぱり教育って、短期的には体に教え込むるのが最も手軽で効果的よね。
「ご、ごめんなさいっ…ゆる、許して…許してください…なんでも、なんでもしますから…!」
「そんなに怯えなくても…。わたしは落ち込んでいるあなたを許して…そうね、元気にしてあげてって頼まれてきただけなのよ?」
「は、はい…もう元気…、元気になりました、なりましたからっ!」
「そう?でも震えているみたいだし、もう一度「ごめんなさいっ…ご、ごめんなさいっ!」…あらあら」
ゴツ、ゴツと床のタイルに頭を叩きつける篠原さんの肩を慌てて掴む。悲鳴を上げられたけれど、見れば額がまだ赤い程度。…よかった。怪我なんてされたら、わたしが疑われてしまう。
彼女の額を優しく撫でて、ケガがなかったことを心配する。ホッとした表情で大丈夫だというので、笑顔で4度目の潜水士体験を手伝ってあげる。ビクビクと震える体から力が抜けるギリギリで物理的に後ろ髪を引いてあげる。
「ごほっ!!げほっ!ぶぇ…うっ…うぅ…」
「ようやく静かになったわ。…なったわよね?」
「っ!…っ!!」
コクコクと頷き返してくれた篠原さんに、わたしもにっこりと笑いかける。良い笑顔ね。必死さがよく伝わる表情。百年の恋も冷めるくらい…なんて。ちゃんと彼女の端末で撮影して、ポータブルプリンターで印刷までして上げる。
震える手でそれを受け取った彼女に、「一緒に遊んだから、これでわたしたちは仲直りよね?」と言ったら首が取れるんじゃないかってくらい振ってくれた。よかった、話せば人間は分かりあえるものね。
その後に風邪を引かないようにって言って服を脱がせて、ちょうど電話が鳴ったから椅子をしてもらっていたのだけれど、残念ながらわたしも時間切れね。
彼女の端末で仲の良かったオトモダチへ連絡をしてもらう。「堀北さんと仲直りしたよ」という内容。頷く彼女には船の中では
…なにかしら?足りないだなんて、ちゃんと制服の上下は渡したでしょう?それ以外が欲しいなら、ちゃんとわたしの言う通りにすること。出来ないなら、学校に戻ってもそのままで過ごしてもらうから。良いわね?
真っ赤な顔で頷いた篠原さんが、モジモジしながら部屋を出ていく。…あのくらい奥ゆかしい態度を常日頃していれば人気が出るでしょうに。さて、これで用は済んだ。
桔梗や平田くんにも首尾を伝えて、わたしは試験に向けてクラスメイトを招集するのだった。
◇
集まった面々の向く先には、通話中の端末。スピーカーモードのそれは、先に試験の内容を聞いている組の端末からの音声だ。
船上特別試験…干支試験と言われたそれに、真面目な幸村くんなどはメモを残している。
…あら、流石ね王さん。一人ずつ名前を読み上げて、グループのメンバーの確認も兼ねている。桔梗にも協力してもらえば、早速ひとグループのメンバー表が完成した。
「今度は頭を使う試験のようだな…。シンキング。…ここで結果を出せれば…」
「俺はちっと自信がないぜ。黙ってた方がいいか?」
「それも手の一つだよ。相手を観察して、こちらはヒントを与えないというのは有効な手だと思う」
「お、おう…。そうか…他のクラスのことも優待者か見抜かねえといけないんだったな…」
「…須藤なら、腕組みしてジッと見るだけで大抵の相手は緊張するだろう」
「なんだと、三宅。お前だって睨みを効かせたらだいぶ厳ついぜ?」
メンズは割と和気藹々。試験へのアプローチを口にしながら、思い思いの作戦を相談している。名前を呼び合う日も近いかもしれない。
一方女子はというと、ニコニコしてその様子を見ている桔梗と、机の下でその太ももを撫でているわたし。…いいじゃない、わたしだってさっき仕事はしてきたのだし、少しくらい遊んでも。
「んっ…鈴音は、どう思う?この試験について」
「わたし?…そうね」
漏れた声を誤魔化すように、わたしに水を向ける桔梗。集まる視線に、堪能していた手を唇に当てて考えているようなポーズをとる。…顔を赤くしたわね。かわいい。
「試験に真面目に挑むか、ほかのクラスと手を組むかでアプローチが180°変わるわね」
「手を組む…?島での試験のように…ということか?」
「ええ。この優待者を見抜くのが試験の本質と、真嶋先生は言っていたけれど…本当にそうかしら?」
「…どういうことだい?堀北さん」
「だって、試験を先生の言う通り人狼ゲームだと言うなら、優待者は適当に決めればいい。それなのに、学校側が“厳正な調整”なんて念押しをする意味が分からないわ」
「たしかにな…」
「十中八九、優待者は何らかの規則性をもって選ばれているわ」
…さて、周囲の感心するような視線を受けつつ紅茶を嗜む。足を組んで余裕と優雅さを存分に見せつけるけれど、実は背中にはひんやりと汗をかいていたり。
実はこの試験、割と適当に規則性が変わるから周回知識殺しなのよね。「コレが優待者の法則よ!」と意気揚々に全グループを指名したりさせたりして、半壊した結果ピカソ顔になった周が何度もあった。恥ずかしすぎて船から身投げするほどよ。オーソドックスな名前順の他に、指定の会議室に十二支を象ったオブジェや掛け軸みたいなものがあって、振り分けられたグループは飾りだったこともある。水金地火木土天海冥、太陽と月とあとなんだったかしら?そういう星のサイズごとに順番がどうのとかもあった気がする。サイズごとに身長順がえらく調整された面々での試験だとか。
何かのバグで全員が優待者になっていた試験は面白かったわ。あの龍園くんすら大人しく試験を受けて様子を見ていたくらいだったし。まあ試験が成り立たずにすぐに中止になったけれど、また機会があったらやってみたい。
さて、次の説明を受けに行く綾小路くんや幸村くんを見送っていくと、平田くんに誘われて内緒話を促される。
空気を読んで席を外してくれた須藤くんや三宅くんは本当に成長したと思うわ。夏休みになにか部活で使いそうなものでも差し入れようかしら?
「堀北さん、篠原さんの件だけど…本当にありがとう」
「本当よ。…果たして労力に見合った結果を彼女は出してくれるのかしら?」
「うん、そこは僕も気にかけるよ。その機会をもらえたことが、まずは嬉しかったんだ」
「ならもっとクラスに貢献なさい。…放課後の勉強会の数を増やすとか、あとは…そうね?クラスに貢献している女子生徒へご褒美をあげるとかね?」
「ふぇ…!?」
ちょうど試験の説明から帰ってきたら王さんに水を向ければ、ぼん、と煙が上がる幻視をするほど顔を赤らめていた。
平田くんが意図を汲んでお礼を言うと、あわあわと手を振って謙遜する。青春ね、なんて目を細めていると同じ顔の桔梗。…机の下の第2ラウンドは足技を使ってきた彼女の反則負けとなったわ。
あとは特に問題らしいこともなく、クラスへのチャットで試験についての連絡はわたし、桔梗、平田くんへするようにと伝えて説明に向かう。
辰グループとメンバーについては、予定通りというかなんと言うか。さて、
「こんばんは、葛城くん。…この試験でも、全力を尽くしましょう」
「ああ。お互いにな。…しかし、このグループ構成には多分に意図が見受けられるようだな」
「…そうね。だからこそ、一之瀬さんが居ないことが不自然に感じるわ」
「っ…!」
「さてな…。相手が誰であろうと、やるべきことは明白だ」
「…クク、おいおい。雑魚が群れて「あら、澪の代わりに生徒会へ推したら却下された龍園くんじゃない」あぁ!?」
「事実でしょう?ちなみにあれ、何も根回ししていないから本当に日頃の行いの賜物よ?」
「…自業自得というものだな、龍園」
「相変わらずベタベタと気持ち悪い連中だ。…この試験、覚悟しておくんだな」
そういって颯爽とわたし達の間を肩で風を切って進む龍園くん。慌ててついていく彼のクラスメイトの表情は怯えと同じくらい焦りがみえる。…、小野田くん、鈴木くん、園田くん。
他の面々にも違いはない。ならあとは、カマかけの結果次第かしら?
時間となり、部屋へと足を踏み入れる。そこには腕を組んだ真嶋先生が座っている。
聞き慣れた説明を真面目に聞いているフリをして、「何か質問は?」と言われたので開幕から2歩踏み込むことにした。
「これ、優待者はクラス関係を除いた生徒の名前順だったりします?辰ならこちらのクラスの桔梗…櫛田さんだとか、そんな簡単な訳ないですよね?」
「っ!?」
「え…?」
「名前の順番…?」
「干支の順番よ。子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥。辰は5番目ね」
脂汗をかいているものの、黙り込む真嶋先生がもう答えを言っているようなものだけれど、当たりを引いたかしら?
「少し待つように」なんて言われたけれど、コレきっと
2人も確認したのか、驚いた顔でわたしを見る。反応的に間違いなさそうだし、あえてDクラス全体のチャットグループに『優待者の法則はわかったわ』と発信する。
一気に増える既読通知と、驚きや喜びの文面が凄まじい速度で流れていく。まだ寝るには早い時間だし、この様子だと他のクラスの生徒にも伝わるのは早そうね。…計画通り。
その後、10分は待機していたかしら?4人の担任が勢ぞろいで入ってきて、緊張した表情の面々からの確認は単純なもの。茶柱先生から聞いたのか?なんてもの。そんな訳ないでしょうと鼻で笑えば、疑念は全く晴れていないけど認めるしかない。
往生際悪く坂上先生や星之宮先生は嘘がめくれた*1ら退学処分も視野に入ると言ってきたけれど、「こんな直感で分かる試験の名前にした学校側に問題がある」「学校側の予想を超えた生徒は即退学なんですか?」と煽り散らす。
ついでに、常識人の坂上先生は味方にしておきたいので「先日、校内の従業員に暴行された時も隠蔽しようとしていましたよね?」とも漏らしてみる。
「なんですって…!?」
「ほ、堀北さん…?…本当、なのかい?」
「鈴音…!?」
「堀北さん、それは…!」
嘘は言っていない。暴行(=性的)と勘違いしたのは勝手だし、わたしは暴行(=物理)のつもりで口にした。嘘はないわ(2回目)…なんてね。
目の前で「そんなこと私は聞いていませんよ!」と声を荒げる坂上先生と、それを宥める星之宮先生。場は混沌と化したので、退室の許可を取ると部屋の外には葛城くんたちの姿があった。
「あら、お出迎えなんて。待たせてしまったかしら?」
「…いや、俺たちが自主的に居ただけだ。気にすることはない。…この後、話せるか?白石や西川も呼ぶ」
「待て待て、オレが先だ。ひよりも、伊吹のやつも呼んでやる。かまわねえな?」
あら、モテモテね。…なんて。クラスの変な盛り上がりや、この部屋へ来た担任たちの状況から情報を得ようと駆けつけたようね。Bクラスは…一之瀬さんへ連絡しているのかしら?神崎くん達の姿がない。
というか葛城くんは兎も角、龍園くんは分かっているのかしら?まあ有り難く、と言ったところね。やってきたAクラスの二人と、不機嫌そうな表情の澪。マイペースに本を読んでいる椎名さん。個性的な面々に囲まれて、それも何故か距離が近い。
両手どころか、背中や膝にも花、華。無防備に頭を預けてくれる椎名さんを愛でながら、わたしは目の前のマフィアと極道ふたりから交渉が持ち掛けられた。
まあなんというか、「この場に居ないBクラスを食い物にしよう」「ついでにAクラスも」云々、
「前の試験と同様、AとDクラスは協力関係を取ろう」「そこのCクラスも」等々。
まあそう結論を急くものでもないし、いったんは持ち「伊吹を一晩貸してやる」良いのっ!?…んん。流石に桔梗に止められたわ。もちろん、澪も顔を真っ赤にして拒否していた。…しゅん。
「龍園、貴様はクラスメイトを蔑ろにしすぎではないか?本人も嫌がっていることを強要するべきではない」
「はっ!テメエもやってんのは女衒と変わらねえだろ。いくらで頼んだんだ?とんだ優等生が居たもんだぜ…!」
「…やめて、ふたりとも。…わたしの為に争わないで…!(小声)」
「っ…ちょ、やめてください、堀北さんっ…!ふっ、ふふっ…!」
目の前の殺伐とした掛け合いにもちょっとウィット(?)に富んだジョークを口にすれば、肩を震わせる白石さんたち。…あ、澪も我慢しているけれどプルプルしているわね。
良い時間だったし、そろそろ眠い人もいる頃でしょうに元気ね。…さて、とりあえずは締めましょうか。
「話は分かったわ。こちらとしても両クラスと
「む…」
「クク…、賢明だな。にしてもBクラスはどうした?草葉の陰で泣いてるぜ?」
「良いのよ。今回の試験にチームワークは関係ない。それにこの場に居ない時点で、神崎くんたちの方針は明確でしょう?」
「まあな。…どうせ連中、必死こいてその法則ってやつを探ってるだろうぜ」
確かに一之瀬さんや網倉さんあたりが水着やメイド服でやってきたら、こちらも佐倉さんや桔梗が居なければ太刀打ちできなくなってしまうけれど…じゃないわ。ええと…、
「優待者の法則を見抜くため、というわけか。…努力を笑うつもりはない。が…」
「時勢を読む目がねえな。…ま、鈴音の言う法則ってのがガセじゃなければな」
「不安なら一筆書きましょうか?」
「…自信があるようだな。だが、提案を断わる理由もない。ありがたく頂こう」
「なら俺もだ。手付に伊吹は貸してやるよ「ちょっ!龍園!?」うるせえぞ、少しは役に立て。…今度こそな」
「チッ…」
そういって、龍園くんが合図をすると、いつの間にか背後にいた山田くんが白紙の誓約書を差し出す。
手慣れたものね。わたしは口に出して、内容が伝わるように彼らに書類をしたためる。
・堀北鈴音は葛城康平と龍園翔に夏季の特別試験(船上試験)における優待者の法則を教える。
・この内容に誤りがあった場合、堀北鈴音は両名に損害分のポイントを支払う。
・上記が支払えない場合、退学を含めた学校のルール内でのすべての処分に堀北鈴音は同意するものとする。
そこまで書いた時点で、しん…と固まる面々。クスクスと笑いかければ、さすがと言うべきかリーダー格のふたりの復帰は早かったわ。心配から念押しをする葛城くんと、正反対に…でも不敵な笑みでこちらを値踏みする龍園くん。ふたりには「心配いらないわ」と自信満々に伝えてあげる。
条件については、別に口約束で構わない。書類に残す方が問題だし、逆に三竦み(Bクラス?知らないわね)なら抜け駆けすれば二者に叩かれる。それを理解できないふたりじゃない。
「…で?条件は?」
「どこまで求めるか次第ね。Cクラスがこの試験でBクラスになりたいなら、なればいいんじゃないかしら?」
「ふむ、逆転可能な状況ではあるのか…」
「チッ…Aクラス様は余裕じゃねえか」
そう、実はCクラスがBクラスを全グループで裏切ればCの490ポイントとBの853ポイントの差は大きく縮まる。
490+150→640ポイントと853-150→703ポイント。たった63ポイント。もうひと押し協力できればそれも埋まるから、全然現実的な話だ。流石にDとAでは1000以上の差があって無理だけれどね。
結局、その場では紳士協定*2だけ結んで、明日の初回での試験時間に交渉をする運びとなったわ。葛城くんは考えを纏める時間を、龍園くんはそれに加えて「Bクラスの前でどう自分たちを料理するのか話して様子を見たい(意訳)」ということだったので葛城くんはため息交じりに頷いていたわ。
「じゃ、澪。今日は一緒に居てくれるかしら?」
「う…」
「構わねえよ。ひよりもつけてやるから、満足したら優待者の「抜け駆けは許さんぞ、龍園」…チッ、冗談が分からねえ奴だ」
「黙れ。お前のその「葛城くん、私達が一緒にお泊りして見守りましょうか?」…白石。しかし」
「全然大丈夫だよー?他のクラスの子ともお話してみたかったし!」
「…分かった」
モテモテだわ。…なんてね?その後、わたしの個室へ案内したら澪が「ずるい…」と口にして頬を膨らませたり、椎名さんはマイペースにソファで本を読み始めて「ふあ…」と可愛い欠伸を漏らす。
白石さんや西川さんは何故かノリノリで入浴の手伝いをしてくれて、体まで洗ってくれようとしたので理性との闘いだった。…ちょっとだけなら…。………んっ。
まあ顔を真っ赤にした澪が乱入してきたので、浮気がばれた男性みたいに誤魔化すことになったのだけれど…白石さん、やっぱり魔性ね。あ、西川さんはすぐに借りてきた猫みたいになっていたのが印象的だったわ。ちょっと刺激的だったかしら?
その日は遅くまでお話をしたり、軽い()ボディタッチをしたり、まあガールズトークを楽しんだわ。
「起きなよ、色情魔」
「…あら、桔梗。今日も可愛いわね。おはよう」
揺すられる感覚。険を含んだ声にパチリと、目を覚ます。耳元で聞こえる桔梗の声で一瞬の内にスイッチが入った。
「っと信じられない。…なに?今度はハーレムでも作る気なの?…っちょ、やめっ……んんっ、嫌、」
グイっと、抱き寄せた彼女を黙らせる。慌てて周囲に視線を走らせるのが分かったけれど、起きていないだろうし盗み見られても構わない。不安にさせてしまったかしら?今日は忙しくなるだろうし、たくさんわたしの痕を残してあげた。声を漏らさないように口を塞ぐ彼女は相変わらず煽情的で、思わず下着に手を伸ばしたわたしは悪くないと思う。
「わたしの一番は、いつだってあなたよ?」
「っ…!この…、嘘つき…っ…!んっ…」
タイミング良く(悪く?かしらね)誰か身動ぎ。「うぅん…」なんて声に正気に戻って、直ぐに身だしなみを整えたのは流石、桔梗ね。
◇
「Aクラスとしては【結果1】を4つのグループで取得することを希望する。」
「Cクラスからは【結果3】を6つ取らせろ。それで良しにしといてやる」
「Dクラスとしては異論はないわ。…残る2つは好きにして良いってことかしら?」
「ああ」「構わねえ」
「…っ!」
多分、事前にすり合わせでもしてきたのかしら?割と横柄な態度のCクラスに、珍しく葛城くんは腕を組んで黙認している。どれどれ?と予定表?いえ、ポイントの推移予定の表をみせて貰うとそこには試験後のクラスの結果まで記載がある。
Aクラス: 1,568 pt → 1,468 pt(-100 pt)
Bクラス: 853 pt → 703 pt(-150 pt)
Cクラス: 490 pt → 790 pt(+300 pt)
Dクラス: 299 pt → 249 pt(-50 pt)
………。ほう。ちょっと面食らったけれど理解はできた。Aクラスは2つのグループをCクラスに売った?別段、ポイントの話とかが出ないのはきっと無人島試験でのポイントの支払いを減額とかで手を打った…そんなところかしら。
Cクラスの希望を満たすなら、Aが2つ。Bが3つ、Dが1つの優待者を抜かれることになる。残るAとCを好きにしていいってことは…さて、Bクラスは気付くかしらね?多分ムリだと思うけれど…。
わたしはサラサラと差し出された予定表に書き込みを加える。
・Dクラス指名→Cクラス『寅グループ』、Aクラス『酉グループ』
→修正結果
Aクラス: 1,568 pt → 1,418 pt(-150 pt)
Bクラス: 853 pt → 703 pt(-150 pt)
Cクラス: 490 pt → 740 pt(+250 pt)
Dクラス: 299 pt → 349 pt(+50 pt)
書き加えた内容。一瞬目を細めたけれど書き込まれたグループ名から、わたしが間違いなく優待者を知っていると確信したみたい。ふたりの表情からほぼ疑念や警戒が薄れたのがわかった。
「フン…」
「承知した。こちらに異論はない」
ちなみに仲良く見えるふたりだけれど、それぞれ内密に『ポイントの融資』『女子生徒の斡旋』みたいな連絡は来ていたわよ?そのあたりの抜け目というか、手抜かりはないのが彼らと、
「ありがとう、それならもう「少し待ってくれないか」…あら、なにかしら、神崎くん?」
「…交渉がしたい」
「おいおい、半日遅えぞ。周回遅れも良い所だぜ?お前ら」
「同感だな。今更なにかあるのか?」
まあ案の定、なんとか口を挟もうとする神崎くんに周囲の向ける視線は冷たい。焦るBクラスの気持ちも分かるけれど、所詮付け焼刃というかリモコンというか…。彼自身に提案できる内容なんてほとんどない。
こういう時に強いのは龍園くんのようなワンマンな独裁者か、葛城くんのような保守的な管理者のいずれか。前者は機を逸せず、後者は損切を誤らない。
すでにここまで進んでいる話をひっくり返すのはかなり厳しい。船上バトルロイヤルでも開催されない限り、目が彼らに向くことはないでしょう。
試験で得る膨大なプライベートポイントの譲渡を提示されたけれど、鼻で笑う龍園くん。まあ本人はともかく、彼やわたしのクラスの子たちなら裏切りを誘発できたかもしれないけれど、それもできない。
何故なら葛城くんが『結果1』を4グループで希望したからだ。ざっと1/3のグループ全員に50万のポイントが付与される。仲良く分けても17万近くもらえるなら、おとなしくしておいた方が良い。リスク計算が出来る彼だからこそ、ここでちゃんと飴の用意も欠かさないのは優秀ね。
さて、これで大体は結論が出たかしら?目の前で踊る会議を横目に、わたしは俯いている桔梗と机の下で手をつなぐのだった。
◆試験結果(予定)
【結果1】グループ→4つ
・Cクラスグループ×2
・Dクラスグループ×2
【結果3】グループ→8つ
Aクラス → 1418クラスポイント(-150)
Bクラス → 703クラスポイント(-150)
Cクラス → 740クラスポイント(+250)
Dクラス → 349クラスポイント(+50)
…まだ行けるわね。わたしは端末を取り出して、一之瀬さんへメールを送る。内容は、「ある生徒の連絡先を教えて欲しい」というもの。後は彼女とクラスメイト次第かしら?
わたし達が上のクラスに行くのはまだ早い。…でも、他のクラスが興隆や落ちぶれるのは大歓迎よ。特に全方面に喧嘩を売る龍園くんのCクラスには、早めにパブリックエネミー*3になってもらう。落ち目になったBクラス…元Bクラスを誰が救う?わたしたちDクラスだ。
「…ふふっ」
協力には、物語が必要なのよ。隣で訝し気な表情を浮かべる平田くんや桔梗に手を振って誤魔化すと、目の前で顔を青くしている神崎くんを見据える。この敗北が、彼やBクラスの生徒たちの自立を促すことに繋がれば十分元が取れるわ。…たとえそれが、Bクラスをふたつに割ることになってもね。
読了ありがとうございますー!
瞬殺になるのかそーでもないのか、こうご期待をばー。
ほんと、急ぎますのですいませんでしたー。
感想、高評価、いつも本当に頑張る燃料になってますー!