堀北さんは諦めない! 作:BM-13
ギリギリですが間に合った?ですー。
寒くなってきたのでお気をつけて皆様ー
それではどうぞー。
さて、船上試験も後半戦。既に龍園くんは甚振るようにBクラスを始めとする、6つのグループを終了させた。
わたしと葛城くんも承知のこととはいえ、クラスの混乱を統率するのはマスト。独裁者とは違うのだから、しっかりと説明はしておく。
それを終えて、あとはわたし達Dクラスが指名をしたら終わり…そんな日を迎える前夜に私が何をしているかというと、
「んっ…ちゅ、んむ……」
「れぅ…、ちゅ、っ…ぷはっ…んぅ…」
襲われているわ(直球)
目覚めのキス…なんて、優しいものではない熱烈なくちづけ。それも深い方。着てきた衣装はこの前のドレス姿。
そして目を見れば彼女の本気具合が分かる。…彼女は、ここでキメに来ている。桃色に浮かぶ朱や紫、そして黒はわたしも良く鏡で見るからわかる。口の端から雫が伝うのもそのままに、貪るようにわたしの唇を、体を弄ってきた。余裕のない、容赦のない行為。
「鈴音…鈴音っ!…すず、ねぇ…っ!」
「っ…ん…っはぁ…っ!」
部屋の時計を見れば、まだ日付を少し超えたくらい。どうしてこんな深夜に、一之瀬さんが?…彼女が
このままでは試験に負けると思ったのか、神崎くんや周囲の生徒が一之瀬さんに頼った結果の暴発。他の周では貯金箱②*1と寝たクラスメイトの火消し、あるいはポイントを工面するための身売り、本当によくクラスリーダーを続けていると思うわ。
今回のこの夜這いもそう。そのために多分、星之宮先生あたりにポイント交渉して、客室のカードキーを購入。わたしの寝所へまんまと侵入を果たした。前科XX犯。わたしは詳しいのよ。言い訳は間違いなく「女子生徒同士のコミュニケーションが~」か「学校側としては生徒にはフェアに~」のどちらかね。
ただ残念なことに、私はとっても
「っ……」
「すー、…ん……」
なにをされるのか楽しみで寝たフリをしてみる。すると、多分紐?リボンかしら?頭の上で腕をまとめ、ぎゅっと両手の自由が奪われた。
このままじゃ服も脱げないというのに、彼女は私に覆い被さって、耳元で「起きてる…よね?」なんて言ってきた。
…流石一之瀬さん。わたしはパチリと目を開き、「あら、おはよう」と口にする――つもりだった。
「んっ…!」
「………っ」
でも、「あ」っという間にその口は塞がれて、身動ぎもできない状態でされるまま。熱を奪うように、自分色に染めるように何度も、何度も繰り返された。
「…?」
「っ…」
…よく見れば彼女の後ろには、真っ赤な顔で息を呑む…姫野さん?疑問に思ったけれど、すぐに氷解した。そこまで仲のよい関係でなく、またクラスのために行動を起こせる友人が彼女くらいしか残っていなかったのね。
他の生徒は右往左往するだけ。その中で数少ない「焦り」を浮かべた彼女を、一之瀬さんは抜擢して共犯者にした。目が合うと申し訳ないような、目を逸らしながらも手に持つ端末には赤い録画モードの明かりが光っている。
…すごい。割と本気で感心しているわ。こんな時期に、一之瀬さんがここまでダーティな手を打ってきたことはない。断首作戦というか、相手のリーダーの寝込みを襲うなんて後ろ指を刺されるようなことまで。少なくとも1年生の間に起きたのはなかったはず。
荒い呼吸が2つ重なる密室で、ついに私の着るシャツのボタンに手が伸びた。息を呑む声、生唾を呑む音、衣擦れと軋むベッドの悲鳴。
「抵抗…しないの?」
「好きになさい。…
「っ……!」
名前呼びを止めたのは、クリティカルだったかしら。ポロポロと涙を流しながら、彼女はわたしの身体へ手を伸ばした。生理的反応、演技や本心の混じった嬌声。…にしても、今回はお互いに女性だったのが…なんとも。幸か不幸か、満足するまで時間がかかる。お互いの体力か気力が尽きるまで随分と――少なくとも姫野さんが下腹部へ手を伸ばしかけるまでは――時間がかかったわ。
「すずねぇ…ごめん、ごめんなさい、ひっ…。うぅ…」
「………もう、満足したかしら?」
「こうしなきゃ、でも…鈴音だから…っクラスが、っ違うけど…一緒にっ…うぅ…」
最後には自分に言い聞かせていたのか、後ろで顔を青くしていた姫野さんに聞かせていたのか分からない。でも、彼女はきっと今日、この日に壊れてしまったのだと思う。
「クラスのために」
「みんなのために」
「ごめんなさい」 「嫌いにならないで」
「許して許して許して」
そんなことを、縛られたままの腕の内に抱きしめてもずっと繰り返していた。
泣き疲れたのか、涙の跡が深く残る彼女へ口づけを落として、そっとベッドへ横たわらせる。
「…あなた」
「っ!」
「…解いてくれるかしら?」
「で…でも」
「いいから。…そんな動画データ、本当に役に立つと思ってるの?私とこの子を学校から消すくらいにしか役に立たないでしょう?」
「う…」
「それとも、あなたも
「っ」
そういえば観念したのか、部屋に備え付けてあったペーパーナイフで拘束の紐を切ってもらう。
一之瀬さんの私物でしょう、リボンの残骸を外して手首を見れば、塞がっていた傷跡に響いて血が滲んでいる。…さらに顔色を悪くした彼女には悪いけれど、まだ仕事が残っている。
端末からこの件の責任者(首謀者にあらず)へ電話をかけさせる。…長い呼び出し音の後に、ひと言、ふた言の返事をしていた姫野さんからそれを取り上げて、開口一番にお礼参りをする。
「こんばんは、神崎くん。わたしよ?」
『…堀北か。いったいなんの「やってくれたわね、本当に」…なに?』
「あなたが帆波を唆したんでしょう?とんだクラスメイトね」
『………』
あ、ここで「何のことだ?」と即答できない時点で確定ね。予想通り、この件は一之瀬さんと独断専行。おそらく彼は具体的に何をするかは知らなかった。…いえ、知ろうともしなかったのでしょう。
「不法侵入に加えて、寝込みを襲われたわ。…手首を縛って、抵抗できないようにね」
『なに…!?どうしてそんな馬鹿なことを…』
「そうさせたのはあなたと、帆波のクラスメイトでしょう?諸共、不同意で最低な行為を映像に残して、脅迫。従わなくとも公開して学校に居場所を無くさせる。…あとは烏合となったDクラスを、Bクラスのリーダーである神崎隆二が刈り取って実権を握る。こんな手筈かしら?素敵ね」
『な、な…!そんな訳、ありえない…!』
「それともわたしか帆波の身体が目的だったのかしら?…残念だけど、お断りよ。…この、
『ま、待ってく』
プツリと通話を切る。…まあ彼が童貞なのは事実なのだけれど、それは良い。目の前で「まさか…」みたいな表情を浮かべる姫野さんを見れば、顔色を青くして何かに気がついた様子。
多分勘違いだけれど、解いてあげる義理もなし。せいぜい自分も口封じに切られる恐怖に震えていることね。
さて、こんな雑魚にはいつまでも構っては居られない。さっさと共犯者と、あわよくば黒幕にもお礼をしないとならないのだから。
わたしは今だ混乱の内にある姫野さんを適当に蹴り飛ばして、自分の端末で電話をかける。誰に?…もちろん、この船で現状もっとも頼りになる先生へ。
「…もしもし?
時計を見れば、まだまだ夜明けは遠い。夜明けまでに帰れることを祈って、わたしは一之瀬さんへシーツをかけて部屋を出るのだった。
◇
その後、無事なボタンを2つだけ閉めたワイシャツ、チラチラと覗く赤い下着だけをつけて船内を進む。素足でペタペタと足音を立てて廊下を進んでいると、慌ただしい足音と共に坂上先生やその他の船内のスタッフたちーー女性の方も含めてーーと遭遇した。
「ほ、堀北さんっ、なんて格好で出歩いているんですかっ…!」
「坂上先生。夜分に申し訳ないです」
「っとりあえず、これを着てください」
「ちょっとあなた、怪我してるじゃない!」
「ああ、これは…」
悲鳴を上げられたり、慌てて上着を羽織らせてくれたのは本当に教師としてのキャリアと、大人としての責任感を感じさせる一幕だったわ。
その後、こんな時間に会う訳はないけれど生徒の目に触れないように広めの空き会議室?みたいなところへ連れて行ったのも高評価。
手首に包帯を巻いてくれた女性のスタッフが飲み物をくれたので受け取ると、席を外そうとする坂上先生を呼びとめる。…ショックを受けている女子生徒への対応としては本当に満点を上げたいくらいだけれど、まだあなたには用事があるのよ。
「坂上先生に、お願いしたいことがあります」
「…どうしたのですか?堀北さん」
「はい。…坂上先生は、その…夏休み前のことは聞いていますか?」
「………はい。昨日真嶋先生から、生徒へのリスク面での対策のために確認しました。決して口外はしません。これはクラス関係なく、教師としての当然のことです。約束します」
やはり、この方は教師として真っ当な価値観と責任感を持っていてくれる。他の担任が高校時代の思いを大小抱えていて私情に塗れて不正行為に手を染める分、事更に。
わたしは今回の個室の件もその経緯からお願いをしたこと、そしてその依頼をした担任の生徒が
「馬鹿な…そのようなこと、ほ、本当に担任の先生が…?間違いないのですか!?」
「でなければ、オートロックの客室のキーを一生徒が手にできると思いますか?」
「それは…「先生」っ…」
そういって、赤く染まった袖のまま坂上先生の手を取る。手当てはしてもらったけれど、わたしが感じた痛みへの印象操作にはさぞ有効でしょう。
個室を借りていた理由、それを知っていたはずのお粗末な某担任の対応。結果生じた被害と、その生徒からの訴え。震える手に、教師を頼る生徒。無関係な職員たちの無言の圧力。三倍満*2ってところね。
結果的に、坂上先生は覚醒した。なんなら激怒した。他の若手担任どもに思うところがあったのかもしれない。…担当生徒からのストレスを一番感じていたのもあるかも、なんてね。ふふっ。
他の全ての担任を叩き起こして、ことの次第を共有。案の定誤魔化す星之宮先生は「女の子同士だったから~」「二人は仲が良かったから~」と口にしたので、
「これ、証拠の動画です。わたしと帆波が映っています。…当然、撮影者は別人です」
「ちょ、ちょっと…!止めなさいっ再生するなんて!」
「いい歳した大人がなに言っているんですか?…ああ、当然ですけどこれは犯罪ですよね?どうします?」
「…ううむ…」
大音量で一之瀬さんが泣きながらわたしを強姦*3する動画を再生して「出るところ出ましょうか?」と小首を傾げれば、「でもそれだと一之瀬さんにも処分が…」なんてチラチラとこちらを見て宣うので「わたしは困りませんよ?」と返せば絶句。
いや、どうしてわたしが…というか、被害者が加害者やそのクラスに
無理やりは良くない。当然でしょう。
…なにか頭に当たった*5気がするけれど、気にせずにわたしはこの件について激詰めを続ける。具体的には問題化を望むので、特別試験についてもとっとと終わらせろと圧をかける。待ったをかけるのは当然、星之宮先生。…まあBクラスから陥落するのが嫌でこんな危ない橋を渡ったのだから、当然と言えば当然だけれど…。
「…致し方ない、か」
「真嶋くん!?」
「星之宮先生、ことは既に我々の判断を超えるところにあると思いますが?」
「………確かに」
他の担任からは、「まあ、いいんじゃない?(意訳)」と言われアウェーに。まあCクラスは龍園くんがグループの半分を終わらせて満足していたし、Aクラスも葛城くんとこっちのクラスの桔梗のプロデュースで結果1に為に頑張ってくれた。後は好きにテーブルゲームでもしてまったり時間を過ごす予定だし、構わないのでしょうね。
わたしは実はメール待ち。その件を
まあつまり、試験へ直接ではなくとも教師による干渉で影響が出た。それが例えば教師に依頼して、直前で会議の部屋を遅刻ペナギリギリの遠い部屋に変えるとか、試験終わりまで2人の生徒の名前を完全に入れ替えるとかするならまだセーフ(だった)。
ただ、これが龍園くんだったら?一之瀬さんが男子を伴って部屋に来ていたら?間違いなく事案でしょう。念のために坂上先生に龍園くんが親睦のためにと言ったら鍵を売るか聞いたら、首を横に振ったわ。残念ながら当然ね。
結局、星之宮先生の不適切な行為については学校に戻ってから沙汰を決める運びに。
私についても動画付きで眠っている所を襲われた件については証拠により証明した。できるだけそのままにしておく為に替えの端末を(ちゃんと有償で)受け取り、SIMカードを交換する。
「で、試験はどうしてくれるんです?」
「…君には迷惑をかけるが、残り半分の試験について強制的に中止で終えるのは公平性に欠くと判断する」
「あら、だったら明日の試験時間での議題はBクラス生徒による寝起きドッキリに「それだけは止めてっ!」…だ、そうですけど?」
「…参加者全員が、認めた場合だけ時短終了にするのはどうだ?」
「それはそれで、結果3を狙うBクラスが納得しなさそうなんですが、どう思います?また担任の先生が介入でもするんですか?」
「ぐっ…、どうしろというんだ?」
いや、どうするか考えるのがあなたの仕事でしょう学年主任。不正の星之宮と脅迫の茶柱が倒れた今、あとはあなたと常識の坂上しかいないのよ?
わたしはため息交じりにこれで逸する機会への補填を各クラスにするように伝える。例えばありえない話だけれど、Bクラスが怒涛の勢いで残る6グループすべてを結果3に導いたら?最大300クラスポイント。逆にわたし達や葛城くんもそれに近いことは出来る筈。
なら、その満額ではなくとも7割程度は支給するように提案をする。もちろん、残るグループはすべて結果1で終える内容で、ね?
即決できないと寝ぼけたことを言う真嶋先生に、星之宮先生が必死の訴えで詰め寄る。忘れられないように、わたしへの学校側からの補償も伝えておきましょう。
慰謝料をごねられたら?いくらでもネタはある。その場合は残念だけれど、坂柳理事長の離脱が半年近く前倒しになるだけの話よ。
彼らを置いて個室に戻ると、そこには姫野さんの姿は無くベッドでなく床にぺたんと座り込んだ一之瀬さんの姿が…って、
「ただいま、帆波」
「あ…あぁ…、すず、すずね…!」
「あらあら」
部屋に着いた途端、私のお腹あたりに抱きついた一之瀬さん。よほど不安だったのか、くしゃくしゃの泣き顔のまま謝り続ける。…これでも彼女が綺麗で可愛いのは、本当にズルいと思うわ。そんな顔を晴らす為に事の次第を伝えれば、安堵5と諦観5を感じる表情で俯いてしまう。
「だから、悪いのは星之宮先生と神崎くんね。あなたは誘導された結果、責任感からわたしの部屋へ来た。そういうことになる予定よ」
「そっか…。……そっかぁ…」
きっとこの後に出る言葉は、自罰的なものになる。想像に難くないし、その通りに彼女は儚い笑顔を浮かべてわたしから離れようとする。…まあ、逃さないけれどね。
「わたし、この学校を辞め「ダメよ」…っでも、鈴音!」
「忘れたの?あなたは、わたしのものなのよ。勝手に居なくなるなんて、許さない」
「あ…。私…わた、し…んっ…!」
これが正しい意味で、黙らせるためのキス。きっと2年生が終わる頃には彼女も習得していることでしょう。
「ん。…いいわね?復唱しなさい。わたしは?」
「わ、私…は、」
「誰のものなの?」
「鈴音の…堀北鈴音さんの…もの、です。っ、きゃっ…!?」
「よく言えました」
堕ちたわね。これで彼女を、ひいてはBクラスの大半…少なくとも半数はコントロールできるようになる。使い捨てる前提なら一度くらい…なんてしない。…少なくとも少なくとも今はね。
それにこれからキチンと罰は与えるつもりよ?
ちなみに全然関係ない…、ええ、本当によ?関係ないのだけれど、これまでの周で見た綾小路くんと一之瀬さんはとても魅力的なカップルだと思っている。美男美女。お互いの気質、そして夜の相性も申し分ない。
もっと彼と、そして彼女を繋ぎ止めてみせる。今度こそ、わたしは…。
◇
試験三日目。生徒全体へは「機器の不良により試験は中断、今日中に進展について連絡〜」との発信を館内放送、メール、果ては電話で全体周知した。まあ今日は完全自由日。試験を終えた生徒も、まだの生徒たちも思い思いの方法でつかの間の休みを満喫していた。当然、わたしもその仲間入りをするために午前中から忙しなく行動していた。
まず、昨日の一件。星之宮先生は端末没収の上で個室にて謹慎。一之瀬さんはわたしの個室で半軟禁状態にある。坂上先生と(不本意ながら)茶柱先生に立ち会い、双方同意の上でBクラスに迷惑をかけないための処置だと理解はしてくれた。
余計なことを言おうとした茶柱先生には「タバコ臭いので口を開かないで下さい」と伝えて黙らせる。静かになったのを確認して、今度は忍び足で大きなサロンの一室へと向かう。場所?その日にレンタルできなかった大部屋を探せば一発よ。外に見張りひとり置かないなんて、不用心も良い所ね。サロンのドア越しに耳を澄ませれば、
「どういうことだよ!神崎!なんで一之瀬さんが!」
「だから俺にも分からないんだ!それよりまずはーー」
「それよりって何よ!帆波ちゃんが心配じゃないの!?」
うわぁ。…入るまでもないくらい、混乱の坩堝ね。剣呑剣呑。二桁に及ぶ神崎くんのラブコールを無視し続けたからかしら?まあ、責任は取らないとね。
ちなみに姫野さんにはちゃんと口止めをしておいた。教師に「あなたも共犯だ」と伝えられたくなければ〜なんて、最低の脅し文句ね。
データが空の端末を受け取る手も震えていたわ。蹴飛ばしたところを優しく撫でて心配をしてあげると、ブルブルと震える様が可愛くて、一緒に仲良し写真を撮ってもらった。
「ちょ、あっ…、ダメっ…手、止めてっ…!」
「ほら、しっかりとシャッターを切らないとダメじゃない?誰か呼びましょうか?」
「そんな…、んっ…!」
嫌々って表情がドロドロに溶けるほど、昨日の続きをしてあげたら頑張って顔を取り繕っていた。動画は嫌?あなたはわたし達を撮ったのに?…冗談よ?わたし達は、ナカヨシですものね?
その後、遅めのお昼を偶然()出会った松下さんと一緒に頂いた。なんでも軽井沢さんがCクラスの真鍋さん達に絡まれて大変らしい。そう。…彼女の顛末は、興味がある。奇しくも綾小路くんと同じグループだ。ただ今回はわたしが触れを出して同じグループの幸村くんも余裕があるしどうなるのかしら?
…個人的には、真鍋さんって悪くないのよね。退学のかかった試験…まあ学期末特別試験でこちらの鉄砲玉と司令塔をさせて、お互いのクラス全員で休んでケヤキモールで龍園くんたちと賭け試合をしたのは本当に楽しかった。
あの周ではバンバン退学者も出して、クラス内投票が起きなかったから普通に進んでちょっと拍子抜けだったからちょうど良かったのよね。
大縄跳びの太い縄をひとりで必死に回して跳ぼうとしたり、10000メートルリレーを一人で泣きながら吐いてもゴールしようとしたのには涙を禁じ得なかった。
3対3で迎えた最終戦で騎馬戦が選ばれて、絶望の涙と声をグラウンド中に響き渡らせたのは翌年以降の教材として使うほどの傑作だった。
ああ、ひとりぼっちじゃ寂しいでしょうしこちらの鉄砲玉も鉄砲玉してもらったから、仲良く転校したんじゃないかしら?お互い自分ひとりの身体じゃなかった様だし、風邪には気をつけて…おっと、閑話休題。
「それで、さ。堀北さん」
「あら、なにかしら?千秋」
「んっ…。その、Bクラスのこと…知ってる?」
「興味あるの?もうあなたのグループは終わった筈だけれど」
「…っあ、…その、ほら…せっかく休みの日なのに…んんっ、全然いないし、暗い顔してるしさ…っ!」
言葉を口にする度に身悶えする彼女を愛でながら、食後のデザートの注文をする。店員さんが綺麗な姿勢で
チラチラと周囲を気にしながら、それでも余裕そうな表情を浮かべる松下さん。赤らめた頬も、汗がじんと流れる首筋も煽情的に映った。この後の予定がなければ部屋に案内していたんだけれど、生憎と一之瀬さんが居るしお預けね。
「ん…ちょ、強っ…すぎ、…ん、止め…っ」
「Bクラスの件は彼らの自爆よ。…実は昨日、寝込みを襲われちゃったの」
「え…えぇ…!?」
ほらこれ、と言ってわたしの首元を緩めてみせて上げた。夥しい数の痕と、痛々しく残る包帯に滲んだ朱。息を呑んだ松下さんも楽にしてあげて、席を立つ。もう少しゆっくりしたいみたいだしお先に失礼しましょう。
後ろからかかる声については手を振るだけで返す。愛人の条件は「都合のいい存在」…なんてね?今度お手本を見せて上げましょう。
愛人との逢瀬の後はちゃんと真面目にクラスのリーダーとして立ち回ったわ。平田くんに残ったグループの生徒への指示出しをさせたり、桔梗に言って高円寺くんに失礼にならない程度の報酬を渡すように依頼したり。
葛城くんにはそれとなく、「試験を時短で終えられるかもしれない」と伝えてクラス内の取り纏めをして貰っている。龍園くんは…とりあえず放っておきましょう。猫みたいな、じゃないけれど彼から来るでしょうし。
午後の三時くらいかしら?真嶋先生に呼び出されると、そこには星之宮先生を除く3人が居た。結論から言うと、保障のポイントについては恙無く支給されるとの由。ただ試験そのものへの補填については難航した。
こちらの提示した、試験の中止+残るグループすべてを結果1で清算+残るグループが出せる最大値のクラスポイントの補填…まあ全部乗せね。通るとは思ってなかったし、それは
「中止にしたグループについてはちょうど半分ということもあり、残るすべてのグループの生徒へ25万ポイントの支給。そして保障という意味で、優待者のクラスには25クラスポイントを与えることにする」
「話になりませんね。残りのグループの優待者はAとCとD。特にCは3名が残っていて、かつ先の6グループをすべて指名しています。Cクラスの独走を許して、AとDには泣けと言うことですか?これではBクラスの生徒も納得しないと思います」
「…堀北、お前はどういう立場でこの場に居るんだ?」
当然、合法的に教師を殴る為に…じゃない、んん。当然、生徒側の立場でものを言っているわ。Bクラスだって、全員が全員、今回の件に関わっている訳じゃない。それで理不尽に試験を一つ潰されて、リーダーも憔悴してクラスが割れるなんて。可哀そうすぎて、手助けするしかないわ。…ないわよね?
それにこの試験は、おそらく全学年を通してもほぼ最高値のポイント荒稼ぎが出来る試験に他ならない。2~3年になるとどのクラスもお財布事情が見えなくなるのもあるし、今の内に手にできるものには手を伸ばすべきだわ。
「こちらの要望を酌む提案には感謝しますが、これでは納得できません。それにこのまま試験を終えれば、Bクラスから不満が出ますよね?」
「…それがどうかしたのか?」
思わずため息をつきそうに…いえ、我慢できなかったわ。その態度にビクリと肩を揺らす茶柱先生。…もう静かにしていて欲しい。
「茶柱先生は本当に想像力が働かないのですね。…昨晩の件が漏洩して困るのはどこです?わたしは構いませんが学校側も構わないんですか?たかが一生徒*6も言いくるめられない様子を見るに、握り潰せる気がしないんですが」
「っ…!それは…」
「………少し待ちなさい」
「構いませんが、時間は有限なのを忘れないでくださいね?」
結局、裏に引っ込んだ真嶋先生は胃のあたりを押えながらこちらの提案を大筋で飲むことに合意した。その代わり、わたしにBクラスとの仲裁を頼むとも。…流石、坂柳さんの父君ね。しっかりと主導権は握ってくる。それが出来れば予定通りに…まあよほどこちらの方が話が早い。
成功報酬の約束もスッと真嶋先生から提示される。ここまで織り込み済みでの提案、交渉とはかくあるべきね。
◇
「ふぅ…」
試験4日目。…まあ試験は無事にひと段落となった。根回しに駆け回ったわたしも今はテラス席でひとり。パラソルの下、背を楽に出来るチェアでくつろぐことが出来ていた。
Bクラスの元へ、一之瀬さんの元へ、ついでに星之宮先生やクラスのみんなの元へ話を通して納得させた。手に持つ端末へ目を通せば、今回の試験結果の速報が学校から通達されている。
■夏季特別試験(干支試験)結果
※(内 保障ポイント)
■Aクラス:1568ポイント→1593ポイント
+25クラスポイント(+125)
+450万プライベートポイント(+450万)
■Bクラス:853ポイント→803ポイント
-50クラスポイント(+100)
+450万プライベートポイント(+450万)
■Cクラス:490ポイント→965ポイント
+475クラスポイント(+175)
+750万プライベートポイント(+450万)
■Dクラス:299ポイント→399ポイント
+100クラスポイント(+150)
+450万プライベートポイント(+450万)
結果的に、全てのクラスに100クラスポイントを保障させた。これにはBクラスを筆頭に、葛城くんや平田くん達にも熱烈感謝を受けた。ついでに葛城くんにも気になっていたことを聞いたけれど、流石は優等生クラスのリーダー。具体的には教えてくれなかったわ。…でもその、「流石だな、堀北…」みたいな笑みを向けたりすると誤解されないかしら?いえ、あなたのクラスの生徒に友好的に思われるのは助かるのだけれど、ね?…まあ嬉しい誤算としましょう。
あとは試験終了後のクラスポイント(予想)は、こうなるハズ。…まあ問題が起こらなければ、ね。
■Aクラス
◎1568ポイント→1593クラスポイント
※毎月1人2万ポイントをCクラスへ支払い→変動あり?
■Bクラス
◎853ポイント→803クラスポイント(Cクラスへ転落)
■Cクラス
◎490ポイント→965クラスポイント(Bクラスへ昇格)
※毎月人数×2万ポイントがAクラスから受け取り→変動あり?
■Dクラス
◎299ポイント→399クラスポイント
Cクラスの快進撃。無人島試験の0ポイント着地なんて全く気にならないレベルの大勝。お祭り騒ぎになっていたわね。
酒でも入ってるんじゃないかってくらいの狂騒。止めようとしていた坂上先生も生徒たちの輪に捕まって、胴上げされていたけど嬉しそうだったわね。お世話になったし、少しくらい羽目を外してもと思うわ。さて、
「よう。…やってくれたなあ、鈴音ぇ…!」
「あら、Bクラスおめでとう、龍園くん。そんなに嬉しかったのかしら?」
いつかの再現…でも以前と違うのは、Cクラス幹部フルメンバーでのお目見え。石崎くんや山田くん、澪はもちろん椎名さんや金田くんも居る。緊張したりこわばった顔付きや、無表情や警戒を向ける視線も。
それに冗談を返せば、グッと手を伸ばされる。逃げられないように掴まれた手首。包帯越しに強い力で握られれば、白を赤が汚していく。周囲の止める声も聞こえないほど、龍園くんはわたしを見据える。
こうして、船上試験4日目、終わったはずのこの試験日に、
2人だけの
読了ありがとうございましたー。
これでほぼ試験編については終わりで、次回からは船の上での色々を消化したいと思いますー。
来週には新刊ですねー。
試し読み楽しかったですー。ではまたー。
感想と高評価、ほんとーに助けになっています。
引き続きよろしくお願いいたしますー。