一度皆で白い彼の家にお邪魔して作戦会議をする。
「……って感じでー、現実世界で象っぽいアイツをどうにかしないといけないっぽいんだよねー。ただ負けて被害者を増やすのは良くないからー、チョコパフェコンビでどうにかさせてもらうよー」
「そうだなッ……話を聞くに少数精鋭で挑んだほうが良い相手だからなッ……」
アイツの手数は俺が見た限り、伸びてくる両手と尻尾と見た目から想像できる鼻だろう。ここにいる4人、あるいは耳長の彼を誘って5人で挑めば押し切れるかもしれないが、負けた時の被害が大きすぎる。その上で二度と俺たちの目の前に現れなくなったら詰みだ。なら相手がギリギリ油断しそうな負かした相手+1がちょうどいいだろう。
「あるんですかッ……"チョコパフェコンビ作戦"ッ……!」
青頭の彼に聞かれて俺は自信満々に笑って答えた。
「最終手段の実力行使を含めても2つあるよー」
これは最悪の推測でしかないが、悪夢を賭けたにらめっこに勝てないと悪夢は解けない可能性がある。だから実力行使は最終手段で、なるべくファーストプランでにらめっこに勝ちたい。
「それじゃー、早速行こうかー」
「ムッ……しなくていいのかッ、準備ッ」
「してる間に眠ったらおしまいだしー、何より準備したらうまくいかない作戦だからねー」
アイツへの闘志を募らせている間に夜になったので、俺とパフェで以前アイツにあった茂みに向かう。
「もう一戦しようぜェ。今度は仲間も連れてきたからさァ」
「チョコの悪夢を晴らさせてもらうぞッ」
「呼んだ?」
俺たちの呼び掛けに応えるように、ヤツががさりと茂みから出てきた。
「悪夢以来でございまス」
わざとらしく腕まで動かして一礼をしてきやがった。ならばこちらも相応の態度で返そう。
「そしてこの場で金輪際会わなくなるなァ」
爪を装備してギリリンと擦り合わせていると、彼が待てと制止をかけた。
「彼の悪夢を止めてもらうことはできるかッ……?」
俺の頭には全くなかったが、彼は話し合いで解決することも考えていたらしい。対話できる相手には悪くない方法だが、俺としてはそれでは全然腹の虫が収まらない。ヤツもそれを感じ取ったのか、顎を擦って首をかしげている。
「可だけど~、仲間は勝負したそうだよ~?」
「そうだぜパフェ……コイツを負かせないと気が済まねェ……」
「……お前はそういうヤツだったなッ」
交渉決裂といった所でいよいよ勝負が始まる。
「それじゃにらめっこしましょ。♪ わ~らうとまいにちあ・く・む!!!♪ 笑わせて~」
ヤツは胡坐をかいて両手を叩いて挑発している。ならばこちらのとっておきを早速出すとしよう。
「パフェ、アレをやってくれェ」
「任せろッ……!」
彼は俺の指示に合わせて剣────ではなく喉に手を当てた。
「♪ チョチョチョ……チョーコレート~超上々……チョーコレート~今日も……チョーコーレート~♪」
彼の口からリズムや音程がガッタガタのCMソングが発せられた。実は彼は驚くほどの音痴だ。以前彼が運転している最中に眠気覚まし歌わせてくれと言われてご自由にと返したが、ここまで自由だとは思っておらず逆に俺の目が覚めた。
「……フ」
余りの酷さにヤツが鼻で笑った。
「……笑ったなァ?」
「ノーノーノーノノノノノノ」
腕をブンブン振って否定しているが関係ない。これで悪夢が解けることが確定したので、心置きなく最終手段を使うことができる。
「虎穴に入らずんば虎子を得ずゥ……ただァ……お前は虎の尾を踏んじまったんだよォ!」
爪を構えてヤツに向かって突進する。奴は脇の下あたりから手を生やして応戦してきたが、手数の多さで俺に勝てると思ったら大間違いだ。
「しゃらくさいんだよォ!」
向かってくる手を全て叩き落とし、あるいは引き裂いてヤツの腹をすれ違いざまに引っかく。
「アイテッ。でもこれぐらいじゃ────」
「本命はこっちだッ!」
ヤツが俺の方に意識を向けた隙に、パフェがヤツの背中をバッサリと斬った。
「ウギャアッッ!!」
「戦闘の実力は大したことない様だなァ……! なら、コイツでもくらいなァッ!!!」
ヤツの体にくまなく爪を差し込んでいく。まるで厚切りのステーキ肉にミートテンダライザーを打ち込むように。
「イタッ! イタタタタッ!」
「これが現実のTOP4だァッ!」
ヤツの足をズタズタに引き裂いて動けなくし、体当たりで地に伏せさせた。
「こ、こんなのって、ないよ~……」
もはや勝てないと悟ってしまったのか、ヤツはプルプルと震えながら涙を浮かべている。だからとどめを刺すべく、ヤツの顔を踏みつけながら爪を突きつけた。
「笑わなかったら討伐ゥ……これは悪夢じゃねェ、現実だァ」
「あ……あわははハハハハハ!!」
ヤツは気が触れたように大笑いしながら弾けて消えた。
「……少々手荒な手段だったがッ……勝てたなッ」
俺の肩を彼がポンポンと叩いて励ましてくれた。
「ああァ。最初からこうすりゃよかっ────」
その安堵から俺は意識を失うように眠りについてしまった。
いつの間にか討伐ランカーボードの前にいた。つい最近更新された跡があり、俺が1位になっていた。
「これはお祝いだねー。皆で焼肉を食べにー……んー?」
ボードには俺しかいないかった。パフェや白色の彼や青頭の彼や耳長の彼、とにかく誰もいなかった。後ろを振り返ると────
「ッ!? 何でェッ!?」
皆が倒れていた。まるで爪に引き裂かれたかのような傷跡が残っている。まさかと思って自分の爪を見る。いろんな色の糸が絡まっている。
「ちがッ……違うゥ! やってないッ!」
「ああ、やってないぞ」
聞きなれた低い声と共に、俺の肩に黒い手が置かれる。続いて忘れるわけもないモファリとした何かが押し当てられた。振り返るとやっぱり"わたあめ"がいた。
「わッ……た、あめェ……?」
「皆で作ったわたあめでお祝いだ」
「「「おめでとう!!!」」」
倒れていた皆がムクリと起き上がってクラッカーを鳴らしてくれた。いつの間にか傷もなくなっていて、なったクラッカーからは甘い匂いが漂っている。まさかと思って爪についていた糸を舐めてみる。
「あンまー!? わたあめだー!?」
「特別な砂糖、めっちゃ甘い」
彼が俺の頭についているアレを引っ張って笑っている。ああ。これは夢だ。とても不思議で、でも温かい、俺の叶う訳の無い良い夢だ。今はもう少しだけこの夢に浸っているとしよう。