今日はパフェをPCが使える洞窟に連れてきた。息抜きにやる『下剋上』というゲームを教えるためであり、ゲームぐらいコイツには勝ちたいという俺の小さな夢のためだ。
「ムッ……? あそこにいるのは……」
アイツの目線の先にはとがった耳の頭が青くて体の白いヤツと、丸い耳の全身白いヤツがいた。
「知り合いかー?」
「ああ。前に討伐の時に助けて、一緒に食事をしたことがあってな。あれから何度か会って、先生と呼んでもらってるんだ」
彼らも俺と同じくコイツに助けてもらったのか。であれば俺と同じく憧れや対抗心を持っているかもしれない。交友関係が多いに越したことはないので、歩み寄ってリザルト画面になっているのを確認してから話しかける。
「調子はいかがかなー?」
声に反応してくるりと振り返った彼らはあわあわと慌てながら驚いてくれた。
「も、もしかして! チョコさんですかッ!?」
「わ、わッ!」
TOP4だけでもこれだけの反応を見せてくれるのはとても嬉しい。そこで手をクイクイと動かしながら目線を送り、アイツに早く来いと促す。アイツはフッと満更でもない顔をしてとことことやってきた。
「お前たちもやっているのか……『下剋上』……」
「せ、先生もいる! チョコパフェコンビだッ!」
「わわ! わァッ!」
やはり人気はコイツの方があるようだ。ならばここは俺のゲームの腕を見せつけてかっこいい所を見せるとしよう。
「まあ見てなー」
3人に見せつけるように席に座ってゲームを始める。右手にマウスを左手にキーボードを、両手で作業するのは爪で慣れているのでスイスイと進めていく。
「わ!? わわッ!?」
「よく分からないが……速いのは分かるぞ……!」
「コレなら狙えるかも、一桁ッ……!」
そしてボスを倒して下剋上成功の画面になる。今回の順位は4位だった。
「しゃあ自己ベスト更新ッ!」
「わー!」
「スゴイです! 1桁の順位になるトコ、生で見れちゃいました!」
「ここでもお前は4位か……流石、だなッ……!」
3人と共に抱き合いながら喜ぶが、ここに来た目的はこれではない。一息ついて落ち着きを取り戻し、アイツを席に座らせる。
「今度はお前の番だぜー」
「やり方は見て分かったからな……ここでも1位になってみせる……!」
「頑張って下さい、先生!」
「ふんふん!」
開始早々震える左手の一本指打法で不安を見せ、右手のマウスがおざなりになってすぐに下剋上失敗に終わった。
「……まずはPCの使い方からだなー」
「そ、それと最初は民衆を集めるのが基本です!」
「えっと……!」
俺たちの指導の甲斐あってか、次のプレイでは成功し1021位になった。
「お前たちの方が……"先生"だなッ……」
アイツの感心に2人は照れ臭そうに笑っているが、俺はギリギリ笑顔で堪えている。本来なら床に転がって大爆笑しているが、そんなことをしていてはみっともないので自粛している。
非常に気分が良くなったので、3人を車に乗せて温泉に向かうことにした。
「チョコさんって、車も運転できるんですね……!」
「うわ~……!」
「彼は中々のドライバーで、一緒にどこか行くときは大体彼が運転してくれるんだ」
「というかパフェに運転させると歌が酷くてなー」
コイツの討伐の腕はトップなのだが、歌唱力が絶望的に低い。音程、リズム、抑揚、どれをとっても褒めることができない。対し俺はというと。
「チョ・チョ・チョ・チョコレート~♪ 超・上・々・チョコレート~♪ 今・日・も・チョコレート~♪」
「スゴイよ……ビブラート……!」
「うんうん……!」
「歌に関しても先生だな……」
2つ前のチョコレートのCMに採用されたことがあるほどの声を持つ。一度パジャマパーティーズのコンサートのゲストに打診されたこともあるが、俺をゲスト扱いしているのが気に入らなくて断った。要するに歌は上手いということだ。
「も・っ・と・チョコレート~♪ 超・
「あったんだ……2番……!」
「フ……!」
「食べたくなってくるな……チョコレート……」
サウナに入る前のエネルギー補給に悪くないだろうと、温泉の駐車場に停めた際に3人に渡す。
「ナニコレッ!? チョコなのに苦いよッ!?」
「ウグッ……!」
「す、すっかり忘れていたッ……すまないッ……!」
このほろ苦さがいいんだけどなと思いつつ、口直しの微糖コーヒーを購入しようとしたのを止められる。
「こ、コーヒーじゃ口直しにならないですッ!」
「ンーンー!」
「い、いちごミルクがいいんじゃないかッ……!?」
仕方がないので3人にいちごミルクを買ってあげた。俺は甘さに緩んでいる3人を見ながら微糖コーヒーを買って飲んだ。
準備を済ませ4人でサウナに入る。毛によってある程度阻まれるも、火が通りそうな熱さに思わず顔が歪む。
「サウナの後の水風呂か……ためしたことない────」
「静かにしろ」
この聖域での死後は厳禁だ。状況が状況なら討伐対象とみなされてもおかしくない。この場で向き合うべきは隣人ではなく12分計と己だ。ボイラーのゴオゴオと熱を生み出す音、汗がぬうっと肌を伝う感覚、熱で呼吸器を痛めないように巻いたタオルの煩わしさ。それを12分以内に楽しもうとしたら、他の存在に関わっている暇などない。カシャリと12分計が時を告げ、サウナの外に出て水を被る。
「これを怠るヤツは討伐対象だ」
「エッ……!?」
「そ、そうなんですか……!?」
「そこまでではないが……水で汗を流してから水風呂に入りましょうとは書いてあるな……」
そうして水風呂に入る。温冷の差で体がぐっとこわばる。これこそサウナだと思わず笑みが浮かぶ。
「ウグッ」
しかし初体験であるアイツにとっては厳しいものだろう。
「つらいケドッ……ガマンなんですッ!!」
白色の彼もコクコクッと頷いて一緒に耐えている。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ」
「そ、その言葉ッ、合っているのかッ────」
するとアイツの顔がスーッと穏やかなものになった。2人の顔も似たようなものになり、いよいよその時がやってくる。水風呂から上がって横になれるほど倒れる椅子に全てを委ねる。すると途端に頭が無になる。白目を剝きそうだん? エッ!? 本当に白目剥いてる!? おい大丈夫かチョコッ!?
アイツに揺さぶられて戻される。至高の一時を邪魔されたので流石の俺も怒りが抑えられない。
「邪魔するなァ!!!」
目をカッと開いて大声を出してしまった。3人がいくらビクッとして固まってしまった。何でも大人げが無さ過ぎたか、俺から謝るのが筋だろう。
「……すまない。整いを邪魔されて気が立っちまった」
「い、いや、こちらも知らずに邪魔をして悪かった……」
「ゴ、ゴメンナサイ……」
「うぅ……」
妙に気まずい雰囲気になってしまった。ここは元凶である俺が何とかするべきだ。俺はカラッと笑って3人の肩を叩いた。
「……んじゃ、もう1セット行って整うかー! その後は好きなモン奢ってやるぞー! ゲームでもTOP4になったお祝いだー!」
俺の発言で3人に笑顔が戻った。こういう気遣いができれば、アイツを超える日もそう遠くはないだろう。
チョコくんがまあまあなサウナ―なのは作者がサウナ―だからです。サウナの中で喋るヤツ、許可されてないのに水風呂に潜るヤツ、オリに入れてなんかずっとくらいとこに行ってもらいたいです。