葉っぱの2人組を探すべく森を探索しようとした所、桃色のカニのハサミのカチューシャをした古本屋がワワワと慌てながらついてきた。何でもあの"わたあめ"を食べた犯人である水色の尻尾の彼から話を聞きたいそうだ。
「古本屋さん、あの子と仲が良いんだッ……」
「ウウ……」
「プルル」
「そうかッ……彼のことも探す必要があるッ、一緒に来てくれるとありがたいッ」
「ワワッ!」
2人の事情を話した上で、古本屋はカチューシャをがしゃがしゃ動かして賛同の意思を示してくれた。万が一セイレーンと遭遇しても対応できるよう、5人1組となった所で改めて探索を進める。
「さてッ……こういう時は相手の気持ちになって立ち回るのが大切だッ……」
もし私が犯人だったらどうするか。捜索をしているであろう今の時間に島から出るための行動なんて目立つことはせず、誰も来ないような人目のつかない所でしばらくやり過ごしてから島を出る。ならば多少危険な場所でも構わずに、むしろそんな場所だからこそいる可能性が高い。
「ムッ……あの岩の柱……不自然に崩れているなッ……」
所々向こう岸側の先端が欠けており、まるで足場にして飛び移ったような痕跡がある。こんな状況でそれなりの危険を冒して向こう岸に行くのはあの2人組しかいないだろう。橋の残骸と"チョコ"のバッグに入っているロープを活用して向こう岸に渡り────草むらががさりと動いたので剣を抜いて構える。
「あーッ、甘くてつめったいもんがのみたいんだよォー!」
ふてぶてしく出てきたのは、歩き回って疲れている水色の尻尾の彼だった。
「ワーッ!」
誰よりも早く彼に駆け寄ったのは古本屋だった。話の限りでは相応の関係であり、いろんな事情は一旦おいておいて再会を喜んでいるのだろう。
「オーッ? その泣き方かわいいなッ……真似させ────」
「ウワワワ! ワワ!」
「あ~ん? 人魚だの"永遠のいのち"だの"チョコ"だの"わたあめ"だの急に何だァ~? まあ"永遠のいのち"もほっしいがッ、まずはあんまいもんがあるなら食べさせろッ」
これほど言っても彼にはピンとこないらしい。ここまで来て考えたくないが、別人の可能性がある────
「ん~? お前の持っているその爪ッ……ちょっと見せろッ」
「ワワッ!?」
彼が白い彼の腰にかけていた爪をひったくってじろじろと眺め出した。
「この爪ッ……な~んか見覚えあるようなッ……あんまいもん食べたら思い出せそうだなァ~」
どこまで本気なのか分からないが本当に思い出せるかもしれないので、"チョコ"がエネルギー補給用に持ってきた個包装のチョコを渡す。
「疲れた時には甘いものがいいですよねッ」
「エッ」
「ハァ?」
「これで思い出してくれたらいいのだがッ……」
「オ~? この袋に描かれているヤツ……思い出したゾッ!」
食べる前に何か思いだしてくれたらしい。これで"わたあめ"食いに関して思い出してくれたら────
「そいつが着けてた爪だァ!」
「「「「エッ?」」」」
「ハァ?」
そんな訳がない。爪に刻まれているのはTOP4になった時に刻まれた、"チョコ"の実力の証であるほほんとした顔だ。対し個包装に描かれている顔は白黒の斑模様で角の生えている────どこかの"チョコ"らしいほほんとした顔だった。
「そうだそうだッ、ソイツと一緒にいた白くてフワフワしたヤツが"チョコ"って叫んでたなァ~」
「ワワワッ!?」
「ッ……! それって"わたあめ"さんじゃないッ!? "チョコ"さんの昔話と同じだよッ!」
「ウッ、ウン……!」
「……フゥーン?」
「たッ、確かにッ、そうだがッ、どッ、どういうことだッ……!?」
確かに水色の尻尾の彼が話していることは私や3人組が聞いている"チョコ"の昔話と一致している。しかし、肝心の"チョコ"の姿が一致していない。
「……となるとッ、コイツも入れ替わったのかァ~?」
「入れ替わったッ……?」
「……アッ、エトッ」
「『もしかしてあの魔女の"力"で入れ替わったんじゃないか』って……?」
「ッ! ヤハリ!」
「エッエッ」
話を無理やりまとめると、"チョコ"は魔女の力で誰かと入れ替わっているから今と昔で姿が違うことになる。私自身で思いついていながら、全く意味が分からなかった。
「あっ、さっきぶりー。犯人見つかったー?」
そんな疑問を吹き飛ばすようにセイレーンが人魚とともに現れた。どうやら人魚との歌の力でツタを伸ばし向こう岸からやってきたようだ。
「犯人はまだ見つかっていないが────」
「……アレッ? そこにいる水色の子……"チョコ"くんの言っていた"わたあめ"くんを食べた犯人じゃない?」
彼女と"チョコ"は協力関係にあるのだから、彼女が"わたあめ"食いの犯人を狙っても不思議ではない。しかし"チョコ"の安否が分からない今、彼を連れ去られては"チョコ"の話の全貌が見えてこない。何とかして聞き出すまで引き延ばさないと。
「まッ、待ってくれッ! 少し待ってほしいッ!」
「ワワワッ! ワワッ!」
「えー? "チョコ"くんから何が何でも捕まえろって言われてるんだけど────」
「よこせっ、永遠」
水色の尻尾の彼がガチンと勢いよく人魚に噛みついた。人魚は何とか避けたが、彼女がこの行動に対してよい思いをするわけがなかった。
「人魚を食べた犯人は見つけてないし、"わたあめ"くんを食べた犯人の味方をするし、さらに食べる気なんだ……」
彼女の黒目が赤くなり、明らかにまずい雰囲気になってしまった。
「……さっき言ったよね、一回だけは見逃すって。だから二回目はないよッ! ハァ~!」
「「ハァ~」」
先程とは比較にならない速度でツタが伸びる。彼女の力は人魚のコーラスが加わるとより強力になるようだ。
「ほいじゃ」
「キミは"チョコ"くんのお願いだからね」
「ワワッ!」
「一番庇っていたキミもね」
逃げ出そうとした水色の尻尾の彼とそれを庇った古本屋がツタに捕まった。助けに行こうとしても無数のツタがそれを阻む。
「うわわッ!?」
「ハァ!?」
「一応キミたちも捕まえておこっと」
「ワワッ!?」
白色の彼はさすまたで何とか逃れたが、青頭の彼と耳長の彼も捕まってしまった。捕まるのは時間の問題だろう。
「くッ……! 彼らは関係ないッ! 離して────」
「でも一番捕まえたかったのは……キミなんだよね」
「何ッ……!?」
突如ツタの矛先が私になり、抵抗も空しく捕らえられてしまった。
残った白色の彼に再びツタが襲い掛かる。せめて彼だけでもこの場から逃さないと。この状況で彼女の興味を惹ける話題は1つしかない。
「まッ、待ってくれセイレーンッ! 実はこの付近に人魚を食べた犯人がいるんだッ!」
「えっ?」
何とか食いついてくれた。どうにかしてこのチャンスを生かさないと。
「頭に葉っぱが生えている2人組だッ! 岩場を飛び移ってこちら側に来ているッ! だから先に探したほうが良いと思うッ!」
まだ犯人だと決まったわけではない住民を差し出すのは心苦しいが、ここで全員掴まって犯人を逃してしまう方が状況が悪くなる。
「うーん……じゃあこの子も捕まえて一緒に探させたほうがいいよね」
「エッ!?」
しまったその発想があったか。彼を逃すいい話は────これも一か八かになってしまうが仕方がない。何もしないよりはマシだと覚悟を決める。
「彼には"チョコ"を探してもらいたいッ! "チョコ"が橋から落ちて行方不明なんだッ!」
「エッ……ホントだ……それじゃあ仕方ないか……」
彼女と"チョコ"の間に何があったのかは分からないが、彼へツタを伸ばすのを止めるぐらいには何かあったようだ。
「とりあえず皆と犯人捜ししてるから、"チョコ"くんに会ったら来るように伝えてねー」
「エッ、エッ!?」
「すまないッ……! チョコの事を頼んだぞッ……!」
これでしばらく時間は稼げるが、もし犯人が見つからなかったら私たちはどうなるか分からない。白い彼に全てを託し、ツタを体に巻き付かれたまま皆で辺りの捜索が始まった。