今日はパフェと当てもなく散歩をしている。時にはこうやってプライベートを知るのも、コイツを超えるためには大切な事だ。
「でー、この間行ったカレー屋のカレーがすごくてー、試しに一口だけ貰ったらそれで動けなくなっちゃってー」
「そんなに辛いのかッ……流石に食べるのは気が引けるなッ……」
「虎穴に入らずんば虎子を得ずだけどー、辛いものだけはどうしてもダメなんだよねー」
なんて話をしていたら、青頭の彼と白色の彼が楽しそうにぐるぐる回っている所に出くわした。あんまりにも楽しそうだからパフェと一緒に話しかけることにした。
「回ってる……な」
「その幸せお裾分けしてほしいなー」
「先生!! チョコさん!! 実はなったんです"上位ランカー"!!」
「フ!!」
「何ッ!?」
昨日見たランカー掲示板での順位変動はなかったはずだし、昨日今日で大掛かりな討伐があったわけでもないから、彼らの言う"上位ランカー"は討伐の順位ではないだろう。それでいて俺たちに通じる話題といったらアレしかないだろう。
「もしかして『下剋上』かー?」
「ハイ! そうです!」
すると彼らが手と足を使って白い彼が2を、青頭の彼が3を表現した。
「越されちゃったかー……ちょっと悔しいけど、おめでたいのは変わらないねー」
「なら行くかっ"祝いの焼肉"!!」
「「エ~ッ!?」
ということで焼肉屋にやってきた。お代は俺たちが半々で持つことにしたので、2人には遠慮なく食べてもらうことにしよう。その2人は忙しなく肉をひっくり返し、網に押し付けて焼こうとしている。どうやらまだまだ初心者のようなので、俺たち2人で流儀を教えるとしよう。
「フ……押し付けなくても……ちゃんと"焼ける"ぞッ!!」
「ハイッ!!」
「いいかー? 焼肉を楽しむコツは"自由"になることなんだー」
タンから焼かなければいけない、赤身が最初でカルビやホルモンは後、ライスの有無の議論など焼肉にはしがらみが多い。だが、俺から言わせてもらえばそんなものは下らない気取りに過ぎない。自身の網の領土の上は自身がルールとなり、全てを決めてよいのだ。だからいきなりホルモンから焼いてもいいし、ご飯代わりに赤身肉を使ってもいいのだ。
「ロースでホルモン巻いてるよッ……!」
「ウワァ……!」
「赤身の油の無さをホルモンがー、ホルモンの足りない肉感をロースが補うんだー……んー、サイコー……」
「また飲み込んだ後にモグモグしているなッ……そんなに美味しい食べ方なのかッ……」
俺なりの焼肉を見せた所で討伐の世間話に移る。青色の彼はマントを付けたら難しかったらしく、白色の彼はそもそも討伐が苦手らしい。伸び悩む者がいれば手を差し伸べるというのが本物の上位ランカーだろう。カルビを頬張っているアイツと目線を合わせて頷く。
「丁度2人ずつだしー……」
「やるか、特訓!!」
「「エッ!!」
流石にTOP4の2人からいきなり指導を受けるとなったら驚くのも無理はないだろう。でも、次第に驚きよりも喜びが勝り2人ともパアッと笑った。
「やっやりたいッやりますッ"特訓"!!」
「わ!! わ!! ……あ……ン……」
しかし、白いらの彼の方は何か気がかりがあるらしく顔に陰りがかかった。
どうやら草むしり検定の試験があるようで、一緒に特訓ができない事を憂いてるようだ。素晴らしい友情に免じて、俺は銅色のとあるものを取り出して机の上に置いた。
「じゃあ君はこっちの"特訓"だねー」
「エ……? ワァッ!?」
そこには俺の顔写真と共に草むしり検定3級と書いてあった。
「さ、3級ッ!? チョコさんって草むしりも得意なんですかッ!?」
「他にも自動車運転免許証、お酒の資格、スーパーアルバイターも持ってるよー」
「多いなッ……だが、できることが多いのはいいことだッ……」
様々な資格や免許を取った理由は単純で、少しでもパフェを超えたいという執念にも近い何かだ。そんな俺の事情は一旦放っておいて、草むしり検定の特訓の話に戻す。
「今晩から勉強するかー?」
「ウン!!」
彼の顔が晴れてやる気が宿った。ならまずはしっかり勉強するために腹ごしらえをするべきだ。
「追加注文いいですかー? ロースとホルモン4人前追加でー」
「……やってみよっか、あの食べ方ッ!」
「ウンウン!」
「何事も挑戦だからなッ」
因みに彼らの感想は全員揃って"美味しいけど飲み込むタイミングが難しい"だった。
勉強用に色々な物品を買ってから車で彼の家に向かう。ドーム状の白い家が並んでいて、彼の顔の表札がなければ分からなくなりそうだった。家の横のスペースにビタッと駐車して彼に挨拶をする。
「やあー」
「ワ!」
ということで早速お邪魔して机越しに向かい合い勉強を始める。
「5級かー。軽く問題作るから解いてみてー」
「ン!」
ざっと10問作って彼に解かせてみる。悩みながらもしっかりと解いていき、5分ほどで帰ってきた。
「ペースは悪くないねー。それじゃあお楽しみの採点だー」
結果は5問正解だった。次の試験日までしっかりと勉強していけば問題なく合格できるだろう。だからこそ油断せずにしっかり教えていく必要がある。
「悪くないけどまだまだだねー。まずはむしっちゃいけない草からやっていこうかー」
「オー!」
こうして座学で誰かに教える経験は初めてだ。どれだけ知識を持っていて頭の回転が速くても、誰かに教えられないようでは意味がない。知識を己のものにするというのは理解するだけでなく、他者に理解できる形にできて初めてそう言えるのだ。
「────だからこの草をむしる時は先端から少しずつむしっていくんだー」
「フンフン……!」
もっともその他者が理解したいという意思があるのが前提ではある。その点において彼は問題ない。意欲的に取り組み、独りでも勉強できる程真面目である。
「……羨ましいなァ」
「エッ……?」
「あー……家があってだよー。車暮らしだと食事が不便でさー。ほら机無いから大皿料理とか食べられないからさー」
「アー……」
「折角だから明日の朝ご飯は豪勢なものにしちゃおうかー」
「エッ! ワワッ!」
「スーパーアルバイターの料理の腕を見せてあげるよー」
「ワーイ……!」
彼の純粋な笑顔を見るに俺の考え過ぎか。教える側が集中しなければ、教わる側は気が気でないだろう。今は"特訓"に集中しよう。
因みに作者はチョコくんの食べ方はやったことがありません。完全に想像です。今度焼肉食べ行ったときにやってみます。なのでその辺りに関する表現が変わるかもしれません。