暗い話を吹き飛ばすように外に飛び出し、各々の戦闘準備をしてもらう。俺は爪を嵌め、白色の彼と青頭の彼は刺付きさすまたを構え、耳長の彼はプルヤハとたくあんを振りながらどこかに行ってしまった。
「流石にたくあんじゃTOP4とは戦えないのかなー?」
「あの武器を持ってくるんだと思いますッ」
「ウンウン」
どうやらご自慢の武器があるらしい。彼の住居及び武器がどこにあるのかは知らないが、それなりに時間がかかると考えていいだろう。それまでは2人に特訓をするとしよう。爪をキャリキャリ擦り合わせながら青頭の彼に目線を送る。
「それじゃー、お手並み拝見だー」
「ハイッ! よろしくお願いしますッ!」
ヤーッと彼がさすまたを連続で突き出してきた。先端が2つあるだけありそれなりの手数に見えるが、やはりまだまだ未熟で攻めの手が甘い。前後左右に軽く動くだけで十分回避できる。
「当たらないッ……全然ッ……!」
「なるほどねー……アイツが特訓をつけたがる理由が分かったよー……!」
「くッ……! なんとかなれーッ!」
渾身の一突きを彼に向かって飛び込みながら避け、彼の背中に着地して爪を向けて講評に移る。
「まだまだ成長途中って感じだねー。でも、思い切りの良さと向上心は悪くないよー。怠らないで特訓し続ければ上位ランカーも夢じゃないよー」
「ッ! ハイッ! 頑張りますッ!」
彼は嬉し恥ずかしそうに頭をかきながら笑った。多少リップサービスがあったとはいえ、彼には伸びしろがある。ただ、それと同時に彼独りでは危うい何かを感じ取った。それが良いものなのか悪いものなのかは分からないが、覚えておける限り頭の片隅に置いておくとしよう。
次は白色の彼の特訓だ。確か彼はそもそも討伐が苦手と言っていたが、基本的な構えはしっかりとできている。そして迂闊に攻めてこない辺り、彼の討伐のスタイルは受けから転じるカウンタータイプかもしれない。ならばこちらから攻めて本性を明らかにしていくとしよう。
「いくぞー!」
「ワッ……!?」
まずは様子見で3割ほどの力で攻め込んでいく。なるべく弾き返しやすいように武器の近くを通るように、かつ目に追える程度の速度で左手だけで攻めていく。
「どうしたどうしたー、弾いているだけじゃ勝てないぞー」
「アッ……ワッ……ンッ……!」
「それとも遠慮しているのかなー?」
「ンーンー……!」
それなりに追い込んでいるつもりなのだが、彼は弾くだけで一向に反撃してこようとしない。もう少し追い詰めないとダメなのか? ならば5割の力の両手で攻めるとしよう。
「こっちは遠慮しないぞー」
「ワァーッ!?」
彼がジリジリと後退し始め、俺の勝利が決まりかけてきた。防御がどれだけよくても、攻めに転じれないのであれば意味はない。惜しい才能だなと思いながら、両手を思い切り振り上げて止めを────
「ッ! ヤーッ!」
その振り上げた両手の爪を目がけて彼がさすまたを突き刺した。振り上げと突きの勢いによって、カキンという金属音とともに爪が両手から外れた。
「なァっ…………!?」
「エッ!? うそでしょッ!?」
「アッ……エトッ……」
喰らった俺や見ていた青頭の彼どころかやった彼自身時でも信じられず、落ちた爪を呆然と眺める事しかできなかった。
「…………マジかァ…………マジかー…………」
何とか事実を受け入れることができた俺は、彼に歩み寄ってその頭をサスサスと撫でた。
「追い詰められてからが本番のタイプだったかー……してやられたねー……いくら油断していたとはいえ君はTOP4に一撃入れたんだー、とんでもない実力があるねー」
「ワァ……!」
「ただ、その実力を常に出せるようになるにはー……もっともっと特訓が必要だねー」
「ウッ……」
まさかの逸材の発見に色々な衝撃を受けている。しかし、それを表に出していては指導どころではないのでなんとか堪えて次に移る。
「イ──ーヤッハ──ッッッ!!!」
「あッ、戻ってきたッ」
耳長の彼が耳を含めた身長より少し長い棒状の武器を持って帰ってきた。手描きの顔マークを入れている辺り、TOP4への憧れがあるのかもしれない。
「個人的に一番のお楽しみだったんだよねー……あのセンスを持つ君なら、ちょっと本気を出してもいいよねェ……?」
先の戦いで手厳しい一撃を貰った俺は少しだけ昂っていて、上位ランカーとしての血が少しだけグツグツとしていた。
「プルルッ」
彼がこちらに棒の構えると先端がパチパチと火花を散らし始めた。本能と経験が警鐘を鳴らしたので咄嗟に飛び退くと、俺がいた場所にドンと何かが煙を立てて撃ち込まれた。
「ウラ!」
「遠距離攻撃かァ……! 一芸はあるようだがァ、一芸だけじゃ勝てないぞォ……!」
「ウラララ!」
ボンボンドドドと連続で放ってきているが、余裕をもって回避できている。すると彼は爆発を止めてすちゃりと棒を構え直した。どうやら近接戦を覚悟したらしい。ならば俺もそれに応じるとしよう。
「見せてあげるよォ、TOP4の"実力"ゥッ!」
「ヤハァ!」
繰り出される突きや横薙ぎを爪で逸らしていく。攻撃の密度や軌道はトップランカーのソレに通じるものがあり、彼の武器を傷つけないようにする余裕がギリギリあるぐらいだ。先の2人とは大違いの実力に楽しさを感じ、思わず笑みがこぼれてしまう。
「こんな逸材だったなんてェッ! 本当に君は楽しませてくれるねェッ!」
「ヤハヤハァ!!!」
「でもォッ! こっちにもTOP4の意地があるからねェッ! 負けないよォッ!」
「プルルッ!!!」
彼もとても楽しんでいる。次第にお互いの攻撃がお互いの体を狙い始めるようになってきたのが何よりもの証拠だ。ただの特訓で負傷沙汰になるのは良くないかもしれないが、滅多にない強敵を前にそんなことはどうでもよくなりつつある。
「ウラハァ!!」
「見えてんだよォッ!!」
突きを交わしたがその先端が再びパチパチ音を立てている。
「猪口才なァッ!!」
爪を振り上げて棒を回転させながら空高く弾き上げる。
「ヤハハァ!!」
しかし彼にとっては計算の内の様で、追いかけるように跳び上がった。
「逸ったなァッ!!」
ただ、俺にとってはそれが狙いだったことは計算外だろう。右手の爪を外し棒の先端を狙って投げる。カチンとぶつかり、ボンと彼の予想よりも早く爆発が起こる。
「ハァ!?」
一度目の爆発で棒が下がり、二度目の爆発で再び棒が上がり──
「ウ゛ラ゛ァ゛」
ドムンと彼の腹部をぶっ叩いた。
落ちてきた彼を両手で受け止めて講評に移る。
「……マジで危なかったよー。だいぶ討伐モード入っちゃってたよー」
「プルャ」
耳をギュッと捻じって口を閉じ、絶対に聞きたくないといった様子だ。どうやら彼は中々の負けず嫌いらしい。そういうヤツにもしっかりと説明をしてこそ特訓だ。
「素質だけならTOP4に食らいつけるよー。君次第だけど、鍛えればTOP4になるかもしれないねー」
「すごいよッ! チョコさんにあんなに渡り合えるなんてッ!」
「ウンウン!」
「……フゥン?」
2人が大喜びしてくれたおかげもあってか、シュッと耳を解いて興味ありげになった。だから俺はニコッと笑って親指を立てた。
「時間があったら君にも特訓をつけるけどー、どうするー?」
「……ヤハ」
きっと都合がついたらやりたいということだろう。しばらくは白色の彼の勉強に付き合うからこの付近にいるつもりだ、と伝えたらプルルルとジタバタし始めた。交渉成立だなと彼を下ろして、先ほど投げた爪を拾う。爆発が直撃したせいでややすすけていたので、黒い毛の部分で拭って綺麗にする。
「……んじゃ、皆で汗を流しに行きますかー」
「「ハイッ」」
「ヤハッ」
皆で行った温泉はとても楽しかった。楽しそうにはしゃいでいる3人を見て、彼らはそれぞれが補い合って成り立っているのだなと思った。
アニメの方の最新話を見ました。あんな完璧な「簡単ッッッ!!簡単ッッ!!!」があるんですね。感動と恐怖で泣きました。