草むしり検定と討伐の特訓の日々を過ごしてある程度が経ったある日、買い出しの途中でパフェとばったり出くわした。
「おー、パフェじゃないかー。そっちの青頭の彼との特訓もうまくいってるかー?」
コクコクと頷いて返してくれた。ならよかったとニヤニヤしていると、ああそうだと彼が1つの話題を出した。
「明日彼と討伐に行く約束をしてなッ……お前も来てくれるかッ……?」
「お前からの頼みは中々断れないなー。嫌だと言ってもご一緒するよー」
こうしてはいられないと急いで家に帰り、白色の彼に色々と説明する。
「……ということで明日は自習だよー。朝ご飯も自分で作ってねー」
「フンフン!」
彼の真面目さなら独りでも大丈夫だろう。しかしそれとは別の問題が彼にはあるようで、申し訳なっさ層にモジモジと話し始めた。
「……アッ、エト……アー……アノッ」
「なるほど皆の分のお弁当を作りたいとー……それなら協力して作っちゃおうかー」
「ワァ! ウンウンッ!」
どうやら明日は楽しい討伐になりそうだ。TOP4は料理の腕もTOP4であると教えてあげよう。
翌朝、パフェと青頭の彼と合流する。
「今日は頼らせてもらうよー」
「エッ、えっとッ、頑張りますッ!」
「あまり背負わせすぎるのはよくないぞッ……だが、TOP4が2人もいるからと油断はしないでくれッ」
「はッ、ハイッ!」
初めて憧れの存在との協力することになって、彼はまだまだ緊張しているようだ。そこで俺は白色の彼と協力した弁当をここぞとばかりに取り出した。
「厳しい戦いになるかもしれないからー……とにかく腹ごしらえだよー」
「なるほどッ……チョコの料理はうまいからなッ……食べておくといいぞッ」
「わッ、分かりましたッ! いただきますッ!」
両手に乗るぐらいのタッパーの蓋をパカッと開けると、海苔で作られた俺と白色の彼の笑顔が"ガンバレ!!! "と応援しているキャラ弁が出てきた。それを見て彼はキラキラと目を輝かせた。
「ワァッ……! もしかしてッ、作ってくれたんですかッ、"2人"でッ……!」
「昆布を入れて炊いたから塩だけで十分美味しく食べられるはずだよー」
「相変わらず料理上手だなッ……では2人の気持ちを頂くとしようッ」
皆に箸を配り、いただきますと手を合わせてから頂く。だし昆布の旨味が染みた白米に海苔の香ばしい風味が合わさり、素朴ながらもとてもやさしい美味しさに仕上がっていた。
「硬めでしっかりと粒が立っているなッ……! 昆布の嫌な臭いもせず、旨味だけ引き出しているッ……!」
「ムグムグ……おッ、おいしいですッ……! とってもッ……!」
彼が泣きながら頬張っている。料理の味は分量や調理法だけで決まるものではない。時には食べる人への想いが素材の味を本来以上に引き上げる。今回がいい例だろう。
食べ終わたらタッパーを回収して、相手を選びながら作戦会議だ。
「それじゃあ今回はこの人型の半透明緑色ブルブルにしようかー」
「なら右は任せろッ……!」
彼の初舞台になるのだ、俺たちが先導を切っても止めを刺してはいけない。俺は昂りすぎないように抑えながら戦う必要がある。それだけがちょっと不安だ。プロペラ付きのつかむやつに運ばれて、早速討伐対象と出くわす。俺は飛び出して意識を誘導させ、パフェには彼への指示を任せる。
「まずはうしろからついてきてくれッ」
「アッ……ハイッ!!」
「チャンスがあったら遠慮なくやっちゃってェ! フォローはしっかりするよォ!」
ブルブルの攻撃を避けながらご自慢の爪でチクチク差していく。怒って俺に集中してしまえばこちらのものだ。
「はあッ! せいッ! とぅあッ!」
チョコの剣の餌食になる。かといってそちらに意識を向けてしまうのも良くない。
「ずありゃァ!」
俺が死角から爪でひっかいてくる。こうなると心が2つ無い限り対応することができない、"チョコパフェ殺法"の完成だ。ある程度削ってブルブルが膝を着いた所で彼に声をかける。
「さァ、討伐の醍醐味だァ!!」
「最後の一撃を頼むッッ!!」
「エッ!! わッ……ヤーッ!!」
多少戸惑ったものの、彼のさすまたの一突きがブルブルの体をドスッと捉えた。そしてブルブルがズズーンと倒れて動かなくなった。
「よくやった!!」
「おめでとォ!!」
喜びを分かち合いながら依頼所に戻り、ドッチャリと報酬を貰う。
「……!!!」
これほどの報酬をもらったのは初めてなのか、彼はその重みに驚いている。
「おまえの分だッ」
「おいしいものでも食べるといいよー」
「もッ……もらえませんッ」
しかし、彼は俺たちにその報酬を差し出してきた。大分お膳立てした分、彼なりに思う所があるのだろう。それでも俺たちの世界で報酬の受け取りの拒否は活躍の否定になり、あの考えを持つ俺としては彼の報酬を受け取ることはできない。ぐっと押して彼に押し付け返す。
「虎穴に入らずんば虎子を得ずだよー」
「ッ……!」
「お前が討伐したんだ……お前にも危険があったのだから、その分の報酬を受け取る権利がある……自身を持て」
「……ハイッ!!」
彼は報酬袋をぎゅっと抱きかかえ、ふくッふくッッと口元を動かして自信を露にした。
「持ったか……"自信"ッ……」
「初々しいねー。昔を思い出すよー」
その時は"わたあめ"と一緒に報酬全部使いきるまで食べ歩きをした。彼がどう使うのか気になるものだ。
それぞれの家に帰る途中、彼が立喰そばの店をチラチラと見だしたので聞いてみる。
「腹減ったのかー?」
「あッ、そのッ……前から討伐帰りに食べてみたくてッ……」
「そうだったのかッ……それじゃあ、食べてみるかッ?」
「ッ! は、ハイッ! 食べてみたいですッ!」
ということで暖簾をくぐって、3人でシンプルな熱々のかけそばをすする。出汁と醤油の和風で温かな旨味が、香り高い蕎麦とマッチして戦いの疲れをじんわりと溶かしてくれる。
「たまにはこういうのも良いよねー……」
「チョコさんはここにはあまり来ないんですかッ?」
「チョコはよく『郎』に行っているなッ……何でも"ゼンマシカラメ"がいいらしいがッ……独りで集中したいからと一緒に行ったことはないなッ……」
あそこは1つの戦場だ。相応の技量と経験と度胸がなければ雰囲気にのまれ、あっという間に敷居が高くなってしまう。俺とて万全の調子で挑まなければ危ないのに、やや甘い所があるパフェでは逆に喰らわれるまであり得る。
「そんなに危ない所なのかッ……」
「そッ、そんな場所じゃないですッ! おいしいラーメン屋さんでしたッ!」
「そうだなー……白色の彼が5級に合格したら皆で行ってみようかー」
「それは楽しみだなッ……! だったら、お互いに特訓を頑張らないとなッ……!」
「ハイッ! 皆で頑張りましょうッ!」
皆で共通の目標があれば頑張りやすい。何時か来るであろうその日を夢見て、俺は3人分のそばの代金を支払った。