【フェーズ16:ユクモ村への連行と女将への謝罪】
言葉の重みと三大即死ルールの恐怖を脳裏に刻み込まれたケイコ・ヤジマ。翔田美琴の新たな宣告が、その場に響き渡る。
翔田美琴:「これからする事はユクモの女将に謝罪ね」
ケイコ・ヤジマ:「……ッ!? ゆ、ユクモの……女将さん……っ!?」
レム判事:「当然の帰結です。あなたが嫉妬に狂って足を引っ張り、集団の和を乱した舞台の一つが、あの温和で高潔なユクモの集会所。その総責任者である女将に対し、直接頭を下げて謝罪を行うのは最低限の筋でしょう」
エリオット隊長:「……集会所の空気を不機嫌で汚し、真面目に依頼をこなすハンターに不当な暴言を撒き散らしたんだ。女将の優しさに甘えていい気になっていたツケを払いに行くぞ。やっておれん」
レンブラント氏:「(静かに火を消し、立ち上がりながら)ユクモの湯の花のような温かい場所を、自分の泥で汚したんだからねぇ。直筆の反省文を両手に抱えて、土下座の準備でもしておくんだな」
【空間転移:ユクモ村・集会所】
美琴の一振りによって周囲の景色が一変し、温かい湯煙と紅葉が舞うユクモ村の集会所へと転移する。
目の前には、凛とした佇まいでこちらを見つめるユクモの女将。その眼光はいつも通りの温厚さの奥に、集会所を預かる者としての静かな厳しさを宿していた。
ユクモの女将:「……お帰りなさいませ、翔田様、ルージュ機構の皆様。……そして、ケイコさん」
ケイコ・ヤジマ:「(膝がガクガクと震え、手にした反省文が激しく揺れる)……あっ……うっ……女将……さん……っ」
翔田美琴:「ほら、ケイコ。言い訳なし、赤ちゃん言葉なし、変なポーズもなし。自分の足で前に出て、さっき書いた文面通りの言葉で頭を下げなさい」
アイルー監視員:「ニャ! 背筋を伸ばして、誠心誠意頭を下げるニャ!」
逃げ場のない湯煙のなか、ケイコ・ヤジマは震える両脚で一歩を踏み出し、女将の目の前でゆっくりと膝をつくのだった。
【フェーズ17:湯煙の中の土下座と許し】
ユクモ村の木の香りと温かな湯煙が立ち込める集会所。
逃げ道を一切塞がれ、虚飾をすべて剥ぎ取られたケイコ・ヤジマは、震える手で抱えていた直筆の原稿用紙を脇に置き、板張りの床へ深く頭を擦り付けた。
ケイコ・ヤジマ:「女将さん……っ! 本当に……本当に申し訳ありませんでしたっ!!」
声が裏返ることも、赤ちゃん言葉に逃げることもなく、自らの声で叫ぶ。
ケイコ・ヤジマ:「うち……ううん、私はッ! 自分の腕がないのを棚に上げて、真面目に努力してる新しいハンターの人たちが羨ましくて、妬ましくて……っ! 集会所の雰囲気を悪くして、みんなに暴言を吐いて足を引っ張っていました……! 全部……全部、私の最低な嫉妬と甘えですっ! 二度と……二度とこんな不愉快な思いはさせません! 本当に、ごめんなさい……ッ!!」
額を床に押し付け、ボロボロと大粒の涙を床に零しながら、渾身の謝罪を叫び続ける。
静寂が包む集会所。女将は静かに目を閉じ、やがて優しく、しかし確かな重みを持った声で応えた。
ユクモの女将:「……お顔をお上げなさい、ケイコさん」
ケイコが泣き濡れた顔を上げると、女将は静かに微笑んでいた。
ユクモの女将:「言葉を飾らず、自分の醜さと向き合って口にしたその謝罪……確かに届きましたよ。集会所を預かる者として、その言葉に偽りがない限り、あなたの改心を受け入れます」
レム判事:「……ふむ。見事な裁定です。言葉の軽薄さを捨て、誠意を見せたことだけは評価しましょう」
エリオット隊長:「……フン、最初からそうやって頭を下げてりゃ良かったんだ。だが、これでスタートラインに立っただけだぞ。やっておれん」
レンブラント氏:「(煙草に火をつけず、ふっと口元を緩める)へっ……まともな顔で謝れるようになったじゃないか、ケモノちゃん」
【原作者の結び】
応接の椅子に腰掛け、その光景を冷ややかに、しかしどこか満足そうに見届けていた翔田美琴が、静かに立ち上がる。
翔田美琴:「いい謝罪だったわ、ケイコ。……でも忘れないでね。ここからがアンタの『本当の人生』の始まりよ。一歩でもまた泥沼に戻ろうとしたら、私のタロットとハンターたちが黙ってないから」
ケイコ・ヤジマ:「……っ! はいっ……! はいぃっ……!!」
地雷女と呼ばれたケイコ・ヤジマの歪んだ過去は、絶対者の冷徹な指導と渾身の謝罪によって叩き直され、ユクモの静かな湯煙の中、ようやく真人間としての第一歩を踏み出したのだった。