転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第102話

数日間のオフが終わった。

 

久しぶりに城東シニアのグラウンドへ入る。

 

「おはようございます!」

 

いつもの声。でも、何かが違う。

 

「……静かだな」

「うん」

 

隣にいた黒田がグラウンドを見渡す。

 

橘さんたち3年生がいない。全国大会までは当たり前のように聞こえていた声が、今日はない。

 

「やっぱ寂しいな」

「黒田がそんなこと言うんだ」

「俺だって言うわ」

「そう」

「水城まで何だよ!」

 

玲が少し笑う。

 

「集合!」

 

監督の声に、全員がホームベース前へ集まった。

 

◇

 

「全国大会は終わった。3年生も引退した」

 

監督が俺たちを見る。

 

「今日から新チームだ。まずキャプテン。高瀬」

「はい!」

 

高瀬が一歩前へ出る。

 

「頼むぞ」

「はい!」

 

黒田が小声で言う。

 

「まあ高瀬だよな」

「うん」

 

捕手として全体を見ているし、玲にも俺にも普通に言いたいことを言う。一番向いていると思う。

 

高瀬が全員を見る。

 

「えー……何言うか考えてなかった」

「キャプテン!」

「早速大丈夫か!」

「うるさい」

 

笑いが起きる。

 

高瀬も笑ってから、少しだけ表情を変えた。

 

「全国優勝したけど、3年生が抜けた。橘さんもいない。だから、来年も同じように勝てるとは思ってない」

 

誰も喋らない。

 

「また一からやろう。目標は連覇。来年も日本一」

「はい!」

 

声が揃った。

 

新しいチームが始まった。

 

◇

 

最初は守備練習。

 

俺はショート。三上がセカンド。

 

カンッ!

 

三遊間。

 

一歩目で反応する。追いついて捕り、そのまま一塁へ。

 

パァンッ!

 

「ナイス!」

 

次は正面。

 

カンッ!

 

捕る。一塁へ。

 

パァンッ!

 

身体は普通に動く。全国大会が終わって数日休んだだけなのに、少し新鮮だった。

 

「成瀬!」

「はい!」

「今年はお前も内野引っ張れ」

「はい!」

 

今までは3年生についていく側だった。でも今日からは違う。

 

三上が声を飛ばす。

 

「伊織、次ゲッツー!」

「了解!」

 

カンッ!

 

俺の右。

 

捕る。

 

「二つ!」

 

三上へ。

 

パァンッ!

 

一塁へ。

 

パァンッ!

 

「よし!」

 

自然と声が出た。

 

◇

 

午後はバッティング。

 

黒田が打席へ入る。

 

カァァンッ!

 

左中間。

 

外野の頭を越えた。

 

「見た?」

「見た」

「今年はもっと打つからな」

「4番だもんね」

「来年は打点王だ」

「まだ気が早くない?」

「今から言っとくんだよ」

 

次は俺。

 

外角。

 

カァンッ!

 

右中間。

 

次は内角。

 

カァンッ!

 

レフト。

 

もう一球。外角低め。少し待つ。

 

カァンッ!

 

ライト前。

 

「いいな」

 

後ろから監督の声。

 

「全国の後半から、右への打球がかなり増えた」

「はい」

「でも右に打とうとしすぎるなよ」

「……はい」

 

監督がバットの先でグラウンドを示す。

 

「打てる場所が増えたんだ。自分から使う場所を減らしたら意味がない」

「全部使え、ですか」

「橘にも言われたか?」

「はい」

「なら忘れるな」

 

引っ張る。センター。逆方向。全部使う。その方が相手は嫌なはずだ。

 

◇

 

最後はブルペン。

 

玲が先に投げる。

 

バァンッ!

 

「140!」

 

もう一球。

 

バァンッ!

 

「141!」

 

相変わらず速い。全国大会が終わったばかりなのに、玲はいつも通りだった。

 

「次、成瀬!」

 

マウンドへ上がる。

 

高瀬が座る。

 

初球。ストレート。

 

バァンッ!

 

「131!」

 

もう一球。

 

バァンッ!

 

「130!」

 

「力むなよ」

「分かってる」

 

高瀬のサイン。

 

カーブ。

 

パァンッ!

 

次はチェンジアップ。

 

パァンッ!

 

最後にもう一度ストレート。

 

振りかぶる。

 

バァンッ!

 

「131!」

 

高瀬がボールを返す。

 

「今のが一番よかった」

「数字は同じだけど」

「数字しか見てないの?」

「見てるよ。いろいろ」

「本当かよ」

 

131km/h。

 

玲は141km/h。

 

まだ10km/h差。

 

でも、焦る必要はない。

 

「もう一球」

「終わり」

「まだ投げられる」

「今日は初日だぞ」

「あと一球だけ」

「キャプテン命令。終わり」

「……それ便利だね」

「だろ?」

 

高瀬が立ち上がる。

 

無理に投げても意味はない。今日はここまで。

 

◇

 

練習終了。

 

全員でグラウンドを整備する。

 

黒田がトンボを引きながら口を開いた。

 

「成瀬」

「何?」

「連覇するぞ」

「急だね」

「高瀬も言ってただろ」

「言ってたね」

「来年、俺らが3年だぞ」

 

そうだった。

 

まだ中学2年。でも、この新チームで迎える次の夏が俺たちの最後になる。

 

「また全国行って、また優勝する」

「うん」

「そんで今度は俺が決勝打」

「準決勝で打ったでしょ」

「あれはあれ。決勝は別」

「欲張りだね」

「成瀬に言われたくねえ」

 

少し笑う。

 

グラウンドを見る。

 

橘さんたち3年生はいない。高瀬がキャプテンになった。

 

新しい城東シニア。

 

全国優勝は終わった。

 

次は。

 

連覇だ。

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