転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第103話

新チームが始まって一週間。

 

最初の練習試合が組まれた。相手は武蔵野シニア。全国大会準決勝で3対2の試合をした相手だ。

 

試合前、監督から渡されたメンバー表を見て、黒田が首を傾げた。

 

「俺、7番なんですけど」

「知ってる」

「一応4番なんですけど」

「今日はお前を見る試合じゃない」

「ひどくないですか?」

 

今日の1番から5番は、全員新しいレギュラー候補。

 

6番が俺。7番黒田、8番高瀬、9番三上。

 

「今日は勝つための打順じゃない。上の5人にできるだけ打席を回す。守備も試すぞ」

「なるほど」

「成瀬は納得すんなよ!」

「俺も6番だし」

「そうだけど!」

 

監督が今度は投手を見る。

 

「白石」

「はい!」

 

前へ出たのは1年生の左腕、白石蒼太。

 

球速は120km/h前半。それでも左から投げるスライダーの曲がりが良く、最近監督がよくブルペンを見ていた。

 

「3回まで任せる。失敗していい。思い切って投げろ」

「はい!」

 

4回から6回は俺。

 

最後の7回だけ玲。

 

新しい選手を見るための試合だ。

 

◇

 

1回表。

 

白石の初球。

 

パァンッ!

「ボール!」

 

少し高い。

 

2球目も外れた。

 

「大丈夫! 腕振れ!」

 

高瀬の声。

 

そこからフルカウントまで持っていったが、最後は四球。先頭を歩かせた。

 

2番が送りバント。ワンアウト2塁。

 

3番。

 

カァンッ!

 

センター前。

 

「回れ!」

 

ホームへ返球。

 

パァンッ!

「セーフ!」

 

0対1。

 

白石が唇を噛む。

 

「次!」

 

高瀬の声に顔を上げた。

 

4番は真田。

 

初球のスライダー。

 

カンッ!

 

ショート正面。

 

捕る。二塁へ。

 

パァンッ!

 

三上が一塁へ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

ダブルプレー。

 

ベンチへ戻ってきた白石が頭を下げる。

 

「すみません」

「何が?」

「先頭を四球で……」

「まだ1点だろ。次は最初から腕振れ」

「はい!」

 

高瀬はそれだけ言って防具を付け直した。

 

◇

 

1回裏。

 

武蔵野の先発は真田。

 

初球。

 

バァンッ!

「137!」

 

「……上がってる」

 

全国大会では136km/hだった。

 

真田も成長している。

 

城東の1番、2番、3番は続けて倒れ、三者凡退。次の回は4番からだ。

 

ベンチへ戻る真田と目が合う。

 

ニヤッ。

 

「感じ悪い」

「聞こえてんぞ」

 

◇

 

2回表。

 

白石は少し落ち着いていた。先頭をスライダーで空振り三振にすると、次をセカンドゴロ。

 

ツーアウト。

 

でも7番に四球。

 

8番への初球。

 

カァンッ!

 

左中間を破った。

 

「回れ!」

 

一塁ランナーが一気にホームへ。

 

0対2。

 

また白石の顔が下を向きかける。

 

「白石! あと一人!」

「はい!」

 

9番をライトフライ。

 

チェンジ。

 

2回2失点。

 

四球は出ている。それでも、大崩れはしていない。

 

◇

 

2回裏。

 

4番、5番が続けて倒れる。

 

ツーアウト。

 

俺の第1打席。

 

真田がマウンドで笑っていた。

 

「久しぶりだな」

「そんなに経ってないけど」

「全国の借り、少し返す」

「練習試合で?」

「うるせえ」

 

初球は137km/hの外角。

 

「ストライク!」

 

2球目のスライダーはボール。

 

3球目、内角137km/h。

 

ファウル。

 

ワンボール、ツーストライク。

 

真田が投げる。

 

外へ逃げるスライダー。

 

待つ。

 

踏み込む。

 

振り切る。

 

カァァンッ!

打球はライトへ。

 

高い。

 

伸びる。

 

越えた。

 

ホームラン。

 

1対2。

 

ベースを回りながら真田を見る。

 

目が合った。

 

今度は笑っていない。

 

ホームへ戻ると、黒田が手を出した。

 

パンッ!

 

「真田から打つのずるくない?」

「何が?」

「俺も打ちたい」

「次打てばいいじゃん」

 

その黒田は三振。

 

「……速え」

「頑張って」

「腹立つ!」

 

1点だけ返した。

 

◇

 

3回表。

 

白石の最後のイニング。

 

先頭をセカンドゴロ。2番をショートフライ。

 

ツーアウト。

 

3番には追い込んでからスライダー。

 

少し甘く入った。

 

カァンッ!

 

ライト線へのツーベース。

 

続く真田。

 

初球。

 

カァンッ!

 

センター前。

 

「回れ!」

 

3塁ランナーがホームへ。

 

1対3。

 

白石は最後の5番をレフトフライに打ち取った。

 

3回3失点。

 

ベンチへ戻ると、監督が声をかける。

 

「どうだった?」

「四球が多かったです。あと、甘くなった球を打たれました」

「なら覚えとけ。次直せばいい」

「はい!」

 

3失点。

 

でも、初めて武蔵野相手に投げた1年生としては悪くない。

 

課題もはっきりしている。

 

◇

 

3回裏。

 

先頭は高瀬。

 

セカンドゴロ。

 

三上はライトフライ。

 

1番も三振。

 

真田は3回1失点でマウンドを降りた。

 

すれ違う時にこっちを見る。

 

「次は打たせねえ」

「もう降りるじゃん」

「次に決まってんだろ」

「了解」

 

◇

 

4回表。

 

「成瀬、行け」

「はい」

 

俺がショートからマウンドへ移る。

 

三上がショート。新しい二塁手が守備に入った。

 

監督が俺を呼び止める。

 

「今日は三振を取りにいかなくていい」

「打たせるんですね」

「そうだ。守備を見る」

「分かりました」

 

高瀬が座る。

 

初球。

 

バァンッ!

「ストライク!」

 

131km/h。

 

先頭への2球目。

 

カンッ!

 

セカンド正面。

 

でも。

 

ポロッ。

 

「あっ!」

 

ボールが転がる。

 

「セーフ!」

 

記録はエラー。

 

ノーアウト1塁。

 

次は送りバント。ワンアウト2塁。

 

3人目もセカンドゴロ。

 

今度は捕った。

 

一塁へ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

ツーアウト3塁。

 

最後はショートゴロ。

 

三上が前へ出る。

 

捕る。一塁へ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

チェンジ。

 

「ちゃんと打たせたな」

「はい」

「いい」

 

監督はそれだけだった。

 

◇

 

4回裏。

 

武蔵野は2番手投手。

 

打順は2番から。

 

2番が四球を選んだが、3番がショートゴロでダブルプレー。

 

4番もライトフライ。

 

得点なし。

 

1対3のまま。

 

◇

 

5回表。

 

俺はそのままマウンド。

 

先頭をライトフライ。次をセカンドゴロ。

 

どちらも早いカウントで打たせた。

 

ツーアウト。

 

次の打者にはセンター前ヒットを打たれたが、続く打者も初球を打つ。

 

カンッ!

 

ファーストゴロ。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

チェンジ。

 

高瀬がボールを返す。

 

「楽だな」

「何が?」

「四球ないから」

「出すつもりないし」

「それでいい」

 

球数も少ない。

 

今のところ、監督の注文通り。

 

◇

 

5回裏。

 

先頭は5番。

 

センターフライ。

 

ワンアウト。

 

俺の第2打席。

 

相手はまだ2番手投手。

 

初球。

 

外角ストレート。

 

振る。

 

カァァンッ!

 

打った瞬間に分かった。

 

右中間。

 

伸びる。

 

越えた。

 

ホームラン。

 

2対3。

 

「またかよ!」

 

武蔵野ベンチから声が飛ぶ。

 

二本目。

 

真田からじゃない。

 

でも、悪くない。

 

黒田、高瀬も続けず、追加点は入らなかった。

 

◇

 

6回表。

 

先頭への初球。

 

カンッ!

 

セカンド正面。

 

新しい二塁手が捕る。

 

でも、送球が逸れた。

 

バシッ!

 

一塁手が伸びるが、グラブからこぼれる。

 

「セーフ!」

 

エラー。

 

ノーアウト1塁。

 

送りバントでワンアウト2塁。次のファーストゴロで走者が3塁へ進んだ。

 

ツーアウト3塁。

 

高瀬を見る。

 

まだ打たせていい。

 

低めのストレート。

 

カァンッ!

 

センターへ大きなフライ。

 

新しいセンターが下がる。

 

パァンッ!

 

捕った。

 

3塁ランナーがスタート。

 

ホームへ。

 

「セーフ!」

 

2対4。

 

犠牲フライ。

 

失点はつく。

 

でも、先頭走者はエラー。

 

自責点は0。

 

最後はショートゴロ。

 

三上が処理する。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

3回2安打1失点。

 

自責点0。

 

四球0。

 

奪三振は1つも取っていない。

 

それでも、ほとんど早いカウントで打たせて終わった。

 

マウンドを降りる時、新しい二塁手が頭を下げる。

 

「すみません」

「何で?」

「俺のエラーで……」

「今日はそういうのを見る試合でしょ」

「でも」

「次取ればいいよ」

 

二塁手が頷く。

 

ベンチへ戻ると、監督も何も言わなかった。

 

多分。

 

それでいい。

 

◇

 

6回裏。

 

8番、高瀬から。

 

高瀬はセンターフライ。

 

三上はセカンドゴロ。

 

1番もショートゴロ。

 

三者凡退。

 

2対4。

 

あと1回。

 

◇

 

7回表。

 

監督が玲を見る。

 

「水城」

「はい」

「最後だけ行け」

「分かりました」

 

玲が立ち上がる。

 

監督が白石を見る。

 

それから、玲へ。

 

「先輩として、後輩に本物を見せてこい」

 

白石が顔を上げた。

 

玲は何も言わず、マウンドへ向かった。

 

先頭打者。

 

初球。

 

バァンッ!

「141!」

 

空振り。

 

2球目。

 

高速落下球。

 

ブンッ!

 

空振り。

 

3球目。

 

141km/h。

 

バァンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

三球三振。

 

二人目。

 

140km/h。

 

空振り。

 

141km/h。

 

ファウル。

 

高速落下球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

また三球三振。

 

白石が黙って見ている。

 

三人目。

 

初球。

 

141km/h。

 

空振り。

 

2球目。

 

高速落下球。

 

空振り。

 

高瀬が最後のサインを出す。

 

玲が振りかぶる。

 

バァンッ!!

 

141km/h。

 

ブンッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

9球。

 

3者連続三球三振。

 

白石が口を開けたまま玲を見る。

 

「……すごいです」

 

玲がベンチへ戻ってくる。

 

「白石」

「はい」

「別に同じ投げ方しなくていいよ」

「え?」

「自分の投げ方で抑えればいい」

「……はい!」

 

玲はそれだけ言って座った。

 

少しだけ。

 

先輩っぽかった。

 

◇

 

7回裏。

 

2番から。

 

2番がセカンドゴロ。

 

ワンアウト。

 

3番もライトフライ。

 

ツーアウト。

 

俺の第3打席。

 

武蔵野は3番手投手。

 

相手捕手がマスク越しに呟く。

 

「また成瀬かよ……」

 

初球は内角。

 

ボール。

 

2球目。

 

外角ストレート。

 

振り切る。

 

カァァンッ!

打球はセンターへ。

 

高い。

 

伸びる。

 

センターが下がる。

 

フェンス際。

 

見上げる。

 

越えた。

 

三本目。

 

3対4。

 

ベンチが一気に騒がしくなる。

 

「また打った!」

「マジかよ!」

 

ホームへ戻ると、黒田が呆れた顔をしていた。

 

「3本?」

「3本」

「俺ノーヒット」

「次、黒田だよ」

「絶対打つ!」

 

その黒田。

 

カァンッ!

 

いい当たり。

 

でも。

 

ライト正面。

 

パァンッ!

 

「アウト! ゲームセット!」

 

3対4。

 

新チーム最初の練習試合は、負けた。

 

俺は3打数3安打。

 

3本塁打。

 

玲は1回、9球、3奪三振。

 

それでも。

 

3対4。

 

◇

 

試合後。

 

監督が全員を集める。

 

「今日分かったことは?」

 

白石が手を上げた。

 

「コントロールが足りません」

「そうだな」

 

新しい二塁手も続く。

 

「守備です」

「そうだ」

 

監督が全員を見る。

 

「成瀬が3本打った。水城は9球で終わらせた。それでも負けた。今日はそれでいい」

 

誰も喋らない。

 

「今日はこいつらだけで勝つための試合じゃない。新しい戦力を作るための試合だ。失敗した奴は今日の失敗を覚えとけ。次できればいい」

「はい!」

 

◇

 

片付けをしていると、後ろから声をかけられた。

 

「成瀬」

 

真田。

 

「何?」

「3本はやりすぎだろ」

「真田からは1本だけだよ」

「1本でも余計だ」

「でも負けた」

「練習試合だろ」

 

真田が俺を見る。

 

「こんなんで全国の借り返したとか思ってねえから」

「じゃあ次?」

「公式戦で」

 

拳を出してくる。

 

パンッ。

 

軽く合わせる。

 

「次も打つよ」

「次は打たせねえ」

 

真田が戻っていく。

 

新チーム最初の試合は負け。

 

でも、悪くない。

 

玲もいる。高瀬も、黒田も、三上もいる。

 

そして、新しい選手も増えていく。

 

全国優勝したチームを、そのまま続けるんじゃない。

 

また新しい城東を作る。

 

その最初の一歩だった。

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