転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第105話

秋季大会、初戦。

 

新チームになって最初の公式戦。相手は青葉シニア。

 

試合前、監督がスタメンを読み上げる。

 

1番、三上。

2番、佐伯。

3番、俺。

4番、黒田。

5番、高瀬。

 

2番センター、佐伯蓮。

 

同じ2年生で、夏までは控えだった。足が速く守備範囲も広い。武蔵野との練習試合以降、センターで使われることが増えていた。

 

「佐伯、緊張してる?」

「してるに決まってるだろ。全国優勝したチームのセンターだぞ。橘さんの後って考えたら、ミスした時に絶対比べられるじゃん」

「別に橘さんになる必要ないでしょ」

「成瀬はそう言うと思った。でも、お前は全国であれだけ打ってるからな。俺はまだ何もしてないんだよ」

「今日すればいいじゃん」

「……そういう簡単な言い方、ちょっと羨ましいわ」

 

佐伯が苦笑する。

 

横から黒田が入ってきた。

 

「大丈夫だって。佐伯が塁に出れば俺が返す」

「黒田、それ俺が出塁する前提?」

「2番なんだから出ろよ」

「無茶苦茶だな、この4番」

「頼もしいと言え」

「お前ら試合前くらい静かにできないの?」

 

高瀬がため息をつく。

 

「キャプテンが固いんだよ」

「誰のせいだと思ってんだ」

 

笑いが起きる。

 

少しだけ、佐伯の表情も緩んだ。

 

監督が全員を見る。

 

「夏の優勝チームを再現する必要はない。橘も他の3年も、もういない。今いるメンバーで新しい城東を作れ」

「はい!」

 

先発は玲。

 

新しい城東の最初の公式戦が始まった。

 

◇

 

1回表。

 

玲の初球。

 

バァンッ!

「141!」

 

高瀬のミットが鳴る。

 

2球目も140km/h台。振り遅れた打球はファウル。

 

追い込んでから高速落下球。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

三球三振。

 

2番はセカンドゴロ。3番も141km/hに差し込まれ、力のないライトフライ。

 

三者凡退。

 

「全国の時と変わらないね」

「変わったよ」

「何が?」

「少し疲れ取れた」

「そういう話?」

「伊織が聞いたんでしょ」

 

普通だ。

 

全国優勝しても、玲はやっぱり玲だった。

 

◇

 

1回裏。

 

三上が初球を捉える。

 

キィンッ!

 

鋭い打球がセンター前へ抜けた。

 

続く佐伯。

 

初球を見送り、2球目。

 

カンッ!

 

三遊間。

 

ショートが飛びつく。

 

グラブの先を抜けた。

 

「よし!」

 

ノーアウト1、2塁。

 

俺の第1打席。

 

「成瀬、頼むぞ!」

 

佐伯の声。

 

初球は外角に外れてボール。2球目は外いっぱいのストライク。

 

3球目。

 

少し甘い。

 

振る。

 

カキィンッ!

 

右中間。

 

「抜けた!」

 

三上が3塁を回る。

 

ホームへ。

 

「セーフ!」

 

1対0。

 

佐伯は3塁。俺は2塁へ。

 

タイムリーツーベース。

 

続く黒田。

 

「俺の仕事残しとけよ!」

 

初球。

 

カァァンッ!

 

左中間を破る。

 

佐伯がホーム。

 

俺も3塁を蹴る。

 

「回れ!」

 

ホームへ。

 

パァンッ!

「セーフ!」

 

3対0。

 

黒田は2塁上で両手を広げる。

 

「見たか!」

「見たよ」

「もうちょい何かあるだろ!」

「まだ1回だぞ!」

 

高瀬の声が飛ぶ。

 

「キャプテン厳しくない?」

「お前がうるさいだけ!」

 

その後、高瀬、6番、7番が倒れてチェンジ。

 

新しい打線。

 

悪くない。

 

◇

 

玲は2回、3回も危なげなく抑えた。

 

3回表にはこの日初めてのヒットを許したが、次の打者をショートゴロ。

 

カンッ!

 

俺の正面。

 

捕る。二塁へ。

 

パァンッ!

 

三上がそのまま一塁へ。

 

バシッ!

「アウト!」

 

ダブルプレー。

 

「ナイス!」

 

センターから佐伯の声。

 

「佐伯も今の返球よかったよ」

「だろ? 俺、守備で生きていくから」

「1回にヒット打ってたじゃん」

「じゃあ両方で生きる」

「切り替え早いな」

 

玲は続く打者を空振り三振。

 

城東打線は2回、3回と追加点を取れなかった。

 

3対0のまま4回へ。

 

◇

 

4回表。

 

玲は先頭を高速落下球で三振。次をセカンドゴロ、最後はセンターフライ。

 

佐伯が落下地点へ入る。

 

パシッ。

 

スリーアウト。

 

4回1安打無失点。四球0、奪三振6。

 

「水城、今日はここまで」

「はい」

 

監督がベンチの端を見る。

 

「白石」

「はい!」

 

声が少し裏返った。

 

黒田がすぐに反応する。

 

「今の絶対緊張してるだろ」

「してません!」

「声ひっくり返ってたぞ」

「黒田さんが言うから余計緊張するんです!」

「俺のせい!?」

 

高瀬が白石の肩を叩く。

 

「初めての公式戦なんだから緊張して普通だよ。練習試合よりストライクが入ればそれでいい」

「それだけですか?」

「最初から玲みたいに投げようとするなってこと」

「……はい!」

 

玲が首を傾げる。

 

「僕みたいじゃダメなの?」

「お前を基準にしたらダメなんだよ」

 

高瀬の即答。

 

白石も笑った。

 

◇

 

4回裏。

 

6番から。

 

6番がセンター前へ運び、7番が送りバント。ワンアウト2塁。

 

8番。

 

カァンッ!

 

ライト前。

 

2塁ランナーが3塁を回る。

 

「回れ!」

 

ホームへ。

 

「セーフ!」

 

4対0。

 

続く9番はショートゴロ。

 

「セカンド!」

 

パァンッ!

 

そのまま一塁へ。

 

バシッ!

「アウト!」

 

ダブルプレー。

 

追加点は1点だけ。

 

でも、下位打線でも点が取れた。

 

高瀬がベンチへ戻りながら言う。

 

「こういう点が増えると楽になるな」

「俺と成瀬に全部返させればいいだろ」

「黒田、それで夏ずっと勝てると思ってる?」

「……無理?」

「無理とは言わないけど、しんどいだろ」

「じゃあみんな打て」

「急に雑になるな」

 

◇

 

5回表。

 

白石が公式戦のマウンドへ上がる。

 

初球。

 

パァンッ!

「ボール!」

 

高い。

 

一度息を吐き、ボールを握り直す。

 

2球目。

 

パシッ。

「ストライク!」

 

今度は低め。

 

3球目。

 

カンッ!

 

セカンドゴロ。

 

三上が軽く捌く。

 

パァンッ!

「アウト!」

 

ワンアウト。

 

白石の表情が少し緩んだ。

 

次の打者にはフルカウントから四球。

 

高瀬がボールを返す。

 

「気にすんな。今の一人は終わった。次だけ見ろ」

「はい!」

「腕は振れてる。そのままでいい」

「はい!」

 

次の打者。

 

スライダーで追い込む。

 

最後は外へ。

 

ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 

公式戦初奪三振。

 

最後はセンターフライ。

 

佐伯が前へ出る。

 

パシッ!

 

スリーアウト。

 

ベンチへ戻った白石に玲が声をかける。

 

「よかったじゃん」

「ありがとうございます!」

「でも四球」

「……はい」

「僕も昔は出してたから」

「本当ですか?」

「うん」

「嘘つけ。お前全国で21回投げて四球0だろ」

 

高瀬が即座に突っ込む。

 

玲が少し考えた。

 

「もっと前」

「どれだけ前だよ」

 

白石が笑う。

 

練習試合の時より、明らかに表情が柔らかかった。

 

◇

 

5回裏。

 

三上が四球で出塁。

 

佐伯。

 

初球はバントの構え。

 

三塁手が前へ出る。

 

バットを引いた。

 

次の球。

 

カキンッ!

 

一、二塁間。

 

ライト前へ抜ける。

 

ノーアウト1、2塁。

 

「今の自分で?」

「うん。三塁手めっちゃ前だったから。バントしてほしそうだったし」

「いい判断じゃん」

「もっと褒めてもいいぞ」

「黒田みたいになってきたね」

「それは嫌だな」

「聞こえてんぞ!」

 

後ろから黒田の声。

 

俺の第3打席。

 

初球の外角低めはボール。

 

2球目。

 

真ん中寄り。

 

カァンッ!

 

センター前へ抜けた。

 

「回れ!」

 

三上がホームへ。

 

「セーフ!」

 

5対0。

 

佐伯は3塁。俺は1塁で止まる。

 

続く黒田。

 

「今度こそ長打!」

 

カァァンッ!

 

大きなセンターフライ。

 

佐伯がタッチアップ。

 

「セーフ!」

 

6対0。

 

黒田が満足そうに戻ってくる。

 

「打点」

「うん」

「今日3打点」

「ちゃんと数えてるんだ」

「4番なんだから当たり前だろ。お前が打率とか能力値気にするのと一緒」

「……そう言われると何も言えない」

「勝った」

 

嬉しそうだ。

 

高瀬は伊織を見て笑う。

 

「成瀬、黒田に言い負かされることあるんだな」

「俺も今びっくりしてる」

「おい!」

 

◇

 

6回表。

 

白石は先頭にセンター前ヒットを許した。

 

ノーアウト1塁。

 

次の打者へ初球、2球目とボールが続く。

 

白石の表情が少し固くなる。

 

高瀬がマスク越しに声を飛ばした。

 

「白石! 走者じゃなくて俺見ろ!」

「はい!」

「ストライク入れれば後ろが取ってくれる。全部自分で抑えようとすんな!」

「はい!」

 

3球目。

 

パァンッ!

「ストライク!」

 

そこからフルカウント。

 

最後は外れた。

 

四球。

 

ノーアウト1、2塁。

 

それでも高瀬はタイムを取らなかった。

 

次の打者。

 

カンッ!

 

ライトフライ。

 

ワンアウト。

 

続く打者はセカンド正面。

 

三上が捕る。

 

二塁へ。

 

パァンッ!

 

一塁へ。

 

バシッ!

「アウト!」

 

ダブルプレー。

 

無失点。

 

白石が大きく息を吐く。

 

「危なかった……」

 

ベンチへ戻ると高瀬が言った。

 

「四球は反省。でも、そこから崩れなかったのはよかった」

「はい」

「さっきなら多分、もう一個四球出してただろ」

「……出してたかもしれません」

「じゃあ一個進歩したな」

「一個だけですか?」

「欲張るな。一年だろ」

「はい!」

 

白石が笑った。

 

◇

 

6回裏。

 

6番、7番、8番が三者凡退。

 

6対0のまま最終回へ。

 

◇

 

7回表。

 

白石は続投。

 

先頭をセカンドゴロ。

 

次の打者。

 

キンッ!

 

センター前ヒット。

 

ワンアウト1塁。

 

続く打者。

 

初球はストライク。

 

2球目。

 

カンッ!

 

ショートへ。

 

俺の正面。

 

捕る。二塁へ。

 

パァンッ!

 

三上が一塁へ。

 

バシッ!

 

「アウト!! ゲームセット!!」

 

6対0。

 

新チーム最初の公式戦。

 

勝利。

 

◇

 

玲は4回1安打無失点、無四球6奪三振。

 

白石は3回2安打無失点、2四球1奪三振。

 

俺は3打数3安打。二塁打1本、2打点。

 

黒田は3打点。

 

佐伯は2安打。

 

数字だけ見れば、悪くない。

 

でも今日は、それ以外にも見えたものがあった。

 

公式戦を無失点で投げ切った白石。2番センターに入って2安打した佐伯。夏とは違う打順と、少しずつ変わっていく役割。

 

「佐伯」

「何?」

「初スタメンどうだった?」

「最初は普通に吐きそうだった」

「そんなに?」

「そりゃそうだろ。全国優勝したチームのセンターだぞ? 橘さんと比べられるし、ミスったら『やっぱ前の方がよかった』って思われるかもしれないし」

「俺は比べてないけど」

「成瀬はそうだろうな。でも俺は気にするんだよ。控えだった期間も長いし、やっと来たチャンスだから」

 

少し意外だった。

 

佐伯はグラブを見る。

 

「でも今日2本打てたし、守備でもミスしなかった。少なくとも次の試合で『こいつ使うの怖いな』とは思われないだろ?」

「多分ね」

「そこは『大丈夫』って言えよ」

「監督じゃないから分からない」

「ほんと成瀬ってそういうとこあるよな」

 

佐伯が笑う。

 

「まあいいや。お前みたいにいきなり3本とか打つのは無理だけど、俺は俺のペースでレギュラー取るよ」

「うん。その方がいいと思う」

「だからお前の3安打を基準にすんなよ?」

「してないって」

「本当か?」

「多分」

「その『多分』が怖いんだよ」

 

また笑う。

 

みんな同じように強くなるわけじゃない。

 

それぞれの速度で。

 

新しい城東になっていく。

 

秋の大会は始まったばかりだった。

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