転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第11話

 玲に球速で負けた翌週。

 俺は、少しだけ悩んでいた。

 ショートは好きだ。

 前世でも守っていたし、今度こそ本気で上手くなりたいと思っている。

 でも。

 せっかく好きな能力を育てられるシステムがある。

 なら。

 投手だって。

 やってみたい。

 いや。

 正直に言おう。

「エースで四番……」

 格好いい。

 めちゃくちゃ格好いい。

 子供の頃。

 一度くらいは憧れた。

 自分で相手を抑えて。

 自分でホームランを打って。

 チームを勝たせる。

 前世では。

 そんな夢を見る前に。

 自分には無理だと決めつけていた。

 でも。

 今は違う。

 

【成瀬 伊織】

年齢:5歳

 

【野球能力】

《競技カテゴリ:幼児》

 

弾道  1

ミート E48

パワー F34

走力  E43

肩力  D50

守備力 E45

捕球  E42

 

【投手能力】

球速     46km/h

コントロール D51

スタミナ   E41

 

【特殊能力】

なし

 

「普通に投手能力あるんだよな」

 だったら。

 使わない理由もない。

 ショートも。

 ピッチャーも。

 四番も。

 全部やればいい。

 何でも育てられるなら。

 何でもできる選手になればいい。

 この時の俺は。

 本気で。

 そう思っていた。

 

◇

 

「今日はポジションも少しずつやってみるぞ!」

 キッズクラス。

 コーチの言葉に。

 子供たちが一斉に騒ぎ出した。

「ピッチャーやりたい!」

 真っ先に手を挙げたのは。

 当然。

 玲。

「水城は本当に投げるの好きだな」

「好き!」

「じゃあ他にピッチャーやりたい人は?」

「はい」

 俺も。

 手を挙げた。

「伊織君?」

 玲が。

 こっちを見る。

「何だよ」

「伊織君も?」

「俺だって投げたい」

「ショートじゃないの?」

「ショートもやる」

「両方?」

「両方」

 玲が。

 少しだけ。

 難しい顔をする。

「……じゃあ僕もショートやる」

「なんでだよ」

「伊織君が両方やるから」

「そこ張り合わなくていいだろ」

「僕も両方」

「お前ピッチャー好きなんじゃないのか」

「好き」

「じゃあピッチャーやれよ」

「でも伊織君もやる」

「……」

 面倒くさい。

 本当に。

 面倒くさい。

「じゃあ今日は二人とも投げてみるか」

 コーチが笑った。

「はい!」

 玲が即答。

「お願いします」

 俺も。

 少し。

 気合が入った。

 

◇

 

 まずは俺。

 打者役のコーチへ。

 短い距離から投げる。

「無理に速い球投げなくていいぞ」

「はい」

 速さより。

 まずはストライク。

 前世で投手経験はほとんどない。

 でも。

 キャッチボールなら。

 散々やった。

 それに。

 今の俺には。

 

【コントロール D51】

 

 がある。

 一球目。

 足を上げる。

 体重を前へ。

 投げる。

 パシッ。

「ストライク!」

「よし」

 二球目。

 少し低い。

 それでも。

 ストライク。

 三球目。

 外。

「ボール!」

 四球目。

 真ん中。

「ストライク!」

「成瀬、結構入るな」

「ありがとうございます!」

 嬉しい。

 投手。

 思ったより。

 楽しい。

 自分が投げた球で。

 相手の結果が決まる。

 野手とは。

 また違う感覚だ。

「次、少し強く投げてみろ」

「はい」

 腕を振る。

 シュッ。

 パシッ。

「おっ」

 コーチが少し驚く。

「今のいい球だな」

「本当ですか?」

「五歳なら十分速いぞ」

 思わず。

 頬が緩む。

 エース。

 ありじゃないか?

 普通に。

 ありじゃないか?

 

◇

 

「次、水城!」

「はい!」

 玲が。

 嬉しそうに前へ出る。

「伊織君」

「ん?」

「見てて」

「見てるよ」

「もっと速いの投げる」

「言ったな?」

 玲が。

 構える。

 一球目。

 シュッ。

 パシッ!

「おっ」

 俺より。

 速い。

 分かっていた。

 スピードガンで。

 四十九キロ。

 俺より三キロ速かった。

 でも。

 こうして。

 打者側から見ると。

 数字以上に。

 速く感じる。

 二球目。

 高い。

 三球目。

 右へ外れる。

「水城、速いけどもう少し落ち着いてな」

「はい」

 四球目。

 真ん中。

 シュッ。

 パシッ!

「いい球!」

「やった!」

 玲が。

 俺を見る。

「伊織君」

「何だよ」

「僕の方が速い」

「コントロールは俺の方が上」

「こんとろーる?」

「狙ったところに投げるの」

「じゃあ僕もできるようにする」

「簡単に言うな」

「練習する」

「……」

 こいつの場合。

 本当に。

 すぐできるようになりそうで困る。

 

◇

 

「じゃあ次、打者立たせてみるか」

「打者?」

 玲の目が。

 また輝いた。

 俺も。

 少し。

 心臓が跳ねる。

「まず成瀬が投げて、水城が打ってみろ」

「はい!」

「分かりました」

 マウンドもどきの場所へ。

 俺。

 打席。

 玲。

「伊織君」

「ん?」

「打つよ」

「打たせねえよ」

 初めて。

 俺が。

 玲に投げる。

 一球目。

 ストライクを狙う。

 真ん中付近。

 シュッ。

 玲が。

 振る。

 カンッ!

「うわっ」

 いきなり。

 当てた。

 ファウル。

「玲、お前……」

「当たった」

「見れば分かる」

 二球目。

 少し外。

 玲。

 振らない。

「ボール!」

 三球目。

 内側。

 振る。

 カンッ!

 今度は。

 前へ転がった。

「よし!」

 玲が。

 一塁へ走る。

「普通に打つのかよ……」

 三球で。

 対応した。

 いや。

 こいつ。

 投げるだけじゃないのか?

「玲!」

「なに?」

「バッティングも練習してる?」

「うん」

「いつ?」

「家で」

「……」

 そりゃ。

 上手くなるわ。

 

◇

 

「次、水城が投げて成瀬が打ってみろ」

「はい!」

 玲。

 嬉しそう。

 俺も。

 バットを握る。

 さっき。

 打たれた。

 なら。

 今度は。

 俺が打つ。

「伊織君」

「ん?」

「三振にする」

「させるか」

 一球目。

 玲が投げる。

 シュッ。

「……っ」

 振る。

 カンッ!

 ファウル。

 少し。

 詰まった。

「惜しい」

「そっちがな」

 二球目。

 外。

「ボール!」

 三球目。

 真ん中寄り。

 来る。

 見える。

 振る。

 ブンッ。

「……え?」

 空振り。

「やった!」

 玲が。

 飛び跳ねる。

「今の……」

 球速。

 五十キロにも届かない。

 もちろん。

 五歳児としては速い。

 でも。

 見えない速度じゃない。

 なのに。

 俺のバットは。

 ボールの下を通った。

「もう一球!」

「おう」

 四球目。

 今度は。

 最後まで見る。

 玲が。

 投げる。

 振る。

 カンッ。

 弱いゴロ。

「……」

「打たれた」

「一応ヒットってことで」

「弱いよ」

「うるさい」

 でも。

 俺も。

 分かっている。

 ちゃんと。

 捉えられていない。

 何だ?

 玲の球。

 速いだけじゃない。

 少し。

 変だ。

 

◇

 

 帰り道。

「今日は僕の勝ち?」

「なんでだよ」

「伊織君の球打った」

「俺もお前の球打った」

「弱かった」

「お前そればっかりだな」

「僕の方が速かった」

「俺の方がストライク入った」

「じゃあ引き分け?」

「……まあ」

 それでいい。

 今は。

 その時。

 視界に。

 新しい表示が現れた。

 

【特定選手との対戦経験を確認しました】

 

【対戦相手:水城玲】

【対戦回数:1】

 

「……?」

 

【現在解析可能な情報】

 

右投げ

球速:40km/h台後半

コントロール:不安定

 

【球質】

解析不足

 

「球質……?」

 初めて見る。

 球速。

 コントロール。

 それとは別。

 ボールそのものの。

 質。

 

【解析には、さらなる対戦経験が必要です】

 

「……」

 玲を見る。

「伊織君?」

「次も勝負しようぜ」

「うん!」

 次は。

 もっと。

 ちゃんと見る。

 なぜ。

 玲の球が。

 数字以上に速く感じるのか。

 そして。

 もう一つ。

「次は俺が三振取る」

「僕が取る」

「いや俺」

「僕」

 ショート。

 ピッチャー。

 四番。

 全部やりたい。

 何でも育てられるなら。

 何でもできる。

 この時の俺は。

 本気で。

 そう信じていた。

 

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