転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

13 / 91
第13話

 特殊能力。

 その言葉を。

 俺は。

 ずっと気にしていた。

 通常能力は。

 経験を貯めて。

 好きな能力へ使う。

 ミート。

 パワー。

 走力。

 肩力。

 守備。

 捕球。

 球速。

 コントロール。

 スタミナ。

 育て方は。

 少しずつ分かってきた。

 でも。

 特殊能力だけは。

 違う。

 

【特殊能力候補】

ノビ

 

 玲に表示された。

 あの文字。

 まだ。

 取得してはいない。

 でも。

 条件を満たしかけている。

 なら。

 俺にも。

 同じようなものが。

 あるはずだ。

 

◇

 

「今日は試合形式やるぞー!」

 コーチの声に。

 子供たちが一斉に集まる。

「今日は守備も走塁もちゃんとやるからな!」

「はい!」

 俺も。

 少し。

 気合が入る。

 最近。

 練習も好きだ。

 でも。

 試合は。

 やっぱり違う。

 相手がいる。

 点が入る。

 アウトがある。

 そして。

 何より。

 特殊能力。

 あれは。

 実戦で何かをした時に。

 動く気がしていた。

 

◇

 

 今日の俺は。

 ショート。

 玲は。

 ピッチャー。

「またピッチャー?」

「うん」

「好きだな」

「伊織君もやる?」

「今日はショート」

「じゃあ次」

「なんでお前が決めるんだよ」

「伊織君もピッチャー好きでしょ?」

「まあな」

 否定はできない。

 今の俺は。

 何でもやりたい。

 エースも。

 四番も。

 ショートも。

 全部。

 欲しい。

 その欲張りさを。

 まだ。

 悪いとは思っていなかった。

 

◇

 

「成瀬! 来るぞ!」

「はい!」

 打球。

 正面。

 捕る。

 一塁へ。

 シュッ。

「アウト!」

「ナイス!」

 次。

 二遊間。

 一歩。

 二歩。

 捕る。

 身体をひねる。

 一塁へ。

 パシッ。

「アウト!」

「成瀬、送球安定してきたな!」

「ありがとうございます!」

 嬉しい。

 前世で。

 散々。

 練習した動き。

 今の身体で。

 少しずつ。

 再現できるようになっている。

 次の打者。

 走者一塁。

「来るぞ!」

「はい!」

 打球。

 二塁ベース寄り。

 俺が。

 前へ出る。

 捕る。

 走者が来る。

 頭の中に。

 前世の景色が浮かぶ。

 ここは。

 一つじゃない。

「二塁!」

 セカンドへ。

 シュッ。

 パシッ。

「アウト!」

 そのまま。

 一塁へ。

 送球。

 パシッ!

「アウト!」

「おおー!」

「ダブルプレー!」

 コーチたちが。

 声を上げる。

「成瀬、今のいいぞ!」

「ありがとうございます!」

 思わず。

 笑う。

 気持ちいい。

 やっぱり。

 ショート。

 好きだ。

 

◇

 

 試合は続く。

 次の守備。

 少し深いゴロ。

 捕る。

 一塁へ。

 体勢が崩れたまま。

 投げる。

 シュッ。

 パシッ。

「アウト!」

「ナイス送球!」

 さらに。

 前へ出て。

 捕球。

 そのまま。

 素早く投げる。

「アウト!」

 何度か。

 難しい体勢から。

 送球を成功させた。

 そして。

 試合終了。

「お疲れー!」

 子供たちが。

 ベンチへ戻る。

 その瞬間。

 視界に。

 表示が出た。

 

【実戦結果を確認しました】

 

「……来た」

 

【正確な送球を複数回成功】

【動作中の送球を複数回成功】

【併殺プレーを成功】

 

「これ……」

 さらに。

 

【特殊能力の取得条件を満たしました】

 

 心臓が。

 少し跳ねる。

 

【送球○を取得しました】

 

「……!」

 

 取得。

 した。

 経験を。

 使っていない。

 選択もしていない。

 試合で。

 実際に。

 結果を残した。

 それだけ。

 

◇

 

 家に帰るまで。

 ずっと。

 気になっていた。

 夜。

 布団へ入る。

 画面を開く。

 

【成瀬 伊織】

 

【特殊能力】

送球○

 

「ほんとに付いてる……」

 詳細。

 

【送球○】

送球がそれにくくなります。

 

「なるほど」

 通常能力と。

 特殊能力。

 完全に。

 育て方が違う。

 通常能力は。

 経験を貯める。

 使う。

 数字を上げる。

 特殊能力は。

 試合で。

 実際に。

 その能力にふさわしい結果を出す。

 その積み重ねで。

 身につく。

 

【特殊能力は、実戦での行動・成績・経験などによって取得する場合があります】

 

「やっぱり」

 

【一部の特殊能力には、単一試合での結果が取得条件として設定されています】

 

「一試合……」

 例えば。

 一試合で。

 誰が見ても。

 明らかにおかしい結果を出す。

 ホームランを何本も打つ。

 何度も。

 難しいプレーを成功させる。

 そういうものかもしれない。

 

【一部の特殊能力には、一定期間の成績が取得条件として設定されています】

 

「期間もあるのか」

 一試合じゃない。

 一か月。

 一大会。

 一年間。

 その間。

 ずっと。

 結果を残す。

 そこで。

 初めて。

 身につく能力。

 それもある。

 

◇

 

「……これ」

 かなり。

 面白い。

 例えば。

 ずっとヒットを打ち続ければ。

 打撃系の特殊能力。

 ホームランを量産すれば。

 長打系。

 盗塁を成功させ続ければ。

 盗塁。

 ピンチで抑え続ければ。

 投手用。

 結果が。

 能力になる。

「ゲームっぽいけど」

 ゲームより。

 ずっと。

 難しい。

 特殊能力が欲しいから。

 条件を達成しよう。

 そう思っても。

 試合には。

 相手がいる。

 ホームランを打ちたいからといって。

 打てるわけじゃない。

 盗塁したいからといって。

 毎回走って。

 アウトになれば。

 チームに迷惑をかける。

「……」

 そこまで考えて。

 少しだけ。

 引っかかった。

 特殊能力。

 欲しい。

 増やしたい。

 ゲームなら。

 当然。

 そう思う。

 でも。

 現実の試合で。

 能力を取ることだけ考えたら。

 どうなる?

「まあ……」

 まだ。

 そんなことまで。

 考えなくてもいいか。

 今は。

 ただ。

 もっと上手くなりたい。

 それだけだ。

 

◇

 

 翌週。

「伊織君」

「ん?」

「勝負」

 玲が。

 ボールを持っている。

「また?」

「うん」

「好きだな」

「伊織君も」

「まあな」

 打席へ入る。

 玲を見る。

 今。

 こいつには。

 

【特殊能力候補】

ノビ

 

 が表示されている。

 まだ。

 取得していない。

 でも。

 前回より。

 空振りを取っている。

 ファウルも。

 増えている。

 このまま。

 実戦で。

 結果を出し続けたら。

 そのうち。

 本当に。

 特殊能力になる。

「……」

 俺は。

 送球○を取った。

 玲は。

 ノビを。

 取りかけている。

 俺には。

 システムがある。

 条件を。

 確認できる。

 何が起きているのか。

 理解できる。

 玲は。

 何も知らない。

 なのに。

 普通に。

 そこへ辿り着いている。

「伊織君」

「ん?」

「今日、三振取る」

「じゃあ俺は打つ」

「無理」

「言ったな?」

「うん」

 玲が。

 笑う。

 俺も。

 バットを構える。

 特殊能力。

 通常能力。

 育成。

 実戦。

 まだ。

 知らないことは。

 山ほどある。

 でも。

 だから。

 楽しい。

 今度こそ。

 自分を。

 どこまで育てられるのか。

 試したかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。