転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第15話

 四月。

 小学校入学の日。

 真新しいランドセルを背負って。

 玄関の鏡を見る。

「……でかい」

 ランドセルが。

 俺より強そうだ。

「伊織ー! 写真撮るわよー!」

「はーい」

 外へ出ると。

 すでに。

 詩織が待っていた。

「おはよう、伊織君」

「おはよう」

「どう?」

 詩織が。

 少しだけ身体を回す。

「何が?」

「ランドセル」

「似合ってる」

「ほんと?」

「うん」

 詩織が。

 嬉しそうに笑う。

「伊織君も似合ってるよ」

「ありがと」

「伊織君!」

 声。

 見ると。

 玲が。

 ランドセルを背負ったまま。

 こっちへ走ってくる。

「お前、ランドセルで走るなよ」

「なんで?」

「転ぶぞ」

「転ばない」

 直後。

「わっ」

「言っただろ!」

 玲が。

 ギリギリで踏ん張る。

「転ばなかった」

「そういう問題じゃない」

 詩織が。

 声を出して笑った。

 いつも通り。

 そんな。

 俺たちの小学校生活が。

 始まった。

 

◇

 

 校門。

 大きな文字。

 

『入学式』

 

 前世でも。

 当然。

 ここを通ったことはある。

 でも。

 記憶なんて。

 ほとんど残っていない。

「伊織君」

「ん?」

「同じクラスだといいね」

「そうだな」

「玲ちゃんも」

「うん」

 玲が頷く。

「僕、伊織君と同じがいい」

「詩織は?」

「詩織ちゃんも」

「後付けじゃん」

「違うよ」

「ほんとか?」

 そんなことを話しながら。

 校門をくぐる。

 その瞬間。

 

【ライフステージの移行を確認しました】

 

「……!」

 

【競技カテゴリを更新します】

 

幼児

 ↓

少年

 

 来た。

 ずっと。

 待っていた。

 いや。

 少し。

 怖かった。

 カテゴリ変更。

 

【現在の身体能力・技術・競技経験を、新カテゴリ基準で再評価します】

 

 画面が。

 一度。

 消える。

「伊織君?」

「ん?」

「止まってるよ」

「ああ、ごめん」

 歩きながら。

 視界だけで。

 画面を待つ。

 そして。

 

【再評価が完了しました】

 

「……」

 恐る恐る。

 能力を見る。

 

【成瀬 伊織】

年齢:6歳

 

【野球能力】

《競技カテゴリ:少年》

 

弾道  2

 

ミート

B74 → D56

 

パワー

C64 → E46

 

走力

B71 → D53

 

肩力

B75 → D57

 

守備力

B78 → D59

 

捕球

B72 → D54

 

【投手能力】

 

球速

55km/h

 

コントロール

A80 → C62

 

スタミナ

C66 → E48

 

【特殊能力】

送球○

 

「…………」

 分かっていた。

 分かっていたけど。

「うわぁ……」

「伊織君?」

 詩織が。

 不思議そうにこっちを見る。

「なんでもない」

 ミート。

 B。

 だった。

 昨日まで。

 それが。

 D。

 守備も。

 BからD。

 肩も。

 BからD。

 コントロールなんて。

 初めて到達したAが。

 C。

「俺のA……」

「えー?」

「なんでもないです」

 悲しい。

 普通に。

 悲しい。

 せっかく。

 あそこまで育てたのに。

 ランクだけ見れば。

 一気に。

 二段階近く。

 落ちた。

 

◇

 

 でも。

 当然。

 俺自身が。

 弱くなったわけじゃない。

 昨日。

 五十五キロ投げられたボールが。

 今日になって。

 四十キロしか出なくなるわけではない。

 

【球速 55km/h】

 

 これは。

 変わらない。

 絶対的な数字だから。

 肩の強さも。

 昨日より弱くなったわけじゃない。

 守備だって。

 急に下手になったわけじゃない。

 変わったのは。

 基準。

 幼児。

 五歳。

 六歳。

 その中で。

 Bだった。

 でも。

 今日から。

 少年カテゴリ。

 小学一年生だけじゃない。

 二年生。

 三年生。

 四年生。

 五年生。

 六年生。

 俺より。

 身体の大きな。

 何年も野球をやっている子供たちまで。

 比較対象に入る。

「……そりゃ落ちるか」

 むしろ。

 一年生で。

 Dがこれだけ並んでいるなら。

 かなり高いのかもしれない。

 コントロールも。

 AからCへ落ちた。

 でも。

 狙ったところへ投げる感覚が。

 急に失われれたわけじゃない。

 より高いレベルを基準にした時。

 C。

 そういうことだ。

「……」

 そして。

 その事実に気づいた瞬間。

 悲しさとは。

 別の感情が。

 湧いてきた。

「これ」

 また。

 育てられるじゃん。

 

◇

 

 D。

 E。

 まだ。

 こんなに伸ばせる。

 しかも。

 少年カテゴリは。

 六歳から十二歳。

 六年間。

 時間がある。

 六年あれば。

「……オールA」

 いけるんじゃないか?

 いや。

 いきたい。

 ミート。

 パワー。

 走力。

 肩力。

 守備。

 捕球。

 全部。

 A。

 さらに。

 投手能力も。

 球速。

 コントロール。

 スタミナ。

「エースで四番でショート……」

 口に出す。

「伊織君?」

「何でもない」

「今日、何でもない多いね」

「気のせい」

 六年間。

 ちゃんと。

 効率よく育てる。

 幼児期みたいに。

 行き当たりばったりじゃなく。

 練習内容を考えて。

 経験を貯めて。

 必要なところへ使う。

 特殊能力も。

 試合で増やしていく。

「いける」

 今の俺は。

 本気でそう思った。

 何でもできる。

 全部育てられる。

 だったら。

 全部。

 最高にすればいい。

 

◇

 

 そして。

 その週末。

 俺と玲は。

 キッズクラスではなく。

 少年野球チームへ。

 正式に参加することになった。

「集合!」

「はい!」

 グラウンド。

 今までより。

 明らかに。

 子供たちが大きい。

「今日から低学年組に参加する、成瀬伊織と水城玲だ」

「よろしくお願いします!」

「お願いします!」

 頭を下げる。

「二人ともキッズでやってたから基本はできると思うが、少年チームではまた一から覚えてもらうぞ」

「はい!」

「成瀬。やりたいポジションは?」

「ショートとピッチャーです」

「二つか」

「はい」

「水城は?」

「ピッチャー!」

 即答。

 監督が笑う。

「元気だな」

 玲が。

 俺を見る。

「伊織君」

「何?」

「ピッチャー一緒」

「そうだな」

「勝負」

「望むところ」

「一年生からエース争いか?」

 監督が笑う。

「まあ一年生は、まず色んなところ守ってみろ。ピッチャーもすぐには固定しないからな」

「はい」

「はい!」

 それでも。

 玲は。

 楽しそうだった。

 俺も。

 同じ。

 

◇

 

 まずは。

 キャッチボール。

 相手は。

 二年生。

「いくよ」

「お願いします」

 シュッ。

 パシッ。

「……」

 強い。

 キッズクラスで。

 同い年と投げていた球とは。

 全然違う。

 返す。

 シュッ。

「おっ、強いね」

「ありがとうございます」

 次。

 ゴロ捕球。

「成瀬!」

「はい!」

 コーチが。

 打つ。

 カンッ!

「……速っ」

 正面。

 腰を落とす。

 捕る。

 いや。

 弾いた。

「くっ」

 慌てて拾う。

 一塁へ。

 投げる。

「もう一回!」

「はい!」

 今までなら。

 普通に捕れていた打球。

 でも。

 打球速度が。

 違う。

 次。

 少し右。

 追う。

 捕る。

 送球。

「よし!」

 難しい。

 でも。

 楽しい。

 

◇

 

 バッティング。

 コーチが投げる。

「成瀬、いくぞ!」

「はい!」

 一球目。

 思ったより速い。

 ブンッ。

「……!」

 空振り。

 二球目。

 カンッ!

 ファウル。

 三球目。

 なんとか。

 前へ飛ばす。

「よし!」

 キッズクラスでは。

 かなり打てる方だった。

 でも。

 ここでは。

 普通に。

 空振りする。

 ミートD56。

 少年カテゴリ。

 なるほど。

 D。

 そういうことか。

 

【新しい競技環境での練習を確認しました】

 

【技術がかなり上がった】

【敏捷が上がった】

【精神が上がった】

 

「……!」

 経験。

 多い。

 難しい練習をしている分。

 入ってくる経験も。

 大きい。

「これなら」

 また。

 上げられる。

 Dから。

 C。

 Cから。

 B。

 Bから。

 A。

 六年間。

 ある。

 

◇

 

 練習の後半。

「投げたい奴!」

「はい!」

 玲。

 速い。

「はい!」

 俺も。

 手を挙げる。

 監督が。

 俺たちを見る。

「じゃあまず成瀬」

「はい」

 マウンド。

 といっても。

 低学年用の練習。

 打者も。

 二年生。

 ボールを握る。

 コントロール。

 

【C62】

 

 幼児カテゴリでは。

 Aだった。

 少年カテゴリでは。

 C。

 なら。

 どこまで通用する?

 一球目。

 投げる。

 パシッ。

「ストライク!」

 二球目。

 少し外。

「ボール!」

 三球目。

 低め。

「ストライク!」

「成瀬、結構まとまってるな」

「ありがとうございます!」

 嬉しい。

 Cでも。

 ちゃんと。

 通用する。

 次の球。

 投げる。

 カンッ!

「うわっ」

 普通に。

 打たれた。

 センター前。

「……」

 これが。

 少年野球。

 

◇

 

「次、水城!」

「はい!」

 玲が。

 マウンドへ。

 その瞬間。

 少し。

 空気が変わった。

 玲が。

 楽しそうに。

 ボールを握る。

 一球目。

 シュッ。

「……!」

 打者。

 振り遅れる。

 ファウル。

 二球目。

 ボール。

 三球目。

 シュッ。

 ブンッ。

 空振り。

「おっ」

 監督が。

 少し。

 玲を見る。

 四球目。

 ストライク。

「水城、球速いな」

「はい!」

 嬉しそう。

 俺は。

 横から。

 その球を見る。

 六十キロ。

 数字だけなら。

 上級生には。

 もっと速い子もいる。

 でも。

 玲の球は。

 やっぱり。

 速く見える。

 そして。

 二年生相手でも。

 普通に。

 空振りを取った。

「……」

 システムを開く。

 

【水城玲】

 

【ストレート】

球速:60km/h

 

【球質傾向】

回転量:非常に多い

回転効率:非常に高い

軌道:通常より落下が少ない

 

【特殊能力候補】

ノビ

 

「やっぱり」

 カテゴリが。

 変わっても。

 玲の球そのものが。

 消えるわけじゃない。

「伊織君!」

 練習を終えた玲が。

 こっちへ来る。

「僕、空振り取った」

「見てた」

「伊織君打たれた」

「見てたなら言うな」

「僕の勝ち?」

「まだ一回だろ」

「じゃあ次も勝つ」

「次は俺が抑える」

「僕も」

「……」

 やっぱり。

 面倒くさい。

 でも。

 最高に。

 楽しい。

 

◇

 

 帰り道。

 俺は。

 もう一度。

 自分の能力を見る。

 

【競技カテゴリ:少年】

 

ミート D56

パワー E46

走力 D53

肩力 D57

守備力 D59

捕球 D54

 

球速 55km/h

コントロール C62

スタミナ E48

 

「六年か」

 六年間。

 この数字を。

 どこまで。

 上げられるか。

 目標は。

 決まっている。

「オールA」

「何が?」

 隣の玲が。

 聞いてくる。

「六年生までに全部Aにする」

「えー?」

「野球の話」

「僕もする」

「何を?」

「全部」

「お前もかよ」

「伊織君がするなら僕も」

「……」

 笑う。

 どうせ。

 こいつなら。

 本当に。

 何か。

 とんでもないところまで。

 行くんだろう。

 でも。

 俺だって。

 負けるつもりはない。

 少年カテゴリ。

 六年間。

 俺の。

 本格的な育成が。

 始まった。

 

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