転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第16話

 小学校へ入学して。

 最初の週末。

 俺と玲は。

 父さんたちに連れられて。

 新しいグラウンドへ来ていた。

「ここが……」

 今までのキッズクラスとは。

 明らかに違う。

 広い。

 人が多い。

 そして。

 何より。

 聞こえてくる音が違う。

 カキィン!

 金属バットが。

 硬いボールを弾く音。

「……硬式」

 前世では。

 高校まで軟式しかやっていなかった。

 硬式球を触ったことくらいはある。

 でも。

 本格的にプレーしたことはない。

 つまり。

 ここからは。

 俺にとっても。

 完全に知っている世界ではない。

「伊織君」

「ん?」

「ボール硬い」

 玲が。

 手の中でボールを転がしている。

「硬式だからな」

「こうしき?」

「硬いボールってこと」

「当たったら痛い?」

「めちゃくちゃ痛い」

「じゃあ当てない」

「そうしてくれ」

 玲なら。

 普通に当てそうで怖い。

 

◇

 

 俺たちが入ったのは。

 リトルリーグの低年齢組。

 最初から。

 上級生と同じ試合へ出るわけではない。

 それでも。

 今までとは。

 求められるものが違う。

「まずはボールに慣れること!」

 監督が言う。

「硬式は怖がったら余計危ない。ちゃんと見て、正面に入る!」

「はい!」

 最初は。

 キャッチボール。

 ボールを握る。

「……やっぱ違うな」

 硬い。

 重い。

 指にかかる感覚も。

 少し違う。

 投げる。

 シュッ。

 パシッ。

「……」

 受けた時。

 グローブに。

 しっかり衝撃が来る。

 玲も。

 少し驚いた顔をする。

「痛い?」

「ちょっと」

「だよな」

 今まで。

 柔らかいボールで。

 普通にできていたこと。

 それが。

 同じ感覚では。

 できない。

 

◇

 

 システムが開く。

 

【競技環境の変化を確認しました】

 

【使用球】

軟式・柔らかいボール中心

 ↓

硬式球

 

「……」

 

【一部の投球・捕球能力について適応補正が発生します】

 

 来た。

 詳細を見る。

 

【硬式球への適応が不足しています】

 

【一時的に以下の能力へ影響があります】

コントロール

捕球

送球精度

 

「なるほど」

 能力そのものが。

 消えるわけじゃない。

 でも。

 ボールが変わった。

 感覚も変わった。

 だから。

 そのまま。

 同じ精度では使えない。

 俺は。

 試しに。

 少し強めに投げる。

 シュッ。

「あっ」

 ボールが。

 玲の右へずれる。

「伊織君」

「ごめん」

「今のコントロール悪かった」

「分かってる」

 玲。

 そういうところ。

 ちゃんと見てるな。

 以前なら。

 もっと真っ直ぐ行った。

「やっぱり」

 硬式球。

 手の中での感覚。

 離れる瞬間。

 全部。

 少し違う。

 これなら。

 カテゴリ移行時。

 コントロールが。

 大きめに下がることも。

 納得できる。

 でも。

 今はまだ。

 完全に能力が落ちたというより。

 『適応できていない』

 そういう状態らしい。

 

◇

 

 守備練習。

 ショート。

「成瀬!」

「はい!」

 ゴロ。

 硬球。

 打球が。

 思ったより速い。

 バウンドも。

 今までと違う。

「っ!」

 捕る。

 グローブの中。

 ズシッ。

 重い。

 送球。

 少し。

 高い。

「惜しい!」

「はい!」

 次。

 今度は。

 少し腰を落とす。

 正面。

 捕る。

 今度は。

 ちゃんと。

 握り替える。

 一塁。

 シュッ。

「ナイス!」

「よし」

 まだ。

 できる。

 でも。

 雑にやれば。

 すぐミスになる。

 これが。

 少年カテゴリ。

 そして。

 硬式。

 

◇

 

 打撃練習。

 金属バット。

 硬式球。

「最初は無理に強く振るなよ!」

「はい!」

 構える。

 一球目。

 コーチが投げる。

 速くはない。

 それでも。

 ボールが。

 小さく感じる。

 振る。

 カンッ!

「……!」

 手。

 痺れた。

「うわ」

「芯外したな」

「はい……」

 痛い。

 硬式。

 普通に。

 痛い。

 二球目。

 今度は。

 しっかり見る。

 ミートポイント。

 少し前。

 振る。

 カキン!

「おっ」

 今度は。

 気持ちいい音。

 打球が。

 前へ飛ぶ。

「成瀬、いいぞ!」

「ありがとうございます!」

 前世の経験がある。

 システムもある。

 でも。

 新しい道具。

 新しいボール。

 新しい環境。

 全部。

 もう一度。

 覚え直す必要がある。

「……楽しいな」

 本当に。

 育成ゲームみたいだ。

 

◇

 

「次、水城!」

「はい!」

 玲が。

 打席へ入る。

 一球目。

 空振り。

 二球目。

 ファウル。

 三球目。

 カンッ!

 前へ。

「おお」

 普通に。

 対応してきた。

「……早いな」

 やっぱり。

 玲は。

 適応も早い。

 打撃練習のあと。

 今度は。

 投球練習。

「水城、投げてみろ」

「はい!」

 玲が。

 硬式球を握る。

 一球目。

 高い。

 二球目。

 外。

「やっぱ変わるよな」

 俺だけじゃない。

 玲も。

 コントロールは。

 少し乱れる。

 でも。

 三球目。

 ストライク。

 四球目。

 またストライク。

「……もう合わせた?」

 五球目。

 シュッ。

 パシッ!

「いい球!」

 監督が。

 少し。

 目を細める。

「水城、腕柔らかいな」

「うで?」

「今は気にしなくていい」

「はい!」

 本人。

 何も分かってない。

 なのに。

 数球。

 投げただけで。

 もう。

 感覚を合わせ始めている。

 

◇

 

 俺も。

 投げさせてもらう。

 一球目。

 高い。

 二球目。

 ストライク。

 三球目。

 外。

 四球目。

 ストライク。

「成瀬もいいな」

「ありがとうございます!」

 以前より。

 少し。

 狙いがズレる。

 でも。

 投げていけば。

 戻せる。

 そういう感覚。

 その時。

 

【硬式球への適応経験を獲得しました】

 

【技術がかなり上がった】

【精神が上がった】

 

【適応度が上昇しました】

 

「……なるほど」

 やっぱり。

 慣れれば。

 戻る。

 いや。

 もしかすると。

 以前より。

 上へ行ける。

 

◇

 

 練習後。

 俺は。

 能力を見る。

 

【成瀬 伊織】

年齢:6歳

 

【競技カテゴリ:少年】

 

弾道 2

ミート D56

パワー E46

走力 D53

肩力 D57

守備力 D59

捕球 D54

 

【投手能力】

球速 55km/h

コントロール C62

スタミナ E48

 

【特殊能力】

送球○

 

【硬式適応】

初期

 

「……」

 能力そのものは。

 変わっていない。

 ただ。

 硬式球。

 そこへ。

 まだ。

 身体が慣れていない。

「じゃあ」

 慣れればいい。

 練習して。

 適応する。

 それだけ。

 

◇

 

「伊織君」

「ん?」

「次いつ?」

「来週」

「毎日来たい」

「学校あるだろ」

「終わったら来ればいい」

「毎日は無理だろ」

「なんで?」

「家遠いし」

「じゃあ近くで投げる」

「結局投げるんだな」

「うん」

 玲が。

 硬式球を見ながら笑う。

「これ好き」

「もう?」

「うん」

「痛いって言ってただろ」

「でも速く投げられそう」

「そこなのかよ」

 玲らしい。

 俺も。

 少し笑う。

 

◇

 

 その日から。

 俺たちは。

 硬式球に。

 慣れるための練習を増やした。

 キャッチボール。

 ゴロ捕球。

 バッティング。

 投球。

 最初の一週間。

 手が痛い。

 二週間目。

 少し慣れる。

 一か月。

 もう。

 普通に扱えるようになってきた。

 

【硬式適応度が上昇しました】

 

【初期】

 ↓

【基礎適応】

 

「よし」

 そして。

 能力も。

 少しずつ。

 また伸び始める。

 俺は。

 気づけば。

 毎日のように。

 学校から帰って。

 野球のことを考えていた。

 今日は。

 何を練習する?

 どの能力を上げる?

 どこへ。

 経験を使う?

 そして。

 隣には。

 玲がいる。

 同じように。

 毎日。

 野球をしている。

「伊織君」

「ん?」

「今度、試合あるって」

「試合?」

「うん」

「いつ?」

「来月」

「……」

 初めての。

 リトルリーグでの。

 公式戦。

 胸が。

 少し。

 高鳴る。

「出られるかな」

「出る」

「まだ決まってないだろ」

「出たい」

「それなら俺も」

「ピッチャー?」

「ピッチャーも」

「僕も」

「……また勝負か」

「うん」

 そして。

 ここから。

 俺たちの。

 少年野球が。

 本格的に。

 始まることになる。

 

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