転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第17話

 リトルリーグへ入って。

 一か月。

 俺たちは。

 初めての公式戦の日を迎えた。

「……緊張するな」

 ユニフォーム姿で。

 ベンチに座る。

 前世。

 試合なんて。

 何度も経験した。

 小学校。

 中学校。

 高校。

 でも。

 今の身体では。

 初めて。

 しかも。

 今回は。

 ベンチに座っているだけじゃない。

「成瀬」

「はい!」

 監督が。

 メンバー表を読み上げる。

「二番、ショート」

「はい!」

 名前が。

 ある。

 スタメン。

 前世。

 高校最後の夏。

 俺は。

 背番号十八。

 ベンチだった。

 結局。

 最後まで。

 まともな出番はなかった。

 でも。

 今日は違う。

「水城」

「はい!」

「先発ピッチャー」

「はい!」

 玲が。

 俺を見る。

 満面の笑み。

「伊織君」

「何?」

「僕がエース」

「今日だけな」

「今日勝ったら?」

「今日だけ」

「じゃあずっと勝つ」

「そういう意味じゃねえよ」

 玲が笑う。

 こいつ。

 本当に。

 マウンドが好きになったらしい。

 

◇

 

 試合開始。

 先攻。

 俺たち。

「成瀬!」

「はい!」

 二番打者。

 初回。

 一死走者なし。

 初打席。

 バットを握る。

 打席へ向かう。

 途端。

 少しだけ。

 胸がざわついた。

 高校三年。

 最後の夏。

 ベンチから見た打席。

 俺は。

 そこへ。

 一度も立てなかった。

「……」

 今は。

 立っている。

 六歳。

 相手も。

 子供。

 試合の規模だって。

 高校野球とは比べものにならない。

 でも。

 俺にとっては。

 大きかった。

「プレイ!」

 投手。

 同じくらいの年齢。

 構える。

 一球目。

 外。

「ボール!」

 二球目。

 真ん中。

「……っ」

 振る。

 カキン!

「おっ!」

 打球。

 三遊間。

「走れ!」

 走る。

 一塁。

「セーフ!」

「よし!」

 初打席。

 初ヒット。

 

【公式戦で初安打を記録しました】

 

【技術が上がった】

【精神が上がった】

 

「……いいね」

 試合。

 やっぱり。

 練習より。

 経験が大きい。

 

◇

 

 次の打者。

 初球。

 俺は。

 一塁から。

 投手を見る。

 走力。

 

【D53】

 

 少年カテゴリになって。

 評価は下がった。

 でも。

 一年生としてなら。

 遅くない。

「……走れるか?」

 盗塁。

 特殊能力にも。

 あった。

 成功を重ねれば。

 いつか。

 能力になるかもしれない。

 投手。

 セット。

 俺は。

 少しだけ。

 リードを取る。

「成瀬!」

 一塁コーチが。

 俺を見る。

「まだ無理するなよ」

「はい!」

「……」

 やめた。

 特殊能力は欲しい。

 でも。

 今。

 走るべきか。

 それとは。

 別の話。

 次の打者が。

 打つ。

 カキン!

「走れ!」

 二塁へ。

 さらに。

 外野がもたつく。

「三塁!」

 回る。

「……っ!」

 三塁。

 滑り込む。

「セーフ!」

「ナイスラン!」

 ベンチから。

 声。

 気持ちいい。

 

【好走塁を確認しました】

 

「……」

 今のも。

 何かの条件。

 なのかもしれない。

 

◇

 

 その後。

 内野ゴロの間に。

 俺はホームへ帰った。

 一点。

 先制。

 そして。

 守備。

「水城、いけるか?」

「はい!」

 玲が。

 マウンドへ。

 俺は。

 ショート。

 後ろから。

 玲を見る。

 小さな背中。

 でも。

 妙に。

 堂々としている。

 一球目。

 シュッ。

「ストライク!」

 速い。

 二球目。

 外。

 三球目。

 高い。

「水城、落ち着け!」

「はい!」

 まだ。

 硬式球へ。

 完全に適応したわけではない。

 コントロールは。

 荒れる。

 でも。

 四球目。

 真ん中。

 打者。

 振る。

 ブンッ。

「ストライク!」

 空振り。

「……やっぱり」

 玲のストレート。

 硬式になっても。

 変わらない。

 いや。

 むしろ。

 硬いボールになったことで。

 回転の良さが。

 もっと分かりやすくなっている気がする。

 五球目。

 シュッ。

 ブンッ。

「ストライク! バッターアウト!」

「やった!」

 玲が。

 マウンドで。

 小さく跳ねる。

 

【水城玲】

【公式戦初奪三振】

 

 俺に。

 関係ない表示まで。

 出るようになっている。

「……システム、お前玲好きだろ」

 もちろん。

 返事はない。

 

◇

 

 次の打者。

 玲が。

 ストライクを取りにいく。

 カキン!

「ショート!」

「はい!」

 俺の正面。

 ゴロ。

 捕る。

 一塁へ。

 シュッ。

「アウト!」

「ナイス伊織君!」

「おう!」

 二死。

 三人目。

 玲。

 一球目。

 ボール。

 二球目。

 ボール。

 三球目。

 ストライク。

 四球目。

 ファウル。

 五球目。

 シュッ。

 ブンッ。

「三振!」

 二奪三振。

 初回。

 三者凡退。

 玲が。

 ベンチへ戻ってくる。

「伊織君」

「何?」

「二個」

「見てた」

「三振二個」

「聞こえてる」

「すごい?」

「すごいすごい」

「ほんと?」

「うん」

 これは。

 素直に。

 すごい。

 玲が。

 嬉しそうに笑った。

 

◇

 

 三回。

 一対一。

 二死。

 二塁。

 俺の。

 二打席目。

 ここで打てば。

 勝ち越し。

 打席へ入る。

 画面。

 

【得点圏に走者がいます】

 

「……」

 そういえば。

 特殊能力に。

 あった。

 

【チャンス】

 

 得点圏で。

 打てるかどうか。

 でも。

 今は。

 それを取りたいから。

 打つんじゃない。

 勝ちたい。

 それだけ。

 一球目。

 外。

 二球目。

 ファウル。

 三球目。

 低め。

 見送る。

「ボール!」

 四球目。

 真ん中寄り。

「来た」

 振る。

 カキン!

「抜けた!」

 センター前。

「回れ回れ!」

 二塁走者。

 三塁を回る。

 ホームへ。

「セーフ!」

「よし!」

 二対一。

 勝ち越し。

 俺は。

 一塁で。

 思わず。

 拳を握った。

 

【得点圏で安打を記録しました】

 

【打点を記録しました】

 

【特殊能力《チャンス》の取得条件が進行しました】

 

「……進行?」

 取得ではない。

 一回。

 打っただけ。

 それじゃ。

 身につかない。

「なるほど」

 こういう能力は。

 何度も。

 結果を出さなきゃいけない。

 面白い。

 

◇

 

 そして。

 最終回。

 二対一。

 俺たちが。

 一点リード。

 玲は。

 まだマウンドにいた。

「水城、最後だぞ!」

「はい!」

 低年齢の試合。

 球数も。

 登板時間も。

 無理はさせない。

 これが。

 玲の最後の打者。

 一死。

 走者二塁。

 今日。

 初めてのピンチ。

「玲!」

 俺が。

 ショートから声をかける。

 玲が。

 振り向く。

「一点取られても同点! 打たせろ!」

「……」

「俺が取る!」

 玲が。

 少し笑った。

「うん!」

 一球目。

 ストライク。

 二球目。

 ファウル。

 三球目。

 ボール。

 四球目。

 玲が投げる。

 カキン!

「ショート!」

「来た!」

 俺の左。

 走る。

 腕を伸ばす。

 捕る。

 体勢。

 崩れる。

 でも。

 一塁へ。

 投げる。

 シュッ。

「アウト!」

「ナイス!」

 その間。

 二塁走者は。

 三塁へ。

 二死。

「伊織君!」

 玲が。

 マウンドから。

 手を上げる。

 俺も。

 返す。

 

◇

 

 最後の打者。

 一球目。

 空振り。

 二球目。

 ボール。

 三球目。

 ファウル。

 追い込む。

「玲!」

「うん!」

 四球目。

 玲。

 投げる。

 シュッ。

 打者。

 振る。

 ブンッ。

「ストライク! バッターアウト!」

 ゲームセット。

「勝った!」

 玲が。

 マウンドで。

 両手を上げる。

 俺も。

 思わず。

 走っていた。

「玲!」

「伊織君!」

「ナイスピッチ!」

「伊織君も打った!」

 二人で。

 笑う。

 初めての公式戦。

 二対一。

 勝利。

 

◇

 

 試合後。

 システムが。

 次々に表示を出す。

 

【公式戦結果】

 

3打数2安打

1打点

1得点

 

【守備機会】

3

失策0

 

【実戦経験を獲得しました】

 

【技術がかなり上がった】

【敏捷が上がった】

【精神がかなり上がった】

 

【特殊能力進行】

チャンス

走塁

 

「……」

 そして。

 少し遅れて。

 

【水城玲との関係性が更新されました】

 

「?」

 

【友人】

 ↓

【友人・ライバル】

 

「……ライバル」

 横を見る。

 玲は。

 監督から。

 今日の投球を。

 褒められている。

 嬉しそう。

 でも。

 俺を見ると。

 すぐ。

 走ってきた。

「伊織君」

「何?」

「次も僕がピッチャー」

「いや次は俺」

「僕、今日勝ったよ」

「俺だって投げたい」

「じゃあ勝負」

「何で決める?」

「三振」

「意味分からん」

「いっぱい取った方」

「俺まだ公式戦で投げてないだろ」

「じゃあ次」

「だから俺が投げるって」

 また。

 言い合い。

 でも。

 悪くない。

 むしろ。

 楽しい。

 俺には。

 システムがある。

 玲には。

 異常な才能がある。

 どっちが。

 先に。

 エースになる?

 どっちが。

 もっと。

 強くなる?

 この頃の俺は。

 まだ。

 全部。

 競争すればいいと思っていた。

 野球も。

 人生も。

 勝てば。

 きっと。

 うまくいくと。

 そう。

 信じていた。

 

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