転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第24話

 三年生になった。

 

 八歳。

 

 リトルリーグに入って。

 

 三年目。

 

 そして。

 

 最近。

 

 俺には。

 

 一つ。

 

 気になることがあった。

 

「玲、もう一球!」

 

「うん!」

 

 放課後。

 

 いつもの公園。

 

 俺が受ける。

 

 玲が投げる。

 

 シュッ!

 

 パシンッ!

 

「……」

 

 速い。

 

「どう?」

 

「もう一球」

 

「うん」

 

 玲。

 

 振りかぶる。

 

 投げる。

 

 シュッ!

 

 パシンッ!

 

「……」

 

 やっぱり。

 

「伊織君?」

 

「もう一球」

 

「また?」

 

「いいから」

 

 三球目。

 

 シュッ!

 

「っ!」

 

 捕る。

 

 ミットが。

 

 少し。

 

 押される。

 

「……なんだこれ」

 

「なに?」

 

「いや」

 

 球速だけじゃない。

 

 それは。

 

 ずっと前から分かっていた。

 

 でも。

 

 最近。

 

 それが。

 

 さらに分かりやすくなってきた。

 

 

 システム。

 

【水城 玲】

 

【ストレート】

 

球速:70km/h台後半

 

回転量:非常に多い

回転効率:非常に高い

軌道:通常より落下が少ない

 

【特殊能力候補】

ノビ

奪三振

 

「……」

 

 俺は。

 

 七十キロ台前半。

 

 数字だけなら。

 

 大差じゃない。

 

 でも。

 

 玲の球は。

 

 数字より。

 

 明らかに速く感じる。

 

「玲」

 

「なに?」

 

「今度打たせて」

 

「いいよ」

 

 確かめたい。

 

 受けるのと。

 

 打つのでは。

 

 また違う。

 

 

 週末。

 

 フリー打撃。

 

「水城、無理に全力で投げんなよ」

 

「はい!」

 

「成瀬もムキになるなよ」

 

「はい!」

 

「特にお前な」

 

「なんで俺だけ……」

 

 打席へ。

 

「玲」

 

「なに?」

 

「ストレートだけでいい」

 

「分かった」

 

 変化球なんて。

 

 まだ。

 

 ほとんど必要ない。

 

 真っ直ぐ。

 

 それだけ。

 

「いくよ」

 

「来い」

 

 一球目。

 

 シュッ!

 

「……!」

 

 振る。

 

 ブンッ!

 

 空振り。

 

「……」

 

 下。

 

 また。

 

 バットが。

 

 ボールの下を通った。

 

「もう一球」

 

 二球目。

 

 今度は。

 

 最初から。

 

 少し上を振る。

 

 カンッ!

 

 ファウル。

 

「……」

 

 当たった。

 

 でも。

 

 差し込まれた。

 

 三球目。

 

 玲が。

 

 少し笑っている。

 

「何笑ってんだ」

 

「楽しい」

 

「こっちは結構真剣なんだけど」

 

「僕も真剣」

 

「その顔で言うな」

 

 三球目。

 

 シュッ!

 

「……っ!」

 

 振る。

 

 カキン!

 

 センター方向。

 

「よし!」

 

 捉えた。

 

 でも。

 

 思ったほど。

 

 打球が伸びない。

 

「……」

 

 十球。

 

 打った。

 

 安打性。

 

 三本。

 

 ファウル。

 

 三本。

 

 空振り。

 

 四つ。

 

「四回……」

 

 俺。

 

 ミートB。

 

 アベレージヒッター。

 

 同年代相手なら。

 

 かなり打てる。

 

 それでも。

 

 ストレートだけと分かっていて。

 

 四回。

 

 空振り。

 

「伊織君」

 

「何?」

 

「僕の勝ち?」

 

「十球勝負じゃない」

 

「でも四回空振り」

 

「数えるな」

 

「嬉しい」

 

「……」

 

 悪気がないのが。

 

 一番。

 

 腹立つ。

 

 

「成瀬」

 

 監督が。

 

 後ろから声をかける。

 

「はい」

 

「どうだった?」

 

「速いです」

 

「それだけ?」

 

「……」

 

 考える。

 

「思ってるより、球が落ちてこないです」

 

「だな」

 

「監督も分かるんですか?」

 

「そりゃ見てればな」

 

 玲を見る。

 

「水城は真っ直ぐがいい」

 

「球速ですか?」

 

「それもある。でも、それ以上に球がきれいだ」

 

「……」

 

「打者が思ってる軌道より、上を通る」

 

 システムと。

 

 ほとんど。

 

 同じ。

 

「成瀬」

 

「はい」

 

「逆に、お前は何が一番いいと思う?」

 

「俺?」

 

「ああ」

 

「……コントロール?」

 

「投手ならな」

 

「なら?」

 

 監督が笑う。

 

「お前は野手やってる時の方が、もっと面白い」

 

「……」

 

「打つ。守る。走る。全部できる」

 

「ピッチャーは?」

 

「十分うまい」

 

 十分。

 

「でも、水城と同じものを持ってるわけじゃない」

 

「……」

 

「逆もそうだぞ。水城が、お前と同じショート守備できるわけじゃない」

 

「はい」

 

「同じ選手になる必要はない」

 

 分かる。

 

 言っていることは。

 

 分かる。

 

 でも。

 

 俺は。

 

 まだ。

 

 同じ場所でも。

 

 玲に勝ちたかった。

 

 

 春の大会。

 

 初戦。

 

「先発、水城」

 

「はい!」

 

「四番、ショート、成瀬」

 

「はい!」

 

 もう。

 

 この形に。

 

 驚くことはない。

 

 一回。

 

 玲。

 

 三者凡退。

 

 二奪三振。

 

 二回。

 

 三奪三振。

 

 三回。

 

 一奪三振。

 

「……」

 

 三回で。

 

 六。

 

「多いな」

 

 同年代の打者が。

 

 玲のストレートに。

 

 まともに当たらない。

 

 速い。

 

 でも。

 

 それ以上に。

 

 バットが下を通る。

 

 

 俺の。

 

 第一打席。

 

 一死二塁。

 

 一球目。

 

 外。

 

 二球目。

 

 ストライク。

 

 三球目。

 

 甘い。

 

「……!」

 

 振る。

 

 カキィン!

 

 左中間。

 

「抜けた!」

 

 二塁走者。

 

 ホーム。

 

 俺。

 

 二塁。

 

「セーフ!」

 

【得点圏で長打を記録しました】

 

【チャンス○の効果を確認しました】

 

 俺も。

 

 打つ。

 

 玲ほど。

 

 分かりやすく。

 

 三振を量産するわけじゃない。

 

 でも。

 

 試合を重ねるほど。

 

 相手チームが。

 

 俺の打席で。

 

 守備位置を変えるようになった。

 

「成瀬だぞ!」

 

「外野下がれ!」

 

「四番警戒!」

 

「……」

 

 七歳。

 

 八歳。

 

 そんな年齢なのに。

 

 名前を。

 

 覚えられ始めている。

 

 

 大会。

 

 準々決勝。

 

 俺。

 

 三打数二安打。

 

 玲。

 

 四回七奪三振。

 

 準決勝。

 

 俺。

 

 四打数三安打。

 

 二打点。

 

 玲。

 

 四回八奪三振。

 

 そして。

 

 決勝。

 

「先発、水城」

 

「はい!」

 

「成瀬はショート、四番」

 

「はい!」

 

 監督が。

 

 俺を見る。

 

「守備で水城を助けてやれ」

 

「……はい!」

 

 ピッチャーとして。

 

 頼られるのは。

 

 玲。

 

 野手として。

 

 頼られるのは。

 

 俺。

 

 その違いが。

 

 少しずつ。

 

 はっきりしていた。

 

 

 決勝。

 

 三対一。

 

 最終回。

 

 二死。

 

 一塁。

 

 玲。

 

 最後の打者。

 

 一球目。

 

 ストライク。

 

 二球目。

 

 ファウル。

 

 そして。

 

 三球目。

 

 シュッ!

 

 打者。

 

 振る。

 

 ブンッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

「ゲームセット!」

 

「……!」

 

 優勝。

 

「勝った!」

 

 ベンチから。

 

 全員が飛び出す。

 

 玲が。

 

 両手を上げる。

 

「伊織君!」

 

「玲!」

 

「優勝!」

 

「おう!」

 

「今日九個!」

 

「知ってる!」

 

「あと一個で十だった!」

 

「そこかよ!」

 

 笑う。

 

 去年。

 

 決勝で負けた。

 

 今年。

 

 勝った。

 

 だから。

 

 純粋に。

 

 嬉しかった。

 

 

 表彰。

 

「優秀選手、水城玲!」

 

「はい!」

 

 玲が。

 

 前へ出る。

 

 拍手。

 

 俺も。

 

 手を叩く。

 

 当然。

 

 決勝。

 

 ほぼ完璧な投球。

 

 大会を通して。

 

 三振。

 

 三振。

 

 三振。

 

「……」

 

 でも。

 

 胸の奥に。

 

 少し。

 

 引っかかる。

 

 羨ましい。

 

 俺も。

 

 あそこに。

 

 立ちたい。

 

「次は俺も」

 

 小さく。

 

 呟いた。

 

 

 その夜。

 

 玲の解析。

 

【水城 玲】

 

球速 80km/h

 

【ストレート】

回転量:非常に多い

回転効率:非常に高い

軌道:通常より落下が少ない

 

【一定期間、ストレートによる高い空振り率を記録しました】

 

「……」

 

【特殊能力取得条件を達成しました】

 

【ノビCを取得しました】

 

「……ついに」

 

 候補だった。

 

 ずっと。

 

 それが。

 

 正式に。

 

 玲の能力になった。

 

【ノビC】

ストレートが球速以上に速く感じられます。

 

「……」

 

 八歳。

 

 まだ。

 

 身体だって。

 

 これから。

 

 それなのに。

 

 もう。

 

 ストレートそのものに。

 

 特徴がついた。

 

「俺は……」

 

 自分。

 

【成瀬 伊織】

 

球速     74km/h

コントロール B76

スタミナ   C67

 

 投手として。

 

 十分。

 

 いや。

 

 普通なら。

 

 かなりいい。

 

 試合に出れば。

 

 ちゃんと抑える。

 

 でも。

 

 玲を見ると。

 

 足りない。

 

 そう思ってしまう。

 

「もっと」

 

 球速。

 

 上げたい。

 

 打撃も。

 

 守備も。

 

 投手も。

 

 全部。

 

 俺は。

 

 まだ。

 

 何一つ。

 

 諦めるつもりなんてなかった。

 

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