転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第25話

 三年生の夏。

 

 玲。

 

【球速 80km/h】

【ノビC】

 

 俺。

 

【球速 74km/h】

 

「六キロ……」

 

 差。

 

 六キロ。

 

 五歳の頃は。

 

 もっと。

 

 近かった。

 

 もちろん。

 

 球速だけで。

 

 投手の全部が決まるわけじゃない。

 

 俺には。

 

 コントロールがある。

 

 それでも。

 

「追いつきたい」

 

 そう思った。

 

 

 投げる。

 

 走る。

 

 下半身。

 

 体幹。

 

 フォーム。

 

 今までより。

 

 投球練習を増やした。

 

【筋力がかなり上がった】

【技術がかなり上がった】

【精神が上がった】

 

 貯める。

 

 そして。

 

 使う。

 

【球速が上がりました】

 

 七十五。

 

 七十六。

 

 時間をかけて。

 

 少しずつ。

 

「……よし」

 

 以前のように。

 

 一度の練習で。

 

 どんどん。

 

 数字は上がらない。

 

 でも。

 

 上がる。

 

 なら。

 

 続ければいい。

 

 

 一か月後。

 

「玲」

 

「なに?」

 

「測ろうぜ」

 

「球速?」

 

「うん」

 

「やる」

 

 スピードガン。

 

 コーチ。

 

「無理に力むなよ」

 

「はい!」

 

 まず。

 

 俺。

 

 一球目。

 

 七十六。

 

 二球目。

 

 七十七。

 

 三球目。

 

 七十八。

 

「よし!」

 

 自己最速。

 

 七十八。

 

「次僕!」

 

 玲。

 

 一球目。

 

 八十一。

 

 二球目。

 

 八十二。

 

 三球目。

 

 八十三。

 

「やった!」

 

「……」

 

「伊織君、四キロ上がったね」

 

「お前も三キロ上がってるじゃん」

 

「うん」

 

「差、縮まらねえな」

 

「ほんとだ」

 

「嬉しそうに言うな」

 

 玲。

 

 八十三。

 

 俺。

 

 七十八。

 

 差。

 

 五キロ。

 

 一キロ。

 

 縮んだ。

 

「まだ」

 

 追いつける。

 

 もっと。

 

 投げれば。

 

 

 投球練習。

 

 増やす。

 

 当然。

 

 一日は。

 

 二十四時間。

 

 増えない。

 

 学校。

 

 宿題。

 

 食事。

 

 睡眠。

 

 チーム練習。

 

 投げる時間を増やせば。

 

 何かが。

 

 減る。

 

「成瀬」

 

「はい」

 

 バッティング。

 

 カンッ。

 

 セカンドゴロ。

 

「最近ちょっと振り遅れてるぞ」

 

「……はい」

 

「疲れてないか?」

 

「大丈夫です」

 

「投げ込み増やしてるだろ」

 

「はい」

 

「やりすぎるなよ」

 

「はい」

 

 次。

 

 守備。

 

 三遊間。

 

 走る。

 

 捕る。

 

 送球。

 

「アウト!」

 

 できる。

 

 でも。

 

 前より。

 

 余裕がない。

 

「……」

 

 システム。

 

【ミート B72】

 

 少し。

 

 伸びた。

 

【守備力 B73】

 

 これも。

 

 少し。

 

 でも。

 

 投球へ使った時間ほど。

 

 伸びていない。

 

「……当たり前か」

 

 時間も。

 

 経験も。

 

 無限じゃない。

 

 

 システムは。

 

 何でも。

 

 育てられる。

 

 俺は。

 

 そう思っていた。

 

 練習すれば。

 

 経験が入る。

 

 経験を使えば。

 

 能力が上がる。

 

 なら。

 

 全部。

 

 上げればいい。

 

 でも。

 

「経験、無限じゃないんだよな」

 

 ゲームだって。

 

 同じ。

 

 一回の育成で。

 

 取れる経験には。

 

 限界がある。

 

 全部に振れば。

 

 全部。

 

 中途半端になる。

 

 だから。

 

 普通は。

 

 育成方針を決める。

 

 打者。

 

 投手。

 

 守備。

 

 走力。

 

 何かへ。

 

 寄せる。

 

「でも……」

 

 俺は。

 

 嫌だった。

 

 だって。

 

 前世では。

 

 何も。

 

 残せなかった。

 

 今度は。

 

 全部。

 

 手に入れたい。

 

 

「伊織君」

 

 放課後。

 

 詩織。

 

「今日、一緒に帰ろ」

 

「ごめん。玲と練習」

 

「また?」

 

「球速測るんだ」

 

「……そっか」

 

 詩織が。

 

 俺を見る。

 

「最近、伊織君ずっと野球だね」

 

「大会あるから」

 

「前も大会だったよ」

 

「今度は秋の大会」

 

「その前は夏だった」

 

「……」

 

 確かに。

 

「野球って、ずっと大会あるの?」

 

「まあ……ある」

 

「ふーん」

 

 詩織が。

 

 少し前を歩く。

 

「詩織?」

 

「なに?」

 

「怒ってる?」

 

「怒ってないよ」

 

「じゃあ」

 

「ただ」

 

 振り返る。

 

「前に遊ぶって約束したの、覚えてる?」

 

「……」

 

 止まる。

 

 大会が終わったら。

 

 遊ぼう。

 

 確かに。

 

 言った。

 

「あ」

 

「忘れてたでしょ」

 

「……ごめん」

 

「やっぱり」

 

「本当にごめん」

 

 詩織は。

 

 少し黙って。

 

「今度は忘れないでね」

 

「うん」

 

「約束」

 

「約束」

 

 小指。

 

 絡める。

 

【藤崎詩織】

 

【好感度が少し下がりました】

 

「……」

 

 初めて。

 

 だった。

 

 上がらない。

 

 じゃない。

 

 下がった。

 

 少し。

 

 胸が痛い。

 

 でも。

 

「伊織君!」

 

 遠くから。

 

 玲。

 

「行こう!」

 

「ああ!」

 

 そして。

 

 俺は。

 

 走った。

 

 

 秋の大会。

 

 準決勝。

 

「成瀬、今日はお前が先発」

 

「……!」

 

「はい!」

 

 嬉しかった。

 

 大事な試合。

 

 先発。

 

 マウンド。

 

 一回。

 

 ゴロ。

 

 フライ。

 

 ゴロ。

 

 三者凡退。

 

 二回。

 

 ヒット。

 

 四球。

 

 それでも。

 

 併殺。

 

 無失点。

 

 三回。

 

 一失点。

 

 でも。

 

 崩れない。

 

 四回。

 

 最後の打者。

 

 二ストライク。

 

「……」

 

 三振。

 

 欲しい。

 

 玲みたいに。

 

 でも。

 

 無理に。

 

 力まない。

 

 外角。

 

 投げる。

 

 カンッ!

 

「ショート!」

 

 ゴロ。

 

 一塁。

 

「アウト!」

 

 チェンジ。

 

「ふう……」

 

 四回。

 

 一失点。

 

 奪三振。

 

 二。

 

 悪くない。

 

 いや。

 

 普通に。

 

 いい投球。

 

 チームも。

 

 五対一。

 

 勝った。

 

「ナイスピッチ成瀬!」

 

「ありがとうございます!」

 

 嬉しい。

 

 ちゃんと。

 

 嬉しい。

 

 

 翌日。

 

 決勝。

 

「先発、水城」

 

「はい!」

 

 玲。

 

 一回。

 

 二奪三振。

 

 二回。

 

 三奪三振。

 

 三回。

 

 二奪三振。

 

 四回。

 

 一奪三振。

 

「……八」

 

 四回。

 

 八奪三振。

 

 俺。

 

 昨日。

 

 二。

 

 同じ。

 

 一失点。

 

 同じ。

 

 勝利投手。

 

 でも。

 

 内容は。

 

 まるで違う。

 

「……」

 

 玲。

 

 マウンド。

 

 楽しそう。

 

 俺。

 

 ショート。

 

 そして。

 

 ふと思う。

 

 俺は。

 

 マウンドに立っている時より。

 

 今。

 

 この位置から。

 

 打球を待っている時の方が。

 

 楽しいのかもしれない。

 

「……いや」

 

 まだ。

 

 決めるのは。

 

 早い。

 

 

 三年生。

 

 終了。

 

【成瀬 伊織】

年齢:9歳

 

【競技カテゴリ:少年】

 

弾道 3

ミート B74

パワー C66

走力  B70

肩力  B72

守備力 B75

捕球  C69

 

【投手能力】

球速     80km/h

コントロール B78

スタミナ   B70

 

【特殊能力】

送球○

アベレージヒッター

チャンス○

 

「……」

 

 B。

 

 増えた。

 

 でも。

 

 Aは。

 

 まだ。

 

 一つもない。

 

「あと三年」

 

 少年カテゴリ。

 

 残り。

 

 三年。

 

 ここから。

 

 Bを。

 

 Aへ。

 

 上げる。

 

 多分。

 

 今までより。

 

 ずっと。

 

 大変になる。

 

 そして。

 

 玲。

 

 この冬。

 

 八十五キロ。

 

【水城 玲】

 

球速 85km/h

 

【特殊能力】

ノビC

 

【特殊能力候補】

奪三振

 

「……五キロ差」

 

 俺。

 

 八十。

 

 玲。

 

 八十五。

 

 まだ。

 

 追える。

 

 そう思う。

 

 

 人生能力。

 

【人生能力】

 

学力 58

運動 50

容姿 49

芸術 23

社交 39

精神 66

 

「……」

 

 野球ほど。

 

 伸びていない。

 

 詩織。

 

【藤崎詩織】

 

関係:幼馴染

好感度:???

恋愛条件:未解放

 

 俺には。

 

 野球能力。

 

 人生能力。

 

 学校。

 

 家族。

 

 詩織。

 

 玲。

 

 全部。

 

 ある。

 

 全部。

 

 大事。

 

 だったら。

 

 全部。

 

 育てればいい。

 

 でも。

 

 この一年で。

 

 少し。

 

 分かった。

 

 時間も。

 

 経験も。

 

 無限じゃない。

 

 何かに使えば。

 

 その分。

 

 別の何かには。

 

 使えない。

 

「……それでも」

 

 画面を閉じる。

 

「全部やる」

 

 まだ。

 

 選ぶつもりは。

 

 なかった。

 

 九歳。

 

 春。

 

 俺たちは。

 

 四年生になる。

 

 少年カテゴリ。

 

 残り。

 

 三年。

 

 ここから先。

 

 俺と玲は。

 

 同年代の中だけでは。

 

 少しずつ。

 

 収まらなくなっていく。

 

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