転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第26話

 四年生になった。九歳。

 三年生の終わりには、ミートB74、守備B75。走力と肩力もBまで上がった。

 少年カテゴリは六歳から十二歳まで。同学年だけを基準にした数字じゃない。

 つまり、今の俺は「四年生にしては上手い」じゃない。

 普通の六年生まで含めても、かなり上の能力を持っている。

 玲も同じだった。いや、投手としての異常さなら、俺以上に目立ち始めている。

【水城玲の解析情報】

球速 85km/h

特殊能力 ノビC

【特殊能力候補】

奪三振

 そんな俺たちに、監督から話があった。

「成瀬、水城。今日からメジャー組の練習に入れ」

「メジャー?」

「四年から六年が中心の方だ。今までより上の学年と一緒にやってもらう」

 玲がすぐに反応する。

「六年生とも?」

「ああ」

「やった」

「嬉しそうだな」

「速い球投げる人いる?」

「まずそこかよ」

 俺も内心はかなり楽しみだった。

 今の能力が、普通の上級生相手にどこまで通じるのか。

 ようやく試せる。

 

◇

 

 学校でも、その話を詩織にした。

「四年生なのに六年生と一緒にやるの?」

「そう」

「大丈夫?」

「多分」

「多分なんだ」

「いや、いけると思う」

 詩織が少し笑う。

「最近、伊織君ずっと自信あるよね」

「強くなってるからな」

「野球は?」

「……それ以外もだよ」

「ほんと?」

「ほんと」

 少し間が空いた。

 詩織は何も言わなかったけど、前に約束を忘れたことを思い出す。

「今度の日曜の午後、空いてるから」

「え?」

「遊べる」

「……覚えてたんだ」

「当たり前だろ」

「じゃあ、忘れないでね」

「忘れないって」

 前にも言った気がする。

 今度は本当に忘れないようにしよう。

 

◇

 

 最初のメジャー組練習は守備からだった。

「成瀬、ショート入れ!」

「はい!」

 六年生が打席に入る。

 カキン!

「ショート!」

 打球は速い。

 でも、見えないほどじゃない。

 一歩目を出して正面に入り、そのまま捕球。一塁へ送る。

「アウト!」

「……普通に取れるな」

 次は三遊間の深いところ。

「っ!」

 追いつく。捕る。体勢は崩れている。

 それでも踏ん張って投げる。

 シュッ!

「アウト!」

「おお」

 周りから声が上がる。

 六年生だからといって、急に別競技になるわけじゃない。

 俺の守備B75、肩B72、送球○は、少年カテゴリ全体でもかなり高い。

 普通の六年生相手なら十分通用する。

「成瀬、深いところから強いな」

「ありがとうございます!」

 嬉しい。

 そして少し安心した。

 数字通り。

 ちゃんと俺は、強くなっている。

 

◇

 

 次は打撃。

「成瀬、入ってみろ」

「はい!」

 相手投手は六年生。

 打席に立つ。

 一球目。

 シュッ!

「……」

 ストライク。

 速い。

 でも、玲のストレートを普段から見ているせいか、思ったほど驚かない。

 二球目は外。

 三球目。

 真ん中。

「そこ!」

 振る。

 カキン!

 センター前。

「よし」

 四球目はファウル。

 五球目。

 外角。

 踏み込む。

 カキィン!

 打球はセンターの頭を越えた。

「おお!」

 六年生から声が上がる。

「成瀬、もう一本」

「はい!」

 結局、五球中二球が安打性。

「四年だよな?」

「はい」

「マジかよ……」

 相手の六年生が少し嫌そうな顔をする。

 その反応が、かなり気持ちよかった。

 

◇

 

「次、水城!」

「はい!」

 今度は玲がマウンドへ。

 打席には六年生。

「軽くな」

「はい」

 一球目。

 シュッ!

 ブンッ!

「……!」

 空振り。

 六年生の打者が少し首を傾げる。

 二球目。

 またストレート。

 カンッ!

 ファウル。

 三球目。

 高め。

 ブンッ!

「ストライク!」

「……なんだその真っ直ぐ」

 六年生が玲を見る。

「八十五くらい?」

「そのくらい」

「もっと速く見えるんだけど」

 そりゃそうだ。

 ノビC。

 しかも元々、回転の質がおかしい。

 二人目は空振り三振。

 三人目はゴロ。

 四人目も三振。

 普通の六年生でも、玲の球は簡単には打てない。

「水城、もう少し投げろ」

「はい!」

 むしろ上級生の方が、だんだん本気になっていった。

 

◇

 

 その日の最後は紅白戦になった。

「成瀬、Aチーム三番ショート」

「はい!」

「水城はBチーム。途中から投げろ」

「はい!」

 四年生になったばかり。

 それでも、もう低学年扱いはされていない。

 一回。俺の第一打席。

 相手は六年生投手。

 一球目はボール。二球目は外角ストライク。ワンボール、ワンストライク。

 三球目。

「……!」

 振る。

 カキン!

 ライト前。

「よし!」

 一塁へ。

 次の打者。

 初球。

「走れる」

 スタート。

「成瀬!」

 捕手が二塁へ投げる。

「セーフ!」

【盗塁成功】

【盗塁に関する特殊能力取得条件が進行しました】

「……これも来るか」

 まだ能力として認識される段階じゃない。

 でも、成功を重ねればそのうち何か変わるかもしれない。

 

◇

 

 三回の守備。

 一死一塁。

 打球は二遊間。

「ショート!」

 普通ならセンター前へ抜けそうなコース。

 追いつく。

 捕る。

 そのまま二塁へトス。

「アウト!」

 二塁手から一塁。

「アウト!」

「ダブルプレー!」

「よし!」

 普通の上級生相手なら、守備も、打撃も、走塁も負けていない。

 むしろ俺の方が上の場面も多い。

 Bという能力がどういうものなのか。

 最近になって、ようやく実感として分かってきた。

 

◇

 

 四回。

 玲がマウンドへ上がった。

「水城、六年相手だからって力むなよ」

「はい!」

 一人目。

 初球をファウル。二球目は空振り。ツーストライク。

 三球目はボール。

 四球目。

 高め。

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 二人目はゴロ。

 三人目。

 六年生の四番。

「水城、こいつ打つぞ」

「うん」

 なんで楽しそうなんだよ。

 一球目は空振り。

 二球目はファウル。

 ツーストライク。

 三球目は外。

 ワンボール、ツーストライク。

 四球目。

 シュッ!

 カキン!

「お!」

 センター前。

「やった!」

 打った六年生が本気で喜んでいる。

「……ヒット一本でそんな喜ぶ?」

 思わず呟く。

 でも、気持ちは分かる。

 玲の球は、それくらい打ちづらい。

「水城、打たれたな」

「うん」

「悔しい?」

「うん」

「顔笑ってるけど」

「次三振取る」

「やっぱ楽しそうだな、お前」

 次の打者。

 最後は高め。

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 本当に三振を取った。

 

◇

 

 紅白戦が終わると、上級生たちの声が聞こえてきた。

「四年の二人、かなりやるな」

「水城の真っ直ぐ何なんだよ」

「成瀬も普通に六年の球打ってるし」

「ショートも上手いぞ」

 悪い気はしない。

「成瀬、水城」

 監督が俺たちを呼ぶ。

「今日やってみてどうだった?」

「楽しかったです」

「僕も」

「水城はそれしか言わんな」

 監督が笑う。

「二人とも、もう普通の四年生として扱う必要はなさそうだ。これからはメジャー組の試合にも出てもらう」

「はい!」

「はい!」

「ただし」

 監督の声が少し変わる。

「ここで勘違いするなよ。今日いた六年生は、あくまで普通の六年生だ」

「……」

「上にはもっといる。県でも、全国でもな」

 全国。

 その言葉に反応した。

「全国って、どれくらい強いですか?」

「行けば分かる」

「行ける?」

 玲が聞く。

「勝てばな」

「じゃあ勝つ」

「簡単に言うな」

 でも俺も同じだった。

 今の俺たちなら、普通の上級生相手でもかなりやれる。

 なら、その上は?

 

◇

 

 日曜日。

「ほんとに来た」

 公園で待っていた詩織が、開口一番そう言った。

「何だよそれ」

「また野球行くかと思った」

「約束しただろ」

「うん」

 詩織が笑う。

 今日はバットもグローブも持っていない。

 少しだけ落ち着かない。

「伊織君」

「ん?」

「野球ないと暇?」

「そんなことない」

「じゃあ何する?」

「……何する?」

「考えてなかったの?」

「野球なら練習メニューすぐ出るんだけど」

「やっぱり野球じゃん」

 笑われる。

 それでも、その日は普通に遊んだ。

 帰る頃。

「伊織君、六年生とやってどうだった?」

「普通にやれた」

「すごいね」

「でも監督が、全国にはもっと強いのいるって」

「また行きたいの?」

「行きたい」

「そっか」

 詩織が少しだけ笑う。

「じゃあ頑張って」

「おう」

 野球もやる。

 詩織との約束も守る。

 今日は両方できた。

 だから俺は、やっぱり全部できると思った。

 

◇

 

 帰り道。

「伊織君」

「ん?」

「六年生、強かった?」

「普通」

「普通?」

「俺たちの方が上のところもあった」

「怪物?」

「自分で言うのもあれだけど」

「何それ」

 笑われる。

 でも実際、練習のあと六年生たちがそんなことを言っていた。

 怪物二人。

 成瀬と水城。

 悪くない呼び名だと思う。

 ただ、監督の言葉も残っている。

 今日の相手は、普通の六年生。

 俺の能力はBが中心。

 かなり強い。

 でも、Aじゃない。

 少年カテゴリの中で、誰にも負けないくらいの領域にはまだ届いていない。

「全国か……」

「また野球考えてる」

「……分かった?」

「顔で」

「そんな分かりやすい?」

「すごく」

 詩織が笑う。

 その横で。

 俺はまだ見たことのない、少年野球の頂上を考えていた。

 

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