転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第27話

 メジャー組に上がってから二か月。

 最初こそ六年生と一緒にやるだけで少し構えていたけど、慣れてしまえば話は早かった。

 守備では普通にアウトを取れる。打席でも、普通の六年生投手ならかなりの確率で捉えられる。走れば盗塁も決まる。

 玲も同じだった。いや、投手としては俺以上に分かりやすい。

「ストライク! バッターアウト!」

 ブンッ、と六年生のバットが空を切る。

「また三振かよ……」

「球速だけならもっと速い奴いるのに、なんで当たんねえんだ?」

 六年生基準で見れば、玲の八十五キロは最速というわけじゃない。

 それでも打てない。

 ノビC。

 回転の質。

 軌道。

 その全部が、玲の八十五キロを数字以上に速く見せている。

「伊織君」

「ん?」

「今日も勝った」

「おう」

「六年生、そんなに強くないね」

「お前、それ本人たちの前で言うなよ」

「言わないよ」

「ならいい」

 でも、言っていること自体は間違っていない。

 俺たちは四年生。

 けれど能力は少年カテゴリ全体でBが中心だ。

 Bは「四年生にしては上手い」じゃない。

 六年生まで含めた少年野球の中で、かなり優れている。

 だから普通の上級生に通用するのは、むしろ当然だった。

 

◇

 

「成瀬、水城!」

 練習後、監督に呼ばれた。

「今度の日曜、練習試合が入ったぞ」

「どことですか?」

「去年、全国ベスト8まで行ったチームだ。今年も全国優勝候補の一つだな」

「……全国?」

 俺と玲が同時に反応する。

「強い?」

「強い」

「六年生?」

「主力はな」

「速い投手いる?」

「水城、お前は本当にそれしかないのか」

 監督が苦笑する。

「エースは六年生。百五キロ前後出る」

「百五……」

 玲の目が一気に輝いた。

 俺も少し笑ってしまう。

 普通の六年生には、もうかなり通じる。

 なら次は。

 全国レベル。

 

◇

 

 学校の帰り道。

「日曜、また試合?」

 詩織に聞かれた。

「練習試合」

「強いところ?」

「去年全国ベスト8」

「全国?」

「うん」

「伊織君たちより強い?」

「多分」

 俺が即答すると、詩織が少し意外そうな顔をした。

「珍しい」

「何が?」

「伊織君が自分より強いってすぐ言うの」

「普通の六年生なら結構やれるけど、全国上位は別だろ」

「まだやってないのに?」

「前に監督も言ってたし」

 詩織が少し笑う。

「楽しそう」

「分かる?」

「すごく」

「強い相手とやれるんだから、そりゃ楽しみだろ」

「負けるかもしれないのに?」

「だからだよ」

 言ってから、自分でも少し驚いた。

 前世の俺なら、負けそうな相手との試合をこんなふうに楽しみにできただろうか。

 少なくとも今は。

 強い奴がいるなら、戦ってみたい。

「頑張ってね」

「おう」

「今度は約束ないから、思いっきり野球してきていいよ」

「……まだ覚えてる?」

「忘れません」

「すみませんでした」

 詩織が笑う。

 俺も笑った。

 それからすぐ、頭の中は百五キロの投手でいっぱいになった。

 

◇

 

 日曜日。

 相手チームを見た瞬間、空気が違うのが分かった。

「……でかいな」

 身体だけじゃない。

 キャッチボールの球が強い。ノックの動きが速い。声も出ている。

 何より、普通にうまい。

「成瀬、今日は八番ショート」

「はい!」

「水城はベンチスタート。後半投げてもらう」

「はい!」

 八番。

 久しぶりに下位打線へ戻った。

 でも不満はない。

 相手は全国上位。

 まずは自分がどこまで通じるか。それを見たい。

 

◇

 

 一回表。

 相手の先頭打者がいきなりセンター前へ運んだ。二番は送りバント。一死二塁。

 三番。

 カキン!

「ショート!」

 普通のゴロ。

 俺の正面。

「よし」

 捕って一塁へ送る。

「アウト!」

 問題ない。

 次は四番。

 一球目をファウル。二球目はボール。ワンボール、ワンストライク。

 三球目。

 カキィン!

「……!」

 強い。

 三遊間の深いところ。

「取れる!」

 追いつく。捕る。振り向きざまに一塁へ。

 シュッ!

「セーフ!」

「……」

 間に合わなかった。

 ほんの少し。

 でも普通の六年生なら、アウトにできていた打球だった。

 足も速い。

 次の打者。

 今度は正面。

「よし!」

 捕る。

 バシッ!

「っ!」

 グローブが押された。

 一瞬こぼしかける。

 なんとか握り直して一塁へ。

「アウト!」

 チェンジ。

「……同じ六年生でも違うな」

 打球の速さも、走る速さも。

 全部、一段上。

 

◇

 

 一回裏。

 相手のエースがマウンドへ。

「……速」

 キャッチボールの時点で分かる。

 百キロを超えている。

 今まで見てきた投手より明らかに速い。

 一番。

 空振り、ファウル。最後はショートゴロ。

 二番は三振。

 三番はセンターフライ。

 三者凡退。

「……強いな」

 そして三回。

 俺の第一打席。

「お願いします!」

 六年生エースが構える。

 一球目。

 シュッ!

「……!」

 バシンッ!

「ストライク!」

 速い。

 でも、見えないわけじゃない。

 二球目は外。ボール。ワンボール、ワンストライク。

 三球目。

 真ん中寄り。

「来た!」

 振る。

 ブンッ!

「ストライク!」

「……」

 遅れた。

 ワンボール、ツーストライク。

 玲の球とは違う。

 純粋に速い。

 四球目は外角。

 当てにいく。

 カンッ!

 ファウル。

 五球目。

 低め。

「っ!」

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

「……三振」

 久しぶりに完全に負けた。

 

◇

 

 守備へ戻る途中、玲がベンチから声をかけてくる。

「伊織君」

「何?」

「速かった?」

「速かった」

「打ちたい」

「お前はまず投げろ」

 玲は嬉しそうだった。

 俺は悔しい。

 でも。

 嫌じゃない。

 むしろ。

「面白いな」

 普通の相手なら、もうかなり打てる。

 だからこそ、こういう相手がいる方がいい。

 

◇

 

 五回。

 第二打席。

 前の打席で球速は見た。

 なら、今度は少し早めに準備する。

 一球目、ボール。二球目、ストライク。ワンボール、ワンストライク。

 三球目。

 外角。

「……!」

 踏み込む。

 カキィン!

「よし!」

 強い打球。

 二遊間。

「抜け――」

 セカンドが飛びつく。

「……!」

 止めた。

 そのまま一塁へ。

「アウト!」

「マジか……」

 打てた。

 なのにアウト。

 さっきの守備もそうだった。

 全国レベルでは、いい打球を打てば終わりじゃない。

 それを普通にアウトにしてくる。

 

◇

 

 六回。

「水城、行くぞ」

「はい!」

 玲がマウンドへ。

 相手は全国上位の六年生打線。

 一人目。

 一球目。

 ストレート。

 ブンッ!

「……!」

 空振り。

 二球目はファウル。ツーストライク。

 三球目は外。ワンボール、ツーストライク。

 四球目。

 高め。

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

「……全国でも取るのかよ」

 思わず笑う。

 二人目。

 今度は二球目を打たれる。

 ライト前。

「ヒット!」

 玲が少し悔しそうな顔をする。

 三人目。

 ファウル。

 ファウル。

 ツーストライク。

 最後は高め。

 空振り三振。

 二死一塁。

 四番。

 さっき俺が守備で押された打者。

 一球目はストライク。

 二球目はボール。ワンボール、ワンストライク。

 三球目。

 玲が投げる。

 少し甘い。

「……!」

 カキィン!

 左中間。

「走れ!」

 打球は外野の間を抜けた。

 一塁走者がホームへ。

「セーフ!」

 一点。

 玲がこの試合で初めて、はっきり捕まった。

 でも次の打者。

 最後はストレート。

 ブンッ!

「ストライク! バッターアウト!」

 チェンジ。

 一回、一失点、三奪三振。

「……三つ取って一点取られるのか」

 全国。

 面白い。

 

◇

 

 最終回。

 俺の第三打席。

 相手エースはまだ投げている。

 第一打席は三振。

 第二打席はいい打球をアウトにされた。

 なら、三回目。

 一球目、ストライク。

 二球目は外。ボール。ワンボール、ワンストライク。

 三球目はファウル。ワンボール、ツーストライク。

「……」

 もう球速には慣れてきた。

 四球目は低め。見送る。ツーボール、ツーストライク。

 五球目は内角。ファウル。

 六球目は外。ボール。

 フルカウント。

 七球目。

 真ん中。

「今度こそ!」

 カキィン!

「……!」

 右中間。

 外野が追う。

 でも。

「抜けた!」

「よし!」

 一塁。

 二塁。

「セーフ!」

 二塁打。

【全国トップクラスの投手から長打を記録しました】

「……打った」

 嬉しい。

 システムに表示されたからじゃない。

 一本目。

 全国トップクラスから、ちゃんと打った。

 

◇

 

 試合終了。

 一対五。

 負け。

 俺は三打数一安打。二塁打一本。

 玲は一回一失点、三奪三振。

「負けたな」

「うん」

「どうだった?」

「楽しかった」

「だろうな」

 玲が俺を見る。

「伊織君、最後打った」

「おう」

「僕も三振三つ」

「一点取られたけどな」

「次は取られない」

「俺も次はもっと打つ」

 相手チームを見る。

 同じ少年カテゴリ。

 同じ小学生。

 でも明らかに強かった。

 普通の六年生なら、今の俺たちはかなりやれる。

 玲の球なら三振を取れる。

 俺なら打てる。守れる。走れる。

 でも全国上位には、まだ簡単には勝てない。

 

◇

 

 翌日。

「負けたんだって?」

 学校へ行くと、詩織が聞いてきた。

「誰から聞いたんだよ」

「お母さん」

「うちの?」

「うん」

「情報網どうなってんだ」

 詩織が笑う。

「悔しい?」

「

 

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