転生したら人生がサクセスモードだった   作:ねるすと

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第47話

 10月が終わって。

 俺は。

 予定を組むようになった。

 野球。

 勉強。

 ピアノ。

 友達。

 自主練。

 睡眠。

 全部やるなら。

 時間を無駄にしなければいい。

 そう考えたからだ。

 

◇

 

「月曜は練習」

 ノートに書く。

「火曜は自主練してから勉強」

 水曜。

 詩織の家でピアノ。

 木曜。

 野球。

 金曜。

 勉強。

 土日はチーム練習か試合。

「……いけるな」

 前世でも。

 仕事の予定くらいは組んでいた。

 締切。

 会議。

 提出物。

 今思えば。

 自分の人生について。

 ここまで真面目に予定を考えたことはなかった。

「朝も使える」

 起きる時間を。

 30分早くする。

 軽く走る。

 素振り。

 学校。

 帰宅後は予定通り。

 夜に勉強。

 寝る。

「完璧じゃん」

 1日は24時間。

 増やすことはできない。

 なら。

 空いている時間を。

 全部使えばいい。

 

◇

 

 翌朝。

「眠い」

 開始3日目で。

 すでに眠かった。

「伊織君」

「ん……」

「大丈夫?」

「大丈夫」

 登校中。

 詩織が俺の顔を覗き込む。

「目、半分しか開いてないよ」

「朝走った」

「何時に起きたの?」

「5時半」

「早すぎない?」

「時間増えるから」

「増えてないよ」

「起きてる時間は増える」

「寝る時間減ってるじゃん」

「……」

「それ、駄目なんじゃない?」

 正論だった。

「じゃあ今日は早く寝る」

「そうしてください」

「何で敬語?」

「先生です」

「いつからだよ」

 詩織が笑った。

 

◇

 

 放課後。

「伊織君」

「何?」

「今日、帰りに本屋寄らない?」

「今日?」

「うん。新しい楽譜見たいから」

「……」

 頭の中で。

 予定を確認する。

 今日は。

 自主練。

 その後。

 算数と国語。

 夜。

 筋力トレーニング。

「ごめん。今日は無理」

「そっか」

「水曜なら空いてる」

「水曜はピアノの日でしょ?」

「その前なら30分くらい」

「……30分」

「足りない?」

「ううん」

 詩織が笑う。

「じゃあまた今度でいいよ」

「分かった」

 そのまま。

 俺はグラウンドへ向かった。

 

◇

 

「伊織君」

「ん?」

「最近、毎日いるね」

「前からいるだろ」

「前より」

 玲がボールを弄びながら言う。

「自主練増やした」

「どうして?」

「もっと速くなりたい」

「僕より?」

「当たり前」

「無理」

「即答すんな」

 マウンドへ立つ。

 玲は。

 秋に入っても速くなっていた。

 128km/h。

 まだ12歳。

 それでも。

 毎週のように。

 球が強くなっている。

 俺だって。

 止まってはいない。

「測る?」

「もちろん」

 セット。

 足を上げる。

 身体を前へ運ぶ。

 シニアの体験で。

 距離が変わっただけで制球もスタミナも落ちた。

 あれから。

 俺はフォームを少し見直していた。

 腕だけじゃない。

 下半身。

 体重移動。

 全身で。

 前へ。

「ふっ!」

 シュッ!

 バァンッ!

「116km/h」

「……よし」

「上がった」

「夏111だったからな」

「5km/h」

「計算早いな」

「僕は?」

「聞くな」

「128」

「知ってるよ!」

 まだ12km/h差。

 遠い。

 でも。

 少しずつ。

 近づく。

 

◇

 

 その日。

 投げ終えた後。

 画面が出た。

【投球動作の改善を確認しました】

【球速経験を獲得しました】

【コントロール経験を獲得しました】

「……」

 やっぱり。

 時間を使えば。

 結果になる。

 野球も。

 人生能力も。

 同じだ。

 

◇

 

 11月。

 学校でも。

 少し変化が出始めた。

「成瀬」

「はい」

「この前の理科のまとめテスト」

 答案が返ってくる。

 100点。

「よし」

「また100?」

 後ろから声。

「また」

「ずる」

「何がだよ」

「野球できて勉強もできる」

「勉強すればいいだろ」

「お前、いつ勉強してんの?」

「夜」

「毎日?」

「ほぼ」

「マジか」

 前より。

 勉強する時間を意識して取っている。

 当然。

 結果も出る。

【学力経験を獲得しました】

 順調。

 そう思った。

 

◇

 

 休み時間。

「伊織君」

 詩織が俺の机へ来る。

「今日、放課後どうする?」

「今日?」

「ピアノ」

「あ」

 予定を思い出す。

「今日だった」

「……忘れてた?」

「忘れてない」

「今『あ』って言った」

「思い出しただけ」

「それを忘れてたって言うんじゃない?」

「いや、予定には書いてある」

「予定?」

「これ」

 ノートを見せる。

 詩織が覗き込む。

「……すご」

 月曜日から日曜日まで。

 ほとんど埋まっている。

「野球」

「うん」

「勉強」

「うん」

「自主練」

「うん」

「ピアノ」

「うん」

「友達」

「……」

 詩織が指差す。

「友達って書くんだ」

「予定だから」

「私も?」

「水曜のここ」

 指を差す。

「詩織・ピアノ」

「……」

「何?」

「別に」

「またそれ?」

「予定に入ってるんだなって」

「入れないと他と被るだろ」

「そうだね」

 詩織は。

 少しだけ笑った。

「じゃあ今日、予定通りね」

「もちろん」

 俺は。

 その時。

 何もおかしいと思わなかった。

 

◇

 

 その日のピアノ。

「今日はこれ」

 詩織が簡単な楽譜を出した。

「両手?」

「両手」

「無理」

「やる前から言わない」

「右手だけならいける」

「じゃあ右手から」

 弾く。

 止まる。

 間違える。

「違う」

「今の?」

「そこ」

「分からん」

「もう1回」

 また。

 最初から。

 30分。

 40分。

 少しずつ。

 弾けるようになる。

【芸術経験を獲得しました】

【精神経験を獲得しました】

「お」

「また何か言った?」

「何も」

「最近多いよね」

「独り言」

「変な独り言」

 時計を見る。

「……そろそろ帰る」

「もう?」

「予定だとここまで」

「予定」

「夜は勉強」

「そっか」

「また来週」

「うん」

 鞄を持つ。

「伊織君」

「何?」

「楽しかった?」

「ピアノ?」

「うん」

「楽しかったよ」

「ほんと?」

「能力も――」

 言いかけて。

 止まる。

「少し弾けるようになったし」

「そっか」

 詩織が笑う。

 その笑顔を見て。

 俺も笑った。

 ただ。

 その後。

 詩織が何か言おうとしていたことには。

 気づかなかった。

 

◇

 

 11月の終わり。

 玲と投げ合った。

「130km/h!」

 測定器の数字を見て。

 俺は。

 しばらく黙った。

「伊織君」

「……何」

「130」

「見れば分かる」

「出た」

「嬉しそうだな!」

「嬉しい」

「くそ……」

 130km/h。

 とうとう。

 玲が。

 そこまで来た。

【解析情報が更新されました】

【水城玲の解析情報】

球速 130km/h

【球威・回転効率が向上しています】

【確認済み特殊能力】

奪三振

怪童

「小学生だぞ……」

「伊織君も」

「俺はまだ116」

「遅い」

「お前基準で言うな」

「もっと投げる?」

「投げる」

 玲との差が。

 また広がる。

 俺は。

 打撃もやる。

 守備もやる。

 走塁も。

 勉強も。

 ピアノも。

 友達とも遊ぶ。

 玲は。

 もちろん学校生活もある。

 でも。

 俺より。

 ずっと多く。

 野球に時間を使っている。

「……」

 ボールを握る。

「もう1球」

「うん」

 投げる。

 117km/h。

「よし」

「上がった」

「もう1球」

「投げすぎ」

「あと1球」

「休むのも練習」

「それ俺が教えたんじゃないからな」

「榊原さん」

「分かってるよ」

 それでも。

 あと1球だけ。

 投げた。

 

◇

 

 12月。

 人生能力を確認する。

【成瀬 伊織】

年齢:12歳

【人生能力】

学力  B76

運動  A89

容姿  A83

芸術  C53

社交  B70

精神  B79

「社交B」

 上がった。

 芸術も。

 学力も。

 ちゃんと伸びている。

「いい感じじゃん」

 全部。

 少しずつ。

 育っている。

 次。

 野球能力。

【成瀬 伊織】

競技カテゴリ:少年

【野手能力】

弾道  3

ミート A87

パワー A85

走力  A82

肩力  A87

守備力 A89

捕球  A84

【投手能力】

球速     117km/h

コントロール A89

スタミナ   A86

【変化球】

チェンジアップ 3

【特殊能力】

送球○

アベレージヒッター

パワーヒッター

チャンス○

盗塁○

対ピンチ○

低め○

「こっちも上がってる」

 問題ない。

 何も捨ててない。

 野球も。

 人生能力も。

 全部。

 伸びている。

「やっぱりできる」

 時間を決めて。

 効率よくやれば。

 全部取れる。

 そう思った。

 

◇

 

 翌日。

 放課後。

「伊織君」

「何?」

「今日、一緒に帰らない?」

「今日?」

 予定を思い出す。

 自主練。

 その後。

 勉強。

「ごめん。今日は無理」

「そっか」

「明後日なら」

「明後日はいいよ」

「じゃあ明後日」

「うん」

 詩織が笑う。

 俺も。

 笑った。

 約束を破ったわけじゃない。

 嫌なことを言ったわけでもない。

 ちゃんと。

 別の日も提案した。

 だから。

 問題ない。

 そう思っていた。

 俺の予定表では。

 全部。

 ちゃんと収まっていた。

 野球も。

 勉強も。

 友達も。

 詩織も。

 何1つ。

 取りこぼしていない。

 少なくとも。

 数字の上では。

 

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